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*** june typhoon tokyo ***

Roomies @BLUE NOTE PLACE


 良質なヴァイブスを生み出した、愉悦でファシネイトなステージ。

 先日9日、恵比寿ガーデンプレイスにて開業したBLUE NOTE PLACEの杮落とし公演となったブルー・ラブ・ビーツのステージ(記事 →「Blue Lab Beats @BLUE NOTE PLACE」)を観賞したが、同所でのブルー・ラブ・ビーツ、INSTnito(インコグニートのヴォーカルレス・インスト・ユニット)、草田一駿に続く、グランドオープンシリーズ第4弾アーティストとしてラインナップされたRoomies(ルーミーズ/ルゥミィズ)のステージへ駆けつけた。ブルー・ラブ・ビーツの時は各45分のステージの間に30分のインターヴァルの2部制だったが、Roomiesの場合は、シングル3作、アルバム1作とそれほど楽曲数が豊富ではないからか、各30分のステージに45分のインターヴァルの2部制に。それでも破格のミュージックフィーで、グッドヴァイブスに酔う空間を堪能させてもらった。

 Roomiesの名前は知っていたものの、楽曲についてはほぼ初見だったゆえ、1日前に慌てて"予習”するような形になったのだが、良いステージを体感出来るだろうという予感はしていた。というのも、残念ながら解散してしまったCICADAのメンバーだった及川創介がRoomiesの中核を担っていたからだ。CICADAでは城戸あき子をヴォーカルにR&Bからヒップホップ、トラップあたりのサウンドを鳴らしていたが、CICADAでもサウンド面の多くを手掛けていたゆえ、少なからず"当たり”には違いないと思っていた。

 そのRoomiesは、2019年に結成。及川をはじめ、フィリピン人歌手の母をもつヴォーカルのKevin、アイルランドでの演奏経験をもつギターの高橋柚一郎(ほんのり越中詩郎っぽさあり)、RHYMESTERやMonday満ちるらのサポートやスキマスイッチのレコーディングに参加するベースの吉川衛、ぜったくんのマニピュレーター/MPCプレイヤーとしてサポートするドラムの小野渚紗、遊助やYogee New Waves、岩崎良美などのサポートやレコーディングに参加するピアノの斎藤渉という6名で構成され、2022年9月には渋谷・WWWにて初となるワンマンライヴを開催。多数の公式プレイリストにセレクトされ、高度な演奏技術が裏打ちされたハイブリッドなトラックで注目を浴びるネオソウル・バンドだ。


 ステージは、2021年12月にリリースした1stアルバム『The Roomies』を中心に構成。バックボーンやルーツは異なるだろうが、スキルフルな演奏力を活かしたバンド・サウンドはさすがの安定感で、そのシンクロ度とともに甘美な薫香をもたらすサウンドスケープが美味。BLUE NOTE PLACEという洒脱な空間に寄り添いながら、甘くとろけるような褐色のムードや腰を揺らせるグルーヴで、フロアを心地よさで包んでいく。

 そのなかでも特に印象深いのは、やはりKevinのヴォーカルワークだ。艶やかなファルセットを挟みながら、ヴェルヴェットのようになめらかでテンダーな声色は、女性陣のハートを虜にするに違いないもの。だが、たとえば、以前一部では"R&B界のナヨ声王子”とも言われた(考えてみると、なんて雑なキャッチフレーズなのかと…苦笑)ロイド(Lloyd)から想起させるような中性的というか、ニュートラルな感じではなくて、歌い口はソフトだがしなやかさが芯に隠れているというイメージだ。それは、マイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』『スリラー』期に醸し出していた雰囲気に近い。

 マイケル・ジャクソン・フォロワーだろうというのは、Kevinのヴォーカルのみならず、作風にもところどころに顔を覗かせている。たとえば、冒頭に披露したメロウ・ミディアム「The End of the Two」でのヴォーカルワークは、優しく寄り添うメロウ・バラードでのマイケル・ジャクソンを想起させ、2曲目の「Smile with Thrill」でのドラミングやギターリフなどからも「ビリー・ジーン」あたりの楽曲を容易に思い起こすことが出来る。同曲のイントロではマーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」と思しきフェイク・ファルセットを放つなど、70年代のいわゆるニューソウルからブラックコンテンポラリーあたりを意識していることは間違いなさそうだ。だが、もちろん、それをそっくりそのままに演じるということはなくて、そのような70年代からブラコンを経て、R&B、ネオソウルへと通じるなかで、いくらか大仰な"油分”をソフィスティケートな音へと塗色して抽出させた、むしろRoomiesならではのセンスで濾過したと言った方がいいか、今の空気や音にも触れさせながらドリップしていくスタイルで、卓抜なグルーヴを生み出していく。アンコールで披露した美メロ・バラード「I'll be there」は、タイトルからしてジャクソン・5「アイル・ビー・ゼア」を想起させるが、心にスッと染み入るようなフックのコーラスや旋律は、"本家”同様にハートウォームな安らぎを与えてくれた。


 2部で披露した、現時点で最新となる3rdシングル「Higher」は、"Take me higher”と歌うフックなどに開放感が溢れていて、なるほどシングルにチョイスするのも納得のキャッチーな作風だが、しっかりとディスコっぽいボトムを忍ばせていたりと、快い黒さを体現。続く「I just fell in love with you」ではモータウン・サウンド風のブギーを走らせた、快活でソウルフルなダンス・グルーヴでフロアを魅了。カブリオレで海岸沿いや夜の高速を走る爽快感とクラブでダンスに没頭するパッションが同居したような享楽的で痛快だった。
 
 しっとりとしながらも夢想的な鍵盤で陶酔へといざなう「Rain」のようなメロウ・ソウル、オーディエンスにクラップを促しながら家族への感謝を歌う「Family」ではジョイフルなヴァイブスが広がるなど、楽曲は緩急豊富で多彩。「Do You remember」は本編ラストに配したのも納得の、胸躍るリズムのなかにそれぞれの音色がカラフルに鮮やかに描き出されるポップネスが白眉なフロアキラーだ。心地よくファルセットを響かせるKevinをはじめ、音楽の愉しさを実感しているメンバーの表情が、オーディエンスの興奮をより高めてくれたように感じた。

 真摯に音楽を探求しながらも、ステージではエンジョイというバランスも妙だが、なによりもヴォーカルにしろ、バンド・サウンドにしろ、ねじ込んだり、刻み付けるようなことはなく、いつのまにかスッと懐に入り込んでくるナチュラルなスタンスで鼓動を高めてくれるのが良かった。実際のパフォーマンスを観る機会は、これまでそう多くなかったと思われるが、2023年の3月4日にはイヴェントを行なうとのこと。こういったバンドが日本の音楽シーンでより注目されることを願いながら、イルミネーションに人が集う恵比寿の街を後にしたのだった。


◇◇◇

<SET LIST>
≪1st Section≫
01 The End of the Two (*R)
02 Smile with Thrill (*R)
03 Do you feel (*R)
04 Not Your Man
05 Runnin' (*R)
06 きみとふたり

≪2nd Section≫
01 Snow 
02 Higher
03 I just fell in love with you (*R)
04 Rain
05 Family (*R)
06 Do You remember (*R)
≪ENCORE≫
07 I'll be there (*R)

(*R):song from album 『The Roomies』


<MEMBER>
Kevin(vo)
吉川衛 / Ei Kikkawa(b)
小野渚紗 / Nagisa Ono(ds)
高橋柚一郎 / Yuichiro Takahashi(g)
斎藤渉 / Wataru Saito(p,key)
及川創介 / Sosuke Oikawa(syn)

◇◇◇



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