投打で圧倒した“陸の王者”が、34年ぶり4回目の優勝を飾る。
昨季はコロナ禍により1952(昭和27)年に始まって以来初めて中止となった全日本大学野球選手権大会が、第70回の記念大会として2年ぶりに開催。6月7日(月)より東京ドームと神宮球場の2会場で熱戦が繰り広げられた。6月13日(日)に神宮球場で行なわれた決勝戦は、慶應義塾大学(東京六大学野球連盟)が福井工業大学(北陸大学野球連盟)を13対2で破って、34年ぶり4回目の大学日本一に輝いた。
10年ぶりに決勝へ進出した慶應と初の決勝戦へ駒を進めた福井工業大学の一戦は、初回から慶應が打力で圧倒。4番正木(4・慶應)のセンターオーヴァーの2ランで先制すると、4回に一死3塁から橋本(典)(4・出雲)の犠飛、二死2・3塁から廣瀬(2・慶應)の3塁内野安打で3点を挙げる。5回には一死1・3塁から再び橋本(典)の犠飛で1点、6回には二死1・2塁から正木のライト前タイムリーと二死1・3塁から北村(3・東筑)のライト前タイムリーで2点、最終回には二死満塁から渡部(遼)(4・桐光学園)のライト前2点タイムリーの後、二死1・3塁から下山(3・慶應)がライトオーヴァーの3ランを放って、大量13点を重ねた。
一方、福井工業大は6点ビハインドの5回裏に、一死1塁から佐藤(4・福工大福井)のタイムリー2塁打と二死3塁から長峯(4・豊橋中央)のレフト前タイムリーで2点を挙げるのがやっと。北海学園大戦は11対3、大阪商業大戦は4対1、名城大戦は17対8と準々決勝までは打ち勝ってきた福井工業大だったが、準決勝の福岡大戦と同様、持ち前の打棒は鳴りを潜めて、2得点のみ。慶應の先発・増居(3・彦根東)を打ち崩せず、7回からは生井(3・慶應)、9回は三者三振で抑えた橋本(達)(3・長田)と継投。東京六大学のレヴェルの高さを見せた形となった。
出場枠が変更された2016年からは中京学院大、立教大、東北福祉大、明治大、そして今回の慶應義塾大が優勝。2016年以前は、東京六大学と東都大学、首都大学が頂点を争う図式が中心だったが、2016年以降は東京六大学とそれぞれ地方大学が決勝へ駒を進めるパターンに。2016年から3年連続で千葉県大学野球連盟(中央学院大、国際武道大)、2019年は京滋大学野球連盟の佛教大学が、そして今年の北陸大学野球連盟の福井工業大があと一歩で優勝を逃している一方で、以前は覇権を争っていた東都大学と首都大学の代表が勝てない状況となっている。東都、首都ともに全日本大学野球選手権初出場となった國學院大學と桜美林大学だが、國學院大は準々決勝でタイブレークの末に敗れ、桜美林大は初戦となる2回戦で上武大に敗れるなど、両連盟は良く言えば実力伯仲に、逆を言えば全国で圧倒するほどの実力がある大学が不在という状態なのかもしれない。
準決勝での慶應義塾大と上武大の一戦は事実上の決勝戦とも言えそうで、一時は逆転満塁弾が飛び出すなど上武大に勝機は十分あったが、送球ミスやエラーなどの細かい部分で“差”を露呈しての逆転負け。それは福井工業大も同様で、そういった僅かな隙を見せると、東京六大学レヴェルを相手になかなか勝ち抜くことは難しい。
慶應は秋季リーグ戦で連覇、さらに明治神宮大会での優勝を目論んでいるだろうが、そこは他の東京六大学5校が黙っていないだろう。秋の明治神宮大会はどのような顔ぶれが揃うかに期待しながら、秋を待ち侘びたい。
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【第70回全日本大学野球選手権記念大会・決勝】
慶應義塾大(東京六大学)vs 福井工業大(北陸大学)
2021年6月13日(日) 明治神宮野球場
試合開始13:04 終了16:05 観衆 5,000人
球審 小出(千葉県大学)/ 塁審 鈴木孝(首都大学)、佐伯(東京六大学)、清水(東都大学)
慶 200 312 005 13
福 000 020 000 2
【バッテリー】
(慶)○増居、生井、橋本達-福井
(福)●南(大)、祝原、立石、谷-御簗、安田
【本塁打】
(慶)正木2号(1回2ラン)、下山1号(9回3ラン)
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【第70回全日本大学野球選手権記念大会・結果】
■6月7日(月)
神宮球場
1回戦 天理大 7-0 石巻専修大
1回戦 上武大 1-0 西日本工大
1回戦 桐蔭横浜大 3-5 国際武道大
東京ドーム
1回戦 沖縄大 0-1 名城大
1回戦 大阪商業大 6-3 東亜大
1回戦 北海学園大 3-11 福井工業大
1回戦 岐阜聖徳大 2-5 富士大
■6月8日(火)
神宮球場
1回戦 関西学院大 6-1 松山大
1回戦 九州産業大 4-5 和歌山大
2回戦 東農大北海 7-6 天理大
東京ドーム
1回戦 福岡大 2-1 広島経済大
1回戦 東北福祉大 5-9 共栄大
2回戦 佛教大 2-4 名城大
■6月9日(水)
神宮球場
2回戦 上武大 4-2 桜美林大
2回戦 国際武道大 4-6 関西学院大
2回戦 和歌山大 2-4 慶應義塾大
東京ドーム
2回戦 大阪商業大 1-4 福井工業大
2回戦 國學院大 4-2 富士大
2回戦 福岡大 5-0 共栄大
■6月10日(木)
神宮球場
準々決勝 東農大北海 3-11 上武大
準々決勝 関西学院大 3-5 慶應義塾大
準々決勝 名城大 8-17 福井工業大
準々決勝 國學院大 1-2 福岡大
■6月12日(土)
神宮球場
準決勝 上武大 6-10 慶應義塾大
準決勝 福井工業大 2-0 福岡大
■6月13日(日)
神宮球場
決勝 慶應義塾大 13-2 福井工業大
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【第70回全日本大学野球選手権記念大会・出場校】
東京農業大学北海道オホーツク(北海道学生野球連盟)2大会連続17回目※
北海学園大学(札幌学生野球連盟)30年ぶり20回目
富士大学(北東北大学野球連盟)3年ぶり14回目
東北福祉大学(仙台六大学野球連盟)5大会連続35回目※
石巻専修大学(南東北大学野球連盟)4年ぶり5回目
国際武道大学(千葉県大学野球連盟)3年ぶり20回目
上武大学(関甲新学生野球連盟)2大会連続17回目※
共栄大学(東京新大学野球連盟)4年ぶり3回目
慶應義塾大学(東京六大学野球連盟)3年ぶり12回目
國學院大學(東都大学野球連盟)初
桜美林大学(首都大学野球連盟)初
桐蔭横浜大学(神奈川大学野球連盟)2大会連続7回目※
名城大学(愛知大学野球連盟)15年ぶり5回目
岐阜聖徳学園大学(東海地区大学野球連盟)19年ぶり3回目
福井工業大学(北陸大学野球連盟)10大会連続43回目※
関西学院大学(関西学生野球連盟)28年ぶり6回目
大阪商業大学(関西六大学野球連盟)4大会連続11回目※
天理大学(阪神大学野球連盟)3年ぶり7回目
和歌山大学(近畿学生野球連盟)4年ぶり2回目
佛教大学(京滋大学野球連盟)2大会連続21回目※
広島経済大学(広島六大学野球連盟)5年ぶり15回目
東亜大学(中国地区大学野球連盟)6年ぶり11回目
松山大学(四国地区大学野球連盟)7年ぶり31回目
福岡大学(九州六大学野球連盟)4大会連続31回目※
九州産業大学(福岡六大学野球連盟)7大会連続21回目※
西日本工業大学(九州地区大学野球連盟 北部)6年ぶり5回目
沖縄大学(九州地区大学野球連盟 南部)初
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