
史上最強アーティスト、ジェームス・ブラウンの激動の人生を描いた映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』を鑑賞。品川プリンスシネマのレイトショーで。
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“史上最強アーティスト、ジェームス・ブラウンの激動の人生を描いた、感動エンターテイメント!!”というキャッチコピーだが、ジェームス・ブラウンともなると、語るに足るエピソードをどのような視点で描くのかによってその印象はかなり違ってくると思う。その意味では、相棒のボビー・バードとの関係を軸として、時折過去をフラッシュバックさせながら描いたのは、多くが納得するストーリー展開になったのではないか。
全てが桁違いだった天才、ジェームス・ブラウンの光と影。そして、彼を支えた親友ボビー・バードとの友情、実母との人間ドラマがサイドストーリーとして描かれ、激しくもドラマティックな人生を歩んでいくジェームス・ブラウンの真実の姿が初めて映画としてベールを脱ぐ-。
というイントロダクションで“親友との友情”というテーマを描いていることが解かっていたゆえ、ラストの展開は多少読めてしまったところもあるが、あまりジェームス・ブラウンを知らない人の方が(いくつか状況が呑み込みづらい場面もなくはないが)感情移入出来る作品といえそう。クライマックスの流れは『ジャージー・ボーイズ』に似ている感じもする。観客に向けて主人公が語りかけるような手法も。
それゆえ、ジェームス・ブラウンを良く知る人やとことんまで深く掘り下げたものを期待していた人にとっては、やや“深く浅く”感じられたのかもしれない。数あるエピソードのうちインパクトの強いものを並べていくので、ジェームス・ブラウン自身の心理に奥深く肉薄するところまでは描き切れていないと思うだろう。ただし、それを多くのエピソードごとにやっていては時間がいくらあっても足りないことは明らかなので、そうなるとどのテーマにフォーカスするかということが大切となってくるが、そのセレクトも難しい。
白人対黒人という図式や貧富格差のある社会で、過酷な環境で育ったジェームス・ブラウンが“生”と“成功”を貪欲に求めてきた姿を可能な限り“詰め込んだ”というところが、観る人の嗜好によって変わってくるのだろう。
個人的には、確かにサラッとエピソードを繋げていった感じがする場面展開もあるが、ジェームス・ブラウンの破天荒さや知られざる苦悩と彼の一番の魅力であるステージングを程よいバランスで配置した良作だと思った。多少、話が掴みづらい場面もあるが、ジェームス・ブラウンの熱いパッションに引きずり込まれて、細かいことは気にしなくなっていく。言ってしまえば、常識外で“ビッグ”ゆえの小心、度量の狭さなどという天才にありがちなキャラクターが音楽やダンスでトップスターへと駆け上がる姿をてらうことなく描き、彼を知らない人たちに対してよい入口を与えたとして評価されるべき作品だと思う。

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個人的に印象的なところをいくつか。
・いきなりトイレとクソの話をしながら銃を天井へ向けてぶっ放す(“イカレタ男”の話の幕開けとしてピッタリ?)
・ミック・ジャガーがプロデュースしたからか、ローリング・ストーンズとの絡みもちゃっかり入れている
・主演のチャドウィック・ボーズマンは話し方などをもの凄く研究したようで驚き
・そのステップを見たら、知らない人はマイケル・ジャクソンが影響を受けたというのもわかるはず
・ライヴ・シーンは必見! 客席からステージからJBを“狙っている”女子たちの視線がスゴイ(笑)
・リトル・リチャードがちゃんと“オネエ”している(笑)
あと、ジル・スコット姉さんが頑張ってました。

「電話したけどなぜ出ない」と問い詰めると「風呂に入ってたから」とごまかそうとしたディーディー・ブラウン(ジル・スコット)に対し、電話を風呂場に投げつけて、「これで風呂に入ってても電話に出られるだろ」と啖呵を切ったJB。すると、ディー・ディーはJBに殴られると思ってベッドに逃げたのかと思いきや、「カモーン! Mr.ダイナマイト」と誘う(なんだよ、痴話げんか後のメイクラヴかよ!)ジル・スコットにゾクゾクしました。(違った意味で)
そんなジル・スコット姉さんのベスト・アルバム『Golden Moments』が6月にリリースされ、8月には新作『Woman』も控えているということなので、楽しみです。というか、早く来日してください。
先ほども言いましたが、『ジャージー・ボーイズ』とか『ドリーム・ガールズ』が良かったと思った人は、見て損はないはずです。
以上です、キャップ。

