お寺を知りたい!

なにげないことや、お寺の日常から行事・仏事マナーまで。
お寺をもっと身近に♪

御布施、お包みのマナー

2018年10月05日 | 仏事
【仏事の小話⑤】
「御布施はいつお渡しすれば良いでしょうか」
と、ご門徒さんからご質問がありましたので、せっかくなので皆さんにご紹介します。



決まりではありませんが、答えを言うなれば、「法要、お勤めの前にお渡しする」のがふさわしいものです。
意外でしたか?

マナー・作法というものは、本質(意味)を知ることで理解がしやすくなります。なぜお勤めの前に渡すものなのかを解説します。


・御布施とは布施(ふせ)の行で「財施(ざいせ)」にあたります。
僧侶に布施をし、僧侶はそれに対して法を説く「法施(ほうせ)」として勤行・法話をします。
僧侶にお経を上げもらったお礼に御布施を渡すのではなく、布施(財施)という行に対して、僧侶がお経を上げるのです。(正しくは法を説く法施です)
ですので、どちらかといえば、法要前にお預けするのがふさわしいといえます。(※状況によっては後になっても差し障りありません。自宅でのお勤めの場合は帰りぎわの方が良いでしょう。)

・丁寧なご家庭では、ご法事の1〜2日前にお寺にご挨拶に来られ(「明日はよろしくお願いします」と)、御布施を事前に預けられるという方もいらっしゃいます。

・また実際には、御布施そのものは僧侶の手に渡るのではなく、阿弥陀さま(寺院)への「お供え」としての意味合いとなりますので、やはりお供えを上げてからお勤めするのがふさわしいでしょう。
ですので、御布施はお寺のご本尊さまへのお供えなのです。お経を上げたことに払う対価ではありませんし、僧侶のために支払う料金という性質のものでもありません。

御布施は阿弥陀さまへのお供えであり、仏法、お寺そのものを次の世代のために護っていくというお心が込められてもいるのです。



※「必ず先に渡しましょう」という話ではなく「なぜそうなのか」というお話です。もちろん後になっても問題ありません。特に自宅でお勤めする際は帰りぎわの方が良いでしょう。
作法というのは、こめられた意味に目を向けることが大切です。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





表書き
御布施の表書きには「御布施」もしくは「御法礼」と書きます。
他にも「御仏前」や「御供」などでも間違いではありません。
厳密にコレという決まりがあるわけではありませんが、慣習的に次のような区別をされることが多いです。(地域により慣習が違うこともあります)

◯施主が法事の時などに渡すお包み →「御布施」か「御法礼」がふさわしいでしょう。お供物の代わりにお包みでお供えする場合には「御供」として別に包むこともあります。
◯参列者 →「御仏前」もしくは「御供」がよろしいでしょう。


※浄土真宗本願寺派では「御霊前」や「お経料」などの表書きはふさわしくありません。(葬儀の際も「御霊前」は用いません!)
※また、お包みには必ず施主自身のお名前を書きましょう。(同じ名字の方も多くいらっしゃいますのでフルネームで。)
※何の法要かを書いてあると間違いがありません。(どなたの法要かなど)


(2020.5月追記: ホームページにて表書きの一例を掲載しておりますので、ホームページより「仏事のあれこれ」→「仏事作法」をご覧ください。)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




御布施の渡し方 一般的な贈答品、ご祝儀などでも応用できるマナーです。
・御布施を渡す際には、「阿弥陀さまへお供えください」と言って預けるようにしましょう。
・本来であればお寺のご本尊さまへ自ら参上しお供えするものを、「僧侶にことづけてお供えしてもらう」という意味合いです。
 僧侶もそれに対して「お預かりして(あなたに代わって)阿弥陀さまへお供え致します」と答えます。
「御布施」に限らず、お菓子や果物、お花などのお供物も同様です。
・また、大切なことは「施主自ら渡す」(お供えする)ということです。施主は当家の代表です。家族や親戚に任せるのではなくできるだけ施主自らお預け下さい。
(御布施やお供えものを住職に預ける際、代わりに親や配偶者に任せているというところも時々見受けられます。いつも他の方から預かると、どなたのお家であったかわからないこともあります)。
・「施主」とは少し違いますが…ご本山 本願寺においても毎朝お仏飯が上供されますが、ご門主さま御出座の際には、ご門主さま自らご本尊にお仏飯を上供されます。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 ※以下、ちょっと難しい話かも…
  興味のある方だけご覧ください(^^;)



【もっと詳しく知りたい方へ】

元来は神仏へのお供えには三方(さんぽう)と呼ばれる供物台が用いられておりました。
本来はお供えものを「手渡しする」ことは無作法、禁忌であるため、参拝者が三方に神仏へのお供えものを乗せてお飾りし、それを神職や僧侶が尊前に三方ごと運んでお上げする、というのが神仏へのお供えの一連の流れであったといわれてます。手渡しすることは、神仏にお供えする品に手を触れるということなのでタブーでした。それほどまでに神仏を敬い、丁寧に接する心が昔の日本人の根底にあったのかもしれません。
手渡しが無作法であるということで、今でも金封に限らず、贈答品などを渡す際にはお盆や袱紗(ふくさ)などが用いられます。



お盆や袱紗(ふくさ)にはいろんな種類のものがあります。3つ紹介します。

①切手盆と袱紗(ふくさ)の組み合わせ。
一般的に丁寧な方法です。
(ちなみにこのお盆の紋は河野家家紋の「折敷に揺れ三文字」です。折敷(おしき)とは三方の上の四角形(八角形)のお盆部分のことです。当山では、仏事、葬儀でも金色の定紋を用いています。)
1、お盆に品(金封)を載せ、ふくさをかけておきます。
※袱紗はアイロンで折り目やシワは伸ばしておきましょう。(↑撮影時には忘れてました笑)
一般的ではありませんが広蓋を用いるのが最も丁寧です。結納の際には今でも広蓋を使うことが多いようです。


2、渡す間際に袱紗を取り、相手に向けてお盆ごと相手に渡します。 ※お盆ごと相手方へ渡すものです。
また、紋が相手の方へ向くように注意しましょう。

3、相手が品を受けとられたらお盆が返ってきますので、ふくさを重ねて持ち帰ります。





②「台付ふくさ」
ふくさとお盆には、このような兼用タイプのものもあります。(台付ふくさと呼ばれているそうです。こちらが一般的かと思います。)
・①と同じように付属の台をお盆に見立ててお渡しすると良いでしょう。
・もしくはふくさを開けずに、そのままふくさごと相手に渡します。(次で解説します)




③「金封ふくさ」
最近よく使われる簡易の「金封ふくさ」?と呼ばれるものを用いた方法も同様ですが、これは金封ふくさそのものを、お盆の兼用にしているものです。
使い勝手の良さから、現在はこの金封ふくさを使う方も増えてますが、あくまでも略式のものですので、あらたまった席ではできるだけ避けましょう。


1、金封を取り出してふくさの上に重ねてから相手の方へ向け、下敷きのふくさごと渡します。
1、もしくはふくさを開けずに、そのままふくさごと相手に渡します。
2、相手が金封を受け取ったら、ふくさが返ってきます。

※小難しい話になりますが…
手を触れないためにお盆に載せているという観点からいえば、②③の場合は本来は「金封ふくさを開けずにそのまま相手に渡す」のがマナーといえますが、状況によっては中身がわかるように上に出してから渡す方が良いかもしれません。「品に直接手を触れない」というのと、「埃よけとしてのふくさ(風呂敷)は取って渡す」というどちらも筋の通ったものですので、どちらがマナー違反とは言えませんので、臨機応変にすると良いでしょう。最近では「ふくさ(風呂敷)ごと渡すのはダメ!」と紹介しているウェブサイトも多いですが、決して間違いでは無いと考えられます。
※余談ですが、お返しのものなどがある場合には、預かったふくさ(お盆)に載せてお返しします。


これらはもともと座敷での作法でしたので、現代のように立ったまま渡す際には臨機応変に対応する場合があります。そもそも立ったまま渡すのは日本では無作法とされていますが、現代では仕方無いかもしれません。
たとえば受け取る側が、略式としてお盆を受け取らずに、上に載っている品(金封)だけを受け取る場合もあります。(立ったままだと預かったお盆を置く場所が無いこともあるため)
また、結婚式で受付にご祝儀を預ける際には、後ろに人も並んで待っているため、簡単に手盆で渡す場合もあるかと思います。金封ふくさで下敷きにする方がスマートかと思います。


作法は、意味を理解すれば、臨機応変に略式にすることができます。
本来は「手渡しは無作法である」ということがわかっていると、どうしてもお盆などが無い場合などに「手盆で失礼ですが…」と一言付け加えるだけで解決します。
しかし、お盆やふくさを用いることを知らなければ、それは単なる無作法となってしまいます。





話が少しそれましたが、お菓子や果物、御布施など、お供えを預ける時には一言、「阿弥陀さまへお供えください」と言って預けるようにしましょう♪

※スーパーのレジ袋ごと供物台に置きざりにしておくのはマナー違反ですのでやめましょう。(差し入れではありません!)
 きちんと袋などから出して供物台に供えるか、住職にひとこと「阿弥陀さまにお供え下さい」と言って預けるようにしましょう(^^)






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



最後に、ちょっと話はそれますが……

金封の色や折り方、袱紗の包み方に慶事用と弔事用とありますが、浄土真宗的には気にする必要はないところです。

御布施の金封の色(水引飾りの色)などを気にされる方が多いですが、何色でも結構です。
黄色や黒が一般的かもしれませんが、浄土真宗的に言えば赤がふさわしいかもしれません。
法事とは仏さまの教えを聞かせていただくご縁です。ありがたいことなのです。
葬儀は悲しみのご縁です。しかし、大事なことに気づかせていただくご縁でもあります。亡き方が仏となってこの私に大切なことを教えてくださるご縁。ですので浄土真宗的にいえば葬儀も赤の水引飾りでいいはずなのです。(実際に赤で包んでいくと大変なことになりかねません…(^^;))
お別れのご縁のなかにこそ、いまの喜びに気づけるご縁がそこにはあります。

あるお坊さんから、御布施とは本来は奉書紙に包み、御布施と表書きをするだけだと教わりました。
そもそもは水引飾りも、熨斗も不要。なので水引の色にもこだわる必要は無い
ということです。


慶事の時と弔事の時の折り方や包み方などは逆になっていることが多いですが、なぜでしょうか。
弔事の時に上下左右などを逆にする理由は、慶事と区別することによって「不幸ごとを繰り返さないように」という意味があるのだそうです。
折り方は下から、上からとか、慶事と弔事には左右を逆さまにするなど、わけもわからずその通りにしても結構ですが、ものごとの本質を見つめることが大切ではないでしょうか。
折り方を変えたところで人はいつか必ず死にます。
左右を逆にしたからといって宝くじが当たるわけではありません。
むしろ宝くじはいつか、当たるかどうかもわかりませんが、人はいつか必ず死にます。




かなしきかなや道俗(どうぞく)
良時吉日(りょうじきちにち)えらばしめ
天神地祇(てんじんじぎ)をあがめつつ
卜占祭祀(ぼくせんさいし)つとめとす

親鸞聖人『正像末和讃』



色や方角、大安や仏滅などの日の良し悪し、毎朝のテレビの占い、様々なものに惑わされ、迷っているのが私たちの姿なのです。
本当に不幸であるのは、そのことに気付いていないこの私の姿ではないでしょうか。



御布施の金封の色の結論ですが、何色でも結構です。
無地のお包みが理想ですがなかなか手に入らないかもしれませんので、一般的には黒や黄色の水引飾りが無難かもしれません。
もし赤の水引飾りであれば、たとえ葬儀の場面であっても私なら「お、この方は浄土真宗のことをよくわかっておられる」と思います(^^)(ただし、他所ではご注意ください)
いずれの場合でも、仏事にはふさわしくありませんのでできれば熨斗(のし)は付いて無いものを選んでください。(熨斗とは右上に付いている飾りのようなものです)



作法も大事ですが、仏法を聞かせていただき我が身をふりかえるご縁こそを大切にしていきましょう(^^)





長々と書いてしまいました…。
難しい話もありましたが、この通りに!ということではありませんので、あくまでも参考までに(^^)



関連リンク
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 彼岸入りにはお花は立てない?? | トップ | 西本願寺へのお参り »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

仏事」カテゴリの最新記事