「もっとも~なもののうちの一つ」という言い方がある。
この表現は「日本はもっとも多く魚を輸入する国のうちのひとつです」という具合いに使われる。
yahooの辞書によると
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もっとも【最も】
[副]《「尤(もつと)も」と同語源》比べてみて程度が他のどれよりもまさることを表す。いちばん。何よりも。「―人口が多い」「―信頼できる」
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「もっとも」とは「一番」という意味である。一番はこの世には一つしか存在しない。ということは「もっとも~なもののうちのひとつ」ということは論理的にあり得ない。上記の例でいえば、「日本はもっとも多く魚を輸入する国のうちのひとつです」とう表現は間違いであり、「日本はもっとも多く魚を輸入する国です」という言い方が論理的に正しいことになる。
しかし、この「もっとも~なもののうちのひとつ」という表現は新聞やテレビ等で多く用いられているものであり、これが論理的に正しくないというのもどうしてなかなか釈然としないものである。おそらくそこにはこの言説を論理的に正しく理解する可能性があるのであって、そのような用法に基づいて巷では用いられているということなのではないだろうか。その「論理的に正しい解釈の可能性」について考えてみたい。
まず、「日本はもっとも多く魚を輸入する国のうちのひとつです」という言い方を論理的に正しく把握する解釈として、「世界には全く同じ量の魚を輸入する国がいくつかあり、かつ、その輸入量が世界一であるという事情が存在しているところ(つまり「同率首位」の国がいくつか存在していて)、日本はそのうちの一つである」というものが考えられる。これなら論理的に間違いは無い。しかし、魚の輸入量が全く同量であるということが生ずる可能性は極めて低く、しかも実際にそのような事情は存在しない。永年にわたり日本の魚の輸入量は世界でダントツの一位である。これは「魚の輸入」に限ったことではなく、世の中には「同率首位が複数個存在している」という状況はあまりない。したがって、このような理解の仕方は成り立たないといってよいだろう。
次に、「世界には魚を輸入する量について、最も多く輸入する国のグループ、二番目に多く輸入する国のグループ、あまり輸入しない国のグループ、全く輸入しない国のグループというようなグループ分けがあって、日本は上記4グループのうち最も多く魚を輸入するグループのうちの一つである」というような意味として把握するということが考えられる。なるほどこれであればわかる。これなら論理的に正しいといえる。しかし、「日本はもっとも多く魚を食する国のうちのひとつです」という言葉にそこまでの意味を込めることは不可能であろう。これは言葉の元の意味からあまりにもかけ離れており、「言葉の解釈」というよりも、「言葉に新しい意味を付与する行為」といった方が正しいだろう。上記のような把握はとうてい受け容れられない。
二つほど論理的に正しい解釈の可能性を検討してみたが、いずれも採用しがたいものであった。はたして「もっとも~なもののうちのひとつ」という表現を論理的に正しく理解する解釈は存在するのだろうか。残念ながら現在の筆者の頭脳もってしてはたどり着けなかった。
この「もっとも~なもののうちのひとつ」という表現は、私にとってもっとも悩ましいもののうちのひとつでありつづけている。
この表現は「日本はもっとも多く魚を輸入する国のうちのひとつです」という具合いに使われる。
yahooの辞書によると
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もっとも【最も】
[副]《「尤(もつと)も」と同語源》比べてみて程度が他のどれよりもまさることを表す。いちばん。何よりも。「―人口が多い」「―信頼できる」
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「もっとも」とは「一番」という意味である。一番はこの世には一つしか存在しない。ということは「もっとも~なもののうちのひとつ」ということは論理的にあり得ない。上記の例でいえば、「日本はもっとも多く魚を輸入する国のうちのひとつです」とう表現は間違いであり、「日本はもっとも多く魚を輸入する国です」という言い方が論理的に正しいことになる。
しかし、この「もっとも~なもののうちのひとつ」という表現は新聞やテレビ等で多く用いられているものであり、これが論理的に正しくないというのもどうしてなかなか釈然としないものである。おそらくそこにはこの言説を論理的に正しく理解する可能性があるのであって、そのような用法に基づいて巷では用いられているということなのではないだろうか。その「論理的に正しい解釈の可能性」について考えてみたい。
まず、「日本はもっとも多く魚を輸入する国のうちのひとつです」という言い方を論理的に正しく把握する解釈として、「世界には全く同じ量の魚を輸入する国がいくつかあり、かつ、その輸入量が世界一であるという事情が存在しているところ(つまり「同率首位」の国がいくつか存在していて)、日本はそのうちの一つである」というものが考えられる。これなら論理的に間違いは無い。しかし、魚の輸入量が全く同量であるということが生ずる可能性は極めて低く、しかも実際にそのような事情は存在しない。永年にわたり日本の魚の輸入量は世界でダントツの一位である。これは「魚の輸入」に限ったことではなく、世の中には「同率首位が複数個存在している」という状況はあまりない。したがって、このような理解の仕方は成り立たないといってよいだろう。
次に、「世界には魚を輸入する量について、最も多く輸入する国のグループ、二番目に多く輸入する国のグループ、あまり輸入しない国のグループ、全く輸入しない国のグループというようなグループ分けがあって、日本は上記4グループのうち最も多く魚を輸入するグループのうちの一つである」というような意味として把握するということが考えられる。なるほどこれであればわかる。これなら論理的に正しいといえる。しかし、「日本はもっとも多く魚を食する国のうちのひとつです」という言葉にそこまでの意味を込めることは不可能であろう。これは言葉の元の意味からあまりにもかけ離れており、「言葉の解釈」というよりも、「言葉に新しい意味を付与する行為」といった方が正しいだろう。上記のような把握はとうてい受け容れられない。
二つほど論理的に正しい解釈の可能性を検討してみたが、いずれも採用しがたいものであった。はたして「もっとも~なもののうちのひとつ」という表現を論理的に正しく理解する解釈は存在するのだろうか。残念ながら現在の筆者の頭脳もってしてはたどり着けなかった。
この「もっとも~なもののうちのひとつ」という表現は、私にとってもっとも悩ましいもののうちのひとつでありつづけている。