「イバンカ」ブランドの一人負け、数字が裏付け
米百貨店大手の内部資料
米百貨店大手のノードストロームでは、昨年の大統領選挙にかけてトランプ氏の娘イバンカさんが立ち上げたファッションブランド「イバンカ・トランプ」の売上高が大きく落ち込んだことが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した同社の内部資料で明らかになった。
それによると、不買運動が盛り上がる中、「イバンカ・トランプ」ブランドの靴・衣料品の売上高は昨年10月の第2週、第3週、第4週に前年同期比で70%余り減少した。それ以降は落ち込みがやや和らいだが、1月は前年同月比26%減だった。2017年1月期全体では32%減少した。ノードストロームはこの資料を開示しておらず、コメントは差し控えた。
ノードストロームがその後、同ブランドの取り扱い中止を決定したことを受け、ソーシャルメディア(SNS)では論争が巻き起こり、ドナルド・トランプ大統領と大統領上級顧問はすぐさまイバンカ氏を援護射撃。8日にはトランプ氏がツイッターで「娘のイバンカはノードストロームに大変不当な扱いを受けている」とかみついた。
ノードストロームは、取り扱い中止は売り上げ実績に基づく判断であり、政治的なものではないと強調している。同社の広報担当者は8日、「(イバンカ・トランプ)ブランドの売上高は昨年、特に後半に減少の一途をたどり、ビジネスとして成り立たない水準まで落ち込んだ」と説明した。
イバンカ・トランプの広報担当者はコメント要請に応じなかった。同担当者は以前、ブランド全体の売上高が16年に21%増加したとしていたが、それ以上の詳細は明かさなかった。同ブランドはノードストローム以外にも、ブルーミングデールズやロード・アンド・テイラー(L&T)などの百貨店で販売している。
WSJが確認した資料によると、ノードストロームではイバンカ・トランプの靴・衣料品売上高が17年1月期通期に1430万ドルとなり、前年の2090万ドルから減少。売り上げは52週のうち45週で減少した。
一方、ノードストロームの総売上高は8-10月期(第3四半期、10月29日まで)に7.2%増加し、第1〜3四半期では3%増だった。
大統領上級顧問のケリーアン・コンウェイ氏は9日、ホワイトハウスからテレビ放映されたインタビューで、「イバンカの商品を買いに行って欲しい」と国民に訴えた。この発言は、行政機関の職員に商品の販促を禁じる倫理規定に違反している恐れがある。
下院監視委員会の共和・民主両党指導部は9日、コンウェイ氏の発言は商品の宣伝に政府の立場を利用することを巡り「極めて深刻な懸念をもたらした」との見解を示した。ショーン・スパイサー大統領報道官は9日、コンウェイ氏は「この問題について忠告を受けた。それ以上言うことはない」と述べた。
反トランプ派の団体「グラブ・ユア・ウォレット」は、トランプ氏の関連商品を販売する企業への不買運動を呼び掛けており、対象企業のリストにはノードストロームの名前も挙がっていた。
イバンカ氏は先月、父親の大統領就任に伴い、一族の企業「トランプ・オーガニゼーション」を休職し、自身のブランドからも手を引いた。現在はいずれの会社の経営・業務にも関与していないが、所有権は維持している。