秩父観音巡りも終盤。4回目の一泊二日で三十一番から三十三番を
巡り、結願へリーチとなった。二日目、一気に結願も可能だったが、
「楽しみは後で」とした。
まずは今回の最初の観音様、三十一番の「観音院」への行程である。
西武秩父駅から小鹿野行の路線バスの終点、栗尾がスタート。2.7Km
で比高120メートルを上る一貫した坂道である。
バス停近くの小さな祠に毘沙門天などを従えた小さな十一面観音像が
置かれる。諸般の事情でここで参拝という人のため、あるいはここ以降
の山中は女人禁制だった可能性もある。
坂道の途中の猟師小屋と狩人駐車場。ホンマかいなと思って通り過ぎ
ると後ろで車が停まり、中から2匹か3匹の猟犬の鳴き声が聞こえる。
心中察しられたかと思うタイミングである。
1キロほど上ったところに「たらちね観音(宝珠院)」。ここは帰り
に余裕があったら寄ろう。「たらちね」は信濃の枕詞である。宝珠院で
法事であろうか、礼服姿の同年配二人が何やら立ち話。
中間点を過ぎ、日陰の山道になると一気に冷えて来る。上着を脱ぐ
タイミングを失して正解。やがて大きなそば屋「観音そば」。ここも
帰りの昼食候補である。
その先が水子地蔵寺。山肌一杯の地蔵の数に圧倒される。その数は、
一万四千余体という。右手の地蔵寺にもたくさんの地蔵が並ぶ。
一段と急坂となり数十メートルの隧道を抜けると観音院まであと
わずか。ちょうど10時、山門に着く。日本一大きいという「石」の
仁王様が迎えてくれる。
一休みして約三百段という石段登りである。二十六番円融寺の奥の院、
岩井堂は真っすぐな三百段だったが、ここ観音院は九十九折の三百段。
先が見えない分、余計に疲れる感じである。
いよいよラストだろう
見えたのは岩肌食い込まんばかりの観音院。見事な宝形屋根。
疲れも飛ぶというのはこのことだろう。上からの滝を受ける池の
畔に不動明王が立つ。
観音堂の裏にまわり岩の中の諸仏を眺める。奥の院は閉鎖中とのこと
だが、それは西の奥の院のこと。東の奥の院は上れたらしいが見逃した、
というより行き逃した。ま、疲れた足は喜んだはずである。
石段を慎重に下り来た坂を引き返す。まずは「観音そば」の昼食だが、
往きとは打って変わって駐車場が一杯。新蕎麦が出て来るまでの二十分、
一本では足らず地酒を二本も飲む羽目に。
それでも帰りのバスまで余裕があり「たらちね観音」にも寄る。
やや顔を傾け、慈愛に満ちた表情と豊かな胸の観音様にウットリで
ある。
栗尾のバス停まで先に降りていた若いカップルと話しながら小鹿野
の街へ向かうバスを待つ。徒歩の巡礼はこのカップルと中高年夫婦の
二組だけ。
次回は小鹿野の街と三十二番法性寺の紹介である。