昨日に続いて、NHK朝ドラ「舞いあがれ!」の脚本を書いた
桑原亮子の歌集から。昨日の朝日「折々のことば」で鷲田清一が
取り上げた歌である。
縫いしものに針の残りてをらぬこと
確かむるごとメールを見返す
桑原亮子
会社時代、ある工場の設備のテーマが大幅に遅延するという
トラブルが発生した。調べると、工場の担当者と我が社のエンジ
ニアの間の感情的なシコリが原因だった。
要望や回答など、何と「全て」メールのやりとりだったという。
要望の真意、それに応える難しさなど直接顔を合わせて遣り取り
すれば妥協点があったかも知れない。
メールだけの遣り取りは、一字一句で両者の齟齬をどんどんと
深めてしまった。しかし、解決策は簡単。二、三度顔を合わせて
打ち合わせさせると妥協点が見つかり丸く納まった。
縫い上がった布に残った針を探すようにメールの文言の棘(トゲ)
を探る。言葉足らずで人を傷つけていまいかと。いい歌であるし、
心がチクリとする歌である。
昨日の早朝散歩、川霧と日の出