「最近の邦画は…」みたいなおっさんくさいことを若いスタッフに言うと、「『それでもボクはやってない』のような、社会性が高い映画をまだ作れる環境にあることは、誉めてもいいでしょう」と、諭された。
その通りだ、と思った。
この映画のシナリオと、自作解説、「日本の刑事裁判はどうなっているのか」という対談をまとめた本が、『それでもボクはやてない 日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!』(周防正行・著/幻冬社)だ。
よくできた、オモシロイ本だ。
シナリオは、「決定稿」の段階でカットされた「欠番」、編集作業でカットされた「オミット」など、作業を進めるうちにどのように変化したのかがわかる。さらに、自作解説によって、なぜ変更になたのかが、仔細に述べられている。
そしてまた、面白いのが対談だ。対談相手は『刑事裁判の心』(法律文化社)の著者で、元裁判官の木谷明さん。周防産さんいわく、著書の中に書かれていた「刑事裁判の最大の使命は、無実の人を罰してはならないということです」という言葉が、なかなかまとまらなかった映画のシナリオをまとめるきっかけになったとのことだ。
対談の中では、周防さんが映画製作にあたって取材を重ねた上で、裁判に対する疑問点を木谷さんにぶつけたり、そして木谷さんが映画の中で、司法上、これはおかしいと思った点をぶつけるなど、のんびりした対談の雰囲気の中、意外とスリリングなものだった。
さて、いい言葉だ。木谷さんの著書の言葉も、いい言葉だが、もっとも気に入ったのは、周防さんが木谷さんに無罪判決を言い渡した時の気持ちを聞いたところである。
「うれしい」という言葉を連発している。無罪の人が「ありがとうございました」と述べたり弁護人や家族が喜んだり…検察側が控訴を断念したり。そんな時「単純にうれしい」のだそうだ。
以前、障害者を支援する人を取材した際、型どおりの質問をした後に、「なぜこんなに大変な仕事をされるのですか?」と聞いたら、「うれしい」という言葉が返ってきた。「困っている人を助けて感謝されたら、うれしいだろう?」と言われ、次の質問が出てこなかった。
若い頃、つまらない商品紹介のビデオ制作をした。そのビデオが完成し試写をしたところ、クライアントから「良いものを作ってもらってありがとうございました」と言われた。「つまらないビデオ制作だ」と思って作ってしまった自分を恥じた。そして単純に感謝されたことが、うれしかった。
「うれしい」という感情を表に出す機会はなかなかない。どちらかといえば、内なるところでボワッと燃える気持ちで、他人から見れば察することも難しいだろう。
しかし何よりも、人を動かすのは「うれしい」という感情のように思う。「うれしい」という言葉を引き出した周防さんのこの本は、名著だ。そして自分も「うれしい」と言う言葉を拾えるような仕事をしたいと思う。
その通りだ、と思った。
この映画のシナリオと、自作解説、「日本の刑事裁判はどうなっているのか」という対談をまとめた本が、『それでもボクはやてない 日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!』(周防正行・著/幻冬社)だ。
よくできた、オモシロイ本だ。
シナリオは、「決定稿」の段階でカットされた「欠番」、編集作業でカットされた「オミット」など、作業を進めるうちにどのように変化したのかがわかる。さらに、自作解説によって、なぜ変更になたのかが、仔細に述べられている。
そしてまた、面白いのが対談だ。対談相手は『刑事裁判の心』(法律文化社)の著者で、元裁判官の木谷明さん。周防産さんいわく、著書の中に書かれていた「刑事裁判の最大の使命は、無実の人を罰してはならないということです」という言葉が、なかなかまとまらなかった映画のシナリオをまとめるきっかけになったとのことだ。
対談の中では、周防さんが映画製作にあたって取材を重ねた上で、裁判に対する疑問点を木谷さんにぶつけたり、そして木谷さんが映画の中で、司法上、これはおかしいと思った点をぶつけるなど、のんびりした対談の雰囲気の中、意外とスリリングなものだった。
さて、いい言葉だ。木谷さんの著書の言葉も、いい言葉だが、もっとも気に入ったのは、周防さんが木谷さんに無罪判決を言い渡した時の気持ちを聞いたところである。
「うれしい」という言葉を連発している。無罪の人が「ありがとうございました」と述べたり弁護人や家族が喜んだり…検察側が控訴を断念したり。そんな時「単純にうれしい」のだそうだ。
以前、障害者を支援する人を取材した際、型どおりの質問をした後に、「なぜこんなに大変な仕事をされるのですか?」と聞いたら、「うれしい」という言葉が返ってきた。「困っている人を助けて感謝されたら、うれしいだろう?」と言われ、次の質問が出てこなかった。
若い頃、つまらない商品紹介のビデオ制作をした。そのビデオが完成し試写をしたところ、クライアントから「良いものを作ってもらってありがとうございました」と言われた。「つまらないビデオ制作だ」と思って作ってしまった自分を恥じた。そして単純に感謝されたことが、うれしかった。
「うれしい」という感情を表に出す機会はなかなかない。どちらかといえば、内なるところでボワッと燃える気持ちで、他人から見れば察することも難しいだろう。
しかし何よりも、人を動かすのは「うれしい」という感情のように思う。「うれしい」という言葉を引き出した周防さんのこの本は、名著だ。そして自分も「うれしい」と言う言葉を拾えるような仕事をしたいと思う。