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『EMOTIONS』会田法行

2007-05-29 13:15:50 | 写真
 先日、日比谷で開催された会田法行さんの写真展で展示されていたガザを取材した作品は、騒がしいものや動いているものが止まっている瞬間を捉えていて、ハッとなった。
 銃を構えた民兵たちが、何もすることがなく壁に一列にブラブラともたれかかって立っている写真は、動きばかりか、思考から何から何まで止まってしまっているようで、そこがガザであることを忘れて、滑稽な笑いを浮かべてしまいそうだった。
 2004年に開かれた写真展で発表されていた、バグダットを取材した写真は、その逆で、眠っている子さえも、寝息が聞こえてきそうで、動き出さんばかりの写真がうごめいていた。こちらもその動きについていくように、落ち着きを欠きながら写真を見た記憶がある。
 危険なガザへ何度も足を運ぶのは、変化を記録したいから、という会田さんだが、僕の目には、会田さんの写真の変化が、楽しみである。

 2004年の写真展で「(バグダットより)ガザは100倍恐い」と、言っていたその場所を取材した今回の写真展。恐ろしさのその後をお聞きしたら、「もっと悪くなっています」とのことだった。
 以前であればイスラエルから飛んでくる弾にさえ気を付けていればよかったが、今はファタハ、ハマスと、どこから弾が飛んでくるかわからない状態。悲劇的と感じたのは、兄弟がファタハとハマスにわかれ、戦闘で撃ち合いになる状況だ。
 会田さんは、今後のパレスチナ復興を考えるとき、この子供たちの現在の影響が心配だと言っていた。

 「高いなぁ~この写真集」と、不意に訪れた会田さんの妹が発したこのガザ取材をまとめた写真集『EMOTIONS』は、新風舎より発売中。高くはありません。
 それよりも、妹さんが呟いた「相変わらず、いい写真撮るなぁ~」という言葉が、最高の誉め言葉で、代えがたい宣伝文句。妙に心に残っている。