私が子供の頃は、田舎に住んでいましたので娯楽といえばラジオと
映画とお芝居と巡回してくるサーカスぐらいしかありませんでした。
(子供には紙芝居)
その時代(まだ終戦したばかりの社会)に突如として現れた少女歌手が
”美空ひばり”なのです。名前からして異質です。それまでの少女歌手
たちは本名か、それに近い芸名でデビューしており、童謡を歌ってい
ました。
そして大人っぽい歌をバンバン歌い出したのです。われわれ子供には
新鮮に感じられましたが、大人たちには衝撃が走ったでしょう。
(私の祖母などはたちまちファンになり、ひばりさんの出演する映画
を観に、街の映画館に連れて行ってくれました。)
他の少女歌手たちが歌う童謡は、もはや古典になりました。
私もひばりさんの独特な”ひばり節”(と勝手に名付けてしまいました
が)の虜になってしまいました。
大人になってから、”ひばり節”の魅力について考えてみますと、歌
詞を普通に楽譜通りに歌っているようには聞こえないんです。
なんかお芝居をやっているように聞こえるんです。
これはきっと、ひばりさんが子供の頃から映画にたくさん出演して
いたからお芝居の体質が身についてしまっているからなのかなと、
これも勝手に解釈しております。
例えば、ひとつの歌詞のなかでも甘ったれた少女っぽい歌い方をし
た後にドスの効いたような声になったりと変化に富んでいて、聴い
ているひとはお芝居のなかに引きずり込まれてしまうのです。
ここが他の歌手と違うなあとつくづく思いました。