人脈生かし国と交渉=官房長官と電話
岩国市長当選の福田氏
2008年2月11日(月)13:00
山口県岩国市長選に初当選した前衆院議員の福田良彦氏は11日、市内で記者会見し、「市民が未来を思って支援の輪を広げた結果」と接戦を制した感想を語った。凍結中の新市庁舎建設補助金や基地問題などについては「今までの人脈でできる範囲で国と交渉していきたい」とし、早期に上京する意向を示した。
福田氏によると、10日深夜に寺田稔防衛政務官が選挙事務所に駆け付けた。町村信孝官房長官からは当選を祝福する電話があり、「市民の立場で国に物申したい」と要望したところ、町村官房長官から「いつでも交渉に応じる」と快諾を得たと話した。
[時事通信社]
米軍機移転容認へ
井原氏を小差で破る
出直し市長選
岩国市長に福田氏
2008年2月11日(月)17:10
前市長辞職に伴い、米空母艦載機移転の是非が最大の争点となった山口県岩国市長選は10日投票、即日開票の結果、無所属新人で移転賛成の前自民党衆院議員、福田良彦氏(37)が1700票余りの小差で、無所属で移転反対の前市長井原勝介氏(57)の再選を阻み、初当選を果たした。投票率は76、26%で前回を11、17ポイント上回った。
福田氏は移転問題への今後の対応について「騒音や治安対策を国と具体的に交渉する。安心安全を確保し、有利な交付金を引き出す」と述べ、艦載機移転に向けて政府と協議する意向を示した。
岩国市民は2006年3月の住民投票、同年4月の前回市長選で示した「移転反対」の意思を180度転換した形。
岩国基地への艦載機移転は、懸案だった地元同意取り付けに向け動きだす見通しとなったが、反対の井原氏との差はわずかで、福田氏は慎重なかじとりを迫られそうだ。
政府は在日米軍再編に弾みをつけたい考えで、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の同県名護市への移転計画にも影響を与えそうだ。
一方、福田氏は、艦載機受け入れに見合うだけの、具体的な地域活性化策取りまとめが当面の課題となる。
福田、井原両氏とも政党の正式な推薦や支持は求めなかったが、安全保障にかかわる国政上のテーマが争点となったため、与党が福田氏を、野党が井原氏を、それぞれ推す実質的な与野党対決の構図となった。
福田氏は「再編に協力する」立場で、米軍再編交付金による地域活性化を図ると強調。自民、公明両党の地方議員が着実に組織票を固めた。井原氏は「国の一方的な進め方から岩国を守る」と訴えたが及ばなかった。
福田氏辞職による衆院山口2区補欠選挙は4月に実施される。
■混迷する市政の打開託す
【解説】米空母艦載機の移転問題が争点となった山口県岩国市長選。民意は国との深まった溝を埋めるべく「柔軟姿勢」の福田良彦氏を選択した。反対が約9割を占めた住民投票を盾にした井原勝介前市長と、容認派が過半数の市議会との対立で市政は混迷し、国が補助金を”人質”に容認を迫る中、有権者は新人の福田氏に事態打開を託したといえる。
今後の焦点は、移転をめぐる福田氏と国の交渉に移る。在日米軍再編に伴う艦載機移転で岩国基地の米軍機は120機に倍増し、朝鮮半島をにらむ極東最大規模の航空基地となる。福田氏は騒音の軽減や基地の安全強化に向け国と粘り強く交渉し、容認派だけでなく、市長選でほぼ半数を占めた反対派も説得できる”安心の保証”を取り付けることが急務になる。
実際「滑走路が沖合移設されても騒音は激しくなるのでは」と市民の懸念は募り、福田氏の支援者らも「移転は基本的に反対」と口をそろえる。今回の市長選で示された民意は単純に「容認」では割り切れない。
新市長の肩には行財政改革や移転問題で2分された地域社会の修復、合併前の旧郡部の過疎化対策などが重くのしかかる。「基地補助金で潤うのは一部の人だけ」と揶揄(やゆ)する声をぬぐい去るためにも、ハード整備優先とは違う発想の地域振興案も必要だ。
一方、再編の押し付けで岩国市の混乱を招いた国には真摯(しんし)な反省が求められる。艦載機移転を止める権限は市長にはなく、国は”独断”で推進できるが、三位一体改革で財源不足にあえぐ地方自治体の弱みにつけこむ「アメとムチ」政策を見直し、地元の声に耳を傾けるべきだ。
(北九州支社・古長寛人、地域報道センター・稲葉光昭)
=2008/02/11付 西日本新聞朝刊=
若いリーダーに岩国託す
2008年2月11日(月)11:00
米空母艦載機の岩国移転をめぐる混迷の末、岩国市民は若きリーダーに未来を託した―。10日投開票された岩国市の出直し市長選は、無所属新人で自民党前衆院議員の福田良彦さん(37)が、無所属で前市長の井原勝介さん(57)を抑えて初当選した。「市民党」を掲げ、財政や生活面の課題を前面に出し支持を急速に広げた。新市長は、移転問題への市民の不安を解消し、「岩国再生」を実現できるかの真価を問われる。
「岩国を変える。対立をなくして市民を一つにしたい」。午後11時、福田さんは岩国市南岩国町の事務所に現れ、ステージに立ってガッツポーズ。支持者らと握手した。妻朋江さん(36)や同級生らに囲まれて万歳。目に涙を浮かべ、「皆さんのおかげです」と頭を下げた。
選挙戦を通じて、「最大のテーマは、日々の生活の問題だ」と訴え、厳しい市財政の立て直しにも自信を見せた。3人の子どもを持つ父親として、小中学校耐震化の5年以内での完了や小学生までの医療費無料化といった子育て支援策を前面に。ほかにも旧町村部の振興や民間空港再開の早期実現も「公約」に挙げ、若い世代を中心に支持をつかんでいった。
移転問題は、国から財政支援を引き出す容認の方向だが、「騒音、治安問題でまず住民の不安を解消する。国の言いなりにはならない」などと条件を提示した。
わずか9年間で市議、県議、国会議員から市長へと劇的に転身。「ふるさとを愛する」という信念とともに、若さと勝負強さに、有権者の思いが重なった。