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硫黄島からの手紙

2006年12月13日 23時49分17秒 | 映画 あ行
評価:★★★★


この映画は「父親たちの星条旗」と違って政治色が一切無いです。音楽も担当した監督のクリント・イーストウッドはジャズ愛好家である。でも、ここで流れる音楽は何処かマカロニ・ウエスタン調に聴こえたのは・・・気のせいだね(笑)

硫黄島に新しく着任してきた『栗林忠道陸軍中将』の人間性を軸に、その下で共に戦ったバロン西陸軍中佐(伊原剛志)、西郷一兵卒(ジャニーズ・二宮和也)清水元憲兵(加瀬亮)たちの人間ドラマである。

ハリウッド映画が日本人を描くと、大半は可笑しな表現になっていたものですが、クリント・イーストウッドは日本人から見ても、まったく違和感のない見事な日本人たちを描いてくれました。

この映画は、どのシーンに於いても淡々としていて全体的にドライな印象で、色調もギリギリのところまで落としていたことで、殺伐とした島の雰囲気が伝わり戦争の記録映像を観ているような印象を受けた。

栗林総指揮官が妻や子供に宛てた絵手紙を書きながら回想するシーンだけ艶やかな色調に蘇るのである。撮影はトム・スターンが担当。「父親たちの星条旗」のときもインタビュアーの存在自体を見せず、映画の進行と合わせ徐々に姿を明らかにさせていくテクニック。また、それに加え超スローでのズームインの多用などが、ココ十数年来のイーストウッド作品の特徴のような気がしました。

硫黄島守備隊として栗林陸軍中将の戦略は精神主義の古参司令官たち(主に海軍中将や中尉ら)の猛反発を買う。現に伊藤中尉(海軍の中村獅童)が吐く台詞がよく表している。陸軍と海軍は仲が悪かったと言われていたのを垣間見た感じだ。

実は現代でも海上自衛隊VS海上保安庁=「男たちの大和/YAMATO」と「LIMIT OF LOVE 海猿」という具合にミーハー族の流れが原因(?)で犬猿の仲になったという噂も耳にします(^_^;)

この時代の彼の考えは常識を超越していたことが非常に興味深かったです。“死は名誉なり”は許さない!とにかく死ぬな!これが新指揮官の根本の思想であった。しかし、戦況悪化に伴い各指揮官たちの度重なる自決のために、栗林の“相手の裏をかく”ゲリラ的とも言える作戦が全うされなかったことが観ていて非常に歯がゆく残念な思いで仕方がなかった。

全長18キロにも及ぶ地下陣地はよく作ったものだと感心しました。例のあの星条旗を北側に移した指令本部から見た栗林以下日本守備隊にとっても擂鉢山の陥落という風に見えてしまった。だが実際にはそうでもなかったことが分かりました。これは伝令の不備がそう思わせたということですね。

この映画は「父親たちの星条旗」の戦闘シーンの使いまわしをするのかという疑念もあったのですが、そういうこともなく、新規に作られた戦闘シーンとなっていたことが嬉しかったです。



ただ、今回の方が可也少なかったので、それを期待して観に行った人(自分も含めて)は少々肩透かしぎみではなかったかな(笑)

妻子を想い絶対に逃げ延びたいばかりで、現場ではまるで役立たずの感があった西郷だったが、ラストで米兵の腰に挿してある栗林のコルト45を見た途端、シャベル1本で立ち向かっていくところは涙が止まりませんでした。



西郷にとって栗林総指揮官は、この戦争で初めて命を捧げてもいい位の上官であったということです。


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監督:クリント・イーストウッド
脚本:アイリス・ヤマシタ
撮影:トム・スターン
音楽:クリント・イーストウッド

出演:渡辺謙/二宮和也/伊原剛志/加瀬亮/中村獅童/裕木奈江


『硫黄島からの手紙』オフィシャル・サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/





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