ひできの八ヶ岳ブログ

未来に残したいリジェネラティブな社会づくりを考える

変化していく社会、開けゆく未来

2009年04月28日 12時40分17秒 | 共生社会の姿を求めて・・・

ちょっと気になるニュースがありました。

午前中のニュースで、クライスラー社と全米自動車労組(UAW)との間で、クライスラー社が経営再建に成功した場合には、全米自動車労組が同社の株式の55%を取得して筆頭株主になり、取締役も派遣するという労働協約に基本的に合意したと報道されました。これは、クライスラーが、退職者の医療保険制度を維持するための全米自動車労組の基金に対して支払い義務を負っている106億ドル(約1兆円)の半分以上を株式の現物支払いのかたちで行う結果です。

多くの方は、クライスラーも大変なことになったなと思われるかもしれませんが、私としては、現実が未来の姿に変容する過程を見ているようで、何だかわくわくするニュースです。

先日のThe e4 Declarationの中にも、将来は、あかの他人が会社を所有し、当事者でない人が会社を管理する形から脱却し、当事者や関係者がその組織の決定権をもち、運営していく形にシフトしていくことが書かれています。
ちょっとその文章を引用します。

4月15日のThe e4 Declarationの8つの理念より、
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
⑤from ownership to stewardship
 ~オーナーシップからスチュワードシップへ
(所有権制度から受託活用制度へ)

過去2000年にわたった、いわゆる「所有権」に固執した考え方から離脱しようというものです。この「所有する」という考え方は、古代からあったものではなく、人類の歴史からすると比較的新しい概念です。しかし、その概念が広まってからというものの、それは不安、争い、権力の横暴、貧困、不平等、奴隷化などを引き起こした諸悪の根源の一つとなっています。ただし、現時点では、所有権というものが経済活動のインセンティブになっているところも多いことから、一気に止めることはできません。従って、小さい規模での事業や起業においては、個人の所有や共同所有を認める必要があるかもしれません。しかし、規模の大きなもの(特に一定規模以上の法人、自然資本の利用など)については、一部の人に権利や富が集中しない組合管理制度、或いは、受託活用制度に移行するのが望ましいということです。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

もう一つ、
4月17日のGlimpses of the futureの記事より
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
(Ⅲ)Governance ~ 自治、行政、企業

これからの社会は、そこに住んでいる住民自身が、自分たちの地域のことを知り、大事なことを決定し、実行していくことが大切です。これは地方のレベル、国家レベル、国際レベルでも同じことが言えます。権限を持った一部の人、或いは、外部の人が、他人の地域や組織を管理するということは、すでに過去の古い形態と考えてよいでしょう。真の民主主義の実現が求められます。

1)権限委譲を推進して、出来る限り当事者に責任と判断を任せます。これは地方自治に関しても、企業などの組織に関しても同じことが言えます。
( 中略 )
4)株主の権利より従業員、顧客、取引先、地域社会の権利を強めます。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

クライスラー社は、これまで資本家が所有していた会社ですが、今回の合意で、それが当事者である労働者に手渡される可能性がでてきました。当事者(従業員、顧客、取引先、地域社会)が、自分たちの生活に必要な会社や組織を自分たちで所有することは、今後ますます増えてくると思います。

それは、より健全なで安定した企業統治であり、
経済社会の構造がエコロジカルなものに近づく、
大事な一歩になるはずです。

【シリーズ】新しい社会の基本がわかる その3

2009年04月28日 08時55分27秒 | 【シリーズ】新しい社会の基本がわかる
人間社会で自己組織が起こる条件

その2では、自然界の自己組織化について、
それが新しい社会の一つの基本になる可能性について書きました。

それが人間社会において起こりえるのかどうか、
起こるとしたらその条件とは何かということが、
今回のテーマです。
自己組織化の本質は「協調」にあります。
今回のテーマを、
“協調的組織”作りのための条件、
と言い換えることも可能です。

ただし、ここで一つおことわりしておきますが、
人間社会にも自己組織化が・・・
といっても、学問の世界でいう厳密な意味での、
決定論的な自己組織化が起こるかということを、
述べているわけではありません。
生物の世界で起こっている自己組織化をメタファーとして、そのメリットが活かされる組織づくりが可能かどうかと言うことです。

やや長文ですので、お暇なときに、
ゆっくりとお読みください。

この条件を抽出した基本となっているのは、
自分の大学院時代の“協調”についての研究
The Self-organized Community Emerged from Individual Cooperation
が中心となっていますが、
その他に、発想の原点となったのは、
H.マチュラナとF.バレーラの
オートポイエーシス(自己生成)理論。
ブライアン・グッドウィンの、
構造主義から複雑系生物学にいたる諸研究。
そして、発想の裏打ちをしてくれたのが
デビッド・ボームとデビッド・ピートらによる
Dialogueの研究です。

その他に参考にしたのは、
従来からの創造的組織論の諸研究、
パトリシア・ショウらの複雑系組織の研究、
フリチョフ・カプラが解説してくれたシステムセオリー、
Cooperative Inquiryの研究などがあります。

今の段階では11の条件にまとめています。
今後、追加されたり、整理整頓されたりする可能性がありますが、
今日は、さらりとそれらをご紹介しておきます。
きっと、少なからず日々の職場などで使えると思います。

1.情報の共有

参加者としての人々は必ず、話し合う内容や共に行動を起こすために最低限必要な情報を共有する必要が必須です。決して参加者同士の間に情報の偏りがあってはいけません。

2.公平な立場で参加すること

そのコミュニティーに、他者を強制するリーダーや、闇雲に追随するだけのフォローワーがいてはいけません。一人でも存在すると真の自己組織化は起こりません。

3.自由であること

基本的にルールや規則は出来る限りない方がよいでしょう。自己組織化は基本的に「個」の真の自由から生まれます。自由な発想、自由な行動が許されないことは、それは大きな阻害要因になります。(真の自由とは、エゴを実現する自由と言う意味ではありません。エゴからも自由になった状態といった方がよいでしょうか。)

4.参加者の自主性

参加者は自ら考え、自らそれを他者に表現する必要があります。それがないと自己組織化の原動力である相互の交流は生まれません。個人が積極的に他者と関わり、お互いを理解しあうことが必要です。

5.他者の受容

自分の意見も言いますが、自分の意見と同じだけ他人の意見も受け入れなければなりません。この作用が実は自己組織化のエンジンのような役割をします。ちなみに他者を受容する努力は組織の大きさに乗数的に比例します。小さな組織ではそんなに苦労はいりませんが、少し大きくなるだけで、お互いを理解しようとする努力はとてつもなく大きくなります。

6.断定はせず常に仮説としてとどめる態度

これまでの社会では判断や断定、結論、決定と、何か決まった固定的なものを求めてきました。そのために、誤った理解が広まり、長い年月のあいだ、間違った理解が定説として流布することが多かったのも事実です。生命は決して固定したものではなく、常に変化し続けています。私たちが下す判断も、その時はある程度正しかったかもしれませんが、時間がたつとそうではなくなることが少なくありません。従って、判断を固定することなく、仮説の状態に維持しておき、つねにより相応しい認識、判断を求め続ける態度が必要です。

7.組織は適切な大きさであること

全てのものには、それに応じた相応しい大きさがあります。人間社会の組織にも同じことが言えます。適切なサイズを維持することの大切さは、E.F.シューマッハが残した言葉の大事な一つでもあります。人が集まって何かを話し合う場合、その適切なサイズは6人から12人くらいと言う人もいれば、30人までと言う人もいます。しかし、それは内容や参加者によってケースバイケースだと思います。

8.目的が明確であること

何を目的に集まっているのかが明確でない組織では、活発な相互交流は生まれませんし、一つのコンセンサスに向かっていく推進力がありません。その組織の目的を明確にしておくことは、参加者一人ひとりの心に、組織に貢献するためのエネルギーを注ぐことでもあります。

9.参加者は先入観、偏見を決して持たないこと

あたりまえのようで、なかなかできないのがこれです。これができるようになるのも人間としての一つの試練かもしれません。先日にイギリスを発端に世界的な話題になったSuzan Boyleさんの一件は、YouTubeのほかに世界各国のTV放送局が放映したことから、2週間あまりの間で地球の数億人(推定)が知ることになりました。まさに、先入観を持たないことへの世界規模のレッスンとなった気がします。まだご覧になっていない方は是非どうぞ。→こちら

10.開放系 ~ オープンであること

組織は排他的であってはいけません。常に、外部との自由な出入りができ、メンバー個人の意思によって参加、不参加を決めることができる必要があります。常に開放系として開かれたものでることは、組織の適切な新陳代謝を促し、外部の環境(全体)との調和を追及するための大事な要素となります。必要な組織は適切なサイズまで大きくなり、必要のない組織は自然に小さくなっていき自然消滅します。

11.参加者全員がこの条件を理解して実行すること

一番最後になりましたが、これが一番クリアするのが難しい条件であり、私が現代の状況の中で自己組織化が一般的には無理だと思う理由です。その一方で、1~10までの条件を学んでいなくても、これらを自然に理解されている方は少なくありません。しかし、その方々を取り巻く社会、会社、組織の構成員の多くは、このことを認識するには程遠く、実現することができないのが現状だと思います。また、1から10はお互いを相互補完する関係にあり、そのどの一つが欠けても成立しない、どれもが「自己組織」という一つのシステム(系)を出現させるための必須条件となります。

条件は以上です。

これは大変だ、実現できそうに無い、
と思われるかもしれませんが、
しかし、確実に人々は、
自己組織化とか、
前述の条件の言葉を使わなくても、
そのあるべき組織のあり方や、
お互いが協調しあいながら生活するための基礎を、
いま、あらゆる側面から、
知らず知らずのうちに急速に学びつつあります。

オバマ大統領が、
Organizing for Americaとして、
地域の組織作りと活動を、
草の根レベルで積極的に推進しているのも、
アメリカにおいて、その実現に繋がる、
大きな流れの一端だと思います。

きっと、ふと気づいたときには、
いつの間にか皆がそれらを理解していて、
あるべき組織の形成は、
誰にやれといわれるでもなく、
自然に始まっていくだろうと思われます。

人々の、この10年の心や行動の変化をみていると、
これまでのように、
社会を変えようと必死にならなくても大丈夫。
過度に未来を悲観する必要ももうないでしょう。

人々自身が日常の中で、自然な成り行きを通して、
調和に向けて必要なことを学び、変化していっている、
しかも、それは益々加速しつつある、
と考えるほうが適切だと思います。

Appalachian Spring ~ アパラチアの春

2009年04月26日 13時06分02秒 | 大自然のしくみから学ぶ社会


八ヶ岳は4月に入ってから、
暖かくなったり、寒くなったりを繰り返し、
昨日から今朝にかけては、
ミゾレまじりの雨が降り、
ストーブをたいていました。

しかし、草木はぐんぐんと緑を増してきて、
様々な花が咲き、にわかに八ヶ岳は賑やかになってきています。

さて、
八ヶ岳にいると、音楽はほとんど聴きません。
聴きたくなくなるのです。
静寂と自然の音に囲まれているほうが、
はるかに幸せなのです。

不思議なのは、街にでると、
逆に、音楽が必要になってきます。
四角い建物に囲まれ、
人工の音の中ですごしていると、
音楽がどうしても恋しくなってきます。

今の時期、最も好きなのは、
コープランドの「アパラチアの春」。
八ヶ岳の今の風景を表現するには、
この曲が一番ふさわしいかもしれません。

この曲に最初に出会ったのは14年くらい前。
「芸術振興市民の会」というボランティア活動で、
新日本フィルハーモニーの支援会員の方々に、
リハーサル風景を無料で公開し、
その後にワインや軽食を楽しみながら、
団員との交流を行うイベントでのことでした。

その時の指揮は小沢征爾さん、
そして曲目のひとつが「アパラチアの春」でした。

リハーサル会場の裏側で、
私は交流会の会場準備を手伝いながら、
この曲を聴いていました。
アパラチア山脈の春の美しい風景の中に、
まるで自分がいるかのように感じるメロディーに、
とても引きつけられたのを覚えています。

ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー/コープランド:アパラチアの春
バーンスタイン(レナード)
ユニバーサル ミュージック クラシック

このアイテムの詳細を見る


関東地方にお住まいで、
芸術の振興に関心のある方がおられましたら、
是非、「芸術振興市民の会」をご支援ください。
15年近くにわたり、
とても充実した活動をされている会です。

私も参加させていただいて、
その活動自体も芸術活動の一環であることを実感できる、
とても有意義な時間をすごさせていただきました。

【シリーズ】新しい社会の基本がわかる その2

2009年04月23日 22時36分59秒 | 【シリーズ】新しい社会の基本がわかる
自己組織化

生命の自己組織化とは、
生命自身が、自らを形成し、
それを維持、自己管理していくことです。

自己組織化という言葉は、
生命だけに使われるものではありません。
単なる物質の世界でも起こります。
物質の世界で起こる自己組織化の様子は、
まるで生物が活動しているかのような、
活き活きとしたものです。

YOUTUBEを探したら、
自己組織化の実験の映像がいろいろ出てきました。
自己組織化を心にイメージするのに、
そういった映像はとても役に立ちます。
中でも、結構楽しめるものをご紹介します。

1) Belousov-Zhabotinsky reaction
http://www.youtube.com/watch?v=bH6bRt4XJcw

これは自己組織化の現象を、
世界の研究家が注目するきっかけになった、
有名な実験です。

単にある物質の酸化還元反応なのですが、
些細な刺激によって、
ある一点の分子を起点に反応が始まります。
そして次々と隣の分子に影響が伝わります。

反応した分子は、
一定の時間のあいだ色を変えていきますが、
しばらく時間がたつと逆反応を起こして色は元に戻ります。

それぞれの分子は、その後は、
周期的に酸化と還元を繰り返すだけなのですが、
それを分子の集合全体でみると、
このような美しい円環状の模様ができていきます。

もう一つご紹介しましょう。
こちらは家庭にもあるコーンスターチでの実験です。
単なるコーンスターチがどうなるのか見ものです。
2) Amazing Liquid
http://www.youtube.com/watch?v=nq3ZjY0Uf-g

ある一定の条件さえ整えてあげれば、
それら分子同士の動きが、
相互に影響を与え合い、受け合うことにより、
このような見事な秩序的な形態を作り出します。

・・・見事というか、その動きはまさに幼虫そのものです。

ここ何十年かの間に、
私たちの生物体の形成や活動は、
こういった自己組織化が、
元になっていることが分かってきました。

例えば、
植物や動物が発生し成長するとき、
元素や分子がお互いに影響しあいながら、
形態形成していくこと。
私たちの心臓細胞の一つ一つが、
お互いに共鳴しながら鼓動を作り出していること。
私たちが考えたり、思い出したりするときに、
脳細胞間の共鳴で起こる発火現象。
群で生活する昆虫などの集団秩序。
鳥の群生がまるで生き物のように大空をうねる姿。
その例の枚挙はつきません。

ここで大事なのは、
自己組織化の場には、
外部からの指令や管理がないということです。
その秩序(又は組織)を作っているのは、
全て当事者である「個」です。
そのために、外界の環境変化や外的に遭遇しても、
迅速に、しかも、柔軟に反応することができることも少なくありません。

自己組織化という言葉が、
人間社会にも当てはめられているのは、
まさにこの点にあります。
民主主義の原点ともいえる、
自分たちの、自分たちによる、自分たちのための、
政治や社会活動そのものです。

自己組織化によって形成されている、
組織やコミュニティーには、
リーダーもフォローワー(追随者、服従者)もいません。
(リーダーシップという言葉も、いずれ死語になるでしょう。)

そういった組織やコミュニティーは、
社会の変化に柔軟に対応することができ、
今の会社や行政組織で必然的に起こる誤謬も、
自己組織化した組織では激減するはずです。
何よりも、その当事者自身の、
想い、希望、やる気、理想、
モラル、社会正義を、
社会や環境に、より適応した形で実現できます。

自然界を形成している無数の自己組織化の連続は、
まさに神が創造したとしか言いようが無いほど、
適切な場所で、適切な時に起こるように、
奇跡のようなチューニングのもとで起こっています。

自己組織化する組織をつくるということは、
その自然界の秩序と同じものを、
神の子といわれる人間が、
自ら現実世界に創造して行くことを意味します。
これこそ本当のエコロジカル社会の出現であり、
ひとつの人類の進化と言うべき出来事となります。

しかし、現時点において、
理想的な自己組織化が人間社会に起こりうるか、
と言えば、特別なケースを除いて、
それは無理でしょう。
先の実験で、
一定の条件が整わなければならなかったのと同様に、
人間社会に自己組織化が起こるにも、
それなりの条件が必要です。

ですが、社会は明らかに、
その条件が整う方向に向かっていると考えられます。
従って、今後、世の中は、
本当の意味で民主的になり、
今なお多数派の封建社会的な会社、行政組織も、
大きくその様相を変えていくでしょう。

その条件とは何か?

そこがまさにポイントだと思います。
私の大学院の研究テーマでもあったので、
次回にでもご紹介したいと思います。

大学院を出て10年になりますが、
これまで機会がなかったのと、
機も熟してなかったこともあり、
日本の誰にも話してきませんでした。

まさに本邦初公開となります。

ちよっと寄り道

2009年04月23日 12時40分48秒 | 時事~経済の流れ、社会の動き

今週は、生命システム、自然生態系に沿った新しい社会について書く予定ですが、今朝のニュースを見て、いくつか書き留めておきたいことが出来たので、ちょっと寄り道させていただきます。

まずひとつめは、アメリカのホワイトハウスが発表した今朝の声明。

環境活動家や環境に関心のある人々の間で支えられてきた、毎年4月22日に行われる環境イベント“The Earth Day”に対して、オバマ大統領が自ら声明文を発表し、より環境を重視した社会の形成の推進を訴えました。

かつて、環境活動家やエコロジストは、
どちらかというと社会の亜流でしたが、
もはやその観念は早々に捨てた方がよさそうです。
とても嬉しい変化です。

もうひとつは、小学校に学級委員が復活したニュースです。

というより、22年前に、平等を阻害するからといって、学級委員を小学校では無くしてしまっていたことが、私にとって、ちょっとショッキングなニュースでした。

当時の文部省は、一体、何を平等と考えていたのでしょうか?
学級委員をなくして、平等の考えが育まれるようになったのでしょうか?
むしろ、この20年の小学校の現場は、いじめ、学級崩壊、学力低下と散々なことになりました。

小学校によるかもしれませんが、少なくとも私のいた小学校では、学級委員というのは、役所や会社の○○長とは違い、権力や権利とは無縁で、決して平等を阻害するものではなく、むしろ、今で言うソーシャル・コーディネーターのような、学級の秩序を維持し、良くすることへのシンボルであり、その「推進役」を担うものでした。

学級委員という存在があったからこそ、学級を良くする為に皆で話し合い、相互の理解と協調性とを養うことが促されていたと思います。学級の調和を乱す行為や、陰湿ないじめがあったときも、皆で話し合う機運が生まれ、協力し合うことができました。

まさに、これからの社会で必要とされている、コミュニティーづくりの基礎演習をしていたようなものです。6年間、毎日そういった環境にいるわけですから、人間形成における影響は大きかったと思います。いま、有料で教えているファシリテーターの技術を、じつは小学校から自然に実につけさせていた、といっても良いでしょう。

現に、なんとなく感じる、社会全体を覆う、
個人主義の増加や協調性の希薄化は、
様々な社会構造やメディアの問題が絡み合っているものの、学級委員を廃止したことも、ひとつの大きな要因であったのではないかと私は推測します。
また、学級委員を過去22年間にわたって行ってこなかったことは、社会にとっても、大きな損失であったのではと思います。

ほぼ毎年、学級委員をやっていた私は、
それにまつわるいろいろな思い出があります。
ちょっとハメをはずしてしまうと、
「学級委員のくせに何やっているの!」
とよく友人たちから怒られたりしました。

学級委員もいろいろですが、ただ、少なくとも、
クラスの皆の気持ちを、お互いに結び付ける基となっていたのは、間違いのない事実です。

【シリーズ】新しい社会の基本がわかる その1

2009年04月22日 13時04分31秒 | 【シリーズ】新しい社会の基本がわかる

地球生命系に関する新しい研究によって、次々にその特徴がわかってきました。
その特長にこそ、私たちが地球生命系と共生できる新たな社会づくりのための、大事なヒントが含まれていると言われています。
その生命の智恵とは一体どのようなものなのでしょうか。

これまでの生物学の主流は、世界はあたかも機械のように出来ていて、それらを細かに分析していけば、世界は把握できるというものでした。
これを機械論的な観察などと呼びますが、極めて複雑な世界を、個別な分析だけによって観察しても、それは、例えて言うならば、複雑な立体のある一部分だけを観察したにすぎず、かなり偏った一面的な理解にならざるを得ません。
そのために、今の環境問題や健康問題など、様々な問題を引き起こした原因にもなっていると言われています。

その一方で、生命のみならず、世界の全ては、密接に相互に深い関わりを持っており、個と全体の関係を常に重視して観察するといった、全体論的なアプローチをする考え方が出てきました。古くはギリシャ時代にさかのぼりますが、20世紀以降、構造主義生物学、量子力学、そして、複雑系科学の進展によって急速に発展してきたものです。

全体論的な観察も、決して完全なものではありませんが、機械論的な観察を補完するものあることは間違いありません。全体論的な観察と機械論的な観察とをつきあわせながら、生命を理解することが大事だと考えられます。

そういった、全体論的な視点を加味して地球生命系を見た場合、これまでの生物学では注目されなかった様々な特徴が見えてきました。

米国で新しい経済の仕組みを研究するデビッド・コーテン氏はそれから得られた地球生命系の特徴から、これからの社会のための教訓を6つの特徴に分けて説明しています。わたしとしては、それに7つ目を加え、また、わかりやすく表現を書き換えて、次のようにしました。

1)自己組織化 ~ 当事者による主体的な運営
2)必要十分であること ~ 最小限必要なものを、必要なだけ
3)地域が基本であること
4)協調の重視
5)適度な境界をもつこと
6)多様性の維持
7)自主性の高い創造的な個人であること

このブログをお読みいただいている皆様の多くにとっては、すでに当たり前で、親しみの深い言葉ばかりかと思います。

ただ、私自身の整理のためにも、明日は、それぞれの項目について、多少説明を加えてみたいと思います。

変化の大波を捕らえて

2009年04月21日 13時18分13秒 | 大自然のしくみから学ぶ社会


先日のThe e4 Declarationの中でも、
その根本となる8つの理念の内容は、
自然界のしくみと共通するものであり、
第八の理念のように、
実に美しくてエレガントだと思います。

常に心にとどめておいて、
自分達の行う仕事や社会活動が、
それに沿っているのかどうかを確認する、
ひとつのチェックリストになると思います。

実は10年ほど前に、
いま寄せてきている変化の大波を予想して、
すでに同じような提言をまとめていた人がいます。
世界的に知られる新しい社会・経済の研究家の、
デビッド・コーテンさんです。
この方は、奇遇な縁でシューマッハカレッジと深いつながりがあります。

彼が国際線の飛行機に乗ったときに、
偶然に中国系の女性と隣り合わせになりました。
その女性が挨拶がてら手渡してくれたのが、
「生物の新時代」という彼女自身の論文だったそうです。
その女性こそ、シューマッハカレッジの、
ブライアン・グッドウィン教授の妹弟子とも言うべき方で、
カレッジの講師も何度もされているメイワン・ホー博士でした。
多分、現代において、全体論にそって生命システムを理解し説明できる最高の学者の一人でしょう。

遺伝子組み換えの問題に詳しい方なら、よくご存知かと思いますが、イギリスの著名な分子生物学者であり、その観点から遺伝子組み換え作物の危険性を警告している世界的に知られる方でもあります。

新しい経済・社会のあり方を追求する世界的研究家と、
当代きっての全体論による生命システムを研究する学者とが、
偶然に飛行機で隣り合わせたのは、
偶然ではすまされない、
神様か誰かが仕組んだ、必然のような出会い、
と言っても過言ではないでしょう。

飛行機の中でコーテン氏はホー博士から、
大自然のしくみに関する新しい考え方のレクチャーを受け、
そして、生命の智恵から学ぶ新しい社会のあり方に開眼したのでした。


その後にコーテン氏が書いた、
「ポスト大企業の世界」には、
The e4 Declarationの基礎になっている考え方が、
詳しく説明されています。
中谷巌氏の「資本主義はなぜ自壊したのか」
に書かれている内容を、はるかに超えたものが、
すでにこの本に書き込まれています。

ですから、是非、ご一読を、とお奨めしたいところですが、
これからその真価を発揮する本であるにもかかわらず、
なんと、日本では絶版となってしまっています。

私が知る限り、日本語の本で、
自然界、生命システムの本質を理解し、
それを未来の社会を考える上での基礎として、
将来の社会のあるべき姿を解説している本は、
これ以外にありません。とても貴重な本です。

そこで思いました。

明日からしばらくの間、
コーテン氏のこの本をテキストに、
そのポイントを解説しながらご紹介しようと思います。

これからくる地球規模の急激な変化の大波を、
うまく捕らえて、スムーズに岸にたどり着くために、
きっと、お役に立つことと思います。

Glimpses of the Future ~ 未来社会を垣間見る

2009年04月17日 12時37分37秒 | 大自然のしくみから学ぶ社会

前回の記事でThe e4 Declarationの8つの基本理念についてご紹介しました。今回は、提言が基本理念に基づいてどのような未来社会を考えているのか、原文を元に、若干の補足をしながらご紹介したいと思います。

(Ⅰ)Food and Agriculture ~ 食と農業

食物は高い栄養価のある質の高いものであり、かつ、美味しいものでなければなりません。そして、それを世界中の皆が享受できることが必要です。そのためには、以下を基本とする新たな農業のあり方を実現しなくてはなりません。

1)農業は基本的に伝統に基づいたものが相応しいと考えます。しかし、単に昔に戻ることではなく、必要に応じて優れた科学を用いながら伝統的な技術を再構築したり、労働負荷を軽減するために適正技術を用いることも必要です。

2)真に持続可能な有機農業を目指す必要があります。また、それを地域で作り、地域で消費することが重要です。それは、健康で、かつ安全、新鮮な食糧供給が可能になるばかりでなく、適正な規模での生産、流通、消費、ガバナンスを実現するためにも重要です。食がコミュニティーの中で生産者→加工業者→小売店→消費者とめぐるようになれば、食の流通を通してその地域に安定的な富を形成することができます。

3)すでにこういった生産や活動をしている先駆者は数多くいらっしゃいます。世界的な社会変革が起こるにあたって、その変容を推進する上で、そのような方たちによる指導、支援が欠かせません。

4)過去20年の間に急速に世界中に広まってきたものに、スローでオーガニックな料理法への関心、また、消費者と有機農家が強い結びつきをもって農業経営を支援するコミュニティーサポーテッドアグリカルチャーのしくみや、農地委託制度、生協活動などがあります。そのような動きを今後も推進していかなくてはなりません。

(Ⅱ)Money ~ 金融制度

お金は人が作りだした道具であり、そのしくみや働き方は変えることができます。従来のお金は、私たちをお金のために働かなければならないような性質をもっていました。今後は、それを私たちの生活のための真に役立つものに変えていかなければなりません。また、金融危機のように利欲による投機のために、私たちの生活が不安定になることも許されません。お金は安定的であり、エコロジーがゆるす範囲の実体経済を支援する役目を担わせなければなりません。

1)現代の経済指標は生産した付加価値だけしか計りません。そこに社会的、環境コストは含まれていません。そういった社会的資本、自然資本の増減まで含んだ会計を行うことによって、より社会の正しい状態を把握することができるのみならず、より相応しい判断のための材料とすることができます。

2)様々な規模の経済圏を支援し、かつ、社会価値、環境的な価値を増進することにつながる補完通貨の推進を行います。それは、ドイツのChiemgauer currency、スウェーデンJAK Bank、スイスのWirtshaftsringといった地域通貨のように、人のために機能する通貨でなければなりません。また同時に、コミュニティーを基本にした組織づくりや事業投資を推し進めるための、地域に密着した金融システムを進めていくことも重要です。

3)新しい国際通貨システムの試案であるTERRA(Grobal Reference Currency、TERRAはいくつかの基本的な財の価格を参照しながらその価値を決定して、インフレやデフレ、また、通貨発行者の不当な利益を除外することのできる仕組みを取り入れた通貨として世界的に注目されている案です。)や大規模な無利子融資のしくみづくりなどへの研究を積極的に支援する必要があります。

(Ⅲ)Governance ~ 自治、行政、企業

これからの社会は、そこに住んでいる住民自身が、自分たちの地域のことを知り、大事なことを決定し、実行していくことが大切です。これは地方のレベル、国家レベル、国際レベルでも同じことが言えます。権限を持った一部の人、或いは、外部の人が、他人の地域や組織を管理するということは、すでに過去の古い形態と考えてよいでしょう。真の民主主義の実現が求められます。

1)権限委譲を推進して、出来る限り当事者に責任と判断を任せます。これは地方自治に関しても、企業などの組織に関しても同じことが言えます。

2)大企業など規模が大きな組織、また多国籍企業に対しては、その規模に応じた規制をかける必要があります。お金のあるところにお金は集まります。多様性に満ちた社会を形成するには、当面の間、それを阻むものに対して規制をかけることが必要となります。

3)これまで癒着が激しかった政治と企業の関係をはっきりと切り離します。

4)株主の権利より従業員、顧客、取引先、地域社会の権利を強めます。

5)最低賃金の規則と同様に、最大賃金にも制限をつけます。誰にでも理解の出来る一定の範囲での報酬体系にします。

6)世界の経済と環境を監視する国際組織を設立します。

(Ⅳ)Energy ~ エネルギー

化石燃料と原子力からの脱却を目指します。そして、分散型、地域におけるエネルギー生産と弾力性のあるエネルギーネットワークの実現を行います。

1)化石燃料の消費が、本当に地球全体規模で考えると極めて高コストについていることを考慮して、化石燃料の使用に対する制限を設けます。

2)建物、住宅、輸送機器、電気製品など、エネルギー消費をするものの効率を高めるための改造、技術革新を急ぐとともに、地域レベルの小規模で高効率な再生可能エネルギー生産の技術の導入を推進します。

3)スマートグリッドに代表される、分散して発電された電力をお互いに結びつける電力ネットワークを推進し、各地の風力発電、太陽光発電を結び安定的な電力供給のできるインフラを整備します。小規模なものは既にドイツ、イギリスで実現されています。

4)こういった転換の着実な進展を計るために、指標の設定や政策的インセンティブを導入します。また、新しい取り組みや新技術の展開を妨げている規制の撤廃を行います。

原文とその補足は以上です。原文が各識者の発言を寄せ集めた感じであったので、読みやすいようにやや整理してあります。

これが発表されたのは昨年の11月ですが、驚いたのは、この提言内容の多くが、1月にオバマ大統領が発表した政策方針と重複していることです。シューマッハカレッジに関わる研究者や活動家は、これまで明らかに主流派からは異端視され、大学教授をしている私の兄の言葉を借りると「学際」的として、あまり日の目を見ませんでした。しかし、昨年来から急変している世界の動きに、ようやくその努力が実る時期が近づいているのを実感します。

これから何年かの間、世界が、これまでの一般的な常識では推測のつかないくらいの大きな変化をしていくことは、間違いないと思われます。

The e4 Declaration ~ 地球規模の社会変革への提言

2009年04月15日 16時17分45秒 | 大自然のしくみから学ぶ社会


昨年の11月に、シューマッハカレッジに、サティシュ・クマールやブライアン・グッドウィンをはじめとして、オルターナティブな経済学者、社会活動家、国際的なNPO、NGO関係者が集まって、今後の社会、経済についての会議が開かれました。

その会議で出された提言が、
The e4 Declaration”としてHPで発表されています。
その参加者の一部にインタビューしたビデオもあります。
ちなみにe4とは、
ecology, economy, equity, ethics,
といった、今日の重要な課題となっている4つのeからとっています。

残念ながら提言の文章は、まだ十分に推敲されたものとは言えません。
従って、それを読んだだけでは多くの方にとって、
何を言いたいのか分からないことも多いと思います。
今日は、その8つの理念の部分を、
補足をしながらご紹介しておきます。

“The e4 Declaration”の8つの理念

①quality of life
 ~生活の質の重視

いわゆる金銭のみの尺度で測る経済成長を重視している社会から、生活の質の向上を最も重要とする社会への転換を目指します。

②ecological realities
 ~エコロジカル社会の構築

これは単に環境政策的な意味合いだけでなく、かなり広義のエコロジカルという意味で、生活、行動、社会制度すべてにわたって、自然の摂理と調和した現実を創りあげていこうというものです。

③appropriate scale
 ~全てのものが適切な規模であること

これは、スモールイズビューティフルのF.シューマッハが語った最も重要なメッセージの一つですが、全てのものには、それに適切な規模(サイズ)があり、大きすぎても、小さすぎても良くないというものです。特に、現代のグローバル社会においては、グローバルに生産される基本生活財の生産・消費の規模と流通範囲は大きすぎ、様々な問題を生じています。地域のニーズをくんで、地域でそれらを生産し、売り手と買い手がもっと直接的な関係にあるような社会構築をすることが重要です。ただ、地域が、中世以前のように完全にグローバル世界と切り離されるわけではありません。グローバル社会と連携をとりながら、グローバルに行き過ぎたそのバランスの是正が必要であるということです。

④optimal diversity
 ~最適な多様性の確保

社会、文化、経済などあらゆる分野において、最適な多様性を確保することが大切です。多様性があり、それが調和を保っている状況であれば、それは外界からの急激な変化に対しても、高い弾力性を発揮し、安定を保つことができます。地球生命系から、私たちの口の中や腸にいたるまで、それらが安定的に維持できているのも、この多様性による調和的バランスによることは周知のとおりです。

⑤from ownership to stewardship
 ~オーナーシップからスチュワードシップへ
(所有権制度から受託活用制度へ)

過去2000年にわたった、いわゆる「所有権」に固執した考え方から離脱しようというものです。この「所有する」という考え方は、古代からあったものではなく、人類の歴史からすると比較的新しい概念です。しかし、その概念が広まってからというものの、それは不安、争い、権力の横暴、貧困、不平等、奴隷化などを引き起こした諸悪の根源の一つとなっています。ただし、現時点では、所有権というものが経済活動のインセンティブになっているところも多いことから、一気に止めることはできません。従って、小さい規模での事業や起業においては、個人の所有や共同所有を認める必要があるかもしれません。しかし、規模の大きなもの(特に一定規模以上の法人、自然資本の利用など)については、一部の人に権利や富が集中しない組合管理制度、或いは、受託活用制度に移行するのが望ましいということです。

⑥stable and dynamic
 ~動と静

複雑系科学の大御所の一人、ブライアン・グッドウィンの発言かと思います。生物システムにおいて、固定的なパターン化した動きをしている状態は、実は健康ではなく不健康の特徴的な兆候です。健康な状態とは、カオス的な無秩序に変化する状態と、固定したパターン化した状態との狭間に発生する、あるバランスがとれた、微妙に変化し続けながらも秩序を維持しつづける状態を言います。この状態は弾力性、柔軟性に満ちており、まさに生命が生きている証でもあります。「動的平衡」という言葉がありますが、これは一時代古い概念で、言葉足らずです。ブライアン・グッドウィンの表現を借りるならば、「HOMEO-CHAOS」つまり「カオス的平衡」といった方が、より相応しい表現でしょう。社会の健全性においても同じことが言えます。固定化した状態でも無秩序に変化する状態でもなく、その中間にある微妙にバランスがとれた、ゆるやかな秩序を維持している状態を目指すこと。社会におけるあらゆる面で、そういった状態が社会の健全性を維持する基本のひとつとなります。

⑦equity
 ~貧困と不平等の排除

現代の貧困と不平等は、様々な利欲と、自由化と競争原理の導入によって、必然として作り出された人工的なものです。世界には、全ての人に十分にいきわたるだけの食料や資源があるにもかかわらず、富の偏在によって、それらが一部の人に集中し、全ての人に行き届いていません。これを是正するには、社会制度、金融・経済制度、法人制度、税制にいたるまで、様々な取り組みが必要になってきます。これは、誰かが担当してできるものではありません。全てのセクターにおいて、貧困と不平等の排除に向けて、積極的に改善努力をしていかなければなりません。

⑧beauty and elegance
 ~美しさとエレガンス

サティシュ・クマールさんがとても重視している言葉です。何が正しいのか、何を選択しなければならないのかが分からないような時、判断の材料として最も信頼できるのが、それが真の美しさを持っているかどうか、エレガンスさを実現できるかどうかという点です。本当に心の底から美しいと感じるものは、世界の誰もが持ち合わせる共通の感覚であり、その美しさやエレガンスさは自然の摂理と同調しているものだからです。真の美しさとエレガンスさの実現は、私たちの精神面および生活の質を向上させるための大事な要件でもあります。

今日は以上です。
引き続いてThe e4 Declarationが考える未来像についても、
近日中にアップしたいと思います。

有機野菜と自然農

2009年04月13日 14時42分51秒 | 健康と食と心と暮らしかた


日曜日は、朝から畑の作業を行いました。
お世話になっている整体の先生が、
一反ばかりの自然農の畑を持っておられ、
その一部をお借りしての野菜づくりです。

自然農は不耕起、無肥料、無化学農薬を基本にし、
雑草は野菜の生育に邪魔にならない最小限だけを刈り、
あとは自然のままに残していくものです。
一面、野原のような感じですが、
その中に、野菜が植わっています。

整体の先生は、流石に長年されておられるだけあって、
鎌だけをもって、畑のあちこちをひょいひょい移動しながら、
野菜や果物の世話をされています。

今回私が植えたのはブロッコリー、カリフラワー、ジャガイモ。
本当であれば、植えるものも、地域の生態系に合った、
伝統の在来種であるべきなのですが、
今回はそこまで手が回らず、ホームセンターの苗と種芋です。

都会から八ヶ岳に移り住んでこられた方の中には、
農業に興味をもたれている方が少なくありません。
先日開かれた長坂の自然農の勉強会には、
実に70名ほどの方が集まられたとのことでした。
かなりの人気です。


さて、私たちが、有機野菜に切り替えて40年近くになります。
しかし、有機野菜といっても本当に千差万別であるのが実情です。
素晴らしく美味しいものもある一方で、
苦かったり、葉物なのに、まるで筋肉質のように固かったりして、
折角買っても、食べるに困るものが実は少なくありません。
むしろ、普通のスーパーで売っているものの方が、
美味しい場合もあります。

私は専門家ではありませんが、
今までのささやかな経験と知識から考えると、
結局、肥料を化学肥料から有機肥料に替えたとしても、
牛、豚、鳥の糞からなる有機肥料を大量に畑に入れ込むと、
窒素過多になり、土壌のバランスが崩れ、
そのために、苦い野菜や、筋肉質の野菜が出来ているのではないでしょうか。
このような野菜は、健康や環境によいどころか、
むしろ、悪影響の方が強いような気がします。

この場合、私は、
化学肥料を使っていても、
肥料のバランスに気を配って栽培された野菜の方を、
迷わず選びたいと思います。

その点、そういった有機肥料を畑に入れ込むことをしない自然農によってできる作物は、考えうる限り、最も自然の摂理に沿って作られる作物であるかと思います。ただし、その多くを自然に任せることから、安定的生産を強いられる農業経営には向かない面もあるかもしれません。

一般的に自然農は、最も安全で、コストがかからず、自然環境にも良い点で、自家用、或いは、食料を近隣のコミュニティーで分かち合うための生産手法として、とても良い農法なのではないでしょうか。

さて、来週は何を植えに行こうか。
今の時期、一つの楽しみとなっています。

八ヶ岳スーパートレイル

2009年04月10日 13時03分46秒 | 八ヶ岳の日々


八ヶ岳スーパートレイルという、八ヶ岳をまるまる一周する、
歩く人だけのための長大な遊歩道の整備が進みつつあります。
南麓側では、富士見町、小淵沢、大泉、清里の、
標高1300メートル付近を縦断するようです。

八ヶ岳も車時代になって、散歩しようと思っても、
細い道を車がスピードを出して行きかいます。
この歩く人だけのための八ヶ岳スーパートレイルは、
車を気にすることなく、存分に自然を満喫できる道となることでしょう。

世界各地に、歩く旅をするひとのための小道、
FOOTPASSが点在していますが、
イギリスのデボン州、コーンウォール州をまたぐ、
美しい海岸線とダートムーアなどの国立公園を一周するFOOTPASSは、
実に美しく、また、イギリスの古代から現代までを体験できる道です。
本当に人が一人通れるだけの幅のところから、
広くても2メートルくらい。
そのほとんどは舗装されておらず、
まさに自然の中を歩いている感覚です。

自然の豊かなところに限らず身近な街の中にも、
街の再生や、生活の質の向上のため、また、
子供、子孫のための街の社会的資産価値の向上のために、
こういったFOOTPASSの整備が絶対に必要かと思います。

街の緑に囲まれたFOOTPASSを歩いていくと、
各地の山や海岸線のスーパートレイルにつながり、
日本全国が歩いていけるようになると、
人々の健康にも、環境意識の向上にも、
大きく貢献することになると思います。
FOOTPASSを通って、
山から動物が街に遊びにくることもあるかもしれません。

近々、八ヶ岳スーパートレイルの一部を皆で歩くイベントが企画されているようです。今回のコースは、私が以前に住んでいた地域で、時折、歩いていた道なので、ちょっと懐かしいところです。その昔、武田信玄が遠征のために作った道(棒道)も通ります。

八ヶ岳スーパートレイル
第六回体験ウォークの案内はこちら

何を頼りに生きるのか

2009年04月09日 15時17分30秒 | 健康と食と心と暮らしかた


一人の人間として、仕事を通じていろいろなことに関わり、
また、生活のうえで様々な場面に遭遇し、
そこでいろいろな判断をしなければなりませんが、
そのときに、私たちは何を頼りにするでしょう。

私はもちろん、全ての人にとって、
それは、一生涯にわたって追い求めるものかもしれません。

ただ、その過程で一つ言える事は、
その判断の源になるところは、
食べることにしても、医学にしても、
農業、教育、子育て、芸術、宗教、科学も、
そして日々の暮らし方や、社会のあり方も、
全てある一点に限りなく収斂していくこと。

それを、
ディープエコロジーのアルニ・ネスさんは、
エコロジカル・プラットフォームと呼び、
天外伺朗さんは、
ディープ・グラウンディングと呼ばれています。
また、ある方は「普遍意識」とも呼ばれます。
しかし、どれもなかなか一般的には通じませんし、
とてもイメージしにくい言葉ばかりです。

とはいえ、
私は、愛知県の仕事の量が増え、
かなり頻繁に八ヶ岳と愛知県を往復する生活をしていますが、
役所がらみの仕事や、種種雑多な考えの人々の狭間で、
いかにして自分の判断を曇らすことなく、事を進めていけるかが、
いま最も気を使うこととなっています。
少なくとも、単に合理性だけに頼った判断や、
噂や人の話だけで判断することだけはしないように、
注意を払いたいと思います、


ところで、
日曜日から昨日までネットが使えない環境だったので、
投稿も、コメントのチェックも出来ていませんでしたが、
今日から再開しました。

以前の記事「マクロビオティックとローフード」に、
ひよこ豆ゆきこさんからコメントを頂きました。
ありがとうございました。

世の中、様々な食事法が出回っています。
本当にどれがよいのか、その答えは難しいのですが、
やはり、食べるものとその人の身体と心というものは、
密接に相互的に関わっている事から、
もっともっと、そのあたりを突き詰めることが、
必要なのかもしれません。

以前に次のような伝説を読んだことがあります。
その昔、ある仙人がいて、
彼は松の葉と実を食べて、何千年も生きていました。
しかし、(何がきっかけだったか忘れましたが、)
その仙人が穀物を食べるようになったところ、
仙人はみるみる老けていき、死んでしまったというものです。

本当のことかどうかは分かりませんが、
私自身は、ありえる話と思っています。

日本伝統の共生社会 ~ 映画:オオカミの護符 

2009年04月02日 11時57分31秒 | 共生社会の姿を求めて・・・




長年、地域づくりや食、農業、健康などの分野で活躍してこられた小倉さんが、㈱ささらプロダクションという映画製作会社を作られました。

小倉さんがプロデュースされた第一作目の作品、
「オオカミの護符」が、いきなり、
文化庁映画賞・文化記録映画優秀賞、
そして、アースビジョン地球環境映画祭アースビジョン賞、
を相次いで受賞されました。
おめでとうございます。

関東平野近郊の里には古来から伝わる、
「お犬様」というオオカミの護符というのがあり、
製作者の小倉さんの実家にも代々伝わって来たものだそうです。

その由来と伝統を調べていくうちに、
それは、我々の先祖が自然と共生しながら生きるための、
大切なお守りであり、
また、その伝統を受け継ぐにあたり、
地域の互助組織である「講」が大事な役目を担い、
地域の人と人がお互いに共生するためにも、
重要な役割を果たしていたっていたことが分かってきたそうです。

「オオカミの護符」の映画は、その護符をめぐるいろいろなことを、
調査していく過程を追ったドキュメンタリーフィルムであり、
現代の多くの日本人が忘れている、或いは、知らない、
私たちの先祖の生き方、社会生活の仕方を教えてくれる点が、
各界から高く評価されているようです。

パンフレットにピアニストの清塚信也さんのコメントが載っていました。
人々の自然に感謝する姿に芸術の原点を感じ、
愛おしくなるような気持ちになり、
見終わった後、
自然を心から愛せるようになる作品なのだそうです。

この映画の上映会が八ヶ岳の麓、川上村で行われます。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
4月11日 13:30会場 14:00~17:20分
会場:川上村文化センター うぐいすホール

同時上映:日本の詩情「原の農民」
トークショー:由井監督
色平哲郎医師(佐久総合病院 地域ケア科医長)
入場無料

お問い合わせ:川上村文化センター 0267-97-2000
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

小倉さんもいらっしゃるそうです。
色平医師は、NHKなどでも彼の取り組みが報道され、
いま注目される地域医療のプロフェッショナルの第一人者です。

ちなみに、私たちが小倉さんに知り合ったのは、あの竜河さんの紹介でした。稀有な「才能」をお持ちの方々は、どうやらお互いに惹かれあい、繋がっているような気がします。

もし、地元で上映会を催したいと思われる方がいらっしゃいましたら、下記までご連絡されると良いかと思います。
㈱ささらプロダクション tel. 044-982-7233
http://www.sasala-pro.com/