ちょっと気になるニュースがありました。
午前中のニュースで、クライスラー社と全米自動車労組(UAW)との間で、クライスラー社が経営再建に成功した場合には、全米自動車労組が同社の株式の55%を取得して筆頭株主になり、取締役も派遣するという労働協約に基本的に合意したと報道されました。これは、クライスラーが、退職者の医療保険制度を維持するための全米自動車労組の基金に対して支払い義務を負っている106億ドル(約1兆円)の半分以上を株式の現物支払いのかたちで行う結果です。
多くの方は、クライスラーも大変なことになったなと思われるかもしれませんが、私としては、現実が未来の姿に変容する過程を見ているようで、何だかわくわくするニュースです。
先日のThe e4 Declarationの中にも、将来は、あかの他人が会社を所有し、当事者でない人が会社を管理する形から脱却し、当事者や関係者がその組織の決定権をもち、運営していく形にシフトしていくことが書かれています。
ちょっとその文章を引用します。
4月15日のThe e4 Declarationの8つの理念より、
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⑤from ownership to stewardship
~オーナーシップからスチュワードシップへ
(所有権制度から受託活用制度へ)
過去2000年にわたった、いわゆる「所有権」に固執した考え方から離脱しようというものです。この「所有する」という考え方は、古代からあったものではなく、人類の歴史からすると比較的新しい概念です。しかし、その概念が広まってからというものの、それは不安、争い、権力の横暴、貧困、不平等、奴隷化などを引き起こした諸悪の根源の一つとなっています。ただし、現時点では、所有権というものが経済活動のインセンティブになっているところも多いことから、一気に止めることはできません。従って、小さい規模での事業や起業においては、個人の所有や共同所有を認める必要があるかもしれません。しかし、規模の大きなもの(特に一定規模以上の法人、自然資本の利用など)については、一部の人に権利や富が集中しない組合管理制度、或いは、受託活用制度に移行するのが望ましいということです。
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もう一つ、
4月17日のGlimpses of the futureの記事より
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(Ⅲ)Governance ~ 自治、行政、企業
これからの社会は、そこに住んでいる住民自身が、自分たちの地域のことを知り、大事なことを決定し、実行していくことが大切です。これは地方のレベル、国家レベル、国際レベルでも同じことが言えます。権限を持った一部の人、或いは、外部の人が、他人の地域や組織を管理するということは、すでに過去の古い形態と考えてよいでしょう。真の民主主義の実現が求められます。
1)権限委譲を推進して、出来る限り当事者に責任と判断を任せます。これは地方自治に関しても、企業などの組織に関しても同じことが言えます。
( 中略 )
4)株主の権利より従業員、顧客、取引先、地域社会の権利を強めます。
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クライスラー社は、これまで資本家が所有していた会社ですが、今回の合意で、それが当事者である労働者に手渡される可能性がでてきました。当事者(従業員、顧客、取引先、地域社会)が、自分たちの生活に必要な会社や組織を自分たちで所有することは、今後ますます増えてくると思います。
それは、より健全なで安定した企業統治であり、
経済社会の構造がエコロジカルなものに近づく、
大事な一歩になるはずです。