俺はTakayuki。
職業は運び屋だ。
俺は普通の運び屋が受けないような危険な依頼でも受けるようにしている。
人の命がゴミ屑のように消費されるこの世界。
隣町にラブレターを届けるのも、
地雷原に手榴弾を届けるのも危険度に大した差は無い。
それなら少しでも俺の腕を高く買ってくれる仕事を受けた方が良い。
それが俺のポリシーだ。
だが今回の仕事だけは受けるべきじゃなかった。
俺がそう確信した時、俺をハメた男の拳銃が火を噴いた。
「おや気付いたか。
気分はどうだい?
あんたは頭を撃ち抜かれて埋められていたんだよ。
それをヴィクターが掘り出してここまで運んできた。
一応完璧に復元したつもりだが、何しろ頭に鉛弾をぶち込まれていたからな。
あまり無理はしない方が良いだろう」
見慣れない天井に気付き体を起こすと、
医者らしき男が口を開いた。
『あんたが助けてくれたのか?
すまない、死ぬかと思ったぜ。
あんたは命の恩人だ。』
「礼ならヴィクターに言ってくれ、
わしは医者としての仕事をやっただけに過ぎない。
悪いがあんたの荷物を見せてもらった。
どうやらハメられたらしいな」
『ああ、高い報酬につられてハメられちまった。
本当に助かった。
さっそくで悪いが、次の仕事が待ってるんだ。
この恩は決して忘れない』
「そんな体で大丈夫か?」
『大丈夫だ、問題ない。
なあに簡単な仕事だよ。
俺をハメたスーツの男に鉛弾を届けてやるだけだ』
「それなら仕方がない。
これを持って行け」
医者が見慣れない端末を差し出した。
どうやら腕に装着するようだ。
「これはPip-Boy3000という、Vaultの住人に与えられる個人端末だ。
わしにはもう必要無いが、あんたの仕事には必要だろう」
『ありがたくいただいておく。
仕事が終わったら酒でも飲もう』
「一つだけ言っておく、二度と死ぬなよ」
俺は軽く頷き、病院を後にした。
表に出ると、派手な音を鳴らしながらロボットが歩いていた。
この【ヴィクター】というロボットが俺を助けてくれたらしい。
中央のモニターに保安官の映像が表示されている。
「ヤアみすたー!頭ハ大丈夫カイ?」
『おかげさまでな。
一週間前の晩飯は憶えてないが、
昨夜の晩飯はバッチリだ。
あんたが俺を運んでくれたらしいな?
ありがとう、助かったよ保安官』
「ナアニ礼ハイラナイ。
私ハ自分ノ仕事ヲ果タシタダケサ」
『あんたもプロなんだな。
その姿勢、俺も見習わせてもらうぜ』
鋼鉄の保安官に礼を言い、俺はその場を後にした。
本来ならすぐにでもあの男にプレゼントを届けてやりたいところだが、
残念ながら届け先の住所が不明だ。
とりあえず情報を収集する必要がある。
俺は街の中央部にあるバーへと向かった。
バーの入り口には老人が座っている。
軽く挨拶を交わし店内へ入ると、
犬を連れた女性が声をかけてきた。
こんな田舎町には似つかわしくない中々良い女だ。
背中に背負っている銃さえ無ければだが。
サニーというこの女性はこの地域の自警団のような仕事をしているらしく、
街の周囲の驚異から街を守っているようだ。
どうやら銃の扱い方と簡単なサバイバル術を教えてくれるらしい。
情報収集も大事だが、その前に命を守る技術だ。
せっかくなので彼女の授業を受ける事にした。
「まずは裏で射撃の訓練をしましょう」
サニーから渡されたバーミントンライフルで、
サンセットの空き瓶を数本撃ち抜いた。
古い銃だが良く手入れされている。
どうやら射撃については合格点を貰ったらしい。
「私はこれから井戸の周辺のゲッコーを退治に行くけど、あなたも来る?
大した事無い相手よ。
二人ならすぐ終わるわ」
彼女ならトカゲ相手に護衛など必要無いだろうが、
せっかくの美女の誘いだ、断るのも野暮ってもんだろう。
井戸の近くには入植者の女性が倒れていた。
残念ながら既に事切れている。
ゲッコーに襲われたのだろう。
このクソったれな世界では日常茶飯事だ。
「危ないからこちら側には来ないようにって言ってたのに」
サニーが呆れ気味に呟く。
この世界では日常的に命が失われている。
世界を包んだ核の炎は放射能を撒き散らした。
シェルターで難を逃れたわずかな人類が再び地上に姿を現した時、
世界はその姿を変えていた。
汚染された大地、海、大気。
至る所に見られた建造物は見るも無惨に破壊されている。
最先端の技術は失われ、人々は日々を生き抜くのに精一杯だ。
かつて地球上を支配していた人類だったが、
突然変異した巨大な昆虫、獣、人類。
放射能によって変異した生物達は、
疲弊した人類にとって新たな驚異となった。
もはやこの世界では人類は決して生態系の頂点では無い。
「じゃあ簡単な薬品の作り方を教えるわ」
首尾良くゲッコーを片付け、次の授業が始まる。
サバイバルの基本、便利な道具の作成だ。
サニーから指定された材料を集め、焚き火の熱を利用して加工する。
初めてだったが、中々上手く出来た。
「とりあえずこれで授業は終わり。
また縁があったら会いましょう。
そのライフルは記念にあげるわ」
サニーと別れた俺は、情報収集のために再びバーへ。
相変わらず入り口の前には老人が座っている。
バーに入ると、女主人と男が言い争っていた。
男の方はかなり荒い口調だが、手を出すような素振りは無い。
黙って見守ると、男は捨て台詞を残して店を出て行った。
『あの男は一体何者だ?』
「自分達の事をパウダーギャングとか呼んでいる元受刑者よ。
少し前に近くの刑務所で囚人達の反乱があって、
そのまま刑務所を拠点として暴れ回っているわ」
『危険では無いのか?』
「付近を通る人を襲ったりはしてるみたいだけど、
今のところは街の住人には危害は加えてないわ。
街が無くなるのは彼らにとっても不都合だから、
今のところは手は出さないみたいね」
『一体何をしに来たんだ?』
「【リンゴ】という人を探してるのよ。
彼らとトラブルがあったらしくてずっと探してるわ。
何度聞かれてもそんな人知らないと言ったら、
腹いせにお気に入りのラジオを壊して行ったわ」
『ちょっとそのラジオを見せてくれ。
俺はこう見えても手先が器用なんだ』
ラジオを分解して中を見てみると、
致命的な故障では無かったらしく、簡単に修理できた。
「ありがとう!これでお気に入りのラジオがまた聴けるわ」
『これぐらい簡単なもんさ。
で、そのリンゴの木はどこに生えてるんだ?』
「あなたは信用出来そうね。
この街のガソリンスタンドに隠れているわ。
もし良かったら力になってあげて」
女主人は声を潜めて答えた。
『病み上がりには良いリハビリになりそうだ。
とりあえず顔でも拝んでくるよ』
俺はその店を後にした。
道路沿いに少し南下すると寂れたガソリンスタンドを見付けた。
一応警戒しながら入り口のドアを開けると、
一人の男が驚いた顔をして飛び出して来た。
俺が敵では無い事を告げると、
男は安心したようだ。
思わぬ来客に気を良くしたらしく、
キャラバンを持ち掛けられた。
キャラバンというのはカードを使ったゲームで、
どこでも出来る手軽な賭けとして愛好されている。
俺も昔は結構ならしたもんだ。
お互いに小銭を賭け、ゲームが始まった。
『いつまでも隠れてはいられないだろ?』
「わかってはいるが、俺一人じゃ分が悪すぎる」
『二人ならどうだ?』
「死体が二つに増えるだけさ」
『じゃあ味方を集めたらどうだ?』
「俺は表を出歩けない」
『俺に任せろ。
サニーに声をかければ手伝ってくれるだろう』
「なぜそこまでしてくれるんだ?」
『俺はプロの運び屋なんだ。
報酬に見合うだけの仕事はする』
「大した報酬は出せないぞ?」
『なあに報酬はたった今いただいたさ』
そう言って俺は、スペードのエースを場に出した。
キャラバンは俺の圧勝だった。
「そういう事なら頼む」
リンゴはニヤリと笑った。
ガソリンスタンドを後にし、バーを目指す。
「手助けするのは問題無いけど、私を入れても三人ね。
もう少し仲間を集めましょう」
『あてがあるのか?』
「まずここの女主人のトルーディね。
彼女はこの街の顔役だから、
彼女を説得出来れば街の人達も手伝ってくれるわ。
あと雑貨屋が最近レザーアーマーを仕入れたそうよ。
これを借りれたら少し安心ね。
あと入り口に座ってるイージー・ピート。
彼はダイナマイトを持ってるって噂よ。
でも、爆発物の知識が多少は無いと渡してはくれないでしょう。
最後に医者のバックアップも必要ね。
きっと怪我人が出るでしょうから。」
『そこは俺が何とかやってみるよ。
仕事だからな』
とりあえず仲間が集まったら合流する事とし、サニーと別れた。
最初に酒場の女主人のトルーディに声をかけた。
さすがにラジオの礼に命を借りるというわけにはいかなかったが、
どちらにせよギャングを何とかしないといけないと思ったらしく、
協力してくれる事になった。
街の住人にも声をかけてくれるそうだ。
次はイージー・ピートに話をしよう。
彼ならいつもこの店の外の椅子に座っている。
そう思って表へ出ると、今日に限ってあの陽気な老人の姿が見えない。
まあまた後で探してみよう。
次はバーの隣の雑貨屋へ行ってみた。
『ギャングの襲撃があるんだが、街の住人で協力して撃退したい。
あんたが仕入れたレザーアーマーを貸してくれないか?』
「俺が取引をする相手は街の住人でもギャングでも問題無くてね。
あんた達に協力するメリットはあるかい?」
中々したたかな男らしく、一筋縄ではいかないようだ。
銃でも突き付ければ簡単に渡すだろうが、それではギャングと変わりない。
『ああそうかい。
それなら街を占領したギャング達相手に商売するんだな。
もっとも、ギャングがまともに取引してくれるとは思えないが』
「おいおいおどかすなよ。
冗談だよ冗談、こいつを持って行ってくれ。」
中々状態も良いレザーアーマーだ。
これなら多少の銃撃にも耐えれるだろう。
勿論頭を撃ち抜かれたら意味は無いが。
『すまないな。
とりあえず借りて行くぜ』
「ギャングを倒したらそいつの装備を持ってきてくれよ。
適正価格で買い取るぜ」
やはりしたたかな男だ。
次は俺を助けてくれた医者だ。
彼は快く予備のスティムパックを分けてくれた。
足が悪いらしく、一緒に戦う事は出来ないとの事だったが、
それだけでも十分助かる。
体を張るのは若い奴で良い。
老人に危険な行為をさせる必要は無い。
再びバーに戻ると入り口に例の老人が座っていた。
『ダイナマイトを持っているという話だが?』
「ああ多少ならな。
だが素人には渡せんぞ」
『俺も多少なら爆発物の知識はある。
運び屋は何でも運ぶからな』
「そういう事ならまあ良いだろう。
隠してあるから掘り出して準備しておくよ」
『すまないな、助かる』
「上手くいったら酒でも奢ってくれよ」
老人は歯の無い口で微笑んだ。
住人の協力を取り付けた俺は、
ガソリンスタンドへと報告に向かった。
『依頼人は無事か?
街の住人が助けてくれるそうだ』
「本当か!正直もう諦めかけていたが、
街の人達が手伝ってくれるなら何とかなるかもしれない。
本当に感謝する!」
『言っただろ、報酬に見合うだけの仕事はするってな。
もうあまり時間が無い。
そろそろ待ち伏せ場所へと移動するぞ』
バーの女主人と打ち合わせた待ち合わせ場所には、
既に数名の住人が待機していた。
老人からダイナマイトを5本渡される。
「奴らを吹っ飛ばしてやれ!」
老人の声に反応するかのように、
遠くからパウダーギャング達がやってくるのが見えた。
どうやら相手は6人のようだ。
バーで女主人と言い争っていた男の姿も見える。
どうやらあの男がこの集団を指揮しているようだ。
待ち伏せが見事に成功し、
こちら側が先手を取ることが出来た。
相手はギャング、こちらは一般人とは言ったものの、
どちらにせよ今の世界を生き抜いている人間だ。
銃の取扱は大抵の人間が知っているし、
腹を括ればそこまでの戦力差は無い。
イージー・ピートもマグナムを構えて自ら参戦だ。
こちらの作戦が当たり、先手を取る事が出来たため、
次々にギャングが倒れていく。
こちら側は死傷者を一切出す事なく、
最後に残った一人に銃を突き付けた。
「てめえら!俺の仲間が黙っちゃいねえぞ!」
『お前達を撃退した噂が広まれば、
仲間とやらもそう簡単に手は出せないだろう。
どうせ好き勝手やってる奴らなんだ。
危険を冒してまでわざわざお前の仇討ちに来るとは思えないがな』
「た、、、たのむ、、、見逃してくれ!」
『なあに、俺もついこの間頭に弾丸を撃ち込まれて一度死んだところだ。
運が良ければお前も生き返れるさ。
なあ、ドクター?』
後方でバックアップに回っていた医者の方に目をやると、
彼は首をすくめて頭を左右に振った。
『運が無かったな。
ドクターはギャングの治療はお断りらしい』
ゆっくりと右手の人差し指に力を入れると、戦闘の終わりを告げる銃声が鳴り響いた。
「いやー本当に助かった、あんたは命の恩人だ。
こいつは報酬だ、受け取ってくれ」
『追加報酬か、悪いな』
「俺はしばらくこの街に滞在して、ベガス地区の本社に戻る。
もし近くに来る事があったら是非立ち寄ってくれ。
本当に助かったよ」
『一つ大きな仕事があるんでね。
まあ近くに行く事があれば顔ぐらいは出すとするよ』
この男とはまた顔を合わせる事もありそうだ。
----------------------------------
いやとりあえず何となく初日のプレイ内容を書き始めてみました。
正直かなりゆっくり進んだんで、これぐらいならすぐ終わるだろうと。
結果、12000文字分書いても半分も書けませんでした。
嫁に読ませたところ、「うん、長い」と言われましたので、
今回第一話としたのはさらにその半分です。
気が向いたら続きを載せようと思いますが、
多分そのうちプレイに追いつかなくなって消えると思います。
職業は運び屋だ。
俺は普通の運び屋が受けないような危険な依頼でも受けるようにしている。
人の命がゴミ屑のように消費されるこの世界。
隣町にラブレターを届けるのも、
地雷原に手榴弾を届けるのも危険度に大した差は無い。
それなら少しでも俺の腕を高く買ってくれる仕事を受けた方が良い。
それが俺のポリシーだ。
だが今回の仕事だけは受けるべきじゃなかった。
俺がそう確信した時、俺をハメた男の拳銃が火を噴いた。
「おや気付いたか。
気分はどうだい?
あんたは頭を撃ち抜かれて埋められていたんだよ。
それをヴィクターが掘り出してここまで運んできた。
一応完璧に復元したつもりだが、何しろ頭に鉛弾をぶち込まれていたからな。
あまり無理はしない方が良いだろう」
見慣れない天井に気付き体を起こすと、
医者らしき男が口を開いた。
『あんたが助けてくれたのか?
すまない、死ぬかと思ったぜ。
あんたは命の恩人だ。』
「礼ならヴィクターに言ってくれ、
わしは医者としての仕事をやっただけに過ぎない。
悪いがあんたの荷物を見せてもらった。
どうやらハメられたらしいな」
『ああ、高い報酬につられてハメられちまった。
本当に助かった。
さっそくで悪いが、次の仕事が待ってるんだ。
この恩は決して忘れない』
「そんな体で大丈夫か?」
『大丈夫だ、問題ない。
なあに簡単な仕事だよ。
俺をハメたスーツの男に鉛弾を届けてやるだけだ』
「それなら仕方がない。
これを持って行け」
医者が見慣れない端末を差し出した。
どうやら腕に装着するようだ。
「これはPip-Boy3000という、Vaultの住人に与えられる個人端末だ。
わしにはもう必要無いが、あんたの仕事には必要だろう」
『ありがたくいただいておく。
仕事が終わったら酒でも飲もう』
「一つだけ言っておく、二度と死ぬなよ」
俺は軽く頷き、病院を後にした。
表に出ると、派手な音を鳴らしながらロボットが歩いていた。
この【ヴィクター】というロボットが俺を助けてくれたらしい。
中央のモニターに保安官の映像が表示されている。
「ヤアみすたー!頭ハ大丈夫カイ?」
『おかげさまでな。
一週間前の晩飯は憶えてないが、
昨夜の晩飯はバッチリだ。
あんたが俺を運んでくれたらしいな?
ありがとう、助かったよ保安官』
「ナアニ礼ハイラナイ。
私ハ自分ノ仕事ヲ果タシタダケサ」
『あんたもプロなんだな。
その姿勢、俺も見習わせてもらうぜ』
鋼鉄の保安官に礼を言い、俺はその場を後にした。
本来ならすぐにでもあの男にプレゼントを届けてやりたいところだが、
残念ながら届け先の住所が不明だ。
とりあえず情報を収集する必要がある。
俺は街の中央部にあるバーへと向かった。
バーの入り口には老人が座っている。
軽く挨拶を交わし店内へ入ると、
犬を連れた女性が声をかけてきた。
こんな田舎町には似つかわしくない中々良い女だ。
背中に背負っている銃さえ無ければだが。
サニーというこの女性はこの地域の自警団のような仕事をしているらしく、
街の周囲の驚異から街を守っているようだ。
どうやら銃の扱い方と簡単なサバイバル術を教えてくれるらしい。
情報収集も大事だが、その前に命を守る技術だ。
せっかくなので彼女の授業を受ける事にした。
「まずは裏で射撃の訓練をしましょう」
サニーから渡されたバーミントンライフルで、
サンセットの空き瓶を数本撃ち抜いた。
古い銃だが良く手入れされている。
どうやら射撃については合格点を貰ったらしい。
「私はこれから井戸の周辺のゲッコーを退治に行くけど、あなたも来る?
大した事無い相手よ。
二人ならすぐ終わるわ」
彼女ならトカゲ相手に護衛など必要無いだろうが、
せっかくの美女の誘いだ、断るのも野暮ってもんだろう。
井戸の近くには入植者の女性が倒れていた。
残念ながら既に事切れている。
ゲッコーに襲われたのだろう。
このクソったれな世界では日常茶飯事だ。
「危ないからこちら側には来ないようにって言ってたのに」
サニーが呆れ気味に呟く。
この世界では日常的に命が失われている。
世界を包んだ核の炎は放射能を撒き散らした。
シェルターで難を逃れたわずかな人類が再び地上に姿を現した時、
世界はその姿を変えていた。
汚染された大地、海、大気。
至る所に見られた建造物は見るも無惨に破壊されている。
最先端の技術は失われ、人々は日々を生き抜くのに精一杯だ。
かつて地球上を支配していた人類だったが、
突然変異した巨大な昆虫、獣、人類。
放射能によって変異した生物達は、
疲弊した人類にとって新たな驚異となった。
もはやこの世界では人類は決して生態系の頂点では無い。
「じゃあ簡単な薬品の作り方を教えるわ」
首尾良くゲッコーを片付け、次の授業が始まる。
サバイバルの基本、便利な道具の作成だ。
サニーから指定された材料を集め、焚き火の熱を利用して加工する。
初めてだったが、中々上手く出来た。
「とりあえずこれで授業は終わり。
また縁があったら会いましょう。
そのライフルは記念にあげるわ」
サニーと別れた俺は、情報収集のために再びバーへ。
相変わらず入り口の前には老人が座っている。
バーに入ると、女主人と男が言い争っていた。
男の方はかなり荒い口調だが、手を出すような素振りは無い。
黙って見守ると、男は捨て台詞を残して店を出て行った。
『あの男は一体何者だ?』
「自分達の事をパウダーギャングとか呼んでいる元受刑者よ。
少し前に近くの刑務所で囚人達の反乱があって、
そのまま刑務所を拠点として暴れ回っているわ」
『危険では無いのか?』
「付近を通る人を襲ったりはしてるみたいだけど、
今のところは街の住人には危害は加えてないわ。
街が無くなるのは彼らにとっても不都合だから、
今のところは手は出さないみたいね」
『一体何をしに来たんだ?』
「【リンゴ】という人を探してるのよ。
彼らとトラブルがあったらしくてずっと探してるわ。
何度聞かれてもそんな人知らないと言ったら、
腹いせにお気に入りのラジオを壊して行ったわ」
『ちょっとそのラジオを見せてくれ。
俺はこう見えても手先が器用なんだ』
ラジオを分解して中を見てみると、
致命的な故障では無かったらしく、簡単に修理できた。
「ありがとう!これでお気に入りのラジオがまた聴けるわ」
『これぐらい簡単なもんさ。
で、そのリンゴの木はどこに生えてるんだ?』
「あなたは信用出来そうね。
この街のガソリンスタンドに隠れているわ。
もし良かったら力になってあげて」
女主人は声を潜めて答えた。
『病み上がりには良いリハビリになりそうだ。
とりあえず顔でも拝んでくるよ』
俺はその店を後にした。
道路沿いに少し南下すると寂れたガソリンスタンドを見付けた。
一応警戒しながら入り口のドアを開けると、
一人の男が驚いた顔をして飛び出して来た。
俺が敵では無い事を告げると、
男は安心したようだ。
思わぬ来客に気を良くしたらしく、
キャラバンを持ち掛けられた。
キャラバンというのはカードを使ったゲームで、
どこでも出来る手軽な賭けとして愛好されている。
俺も昔は結構ならしたもんだ。
お互いに小銭を賭け、ゲームが始まった。
『いつまでも隠れてはいられないだろ?』
「わかってはいるが、俺一人じゃ分が悪すぎる」
『二人ならどうだ?』
「死体が二つに増えるだけさ」
『じゃあ味方を集めたらどうだ?』
「俺は表を出歩けない」
『俺に任せろ。
サニーに声をかければ手伝ってくれるだろう』
「なぜそこまでしてくれるんだ?」
『俺はプロの運び屋なんだ。
報酬に見合うだけの仕事はする』
「大した報酬は出せないぞ?」
『なあに報酬はたった今いただいたさ』
そう言って俺は、スペードのエースを場に出した。
キャラバンは俺の圧勝だった。
「そういう事なら頼む」
リンゴはニヤリと笑った。
ガソリンスタンドを後にし、バーを目指す。
「手助けするのは問題無いけど、私を入れても三人ね。
もう少し仲間を集めましょう」
『あてがあるのか?』
「まずここの女主人のトルーディね。
彼女はこの街の顔役だから、
彼女を説得出来れば街の人達も手伝ってくれるわ。
あと雑貨屋が最近レザーアーマーを仕入れたそうよ。
これを借りれたら少し安心ね。
あと入り口に座ってるイージー・ピート。
彼はダイナマイトを持ってるって噂よ。
でも、爆発物の知識が多少は無いと渡してはくれないでしょう。
最後に医者のバックアップも必要ね。
きっと怪我人が出るでしょうから。」
『そこは俺が何とかやってみるよ。
仕事だからな』
とりあえず仲間が集まったら合流する事とし、サニーと別れた。
最初に酒場の女主人のトルーディに声をかけた。
さすがにラジオの礼に命を借りるというわけにはいかなかったが、
どちらにせよギャングを何とかしないといけないと思ったらしく、
協力してくれる事になった。
街の住人にも声をかけてくれるそうだ。
次はイージー・ピートに話をしよう。
彼ならいつもこの店の外の椅子に座っている。
そう思って表へ出ると、今日に限ってあの陽気な老人の姿が見えない。
まあまた後で探してみよう。
次はバーの隣の雑貨屋へ行ってみた。
『ギャングの襲撃があるんだが、街の住人で協力して撃退したい。
あんたが仕入れたレザーアーマーを貸してくれないか?』
「俺が取引をする相手は街の住人でもギャングでも問題無くてね。
あんた達に協力するメリットはあるかい?」
中々したたかな男らしく、一筋縄ではいかないようだ。
銃でも突き付ければ簡単に渡すだろうが、それではギャングと変わりない。
『ああそうかい。
それなら街を占領したギャング達相手に商売するんだな。
もっとも、ギャングがまともに取引してくれるとは思えないが』
「おいおいおどかすなよ。
冗談だよ冗談、こいつを持って行ってくれ。」
中々状態も良いレザーアーマーだ。
これなら多少の銃撃にも耐えれるだろう。
勿論頭を撃ち抜かれたら意味は無いが。
『すまないな。
とりあえず借りて行くぜ』
「ギャングを倒したらそいつの装備を持ってきてくれよ。
適正価格で買い取るぜ」
やはりしたたかな男だ。
次は俺を助けてくれた医者だ。
彼は快く予備のスティムパックを分けてくれた。
足が悪いらしく、一緒に戦う事は出来ないとの事だったが、
それだけでも十分助かる。
体を張るのは若い奴で良い。
老人に危険な行為をさせる必要は無い。
再びバーに戻ると入り口に例の老人が座っていた。
『ダイナマイトを持っているという話だが?』
「ああ多少ならな。
だが素人には渡せんぞ」
『俺も多少なら爆発物の知識はある。
運び屋は何でも運ぶからな』
「そういう事ならまあ良いだろう。
隠してあるから掘り出して準備しておくよ」
『すまないな、助かる』
「上手くいったら酒でも奢ってくれよ」
老人は歯の無い口で微笑んだ。
住人の協力を取り付けた俺は、
ガソリンスタンドへと報告に向かった。
『依頼人は無事か?
街の住人が助けてくれるそうだ』
「本当か!正直もう諦めかけていたが、
街の人達が手伝ってくれるなら何とかなるかもしれない。
本当に感謝する!」
『言っただろ、報酬に見合うだけの仕事はするってな。
もうあまり時間が無い。
そろそろ待ち伏せ場所へと移動するぞ』
バーの女主人と打ち合わせた待ち合わせ場所には、
既に数名の住人が待機していた。
老人からダイナマイトを5本渡される。
「奴らを吹っ飛ばしてやれ!」
老人の声に反応するかのように、
遠くからパウダーギャング達がやってくるのが見えた。
どうやら相手は6人のようだ。
バーで女主人と言い争っていた男の姿も見える。
どうやらあの男がこの集団を指揮しているようだ。
待ち伏せが見事に成功し、
こちら側が先手を取ることが出来た。
相手はギャング、こちらは一般人とは言ったものの、
どちらにせよ今の世界を生き抜いている人間だ。
銃の取扱は大抵の人間が知っているし、
腹を括ればそこまでの戦力差は無い。
イージー・ピートもマグナムを構えて自ら参戦だ。
こちらの作戦が当たり、先手を取る事が出来たため、
次々にギャングが倒れていく。
こちら側は死傷者を一切出す事なく、
最後に残った一人に銃を突き付けた。
「てめえら!俺の仲間が黙っちゃいねえぞ!」
『お前達を撃退した噂が広まれば、
仲間とやらもそう簡単に手は出せないだろう。
どうせ好き勝手やってる奴らなんだ。
危険を冒してまでわざわざお前の仇討ちに来るとは思えないがな』
「た、、、たのむ、、、見逃してくれ!」
『なあに、俺もついこの間頭に弾丸を撃ち込まれて一度死んだところだ。
運が良ければお前も生き返れるさ。
なあ、ドクター?』
後方でバックアップに回っていた医者の方に目をやると、
彼は首をすくめて頭を左右に振った。
『運が無かったな。
ドクターはギャングの治療はお断りらしい』
ゆっくりと右手の人差し指に力を入れると、戦闘の終わりを告げる銃声が鳴り響いた。
「いやー本当に助かった、あんたは命の恩人だ。
こいつは報酬だ、受け取ってくれ」
『追加報酬か、悪いな』
「俺はしばらくこの街に滞在して、ベガス地区の本社に戻る。
もし近くに来る事があったら是非立ち寄ってくれ。
本当に助かったよ」
『一つ大きな仕事があるんでね。
まあ近くに行く事があれば顔ぐらいは出すとするよ』
この男とはまた顔を合わせる事もありそうだ。
----------------------------------
いやとりあえず何となく初日のプレイ内容を書き始めてみました。
正直かなりゆっくり進んだんで、これぐらいならすぐ終わるだろうと。
結果、12000文字分書いても半分も書けませんでした。
嫁に読ませたところ、「うん、長い」と言われましたので、
今回第一話としたのはさらにその半分です。
気が向いたら続きを載せようと思いますが、
多分そのうちプレイに追いつかなくなって消えると思います。