Because I'm a surfer

サーファーだもの、しょうがない…。
「最高でしょう!」そんな波乗り人間特有の超ポジティブ思考コラム

シングルとトライ

2009-03-24 10:42:46 | 日記
ここ数回、フィン・システムについて書かましたが、
改めて読み返すと、いわゆる「ショートボーダー」にとっては
ちょっと関係がない内容だった気がして反省しています。
きっとショートボーダーは「ボックスフィン」が付いている
サーフボードなど持っていないのでしょう。
今度、FCSのフィンについての取材をするので
それまでちょっと待っていてください。

さて、今回もちょっと一般的ではない内容なのですが、
シングル・フィンのサーフボードをトライ・フィンに変えてみました。





湘南のベテラン・シェイパーの阿部さんにお願いして
以前に削ってもらったシングル・フィンのボードを
トライ・フィンに変更したのです。
面倒な作業を快く引き受けてくださった阿部さん、
ありがとうございました!

さて、僕は10年前にカリフォルニアで
「生ジョエル・チューダー」のサーフィンを見てから
すっかりシングル・フィンのマニアになりました。
彼のスムーズなラインはトライ・フィンのボードではできない
シングル・フィンならではのサーフィンだと思ったからです。

それから一本、また一本とシングル・フィンのボードが増え続け
今では6本のフィンが一つだけ付いたボードが手元にあります。
ジョエルはもちろん、トム・カレン、ロブ・マチャド、マロイ兄弟など
僕のアイドルたちもシングル・フィンでスタイリッシュなサーフィンを
さまざまなDVDで披露してくれています。

しかし、シェイパーのシングル・フィンに対する認識はかなり異なります。
特にディック・ブルーワー、トム・パリッシュといった
いわゆる60年代にリアル・タイムでシングル・フィンを削っていた
巨匠たちの意見は、とても印象に残りました。

ハワイのカウアイ島に住むディック・ブルーワーに
友人を通してシングル・フィンのピンテールを削ってほしいと頼むと
即座に「NO」という答えが返ってきました。
理由は「無駄だ」とのこと。
ディック・ブルーワーは電話先でこう言ったそうです。
「私たちシェイパーは、命を削っていいサーフボード、
いわゆる「トライ・フィン」を開発したんだ。
進化したものをどうして退化させる必要があるんだい?」
それでも、どうしてもブルーワーのレトロなミニガンが欲しかったので
3ヶ月間説得を続け、やっとシングル・フィンを削ってもらいました。
友人曰く、ブルーワーの機嫌は悪かったそうです。

マウイ島のトム・トムパリッシュと
シングル・フィンについて話した時も
ブルーワーと同じようなやり取りがありました。
トムは70年代前半にライトニング・ボルトのヘッドシェイパーを務め
彼の削った稲妻のディケールが入ったシングル・フィンのボードは、
いわゆる「パイプラインの代名詞」のような存在でした。
そんな彼だからこそシングル・フィンのサーフボードについて
肯定的な意見を持っていると思ったのですが、まったく逆でした。
シングル・フィンのボードのいい点を尋ねてみると
少し考えてトムは言いました。

「まったくないね」

こちらは返す言葉もありません。
彼曰く、シングル・フィンでできることは
必ずトライ・フィンでもできる。
さらにサーファーが「スムーズ」と感じるのは
波から得たパワーをロスしているだけ、とのことでした。

僕が今回、シングル・フィンをトライ・フィンに変えたのは
彼らの意見をそのまま真に受けたワケではありませんが、
少なからず影響があったことは確かです。
それに同じサイズのシングル・フィンのボードを所有していて
使い分けができなかったこともあります。
どちらにしてもフィン・システムを比較する
いい実験になったことは確かです。

昨日、セットで頭程度のポイント・ブレイクで
トライ・フィンに変えたボードを試してみました。

違いはパドルをしただけで体感できました。
テールがロックされたような安定感があり、
パドルのスピードも増したような気がしました。

さらにテイク・オフから波の「ハイ・ライン」
いわゆるフェイスの高い位置をキープできるのは、
シングル・フィンの時との大きな違いでした。
通常、シングル・フィンのボードはテイク・オフをした後、
完全に波のボトムに降りてからでないとターンができません。
しかし、トライ・フィンに変えたボードでは、
状況に応じてトップやボトムに降りる前に
進行方向を変えるターンが可能です。
さらにポジションが奥過ぎてスープに捕まった際、
シングル・フィンのボードではサイド・スリップが起こり
ワイプアウトしてしまうことが多かったのですが、
(ボードのテイル幅が狭いピンテールなのも原因)
トライ・フィンはスープの中でも確実に波のパワーを捕えて
それを推進力に変えてくれます。
結果としてスープから脱出できるのです。

こういった様々な変化をクルマの性能に置き換えて表現すると

「パワステが付いていない100キロしかスピードが
出なかったクルマが、パワステが付いてハンドルが軽くなり、
さらに130キロまででるようになった」

という感じでした。

こう言った感想を総合的に考えると
巨匠たちが言った言葉は真実だったような気がします。

ただし、トライ・フィンにしたことで
「ボードが走り過ぎてしまう」気がしました。

シングル・フィン特有の「ヌルッ」とした
波のパワーゾーンにへばり付くような滑り方はできません。
さらに下の写真のようにボードが先走りしないで、
ボトムでゆっくり波がホレてくるのを待っていられるのも
シングル・フィンだからこそできるようです。





これを「波のパワーを無駄にしている」と考えるか、
または「乗り味」と考えるかが、シェイパーと
サーファーの考え方の差なのではないでしょうか。

さらにカット・バックする際は、
後ろ脚がフロント・フィンの上にないと
レールが引っ掛かってしまい上手くターンできませんでした。
シングル・フィンの時はそれほどステップ・バックしなくても
ゆっくりとスムーズに旋回してくれていたような気がします。

僕の個人的な意見としては、
ポイントに人の少ないパーフェクトな波で
リラックスしたサーフィンをしたいならシングル・フィン。
混雑していてテイク・オフのポジション争いなどがあり、
ライディングのラインに人がいるような場合はトライ・フィン
といった選択がベストなのではないでしょうか…。

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1 コメント

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Unknown (たか)
2019-08-29 20:59:09
人それぞれ.
でも 違う.
人それぞれ