Il Volo Infinito

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愛と縁(えにし)の宝塚

2019年08月09日 | ステージ
またもチケットが流れてきて、東京宝塚劇場にて公演中の『壬生義士伝』を見てまいりました。
たいして観劇感想はありません。昔語りが入ります。ヅカ関係を知らない人はバック。

自由業なので、平日昼間の回のライブとかステージの券が、行けなくなった人から来たりする。
今の宝塚は全然わからないので、組と演目くらいはとネット検索。
壬生義士伝…?

それは…宝塚っぽくない題材だな…(^^;
原作未読ですが、内容は知ってる。
新選組が舞台。主役は近藤、土方、沖田、それ以外の名の知れた隊士でもなく、南部藩(盛岡)出身の吉村貫一郎が主人公。
貧しい暮らしに妻子を養えず、一念発起して脱藩し新選組に入隊。守銭奴と呼ばれながらも入った金を家族に送り続けるも、悲劇の最後が待っていた。
ざっくり言うと、そういう話です。
宝塚も死にネタは沢山あるけど、たいていは悲劇的でも美しく、残酷でも劇的に死ぬパターン。トップスターが演じるんだから当然ですよね。
でも吉村貫一郎の死にざまはそうじゃない。

宝塚は近年、コミックや映画、昔にはなかった題材を基にして舞台を作ってることは知ってました。
「ルパン三世」「るろうに剣心」「ポーの一族」、「オーシャンズ11」etc。
ヅカ風にかなり改変されるのも聞いてたけど、壬生義士伝を派手にはできんだろう(^^; どうするのかなと興味が沸いた。

派手なアメコミ映画も見るけど、好きな映画スターがマイナー系作品がメインで、暗くて地味極まりない映画が多い。ミニシアターで客が3人しかいない時があった(笑) なので暗いのは全然平気。
それに宝塚でしょ。ヅカの暗さなど私には輝き(言い過ぎ)

というわけで行ってまいりました。




泣いた


予想外に良かった。素晴らしかったです。初心者には新選組隊士がそろって踊るなどのヅカ関門があるんですが、私もあまりにしばらくぶりでちょっとビビりました(笑) でも下地があるのですぐ慣れたv
地味な話だし、後半は特に辛い展開。でも笑いを誘うシーンもあり、芸者衆が銀橋で総踊りするなど華やかな場面も。考えたら娘役がほとんど出ない話なので必要だよな。

トップのコンビは歌とお芝居が上手いと聞いて期待してたけど、本当に上手かった…。望海風斗さんと真彩希帆さん。
この役マジ難しいよ。全編南部訛りで話し、腰を低くして他の隊士にお酌したり、金に細かく、プチゆすりのようなこともする(わりと笑えるシーン) 通常トップスターに求められるカッコよさは無いキャラクターなんだよね。
でもそれもすべて家族のため。吉村一家の貧しさと、互いに思いあう絆の強さが描かれているのも感情移入しやすい。

娘役も大変。三番目の子供がお腹にいるのに入水自殺をしかける妻しず。口減らしすれば夫と二人の子供は食べられる。自分が死んだ後の肉を食べてくださいとまで…。
そもそも吉村の母親が、やはりその気持ちで食を断って餓死したことを悔いている。
現代では想像もつかない貧困。
そんな家族のためになら、守銭奴と呼ばれようが気にせずただひたすら金を送り続ける貫一郎。

私は家族ものに弱いんですよ(^^ゞ 始まってすぐに、こりゃやべえと思った。泣くって(笑)
貫一郎は剣の達人でもある。殺陣のシーンは、正直言って宝塚ではそんなに期待してなかった。父親と時代劇を見て育ったので、往年のスターの殺陣を見てる。
ところが上手いじゃん! すみません、甘く見てました! 
とくに望海さんは腰を低く落として、安定した構えの上で剣さばきが実際早い。いやびっくりした。

歌もいいです。メインの曲が2曲。「石を割って咲く桜」を望海さんが歌い、真彩さんがデュエットするシーンは美しく、ジンときた。

俺は死なない お前のために
俺は生きる お前のために

そう歌った彼の最後は、ここには書かないでおく。

終盤、この歌がリフレインされた時、サビのところで涙腺崩壊した


芝居が上手い人、歌が上手い人は、ヅカでも昔見たし、他の舞台にも沢山いる。
でも芝居心、歌心がある人って、そういないんだよね。心が入ってる芝居と歌を見せられる人は。
この人はできるひとだ。

雪組公演『壬生義士伝』『Music Revolution!』制作発表会パフォーマンス (ノーカット)


貼って良いのかな。不味ければ消します。

お次はショー。『Music Revolution!』
今の宝塚の人はみな本当に二次元だね。私が見てた頃は170㎝超えは数人だったけど、今は骨格が違う。
新選組隊士の等身がマンガだったわ(笑) ショーもトップコンビと二番手スターさんはわかるけど、なんかカッケー若手が多すぎて、追いきれなかったv

実はショーの方をより楽しみにしてたんですよ。最近、華やかさが欠けた生活だったんで。
楽しくてテンション爆上げだった。すごい踊ってた。めっちゃ華やかだった。
帰ってネサフしたら、やはり芝居が重い題材なので、ショーで元気回復したという感想が多いのね。

でも私は、芝居の方が良かったわ。

ダンスと振り付けも水準高くて、いやー踊る踊る。
ただショーとしては見ごたえあるけど、シーンに物語性がないんだよね。
ストーリーがあるショーを見慣れてたせいか、そこが少し物足りなかった。
あと場面ごとの人数が多すぎて(笑) もう少し減らして各場面に振り分ける方が見やすい。私には。
全員で踊る場面もあっていいけどね。
男役の燕尾服軍団はしびれた…、懐かしかった。雪組でもやるようになったんだ。

今を去ること30年ほど前、私は宝塚のとあるトップスターさんの組を4年程見てた時代があります。
当時はまだ宙組ができいない4組体制の時代。宝塚と東京の2劇場で、1年に1公演は各組で東京に来ない作品があり、関西まで行かなかったので見ていない作品もあります。

四季っ子だった私が、その頃つくづく四季の体制に嫌気がさしており(話せば長い)、もう東宝ミュージカル見るだけでいいかと思い始めてた頃。ふとした思い付きで宝塚を見て、「思ってたよりいい!」と開眼。ヅカっ子のほんの末端にぶら下がった時代でした(笑)

私が見ていたのは、「宝塚のフレッド・アステア」と呼ばれた故・大浦みずきさんが率いていた花組。
この頃の花組のショーは、ちょっと考えられぬ位のレベルだった。
劇団四季で高水準のダンサーを見てたけど、だんだんつまらなくなってた。技術力は高くても、優雅さや美しさ、何より物語を感じるダンスシーンじゃなくなってた。今は知らんよ。
大浦さんーナツメさんは、レベルというより次元が違ってた。別の空間を作り出してた。
優雅さも抜群だったけど、一人だけ空気を操ってた。
安寿ミラさん他、優れたダンサー花組に集まってた時代だが、それ以上にトップスターのナツメさんの元で、特殊な「ダンスの花組」の空間が作り上げられていた。
派手なシーンもあるけれど、スタイリッシュであまりキラキラをつけなかった。
羽も少な目だったんだよね。演目によっては。

いくぶん宝塚っぽくはなかったので、外部ミュージカルから入った私にはより入りやすかったけど、逆にもっと極彩色なショーがいい人は、他の組を見てたと思う。星組とか(笑)

そしてネットで「望海風斗」で出すと、「望海風斗 朝香じゅん」「だいもん ルコさん似てる」
などが出る。

ルコさん…?

ナツメさんがトップのときに、2番手だった朝香じゅんさん。通称ルコさん。
私、ナツメさんじゃなくてルコさんのファンクラブに入ってたんだよ(笑)

お二人が似てるというのは今のファンには通説らしい。今回初めて見たけど、よくわからなかったわ。
声質と歌唱法は違うけど、確かに歌は二人とも上手い。ルコさんの歌声は本当によく響いて、歌詞が明瞭。大好きでしたね。
ナツメさんのダンスとルコさんの歌。大人っぽくシックな芝居が多く、キラキラすぎるとついていけない女子だった私に大フィットした組だった。

2番手で退団してしまったルコさん。経緯についてあることないこと飛び交ったけど今更話題にはしない。
ただ、とにかく爽やかだったよ。最後のお茶会でも、自分だけでなくファンにも悲しい顔をさせないくらい潔くきっぱりしてた。

大浦・朝香体制の花組だけで、私の宝塚時代は終わりました。その後ヤンミキ時代も行けるときは行ったし、好きな作品もあるけれど。あの濃い4年で充分だったのかもしれない。

しかし30年近くの時を経て見たスターさんが、かつてファンだった人に似てるとか、どういうお導きか(笑)


Dancing to Benny Goodman(Mizuki Oura)


映像は古いが、伝説のベニーグッドマン。海外の振付師の手によるもので、ニューヨーク公演でも踊った。宝塚らしくはないんだが、中詰め少し退場するだけで6分間踊りっぱなしの大浦みずきの動きはもはや人外でした。動きに切れ目がないんだよ。ほぼ息をせずに見てた(笑) 片手をずっと帽子の縁に添えたまま踊るのはキツイよ! 生で見れたことが財産。




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