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アウトレイジ ビヨンド(映画)

2012-10-14 02:30:00 | 映画
今回の記事は『アウトレイジ ビヨンド』(2012年、監督:北野武)です。
北野武監督がバイオレンス描写と豪華キャストを起用し、ヤクザ社会の壮絶な抗争を描き絶賛された『アウトレイジ』の続編。
出演陣は大変に豪華! 前作からのビートたけし、三浦友和、加瀬亮、小日向文世らに加え、西田敏行、松重豊、高橋克典、桐谷健太らが新たにキャストに加わってます。
「全員悪人」のコピーに偽りはなく、出演者みんなホントに悪そうでクラクラする。

■内容紹介 ※goo映画より
5年前の抗争を経て、暴力団・山王会は若頭だった加藤が会長の座につき、政界をも恐れる巨大組織になっていた。今では大友組の金庫番だった石原が若頭として山王会を牛耳っている。
そんな中、刑務所から大友が出所してくる。死んだというのは刑事の片岡が流したニセ情報だったのだ。
片岡は山王会に恨みを持つ木村と大友を近づけ、二人を関西の暴力団・花菱会に紹介する。片岡は二人を使って山王会の力を弱めようと画策していた…。

全員悪人 完結。

一番悪い奴は誰だ?


アウトレイジ ビヨンド

アウトレイジ ビヨンド

アウトレイジ ビヨンド


■感想
世界の北野武監督のヤクザ映画の続編です。
北野監督の映画としては初めて続編を作った作品なのだそうです。へーそうなんだ。
相変わらずの渇いたような印象を受ける映像美はかっこ良く、淡々とした描写でバイオレンスシーンを描く演出は上手い。

『~ビヨンド』にハラドキするようなシーンはないのだけれど、不思議なほど退屈するようなことが全くなかった。あっという間にエンドロールまで時間が経過した感覚で、映画時間が短く感じたぐらいです。(上映時間は112分あり、長さとしては標準的な映画の長さ=約2時間はちゃんとある作品です)
これは演出・構成・脚本が優れている証なんだろうなぁと思います。

今作は前作に比べると目を背けたくなるような直接的なバイオレンス描写は少なく、この手の映画が苦手な人でも楽しめるかもしれない。それでも脳天ドリル、顔面ピッチングマシン撲殺、銃撃襲撃など過激なバイオレンスシーンはあるので注意は必要です。
どちらかというと今作は直接的な暴力描写より、言葉による応酬の方が多かった。
暴力的な言葉のやり取りは観てて小気味良かった。
全員悪者のコピーに偽りなしの本当に悪そうな人たちしか出てこない悪どい行為は何だか爽快にすら感じる。

たけし演じる大友の何を仕出かすかわからない危険な雰囲気はたまらない。
静かな中にとんでもない悪さを感じ、ゾクゾクしてしまう。
終盤の大友が加藤の横へ座るシーンの演出ウマすぎる。騒々しい中での無音から効果音のみの演出。思わず魅入ってしまう。

出演シーンが大幅に増えた小日向文世さん演じる刑事片岡の印象が強く残った。作品としては大友が主役であることは間違いないのだけれど、片岡がもうひとりの主役と言えるぐらいの物語のリードを担っている。
それにしてもこの人、人当たり良さそうに見えて悪い人だわホント。

今回新キャストに加わった西田敏行さんの悪演技、凄みがすごい。

ラストは予測不能で、無情感が残り何ともいえない気持ちにさせられる。けれどこれで完結なのだとするとちょっと何かが残った感じになるラストかなーとも正直思う。

■登場人物ちょいメモ
大友(ビートたけし)
…元山王会配下大友組の組長。5年前の抗争で山王会を破門された上、組を潰されてしまう。
その後刑務所に服役中に腹部を刺され死亡したと言われていたが……。
再びヤクザの抗争の世界へと出てきた大友はどこか達観しており穏やか。しかし内に秘めた危険度は計り知れない。

関東最大暴力団組織・山王会
加藤(三浦友和)
…山王会二代目会長。現代的な金儲けに主眼を置いた組織改革により山王会を政界にまで影響を及ぼす規模にまで拡大させる。
前会長の死に関しての黒い噂が山王会古参幹部の間で囁かれている。なおケチな性格。

石原(加瀬亮)
…山王会若頭。元大友組の金庫番で典型的なインテリヤクザ。度胸の据わった大物ヤクザの面々と比べると若干の小物感あり。態度はでかい。
大友の怖さを誰よりも知っている男なので、あの取り乱し様も仕方ないのかもしれない。その最後にはちょっと同情してしまう。

舟木(田中哲司)
…山王会幹部。前会長のボディガードだった男だが異例の大出世をとげ幹部にまで取り立てられる。
口数が少なく何を考えているのか分からない不気味さを持つ。
度胸のある男だとは認めるが、個人的には一番やったことを許したくない人物。

富田(中尾彬)
…山王会古参幹部。年功よりも実績を重視し古くからの組の功労者を冷遇する加藤・石原のやり方に不満を抱く。
中尾さんにはちょいワルのイメージがもともとありますが、アウトレイジではそれとは違った人間臭いヤクザの悪さを醸し出しているのが魅力的。名優だなぁと思います。もちろんねじりマフラーは無し。

白山・五味(名高達男・光石研)
…山王会古参幹部。富田を兄貴と慕う。
ラストで地味に甘い汁をかっさらうのだが、ずるいよ、アンタたち。

関西最大暴力団組織・花菱会
布施(神山繁)
…花菱会会長。快活で話の分かる好人物風だが、その実、口約束など平気で破り利益へ繋げる権謀術策に長ける。
商売人気質な印象があるのはやはり大阪という土地柄なのか。『アウトレイジ2』で一番やり手だったのはこの人っぽい。

西野(西田敏行)
…花菱会の大物若頭。穏やかな交渉の場も一転して凍りつかせる話術を持つ。
西田敏行さんの悪演技、半端ないです。悪どさでは『アウトレイジ2』で最高の人物かも。

中田(塩見三省)
…花菱会若頭補佐。西野との息のあった恐喝術を見せる武闘派ヤクザ。
裏のあるヤクザが多い中、ここまで見た通りのキャラというのはある意味で珍しい。

城(高橋克典)
…花菱会組員。淡々と対象を消し去る殺しのプロ。
作中ほぼセリフなし。「…………」

木村一派
木村(中野英雄)
…元村瀬組若頭。前作で大友に顔を切られたことの復讐を果たす。
現在はバッティングセンターを営むカタギに戻っていたが、刑事・片岡にある話を持ちかけられて山王会に対してけじめをつける覚悟を決める。
元村瀬組の組員を親に持つ嶋・小野の面倒を見ていたり、荒れた花菱会での交渉の場で覚悟を見せつけ大友を助けたりと、実直な性格が伺える。

嶋・小野(桐谷健太・新井浩文)
…ヤクザに憧れ木村を慕うチンピラの青年。ヤクザの世界においてはあらゆる面で経験値不足。
カレーに夢中になりながら大友を待ってたりと少年ぽさが残っていて可愛い。アウトレイジにおいて唯一の癒しキャラ的存在。それだけに……。

刑事
片岡(小日向文世)
…マル暴のベテラン刑事。人の良さそうな印象とは裏腹に山王会、花菱組を上手く利用し共倒れさせようと画策する。
ギャップも手伝いヒトキワわっる~い人物に思えてしまう。こんな悪そうな小日向さん、他の映画じゃ絶対に見られない。

繁田(松重豊)
…片岡の後輩刑事。目的のためヤクザと親交を深めるような片岡のやり方に疑問を抱いている。

その他
張大成(金田時男)
…韓国フィクサー(事件の調停やもみ消しをして報酬を得る黒幕的人物)。どういう経緯かは不明だが大友に何かしらの恩があるようで、出所後の大友の面倒を見る。

■予告編


映画データ 
題名 アウトレイジ ビヨンド 
製作年/製作国 2012年/日本 
ジャンル 犯罪/ドラマ/バイオレンス 
監督 北野武 
出演者 ビートたけし
西田敏行
三浦友和
小日向文世
加瀬亮
桐谷健太
新井浩文
松重豊
中野英雄
名高達男
光石研
田中哲司
高橋克典
中尾彬
塩見三省
神山繁、他 
メモ・特記 R15+指定
シリーズ第2作 
おすすめ度★★★★
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)

■Link
+⇒公式HP(Japanese)
+⇒アウトレイジ ビヨンド - goo 映画

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2 コメント

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下劣な男たちの カッコ悪くも カッコいい生き方 (zebra)
2013-03-17 21:40:01
裏切り 陰謀 罵声 前作もよかったが 今回の続編もよかったです。

加藤のやり方で 昔からの古参幹部たちは 新参の石原に冷遇されても なんとも思わず ないがしろにし過ぎたのが かえって 組の結束が弱くなったことが 三王会が衰退のきっかけだったようにもおもえました。


>花菱会会長。快活で話の分かる好人物風だが、その実、口約束など平気で破り利益へ繋げる権謀術策に長ける。
 花菱会(関西)で 神山繁さん演じた会長 重鎮ならではの 心理掌握話術が 巧みでした。 敵の組の古参幹部が協力してきたってコトは 三王会は "結束力が弱くなっとるわ"と 見抜いて あざ笑ってたに違いない。 
 
加藤にも 
「一度人を裏切ったやつは 何回でも裏切りよる」
こう言って 加藤は疑心暗鬼にさせ・・・むろん 石原や他の幹部組員は おそらく今後やってただろうし、言うとおりなのでしょうが・・・
 自分も前会長の関内を射殺した経緯があるため とうぜん組員を信用ができなくなる・・・
 この一言で 完全に バラバラになった三王会の結束は元通りに戻らなくなったと見ていいでしょうし。

組がつぶれた者同士で結束した大友と木村。
奇妙な結束でしたが おたがいわだかまりが なくなってたので ほんのちょっぴりの"美しさ"を感じました。

最も下劣な男は なんといっても 小日向文世さん演じたマル暴の片岡でしたね・・・こいつには 下劣すぎて ムカムカです。 

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Unknown (Unknown)
2012-10-14 12:48:51
続きを観たいと思わせますよねー
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