ろぐろぐ音楽ブログ

a-kiという人間の手による、J-POPあたりをメインに色々好き勝手書いてる適当ブログ。

椎名へきる全アルバム感想③「Sadistic Pink」「10 Carat」「Wings of Time」「Clear Sky」

2020年04月19日 14時07分57秒 | 感想・レビュー(アルバム)
9th〜12thまで。木根さんプロデュースでやっている頃です。この時期は全盛期を終えてはいましたが、人気激減ってほどではなく武道館公演もやれていたりしたようです。


2002.03.13 お気に入り度:★9.5
1. DREAM THEATER  2. 眠れる森  3. 無邪気な朝と無慈悲な夜に  4. あしたは消えない  5. 嵐のち晴れ  6. Precious things  7. Jungle Life  8. 君の強さ  9. Sadistic Pink  10. Future Star  11. Hello & Good-bye
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
TM NETWORK木根尚登さんをプロデューサーに迎えて、シングル4ヶ月連続リリースを決行した後に出されたアルバム。
木根さんプロデュースなだけあってか、純粋にメロディーがいいのが揃っているのが特徴の今作。シングル4作「Jungle Life」「嵐のち晴れ」「眠れる森」「あしたは消えない」はもちろん、アルバム曲でも「君の強さ」「Future Star」などシングルに切れるレベルの楽曲があったり、導入部的な役割の「DREAM THEATER」もめっちゃ期待を持たせてくれる感じでいいし、異色作なタイトルだけどシリアスな歌詞と曲のマッチングが秀逸な「無邪気な朝と無慈悲な夜に」、ライブ向けの楽曲「Sadistic Pink」まで用意していて、手抜かりなし。
シングルではアッパーな「眠れる森」「Jungle Life」が共に強く、アルバムの中核を担ってます。特にドラマティックな木根メロが秀逸な「眠れる森」はライブ向けっぽい感じがないにもかかわらずライブでよく演奏される曲。
ラストの「Hello & Good-bye」は、初期水樹奈々のシングルを作っていた住吉中さん作曲の しんみりとした名バラード。住吉さん以外にも作詞で小室みつ子さんがいたりと、へきる姉さんにしては意外な作家さんもいますがみなさん実にいい仕事をしていらっしゃいます。
作家でいうともうひとつ、今でもバンドメンバーとして大活躍の木村建さんがここで初登場。以後のアルバム全てで、ギタープレイヤーとしてだけでなくキーポイントとなる曲を提供してくれます。
 
ロック要素は5thアルバム以降で比べると若干控えめといえばそうですが、「君の強さ」の妙にギターが効いたイントロとかあるし、アルバムの着地点としては強めのポップスロックに仕上がっているので、これまでの流れであまり違和感なく聞けるかなと。
 
木根さんとはこれ以降ソニー離脱までずっとお付き合いすることに。
 
ちなみに今作と前作の間に「愛のカタチ」という明石昌夫さんサウンドプロデュースのシングルも出していますが雰囲気が全然違うので収録されていないのです。カップリング含めてとっても爽やかビーイングちっくで明石さんサウンド全開の良シングルなので、ビーイング好きな人はそっちも要チェック(カップリングはベスト含めアルバム未収録)。


2003.03.12 お気に入り度:★8.5
1. RESET  2. MOTTOスイーツ  3. SNOW fall  4. ROCK STAR  5. Anniversary  6. LOVE TOMORROW  7. feel for you, beat for me  8. pure ~いつか、きっと~  9. Red  10. believe
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
10枚目のアルバムで、10曲入りなので「10 Carat」。前作に続いて木根さんプロデュース。
00年代へきるロックがここで確立した感じ。軽快ポップスロックがメインでありつつ、前作で足りなかったヘヴィな一面もバランスよく見せてくれています。シングル曲もアルバム曲も充実した出来栄え。
 
軽快ポップスロックなのが、冒頭の爽やか春ソング「RESET」(作詞が森雪之丞さん!で、作曲DAITAさん)、歌詞のインパクトが大すぎるダンスロックチューン「MOTTOスイーツ」、夏らしさ全開の「LOVE TOMMOROW」、洋楽テイストの爽やかな「feel for you, beat for me」。この辺はもはやお手の物といった感じ。
 
ヘヴィな曲たちがやっぱりこのアルバムのキモ。一番ハードでへきる姉さんが好きそうなのが「ROCK STAR」。1分超のオルガンソロイントロが印象的な「Red」は木根さん曲をアレンジで疾走ロックに仕立て上げていて、これもいいカンジ(ドラムはSHOW-YAの角田美喜さん)。木村建さん作編曲の「SNOW fall」はメロディックロックバラードといった趣で、アルバム曲ながら20周年ライブでも披露されるくらいの名曲。ドラムはLUNA SEA真矢さんが久しぶりに叩いてくれております。そしてラストの「believe」ね。重めの言葉とサウンドでありつつ、きちんと前を向いてて希望の光が差してくる感のある ラストにふさわしい楽曲。
 
合間に置かれている「Anniversary」「pure」のバラード2曲は箸休め的なポジションですが、それにしてはどっちも良曲で本当に捨て曲なし。
タイトルに恥じない、珠玉の10曲が入っているアルバムになっているなと思います。

 
2004.04.07 お気に入り度:★9
1. Jumping Slash  2. 電撃ジャップ  3. 青い人魚  4. Color  5. レヴェランス  6. Little by Little  7. Always  8. Wings of Time  9. スタンバイ!  10. PROUD OF YOU
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
タイトルがナイスな11枚目。木根さんプロデュース第3弾。
ポップスロックを軸にしつつ、浅倉大介サウンドの曲があったり、ストリングスが絡んだファンタジックロックがあったり、ライブ向け楽曲があったりとバリエーション増やしてみつつ、なんといっても曲が純粋にいいのが揃ってる。
冒頭の「電撃ジャップ」「Jumping Slash!」、そして「スタンバイ!」はライブ定番のアップテンポ。久しぶりの本人作曲「Color」も声の伸びを活かしたナイスなポップロック。「レヴェランス」は編曲が浅倉大介さんのデジタルチューン。作曲は木根さんですが、メロディー含めて浅倉大介さんっぽい曲で へきる姉さん的には異色作ですが非常にいいアクセントになってます。
「青い人魚」と「Always」はどちらもクライマックスといえるドラマティックなアップテンポナンバー。ラストは大陸的スケールの大きさをも感じるバラード「PROUD OF YOU」で壮大にクローズ。アウトロの余韻がいいですほんと。
 
アルバム曲も充実している割にアルバムタイトルを冠した曲が一番印象が薄いのと、もうちょい全体的に重めの音でもよかったような、というのはあるけど 全体的にはタイトル通りの爽快感あふれるアルバム。
 
この時期カップリングもよくて、「Rolling Lonely Diamond」(スタンバイ! C/W)、「ファンタジア」(レヴェランス C/W)はファンなら絶対おさえておきたい爽快アッパーチューン。アルバム未収録なうえに、だんだん売れなくなってきた時期なので探すの大変ですが(っても、今ならAmazonで簡単に手に入るか)。レーベルゲートCDだし。
 
「スタンバイ!」は20周年ライブのWアンコールで歌われたのですが、「年をとっても いつまでも」というラスサビ直前の歌詞がすごいグッと重みをもっていて、よかったなぁ。


2005.06.22 お気に入り度:★8
1. 熱風  2. Clear Sky  3. BLACK MONEY  4. 幻想の雪  5. このまま  6. あなたがいるから  7. Happy Birthday ~愛のランナー~  8. ロックンロール・ラヴレター  9. 旅立ちの唄  10. ラヴ・ジェット・コースター  11. メモリーズ
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
繊細木根メロをへきるロックに仕上げた「熱風」、爽快青春ロック「旅立ちの唄」、クリスマスソングだけど痛快ロックな「ラヴ・ジェット・コースター」、木根さんがランニング中にメロディを思い浮かんだという「Happy Bitrhday~愛のランナー~」 などのポップスロック路線をメインにしつつ、「BLACK MONEY」「幻想の雪」のようなハードロックも入れて、合間にバラードも挟んで・・・と、曲自体は前作・前々作の延長線上にあって悪くないというかむしろ好きだし、きちんとバランスよく作られているのですけど、若干マンネリ感もあるような・・・というアルバム。木根さんプロデュースで4枚目ですが、さすがにそろそろネタ切れっぽい雰囲気も無きにしも非ずかなーなんて。(と、思いきや次回作で逆転サヨナラホームランになるわけですが)
 
そんな中、バラードの「このまま」「あなたがいるから」「メモリーズ」がこのアルバムならではのテイストで光ってる。特にDAITAさん作曲の「あなたがいるから」がスバラシイ。へきる姉さんの広がりある声だから映える繊細なメロディー。ロッカバラードな「このまま」は、メロディ的には声を張り上げて歌いそうなところをあえて丁寧に歌っていて、新鮮。シンプルなメロディーラインにへきる姉さんのファンへのメッセージがこめられた「メモリーズ」も必聴。(ただ、アルバム3作連続で最後の曲が既発シングルのバラード曲ってパターンなのは少し残念かも?)
 
アップテンポでは「旅立ちの唄」がストレート直球青春ロックで勢いあってイチオシ(PVもいいんだけどソフト化されていないんだよなぁ)。「幻想の雪」はnishi-kenさんの作曲家デビュー初期の作品。冬バラードみたいなタイトルですが曲自体はちょっとビジュアル系っぽさもある疾走HRでこれもナイス。

椎名へきる全アルバム感想②「Baby blue eyes」「Face to Face」「RIGHT BESIDE YOU」「PRECIOUS GARDEN」

2020年04月18日 16時57分37秒 | 感想・レビュー(アルバム)
5th〜8thまで。ロックに目覚めて本領発揮して、色々チャレンジしている頃ですね。
この辺の全盛期に、自分の進みたい方向性を見つけて実現できる環境にいて、そこで大きな成果を得たのが、へきる姉さんの息の長い歌手活動につながっていると思う。

1998.02.01 お気に入り度:★9
1. 風が吹く丘  2. Distance  3. 風の行方  4. 届けたい想い (Remix Version)  5. あなたの名前  6. それっていいね  7. 誰のせいでもない  8. 246  9. 純  10. Graduater  11. Infinity
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
へきるロック、ここに確立。へきる史の中では最も重要なアルバム。ロックファンが唸るほどのトラックがおさめられているわけではないし(むしろどっちかというとポップス寄り)、歌がものすごく上手くなったわけでもないけれど、これまでのアイドルポップス感を大幅に払拭、さらには90年代前半ガールポップ感もけっこう払拭してポップスロックで統一、そしてそれがへきるボーカルとナイスな化学変化を起こしています。この、決して押しの強いわけではない声質でロックをやってくれている、その化学反応が楽しめる点だけでも個人的にはハナマルをあげたい。(まぁ、ファン以外の人からすればいろいろ意見はあるとは思いますが、ね)

前作の段階ですでにロックをやりたくて仕方なかったという へきる姉さんを満足させるロック要素も多く含みつつ(ギターの音に特にこだわっている印象)、全体的にはすごく聞きやすい仕上がりになっていて、さじ加減が絶妙。このナイスなサウンドメイキングは主に大坪稔明さん・高橋圭一さんの手腕によるもの。大坪さんは以後、ランティスに移籍するまで椎名へきるサウンドの要に。
他、編曲では亀田誠司さんの名前もあったり、演奏にはDAITAさん(ex.SIAM SHADE)も参加しています。へきる姉さん、SIAM SHADEがブレイク前から気になっていたそうで、これ以降もDAITAさんにはちょいちょいお世話になることに。
 
楽曲的にも大充実。爽やかポップ・ロック「風が吹く丘」「Graduater」、荒野の風に吹かれるイメージのシリアスロック「風の行方」、ライブの定番となったポップな人気曲「届けたい想い」もいいし、バラードの「あなたの名前」「Inifinity」もいい差し色になっているし、哀愁の出し方が絶妙に効いててかっこいい「246」「誰のせいでもない」などなど。 特に「246」は涙出るくらいの名曲。これシングルにすればよかったのに。
 
歌手としての自意識が芽生えて自分の進みたい方向性に進むことのできたへきる姉さん、気合入ってるのが歌声からもわかります。伸びとハリがでてきているというか。「Distance」のラップ?はちょっと変な方向に気合入っちゃってますがw
 
ちなみに記載はないですが、「246」はアウトロが追加されたアルバムバージョン(オリジナルは真矢with椎名へきる「漂流者」のカップリング)。この余韻がたまらないです。完成形はこっち。


1999.01.21 お気に入り度:★8.5
1. This Moment  2. fly away  3. Let me sing with soul  4. Tears  5. この世で一番大切なもの  6. あいたい  7. invisible  8. 抱きしめて  9. わからない男  10. 新しい風  11. ROLLING STONE  12. ずっと…
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
さらにロックを追求した6th。基本的な作風はそのままに、さらに進化させていった感じのアルバム。ZARDでいえば「揺れる想い」と「OH MY LOVE」の関係と一緒。前作から続投のDAITAさんは演奏だけでなく楽曲提供でも参加するようになったのに加え、新たにLUNA SEA真矢さんも演奏に参加。へきる姉さんのボーカルスタイルも多彩になり、前作からさらにロック色を強めてます。前作では「それっていいね」みたいなアイドルっぽい曲も少しだけ混じってましたがそれも消滅して、代わりにハードさをプラスしたり激しさをプラスした曲が入っております。
ただ、個人的にはちょっとポップス要素を忘れてる曲がたまーにあるのが気になって、トータルでは前作の方が好きかなぁ。「わからない男」「invisible」あたりは、ポップスリスナーにはちょっとつかみが弱い気がするし、激しいギターがかっこよく鳴り響いたりするけど トータルではそこまで重くないのでロックリスナーには軽く思われてしまいそうな気もする。
とはいえそれでも「抱きしめて」「Tears」「新しい風」「この世で一番大切なもの」「fly away」とか名曲盛りだくさんで充実した内容なのも間違いないのです。前作よりシリアスだったり切なくメロディアスな曲調に名曲が多いのが特徴。そしてその影響で「ROLLING STONE」みたいな解放感ある曲がより映えてる。
 
ジャケ写ではトレードマークだった黒髪ロングをばっさり切ったうえ、前作よりさらにロックを推し進めてアイドル声優時代のファンを振り落したにもかかわらず、オリコン週間6位と初のTOP10入り。いわゆる全盛期ってやつですな。(売り上げ的には、前2作と大差なかったりしますが)
前作・今作とアルバム2枚でへきるロックをしっかりと会得し、この後はへきるロックを軸にしつつ緩やかに音楽性を変化させていきます。


2000.03.08 お気に入り度:★7
1. REAL LOVE  2. BESIDE YOU  3. 恋  4. G線上ロマンス  5. One  6. 海になれるよ  7. my starship −夢の飛行船−  8. Thousands of stars  9. RIDE A WAVE  10. −赤い華− You're gonna change to the flower (Album Version)
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
オリコン6位を獲得した前作の後、「Everlasting train~終わりなき旅人~」「赤い華 -You're gonna change to the flower-」とシングルでも自己最大ヒットを記録して勢いに乗った・・・と思いきや、その後に出した明石昌夫サウンドプロデュースの先行シングル「BESIDE YOU」でなぜか失速、続いてリリースされたアルバムの売り上げもちょっと低迷。リアルタイムで追っていないので その理由が何なのかはっきりとはわかりませんが、後追いでアルバム聞いた範囲で想像できるのは「方向性に迷いが出たから」。シングル展開は打ち込み色が強めになり、先行シングル「BESIDE YOU」でデジロックに移行、と思いきや「BESIDE YOU」がアルバム中では異色作になってしまっていて、ほかの曲は前アルバムでやっていたようなロックでもなく、かといってすごい新機軸でもなく、なんとなく迷いが見える。
 
作家陣はほぼ一新されていて、森高千里でおなじみ斉藤英夫さん、UCO+吉見=Funtaさん、TUBE前田さん・春畑さんのPIPELINE PROJECT、メロン記念日「This is 運命」でおなじみ新堂敦士さんらが参加。前作・前々作で大活躍の大坪稔明さんやDAITAさん、上野浩司さんらの登板はナシなので、印象が結構違います。割とシンセサウンドの飾り付け音色も多かった前作までと比べると シンプルなバンドサウンドがメインの曲が多くなってる感じ。でも一通り流し聞きして印象に残るのは、アルバムでは異色作のデジタルロックサウンド「BESIDE YOU」「赤い華(Album version)」という・・・。
この辺のちぐはぐ感のせいで最初あまり聞いてなかったんですが、改めて聞いてみると アルバムを象徴する1曲がないのと 統一感がないだけで、曲自体は粒ぞろいで結構いいのよね。ライブの定番「One」もあるし、終始鳴り響くギターサウンドが爽快でナイスな「RIDE A WAVE」もいいし、「海になれるよ」「Thousands of stars」みたいなゆったり余韻をかみしめるロックバラードもへきる姉さんには珍しいけど似合ってるし。
そして何より「BESIDE YOU」は高速デジタルサウンドに速弾きギターと勢いあるメロディがかっちょいい傑作なのです。全曲この路線でアルバム1枚作って欲しかったなぁ。
 
20周年記念本のインタビューによると、このアルバム製作時はソニーレコードの人事異動の都合でディレクターが入れ代わり立ち代わりだったという主旨のことを話していて、作風に統一感がない理由がわかってスッキリしましたw
・・・・けど、よくよく考えると、つまり、前作までにあった登り調子の全盛期がソニーレコードの人事異動の都合で終わってしまったとも、考えられるわけで。展開次第ではもうちょいうまくやれた気もするので、ちょっともったいなかったかもね。
 

2001.02.07 お気に入り度:★9
1. be yourself  2. discovery  3. Love Graduation  4. live to love -もう少し早く逢えたなら-  5. Still  6. あなたも知らない恋の果てに  7. 裸のプリンセスマーメイド  8. MOON  9. Dive into you  10. Chance!  11. 大切なページ
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
作風バラバラだった前作を反省して、狙いをきちんと定めて作ったアルバムがこれ。前作ではスポット参戦だった明石昌夫さんがサウンドプロデューサーとしてアルバムに全面参戦。そしてなんといっても注目は椎名へきる作曲6曲収録。それでいて傑作ときてるんだから、まぁ驚き。
サウンドとしては随所でエレキギターと音量大き目ドラムがずっしり鳴り響くロック、だけどビーイング的なキラキラ音色を適度にまぶしているからちゃんと聞きやすいという、明石さんさすがのナイスなプロデュースワークでございます。
椎名へきる作曲曲はどれも出色の出来栄え。「discovery」1曲だけでもこのアルバム大勝利。疾走感あふれるキャッチーで素敵なロックで、これは本当シングルでも余裕でいけた曲。他にも「Dive into you」「be yourself」などの耳を惹くアップテンポから、変則メロディがクセになる「Still」や、「MOON」みたいなミスティックなバラードまで作っております。「Chance!」だけちょっと落ちるかなーという気はしますが、トータル的には初期衝動にまかせて好きなように作ったのが結果いい方向に転んでるかなと。もちろん明石昌夫さんの手腕によるところも大きいとは思いますが。
 
へきる姉さん作曲以外にも、キラキラアレンジと綺麗なメロディのマッチングが最高な失恋ミディアム「Love Graduation」、疾走ロック「live to love-もう少し早く逢えたなら-」、大団円のじんわりくるバラード「大切なページ」(イントロがT-BOLAN「Bye for now」にそっくり!)のシングルたちがしっかりと要所要所で支えてくれています。特に「Love Graduation」はホントに名曲。せつなくて胸キュンキュンする。作曲はZARD「遠い日のNostalgia」と同じ人(望月衛介さん)。
 
へきる姉さんが好きに作ったところの多いアルバムにもかかわらず、アルバムの売り上げは前作より上昇。よかったねへきる姉さん。
 
このアルバムだけこんなに作曲:椎名へきるが多い理由は、いつもならスタッフがボツにしていたへきる姉さん作成のデモを、明石さんに聞かせてみたら全部いい感じに汲み取ってくれてアレンジしてくれたから、ということのようで。 
本当はもっと明石さんサウンドプロデュースでやりたかったらしいですが、スケジュール等いろいろ都合が合わなかったようで、結局アルバムはこれ1枚のみ。
もう1枚くらいこの路線あってもよかったなぁ。

椎名へきる全アルバム感想①「Shiena」「Respiration」「No Make Girl」「with a will」

2020年04月17日 21時09分58秒 | 感想・レビュー(アルバム)
417の日記念。
 
「声優が本腰を入れて歌手活動する」というのは今では当たり前になってきましたが、その先駆者的存在であるのが椎名へきる。
林原めぐみはあれだけCDがヒットしてもライブ活動をほとんど行わず「本業は声優」というスタンスを絶対に崩さなかったのに対し、傍から見ると「声優業をおろそかにして歌手ばっかやってた人」という扱いなへきる姉さん。
当時から他にも声優しながら歌もやる人はいたけれど、へきる姉さんの場合は人気が凄かったこともあってか、歌手としての仕事がバンバン入ってきて、声優業をやる時間が取れなくなってきた、ということのようで。
本人のコメントからみると、「本当は声優と両立してやりたかったけど、そこまで器用にできないタイプだった」というのが、本当のところなのでしょう。しかし、当時はそんな本人の気持ちを伝える手段はなく、アーティスト宣言したというデマ?まで流れてしまうほどの事態になり…(この辺の真相は不明。当時のファンならご存知なのかしら)。
 
へきる姉さんの先例があるからこそ、奈々さんの歌手としての成功がある…っていうと過言かもですが、声優さんの継続的歌手活動のパイオニアであることは間違いない。
 
(とはいえ、へきる姉さん自身も1994年デビューから2014年まで定期的にCDリリースできて、今でも月イチでアコースティックライブをやれているという環境にいるから、これはこれでよかったんだよね。)
 
というわけで全アルバム感想、やりたいと思います。
ちなみにサブスクでほぼ全アルバム解禁しているんで、気になったら是非。ちなみにアルバムタイトル押すとGoogle Play Musicのページに飛びます(試聴しやすいのがGoogleだっただけ)。
 
まずは1st〜4thまで。声優アイドルとしてデビューしてから、ガールポップっぽい作品をリリースしている頃です。
 
1st album「Shiena」
1994.08.21 お気に入り度:★6.5
1. 天使は東からやってくる  2. 恋よりたいせつ  3. ガールフレンド  4. 花火  5. 月とライ麦  6. あなたとふたりで風になる  7. じん。ときた  8. トモダチのカタチ  9. すごく楽しい空になるのに  10. 夜の中
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
シングルなしでいきなりのデビューアルバム。「周りの大人にだまされてデビューした」というエピソードがある今作。これがホントかウソかはわかりませんが、とにかく椎名へきるの作品群では異色作。まず声!今でも決して迫力のある歌い方じゃないですが、この頃はもっと気が抜ける歌い方になっていて腰が砕けるw まぁ萌え声といえばそうなのかな。曲も含めて本当にアイドル。
 
でも、これはこれで割り切って聞くと結構いいかも。レコード会社はSony Musicなのですが、Sonyはもともとアイドルポップス得意だったわけで、そういう視点で見ると結構いい曲多い。着地点はおしゃれな雰囲気をまとったセンスのいいアイドルポップス。作家では90年代松田聖子を支えた小倉良さんと、渡辺満理奈でナイスアレンジを披露していた山川恵津子さんのお二人がいい仕事してます(ちなみに松田聖子も渡辺満理奈もソニー所属のアイドル)。
 
「すごく楽しい空になるのに」「天使は東からやってくる」あたりの陽性アイドルポップスが自分のツボにはまる。バラードの「花火」も、この時期ならではの ぬめっとした声が堪能できる味わいで好きです。
 
とは言え、ファン視点で「こういう時代もあったんだねぇ」という楽しみ方が出来るって感覚であって、椎名へきるを聞こうと最初の1枚でこれを選ぶのはおすすめしませんw


1995.04.01 お気に入り度:★6.5
1. 空想メトロ  2. 攻撃は最大の防御  3. 2センチのせつなさ  4. せつない笑顔(Night Version)  5. Kissが足りない  6. 少女爆弾  7. 優しかった人  8. 何も出来なくて  9. NEVER NEVER  10. T.R.Y.!!
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
「前作とは全く違ったアプローチで展開するオリジナル・アルバムで、へきるのアーティストパワー全開の自信作」と公式で謳われている2nd。作家陣は都志見隆・楠瀬誠士郎・太田美智彦・赤塩正樹(H2O)・工藤崇などで前作から総入れ替えになっているし、声もちょっと安定してきて腰砕けな感じは和らいでいるので、確かに1stとは違ったアプローチにはなってる。一言でいえば90年代前半あたりのガールポップっぽくなった。
 
でも、謳い文句の割にはまだアイドルっぽいかなぁ。ガールポップ風味のアイドルポップ、というか。ガールポップってアイドルポップの代わりに出てきたものでもあると思うので表現が難しいですが、なんというか、前作のアイドル萌え声みたいな腰砕け感が薄くなったぶん、中途半端になった印象がなきにしもあらず。
 
「攻撃は最大の防御」「Kissが足りない」「少女爆弾」あたりのアップナンバーは90年代前半ガールポップとしては かなりいいセンいっているし、本人初作詞バラード「何も出来なくて」はファン必聴の作品に仕上がっているんですが、なんかアルバム全体での印象が薄いのが惜しい。
 
ちなみに「少女爆弾」って今じゃNGタイトルな気がしますが、爆弾発言する少女って意味なので別に変な意味はなく、普通のポップナンバーです。念のため。


3rd album「No Make Girl」
1995.10.01 お気に入り度:★4
1. 恋のレースクィーン  2. ラッキーDAY  3. やんなっちゃう  4. ようこそハピネス  5. Best Partner  6. ラブラブでいこう  7. コドモなオトナとつきあう方法  8. 愛のてんこ盛り  9. Go Wake Up !!  10. シャラララ
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
前作から半年のペースで出された3枚目。「今回は前作を更に上回り、ロック色を強調。」と公式で謳っていますがまだまだ全然ロックっぽくはなく。
おちゃらけてみたり、謎の脱力ラップもどきを披露したり なんちゃってヘヴィメタを歌ってみたり 種とも子さんの曲を歌ってみたり…バラエティ豊かといえばそうですが、あまり後の路線とつながっていないから「とりあえずいろいろやってみました」というだけで終わっちゃったような印象。
後藤次利さん作曲による歌謡ロック風な「やんなっちゃう」、なんちゃってヘヴィメタ風の「Go Wake Up!」は後のロックに目覚めるきっかけと言えなくもないような気がするような感じかもしれないですが、うーん。

いろいろやっているんですが そこまで突き抜けた曲がないので、前作とはまた違う意味でアルバム全体の印象が薄くなっちゃってるのがなんとも。個人的には一番聞かないアルバムです…が、売り上げ的には上り調子なのよね、この辺。声優としての人気が上がってきていたのかな。



1996.12.12 お気に入り度:★7.5
1. ねえ  2. 色褪せない瞬間  3. そろそろやってみますか  4. やさしいひとになりましょう  5. 泣いちゃいなよ、いま  6. 目を覚ませ、男なら (Remix Version)  7. 気づいて!  8. スーパーガールズ Funky No.1  9. 今すぐギュッと  10. 私の未来  11. 空をあきらめない
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲
オリコン20位を記録したスマッシュヒットシングル「目を覚ませ、男なら」を含む4th。
ここでロックに開眼しかけて、一気にクオリティアップしてますが まだ過渡期。シングルの「空をあきらめない」、「気づいて!」あたりが後のへきるロックにつながる路線の歌謡ロック…ではありますが、これは今回のメイン路線ではなく、バリエーションのひとつという扱い。
それよりも、今作はロック色の無いポップス「色褪せない瞬間」「やさしいひとになりましょう」、バラードの「泣いちゃいなよ、今」などなどの、ガールポップ王道路線曲のクオリティがぐんと上がっていて、聞きやすくていい意味で90年代らしいポップス作品に仕上がってます。globe「SWEET PAIN」とサビメロが半分同じな「目を覚ませ、男なら」とか、「空をあきらめない」のイントロのダサさはちょっと悪い意味で90年代らしいような気もしますがw、実際96年リリースだし、いいか。96年リリースの割には93~94年のガールポップっぽい雰囲気はありますが。

ロックに移行する前にこれまでのポップス路線を良い形で総ざらいしつつ、次への予告も含めたバランスのいいアルバム。
イチオシはJoey Carboneさん作曲のガールポップ王道励ましポップス「やさしいひとになりましょう」かな。
本人的にはこのアルバムの段階ですでに相当ロックがやりたかったらしく、次回に続く。

華原朋美「DREAM-Self Cover Best-」

2013年08月18日 01時48分37秒 | 感想・レビュー(アルバム)


華原朋美「DREAM-Self Cover Best-」(お気に入り度★8.5点)
1. I BELIEVE  2. keep yourself alive  3. save your dream  4. LOVE BRACE  5. Hate tell a lie  6. あなたがいれば  7. I'm proud -2013 Orchestra Ver.-  8. LOVE IS ALL MUSIC  9. 夢やぶれて -I DREAMED A DREAM-  10. たのしく たのしく やさしくね
青文字はお気に入り楽曲、青太文字は超お気に入りの楽曲


帰ってきた朋ちゃんがセルフカバーアルバムを出す、って聞いたときは、すっごく期待して。


で、曲目が発表されて、ちょっとがっかりして。
予想してたとはいえ、全盛期の曲ばっかりで、低迷期のがここまでスルーされるか、って。

朋ちゃんは精神状態がダイレクトに歌声に響くようで、TKからの別れのアルバム「nine cubes」とか、失恋直後の「as A person」の頃とか、まぁ、あれはあれでオンリーワンの魅力があったわけだけど、もし、朋ちゃんのボーカルが本調子だったら、って思うこともあったりしてたので、そういう頃の曲がいっさいオミットされてるのがもう、残念すぎてもう。



でもこれでよかったんだね。と聞いて思った。
「as A person」の頃とかのセルフカバーだったら、当時より上手く歌えてアタリマエな今の朋ちゃん。だから、あえて全盛期の頃の曲に挑んでみたのかな、と。好意的に解釈しすぎ?w

全盛期の曲に挑んで、本当に勝っちゃった、ってのがなんか凄いなと。

こういう「全盛期の曲をセルフカバー」って、だいたいオリジナルの方がいいよね、とか、セルフカバーはこれはこれで別物としてアリかな、くらいのことになることが多いじゃないですか。やっぱり。

でもこのアルバム、朋ちゃんのボーカルパワーが本当に頼もしくって素晴らしくって。それでいて、声の魅力や方向性は変わってない。年齢考えると、そろそろ衰えはじめてもおかしくないのに、全盛期と遜色ないどころかむしろパワーアップしてるという。そこが本当に、スゴイ。
「keep yourself alive」とか、もうオリジナルじゃボーカルが物足りないもの。


曲別に見てくと、「I BELIEVE」「keep yourself alive」「save your dream」のアップテンポ系がとてもグッド。アイビリは打ち込みとオーケストラの融合、Keep~はバンド編成で、save~はオーケストラではしゃいでみた感じ。それぞれ原曲を意識しつつなんかいい雰囲気のサウンドになってます。バンドサウンドにしても全く小室臭が無くならないkeep~と、save~の躍動感あるボーカルが特にハナマル。

逆にバラード系の「LOVE BRACE」「LOVE IS ALL MUSIC」は、ハッキリ言ってコーラスが邪魔w このアルバムのテーマとしてはやっぱり今の朋ちゃんの声を届けることなんだろうし、もっとシンプルにピアノ1本バックに、とかでも良かったんじゃないかなーこの辺は。「たのしく~」でそういう音作りをしてるから、あえて区別したのかもしれないけど。


あと思ったのは、結構キー下げしてる曲多いんだけど、そのへんの違和感がぜんぜん無い。その辺は武部聡志さんのサウンドプロデュースのおかげ?なのかな。



まぁとにかく、朋ちゃんのボーカルが今いちばん脂が乗ってるってことは十分すぎるほど確認できたので、次の一手が気になる所。
あんまり安易にミュージカル路線には行ってほしくないんだけど、果たして。


アルバム感想。⇒栗林みな実「miracle fruit」

2011年03月18日 07時56分13秒 | 感想・レビュー(アルバム)

栗林みな実「miracle fruit」(★9点)
1. miracle fruit  2. secret moment  3. 氷の結晶  4. one drop  5. stage  6. 静寂の腕輪  7. Luminous Beat  8. 虹色の永遠  9. 空のこたえ  10. Beautiful Blaze  11. planet earth
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栗林みな実、通算6枚目のアルバム。
基本はアニメなどに合わせて作った曲をシングルとしてリリースして、曲が貯まってきたら新曲と合わせてアルバム発表、というスタンスで活動を続けてきた栗林さんですが、今作にはタイアップ曲は一切なく、全曲、シンガーソングライター栗林みな実の、オリジナル楽曲。
(一応、タイトルチューンである「miracle fruit」は『アニソ~ンぷらす』エンディングテーマにはなっていますが、これは後付けタイアップということでノーカウントでいいでしょう。)

全曲の作詞作曲を手がけたオリジナルアルバムという点では、3rdアルバム「fantastic arrow」以来ではありますが、これには『舞-乙HiME』EDテーマ曲としてシングルリリースされた「Crystal Energy」が入っていたので、全曲オリジナル曲で構成されたアルバムはこれが初めて。

というわけで、かねてからこのブログで「シンガーソングライターとしての栗林みな実の良さ」をアピールしてきた自分にとっては、これ以上無いくらい待望のアルバム!

なので存分に語らせていただきます!w
もう盲目ファン的な書き方しか出来ないけど、それくらいの魅力があるアルバムなんだもん!w

今作ならではの特徴として、栗林さんのメロディーセンスを存分に味わえるのはもちろん、栗林さん作曲にしてはちょっと意外な曲調もちらほらあったりして、オリジナルアルバムならではのチャレンジ精神を感じる所も大きいかな、と。
特に1,2曲目あたりはそれがよく表れている感じがして、自分で作れる部分が多い全曲オリジナル楽曲な今作ならではの楽曲だなーと思います。

あと歌詞。今回は全曲オリジナルということで、アニメのタイアップに合わせたりとかそういう制約のない、全てが栗林さん自らから生まれた言葉で紡がれた歌詞。なので、いつもより心にグッと迫る歌詞や、内面を歌った歌詞、純粋なラブソング…などなど、様々なタイプの歌詞があるんですが、どの曲にも、すごく栗林さんらしくメッセージが込められているように感じます。
(各曲についてのコメントは後述しますけど、例えば「Luminous Beat」は、全体的には「君がそばにいれば輝けるよ」という恋愛ソングっぽい歌詞なのですが、そんな中にも「闇が終わらなくても 光は無くならない」というフレーズがあったり・・・とか)

栗林みな実のファンなら、このアルバムをじっくりと噛みしめて聞いたらもっと栗林さんのことが好きになると思うし、シングル曲は無いけど、栗林みな実ってどんな感じなの?というライトリスナーさんにもオススメできるかなってくらいに、栗林さんの魅力がぎゅっと詰まったアルバムになっているんじゃないかと、個人的には思っちゃいます。


それではさらに思いのたけをぶつけるためw、全曲感想いきまーす。


1. miracle fruit
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:菊田大介)
1曲目からちょっと意表を突かれました。いや、曲調としてはそこまで異色というわけではないんですが、サビが2つあるような曲構成が特殊で。栗林さんは基本的に構成はオーソドックスな曲を書くことが多いので、こういう曲も書くんだなーとちょっと驚きました。タイアップに縛られないオリジナルならではの楽曲ですね。で、構成はちょい複雑ながらも、メロディはキャッチーなので聴き終わった後には爽やかな印象が残るのが栗林さんらしさかなと思います。「君と出逢い すべてが今、始まる…」という、アルバム1曲目に相応しいアップナンバー。

2. secret moment
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:飯塚昌明)
これまた意表を付かれた楽曲。切迫感というか緊迫感というか。そういうのをひしひしと感じるロックっぽい楽曲。これまでもロックな楽曲はいくつか歌ってきた栗林さんですが、だいたいは作曲家さんから提供された曲だったり(「unripe hero」など)、それかアレンジでロックにしている楽曲(「Yell!」など)が多かったので、メロディからもロック感を感じる楽曲を栗林さん自身が作曲したのは意外でしたねー。メロディアスな曲が得意な栗林さんにとって、ここまで音符が細かく上下するメロディって珍しいかも。しかしこれがまた良いんだよなぁ。シンガーソングライター栗林みな実の新たな引き出しを開けた曲かも。ただアレンジはもうちょいロック寄りというか、重めのサウンドでも良かった気もする。

3. 氷の結晶
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:増田武史)
シリアスで切ないけれど、力強さも感じるミディアムテンポの楽曲。栗林さんらしいメロディアスさが良く出ている楽曲ですね。サビ終わりのハイトーンボイスが聴き所。ストリングスアレンジがより冬っぽさを演出していていい感じ。歌詞は栗林さんがオリジナル曲でよく書くタイプの失恋ソング、かな。結構重めです。タイトルが秀逸。

4. one drop
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:藤田淳平)
王道キターっ。アップテンポでデジタルトランシーな楽曲。シングルっぽい曲でもあるかな?メロディアスさとキャッチーさが同居するメロディは、さすが栗林さん。曲調的にはカッコいいアニソンらしい曲ですが、歌詞はラブソング。もう自分が自分に嘘をつかないであなたを信じていく、という感じでしょうか。インタビューによると、この曲はアレンジが仕上がってきてから歌詞の内容を変えたらしいですが、元はどういう歌詞だったんだろうか。もう少し迷っている感じだったりしたのかなぁ。

5. stage
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:藤田淳平)
これまた栗林さん的にはちょい新機軸かも? R&B的な要素といいますか、リズム感重視的な要素をほんの少し混ぜ込んだようなアレンジが栗林さんにしては珍しいです。大人っぽいというか、このアルバムの中では少し地味な印象もありますが「one drop」と「静寂の腕輪」との橋渡しとしては十分すぎる楽曲。個人的にはこの曲は特に歌詞がキモだと思う。「人はね、記憶で息をしているの」というフレーズにちょっとドキッとしました。

6. 静寂の腕輪
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:虹音)
ここでやっと待望のバラード!…ってもこれは既発曲ですが(シングル「あんりあるパラダイス」のC/W)。しかし、アルバムに収録されるだけあって名曲なのですよー!これは希望の光が差し込む系(?)のミディアムバラード。メロディの運び方なんかはメロディアスな栗林さんらしいメロディなのですが、栗林さんのこういうバラードって「ある冬の日の午後」(これも名曲!) みたいな、切なさ一辺倒の曲が多いように思っていたので、こういう曲は何気に新鮮だなぁと感じた記憶がありますね。虹音さんの丁寧なアレンジもよりメロディアスさを引き出してくれていて良いです。

7. Luminous Beat
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:菊田大介)
スーパーキャッチーなサビメロが印象的な楽曲。サビの聞き心地の良さは特筆モノ!爽やかなんだけどしっかり耳に残るキャッチーさと、サビの終わり方の一筋縄では行かない感じのメロディが栗林さんクオリティ。菊田さんの軽快なデジタル成分多めのアレンジも良いです。個人的には、アルバムの中で一番スキな曲。あと先程も書きましたが歌詞も凄くイイ。全体的には君がいるから頑張れる、輝ける、って歌詞なんだけれど、その中で「闇が終わらなくても 光もなくならない」ってフレーズが入っているのが凄く好きです。あと1番Bメロの歌詞は特にmind touchライブに行った人には心当たりがある人もいるのではないかと。

8. 虹色の永遠
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:虹音)
来ましたーっ!栗林さんらしさ全開の必殺メロディアスバラード!本当に栗林さんはこういうバラードを作るのが上手いよなぁ。で、この曲、雰囲気としてはちょっと切なさ成分がある感じなのですが、歌詞は要約すると「ずっと一緒にこれからもいられたらいいね」というシアワセっぽい歌詞になっていて。それでも違和感がない、この絶妙なさじ加減がウマイ。幸せすぎでも切なすぎでもない、このバランスというか、この要素を両立させるのって結構難しいと思うんだけど、栗林さんは見事に成立させております。

9. 空のこたえ
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:菊田大介)
シングル「sympathizer」のカップリングだった曲。人を好きになること、それって凄く楽しいことだよね。という恋のワクワク感を楽曲で表現したような曲と言えばいいかな。軽快ポップでキャッチーな明るい楽曲。確か栗林さん自身も当時、この曲について「闇ゼロ運動って感じの曲」って類のことをブログで書いていたような記憶が。
特設ページの試聴で、肝心のサビが試聴できないのはなんとかならないのかなぁw

10. Beautiful Blaze
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:中山真斗)
ラストに向けてもう一度奮い立つ!ってイメージのブレイブリーなポップロックナンバー。雰囲気的にはアルバム「dream link」に入っていてもおかしくない感じ。「負けたくないと思うなら 誰より強くなれ」というサビの歌詞とメロディに栗林さんの強いメッセージが込められているように思いますね。ラストをAメロでシメる構成は栗林さんにしては珍しいかも。ちなみにアルバム中で唯一の生ドラム使用楽曲。そしてギターソロがかっちょいい。

11. planet earth
(作詞・作曲:栗林みな実 編曲:虹音)
アルバムラストに相応しい、とても美しいスローバラード。三拍子バラードは栗林さんの必殺技(?)のひとつでして。「pregare」「海から始まる物語」「硝子の小瓶」etc.とあるんですが、その中でもこれはかなり良いぞっ。栗林さんならではの浮遊感とメロディアスさが存分すぎるくらいに発揮されたメロディに、さらに虹音さんのキラキラと粒子が宇宙に舞っているようなアレンジがバッチリと組み合わさっていて、凄くいいです。あざとい仕掛けが無いにもかかわらず、しっかりとスケールの大きさを感じられるのはさすが。
「pregare」「静寂の腕輪」「虹色の永遠」と同じく、作曲:栗林みな実×編曲:虹音 の組み合わせで作られたバラードですが、虹音さんのアレンジと栗林さんのメロディって凄く相性いいかも。栗林さんの持つメロディの良さをさらに引き出してくれる、そんな丁寧なアレンジを虹音さんはやってくれています。

 

というわけで、今回はアレンジャーさんが割とばらけていることもあって、デジタルだったりロック調だったりバンドサウンドだったり珠玉のバラードだったりと結構いろいろな曲調が入っているんだけれど、統一感はこれまでのアルバムで一番。そしてアベレージの高さもこれまでのアルバムで一番。全曲の作曲を手がけておきながらこのクオリティには驚愕せざるを得ないです。
前回のオリジナルアルバム「fantastic arrow」と比べると、曲が全曲耳に残る適度なキャッチーさを持っていることと(「fantastic~」は地味な印象のアルバム曲もいくつかあったのです)、アルバム全体にまとまりがあって より オリジナルアルバムらしい感じになっています。確実に進化しているというか。

個人的には、「mind touch」のようなシングル級の必殺のアップテンポ楽曲があればなー、とか、栗の子バラード好きとしてはもう1曲くらいバラードの新曲があればなー、という思いもありますが、前者に関してはせっかくのオリジナルアルバムだしあえてそういう曲はやらなかったのかな、という気もしますし、後者に関しても入ってるバラード曲は全部良い曲なので、これも贅沢な注文ですかね。


というか、CDが売れない売れないって騒いでいるこのご時世に、シングルも無くアニメタイアップも無い、完全オリジナルアルバムを出してくれたってだけで凄く贅沢ですよね。そういうアルバムをリリースする!って決めてくれたレコード会社にも感謝だし(栗林さん自身も、最初はタイアップ曲が入るものだと思っていたらしい)、それに全力で応えてくれた栗林さんにも大感謝。ファンやってて良かったと心から思える、そんなアルバム。