花見川不動塾

公益社団法人日本空手協会
千葉県 花見川支部の活動をお知らせします。

あきらめていたけど...

2011-05-20 23:42:38 | 花見川支部

そう、あれは6年前の2005年、第48回全国空手道選手権大会の事である。

私はこの全国大会で初めて都道府県対抗団体形の千葉県代表メンバーに選ばれた。

これまで千葉県チームは4連覇を達成しており、5連覇の懸かる大事な試合の代表に選ばれたのである。

他のメンバーは全国大会常連のO石選手とN本選手

形は千葉県のお家芸である「雲手」

当初は千葉県代表のスピードについて行けず、合同稽古では当時の根本本部長に

集中的に指導いただき、足がガクガクになるまで稽古をした。

 

全国大会当日は、頭が真っ白になるほどド緊張したが、

必死の練習の甲斐があって、見事優勝し5連覇を達成する事ができた。

2日目は日本武道館で、個人戦が全て終了した最後に表彰式があった。

用事があって来れない他の2人のメンバーに表彰式を託され

一人で表彰台の一番高い所に立ち、中原協会会長から伝統ある協会全国のメダルと

ズッシリと重い優勝カップを手にしたのであった。

初めて貰う全国大会のメダルとカップ。

本当はしみじみ眺めたいのだけれど、他の人もいる手前、ポーカーフェイスでチラッと見ただけで

「家に帰ってゆっくり堪能しよう...」

と心の中で思い、メダルとカップを箱の中にしまった。

日本武道館のある九段下まで電車で来ていたが、そのでかくて重い箱を持って帰るつもりでいた。

しかし、事の流れで車で来ていた団体にそのカップとメダルを持って帰ってもらう運びとなった。

「ゆっくり堪能するのはちょっとおあずけか...」

と少し残念に思ったが、あれを電車で持ってかえるのも大変だとも思い家路についた。

 

しばらく経って預けた先にカップとメダルの事を尋ねると、なんと

「ない!」

との回答

「えーーーーーーーー!!!!っ」

苦労して手に入れたメダルとカップが、何処に行ったか分からなくなってしまったと言うのだ。

 

一度はこの手にしたものの、まだ良く見ていなかったのに...

こんな事なら人目もはばからずカップをジロジロ見、メダルに頬ずりしておけば良かった...

何より自分で抱えて電車で帰ればよかった...

せめてメダルだけでも持って帰ればよかったetc...

と後悔ばかり出てくる。

共に戦った2人のメンバーにも悪い事をしてしまったと、その事を伝え謝罪した。

 

その後、事ある毎に

「ないかなぁ~?」

と尋ねたが、いずれも回答は同じだった。

もうあきらめていた...

 

昨年の53回全国大会で花見川支部、千葉県共に銀メダルを獲得した。

銀メダルを2枚首からぶら下げ、今度はしみじみ眺めた。

でも心の中で金色に輝くメダルの事を思い出していた。

 

今年の2月、私の携帯に一本の電話が入った

6年前に預けた団体に所属するGからだ

「先輩、メダルとカップが見つかりました」と

「えっ、マジかそれは!!」

「はい、3月12日の審査会の時に持って行きます。」

「おお、そうか、頼むぞ」

とある倉庫を整理していたら偶然出てきたそうだ。

今まで忘れていた事だが、その一言で

「またアイツらに会いたい...」

という気持ちがよみがえり、3月12日の審査が待ち遠しくて仕方がなかった。

 

審査会の前日3月11日、東日本大震災が発生

東日本が悲惨な状態になり、12日は審査会どころではなくなり中止になった。

当然おあずけをくらってしまった。

 

しばらくして、臨時審査会が4月2日に行われる事になった。

「今度こそ、Xデーは4月2日だ...」

この日の審査会が待ち遠しくて仕方がなかった。

審査会当日、会場に向かう車の中で一本の電話が入った。

電話の相手は資格部のO石君だった。

「先輩、今日Gは発熱の為休むそうなんで、組手の補助員お願いします!」

「オッ...オス.....」

ただただ絶句

「一体、いつになったら...」

再三再四の期待が全て無になっている...なんて遠いんだ...

 

空手でも常に子供達に

「待っててはダメだ、攻めろ!」

と言ってきた自分が今「待ち」になっている事にふと気付いた。

「そうだ、自分から取りに行こう」

Gが土曜日の朝、我が家の近くで稽古している事は知っていた。

ただなかなか都合が付かない。

「4月30日の土曜、この日がちょうど空いている...」

Gに電話しこの日に行く事を伝えた。

当日、好天に恵まれGの道場まで車で向かった。

途中道に迷い、またイヤな予感がしたがなんとか到着。

Gの車のトランクにそれはあった。

「やっと会えた...」

箱の蓋を開けると、光輝く優勝カップと金メダル。

6年ぶりにカップを手に取ると

「こんなに大きく重たかったか?」

もうその感触すらも忘れていた。

遠く遠く、やっとたどり着いた涙の再会であった。

                              おわり

 

 

 

 

 

 

コメント (2)
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