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丸山の烏帽子岩

2015-11-24 07:00:14 | 金華山:岐阜城
烏帽子岩

文  浅野 彬
絵  田之尻 一義

岐阜公園にロープウェーの乗り場があります。
そのあたりは小高い山になっていて、金華山に連なっています。この山を丸山といいます。五分ほど登って行くと、伊奈波神社あとがあります。斎藤道三の時代まで、ここに神社がまつってありました。

この丸山の山頂に烏帽子岩というかわった名前の岩があります。烏帽子というのは、むかしの人がかぶった帽子のことです。この岩がその帽子に似ているというので、こんな名前がついたのです。

ところで、この岩について、つぎのような話が残っています。

むかし、中川原(今の湊町あたり)に、ちょっと変わった男が住んでいました。毎日仕事もしないで、ぶらぶら歩きまわり、ときどき立ち止まっては、ぶつぶつともわけも分からないことをつぶやいては、また歩き出すのです。

村の人たちは、
「また、あの男が歩いとるぞ」
「よくもまあ、毎日ああしてぶらぶら歩き回っていられるもんやなあ」
「ちょっとおかしいんじゃないか」
「そういやあ、目つきがさだまらんようじゃ」
と、口ぐちにうわさをしあっておりました。

ある日のことです。
この男はいつものように、長良川のほとりを歩いていました。そして、ふいっと立ち止まったかと思うと、じいっと川のふちをのぞきこみました。

しばらく見ていた男は、とつぜん川を指さして大きな声でさけびました。
「たいへんじゃ。伊奈波神社の烏帽子がしずんどる」
通りかかった人々は、顔を見合わせて、
「また、いつものくせが始まったなも」
と、わらいながらいってしまいました。

それでも、男は、
「ああ、もったいない、もったいない。伊奈波さまの烏帽子がしずんどる。早く引き上げんと流れてってしまう」
と、大声を出しています。でも、だれも相手にしてくれませんでした。

男は、それから毎日、同じ場所で、同じことばを繰り返していました。

はじめのうちは、耳をかそうともしなかった村の人たちも、男の様子がなんだかいつもとちがうと思い、だんだんそのことばが気になってきました。

そこで、村の人たちは、川原に集まって相談をしました。
「伊奈波さま、伊奈波さまといっとるで、ほっとくわけにもいくまい」
「そうや。もしほんとうやったら、それこそもったいないことやからなあ」
「さっそく、川を調べてみい」
長老のひと言で、村一番の泳ぎのうまい若者が川へもぐることになりました。

若者は、ふんどし姿になって、川の水をからだにかけて身を清めました。鉢巻をしめて、ぶるるんとからだをふるわせてから、川へざぶんととびこみました。

村の人たちは、伊奈波神社の方に向かって手を合わせ、若者の無事を祈りました。

若者は、ぬき手をきって川の中ほどまで泳いでいくと、さっと水中深くもぐりました。もぐっていくと、大きな岩が目にとまりました。なるほど烏帽子によくにています。
若者はさっそくもどってきて、
「あったんな。あったんな。たしかに烏帽子の形をした岩があったんな。どえらい岩やぞな」
と、両手を広げて知らせました。

神様の烏帽子の岩を川の中にそのままにしておいてはもったいないということで、その岩を引き上げることになりました。

村の力自慢の男が大勢集められました。みんな白い鉢巻をしめて、岩にかけたつなを、
「よいしょ、よいしょ」
と、かけ声をそろえて、力一杯ひっぱりました。

やっと引き上げたその岩は、幅が一間(約1,8メートル)ほどもありました。
村の人たちは、その岩を取り巻いて、おがみました。
「ありがたいことじゃ。これで、村に良いことがあるやもしれん。丸山の上の伊奈波さんまで、みんなで運び上げておくれ」
長老の言葉にしたがって、総出でその岩を丸山の伊奈波さままで運びあげました。

すると、どうでしょう。それまでは仕事もしないで、毎日ぶらぶらと歩き回っていた男が、なんと、すっかり人が変わってしまったのです。朝は早くから起きだして、畑仕事に精を出すようになりました。
村の人たちと力を合わせ、しっかり者の働き手になったのです。

それといっしょに、中川原いったいは、豊かで住みよい村になっていったということです。

これは、きっと、伊奈波神社の神様が、この男と村の人たちへのお礼の気持ちで、村を豊かにしてくださったのかもしれませんね。

烏帽子岩は、今も丸山の『伊奈波神社跡』と書いた立て札の前に、どっかりすわっています。

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