矢島慎の詩

詩作をお楽しみください。

恐竜ワールドへのワープ

2005-04-12 12:20:17 | Weblog
恐竜の世界に足を踏み込んだ私
シダ植物の細く伸びた葉が天を覆い
僅かな隙間から紫外線の毒矢が降り注ぐ
なるほど過酷過ぎるし哺乳類にとっては地獄だ
僅かな望みは一億年を生き延びるであろう証
過酷な世界で一途に生き延びることが唯一の使命
かって現代に生きていたときに喜びを感じた
興奮と小脳が支配する感覚がずーっと続くエクスタシー
それが一億年をさかのぼる原始の地球には常に用意されている
時間の経過を計ることもなく人生の意味を思うこともなく
遠くで肉食恐竜の叫び声を恐怖の聴覚で聞き
地変の振動を雷鳴を立ちすくむ肌で感じ
やっと夜の闇で食料と水と一時の安らぎを求める
幸せとか不幸とか一番とかビリとかの感覚もなく
死から必死で逃れ続けることが生の意味だった
私にとって同類の雌に出会えることは偶然だ
あっという瞬間に雌に出会い必死で雌に飛び掛る
雌が私に応じてくれるかどうか考える余裕はない
ただ結果がうまくいけばそれが私に与えられた運命
そして運よく相手が身ごもれば二人で必死に育てる
この時の自信はやはり一億年を生き抜くであろう証
もう私は現代には戻れない遠い過去への突入者
現代に生きていた頃出兵者の話を聞いた
戦場で銃声が聞こえたら幸せに思え生きている証だから
恐竜の世界でも同じことが例えられた
仲間が恐竜に食べられるのを見るときは自分が生きている証
自分が食べられる時は一瞬にして意識を失せるという
生きることに必死の者のいくらかが生を与えられる
明け方のしじまの湿りが一日の眠りにつく安らぎ
葉の影に潜り僅かな空気の流れの中で体を横たえる
意識が眠りに落ちるとき体の細胞が呼吸のリズムを整える