ほさか邦夫の日記帳

前志木市長、地方自立政策研究所理事長

橋下さんの勝利と秋の日本自治創造学会

2011-12-01 09:27:15 | Weblog
 橋下さんはもとより、大阪府知事選挙も維新の会が圧勝した。大阪都構想や教育基本条例など荒削りで、不可解な点が数多くあるが「今までのシステム」でよいかと言うと、誰もが「NO」と答えるだろう。政令指定都市の位置づけは何もされておらず、都道府県と政令市の二重行政は明らかであり、役割分担も不明確で、2つの巨大政府が互いに機能を発揮できないでいる。日本の再生にも大きな影響のある重大事である。

分権改革・地域主権改革はこれらの整理をしないばかりか、部分的・修繕的改革を重ねている。中央集権という大木を切り倒さなければいけないのにもかかわらず、幹を残したまま、枝や葉を少しずつ切り取る改革に終始している。いわば家の土台が腐りきって、家が崩壊寸前であるのに、傾いている家屋のドアや窓ガラスを、毎年毎年飽きずに修繕を続けているのと同じである。何の効果もない、修繕であり改革である。有識者は橋下改革の大胆な改革を様々な角度から危惧しているが、もうこのままでは、日本が崩壊してしまう危険があることを、多くの市民は肌で感じているのに違いない。

話は変わるが、去る10月26日、(財)日本自治創造学会・秋の大会in仙台~大震災を越えて~「地域の復興と自治の再生」を開催したところ、600名を超える参加者があり成功裡に終了し、参加者の御好意で義援金も拠出することができた。

被災地が復興への第一歩を踏み出していることに勇気づけられた一人だが、福島原発事故の傷跡は余りにも甚大である。ふるさとを追われた住民の方々の辛さと不安は今も続く。チェルノブイリはソ連の支配下で起きた大事故だが、我が国の福島原発の受け入れも地域住民が本当に望んだのだろうか、今更ながら疑問が残る。原発交付金に象徴されるように、自治体財政の厳しさと雇用の場を求めた結果だが、そのリスクは余りにも大きい。

 高度成長期と異なり縮小時代の自治体に求められる姿は何かが、改めて問われる。これからは自治体が中心となって、保有する財源と多様な機能を発揮し、福祉や教育、都市整備などの一般行政の展開だけでなく、雇用に直結する職の創造を図ることが強く求められる。首長や議会は新たな宿命を背負っているといっても過言ではない。自治体にとって必要不可欠な担税力と購買力を持つ「生産年齢人口(15歳~64歳)・現役世代」が減少を続けているからである。高度成長期には大都市に流出した若者を差し引いても、地方の生産年齢人口は増加したが、現在では大幅な減少を続けている。これからは地域に生まれた子供達が「育ち、学び、働き・生活」することのできる地域を再構築する必要がある。国の地方における雇用政策は過去の歴史が証明しているように、カンフル剤的機能に限定される。首長はもとより、地方議会を構成する議員は従来の発想を転換し、恒久的な「働く場」の創造を新たな地域の命題として、挑戦しなければならない。

 それには現在の中央集権システムによる「一律的護送船団方式」から地域の個性を発揮し、税金のムダ使いを無くす「地方分権・地域主権」を一日も早く実現しなければならない。そして全ての自治体が、自己負担・自己決定・自己責任の原則を確立し、「行政運営」から地方を再生する「地域経営」に転換することが極めて重要である。

―以下次号―

穂坂邦夫の新書
―国と地方を救う役割分担の明確化―
◦2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
◦2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
◦2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)