ほさか邦夫の日記帳

前志木市長、地方自立政策研究所理事長

明けましておめでとうございます~国家予算と主権(役割分担)の明確化~

2010-01-01 00:01:01 | Weblog
○地方交付税1兆円増額の理由“この国の行方が心配”

 国債の発行額(借金)が税収を上回るという極めて厳しい予算編成が行われたが、民主党だけの責任とは言いきれず、自民党政治の積年のツケが大半の原因とも言える。しかし、この予算に決定的な不安材料があることを強く指摘したい。しかもこの不安は単なる一過性ものではなく「この国の行方」にも大きく影響を与えるからだ。
 2010年度予算(案)は37兆円の税収に対して歳出は92兆円を超えるという途方もない赤字予算だが、その厳しい中にあって1兆円という大金が交付税の増額に充てられている。原口大臣は「小泉改革によって減額された地方への復活」と位置づけたが厳しい財政環境を考えると増額の理由には程遠いものだ。地方の地域は衰退が続いているが単なる地方交付税の減額による自治体の破綻は起きていない。
 原口大臣は地方の行政経費がどれだけ必要なものか試算したことがあるのだろうか。政治主導は政治家主導とおきかえてもよいものだが、最大の懸念材料は選挙にプラス材料と考える根拠なきバラマキ姿勢であるが、この1兆円の増額は異型的な事例であり、地方への迎合にすぎない。国・地方を問わず行政運営に費消する財源は「これで十分」という限度額は存在しない。あればあるだけサービスを拡大する。広大な砂漠に水をまくようにすべてが地下に吸いとられる。東京都や東京都区が豊富な財源を有しながらも、当事者にとっては「資金は潤沢」などという意識はなく、行政体独自の特異な体質を持つ。
原口大臣は何兆円バラまけば、地方運営にとって十分な資金に達すると考えているのだろうか。地方における行政運営経費は広義のローカルミニマムを含めても40%以上が選択的事業に使われていることをご存じなのだろうか。こんな野放図な迎合主義がまかり通るのが民主党の政治姿勢であるとするならば「この国家の行方は暗澹たる破綻の道に進んでいく」十分すぎる危険性を有しているといっても過言ではない。

○主権の明確化による必要な行政経費の試算
 批判だけでなく私が主宰する地方自立政策研究所では「主権の明確化によるムダの排除と国と地方における必要な行政経費の試算」を目的に新たな研究会をスタートしている。現在実施されている事務・事業から新たな官民の領域や国と地方の役割分担、必要な事業であっても徹底した民間開放を一定のコンセプトと基準によってすべての事業を検証するという、いわば自立研型事業仕分けである。
 高齢化を迎える中でGNPに比例して世界で最悪の借金を背負う我が国が税収をはるかに超える歳出体質を持ち続けることなど出来るはずがない。これからは国と地方が相互理解のうえで限られた財源を明確な基準のもとに分かち合い、国民の安心・安全にどう活かしていくかを真摯に話し合わなければこの難局を乗り越えることが出来ない。1400兆円を超える国民の預金は団塊の世代が高齢化することで大量に引き落とされていく。
 私達は今こそ、国と地方の必要な財源を見つめ直し、新たな行財政改革に取り組まなければならない。


―以下次号―

穂邦夫の新書
―国と地方を救う役割分担の明確化―
◦2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)

―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
◦2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)

―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
◦2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)