3日目の紅一点天野。
平均年齢30歳を越えた野郎どもの中の彼女は、差し詰め荒野に咲いた一輪のイソギンチャク。
風に吹かれてはコロコロとその表情を変える。
「こうやって羽がパタパタ動くようにするんですよぉ♪」
嬉しそうに妖精の羽の仕組みを説明をする彼女は、
どんなに難しく技術を要する小道具その他の仕掛けも、短時間(数分)で簡単に作ってしまう。
主にガムテープを用いて…。
見た目とか丈夫さなどは眼中にない。
壊れたらその都度繕えばいい。
紙ガムテープで…。
(せめて布にしてくれ)
「間違いに気付けばやり直せばいい。
迷わず行けよ、行けば分かるさ。」
そんな男前な彼女も、舞台の上では、妙にしおらしかったりする。
稽古入りたての、まだ何も決まってないこの時期、全員が手探りだ。
不安と可能性が渦を巻く。
とにかく、思いついた事は全部試そう。
ダメな事をいっぱいやろう。
迷わず行けよ、行けば分かるさ!