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山コンビ大好き。

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きらり

Love Situation 3

2017-02-05 16:30:00 | love situa...




その人はとても端正な顔立ちをしていてかっこよく
同じ男から見ても惚れ惚れするような顔をしていた。


髪の毛は明るく染められ、左耳にはピアス。
大きく開けられたYシャツからはネックレスが顔をのぞかせ
それがその人をより一層際立たせていた。


そしてその目立つ容姿とちょっと着崩した制服ファッションとは裏腹に
その人はとても真面目で努力家で頭もよく
成績は常に学年で1番か2番を争っている。
そんな人だった。


でも。


同年代の自分たちとは違っていつもどこか冷めている。
クラスの中がきゃっきゃ騒いでいるような中でも
それを静かに、そして斜めから見ているような
そんな人だった。


そして。


その目立つ容姿とは反対にどこかクールで
落ち着いていてそれでいてとても頭がいいその人の事を
同じクラスになった時からずっと気になっていた。







でも。


なぜか。


いつの頃からかわからない。


自分の事をとても冷めた視線で見ていることに気付いた。
いや、それだけではない。
視線に気づきそこを見るとその人が見ていて
目が合った瞬間、睨まれる。


それがなぜだか分からなかった。


何で?


なぜ訳もなく睨まれるのか。


かっこいいなと思ってその人の事をぼんやりと見ていた事はある。
でもそれほど長い時間凝視していたわけでもない。
気付かれたわけでもない。
それより何より二人で話したことさえなかった。


それなのになぜ?


考えても考えてもやっぱり分からなかった。










でも。


どこか同年代の自分たちと違って冷めているような人だったから
自分以外の人にもそういう視線で見ているのかとも思った。


でも、違った。


もしかして気のせいなのかも知れないとも思った。
でも気のせいでもなかった。
やっぱり視線が合うと睨まれる。
もしかして嫌われているのかもしれないと思った。


だから、確かめたかった。
本当に嫌われているのか。
そしてそれはなぜなのか。


それを確かめるために一つの賭けに出ることにした。


もしかしたら睨まれているのは気のせいなのではないのかと。
嫌われているような感じがするけどそれは自分の思い違いなのではないかと。
それを確かめたかった。


席も離れていて接点もないその人に
何より話したことさえないその人に
なぜこんなにも自分がにらまれ嫌われているのか。
それが気のせいなのかどうなのかどうしても知りたかった。



だって自分はその人の事を…。









それは絶好のチャンスだった。


朝、歩いていると目の前にその人がいた。
校門から昇降口に向かって一人でゆっくり歩いている。


そして下駄箱にたどり着くと、靴を脱ぎ上履きに履き替えようと
靴を持った瞬間。


スマホが鳴ったのだろうか。


その人が取り出そうとしたその瞬間、定期券らしきものが一緒に落ちた。
でもその人はスマホで何やら話しながら靴を靴箱に入れているため
全く気付かない。
そのまま教室へと行ってしまった。


残されたパスケース。


それを拾い上げる。
それは紛れもなくその人の定期券。
それをじっと見つめ、そして自分のカバンのなかに入れた。


その人はそれを落としたことに全然気づいてはいないようだった。
だから話しかけれる時を見計らって手渡そうと考えた。


その時にどんな反応で出るのか。
どんな表情を見せるのか。


すごく怖かったけど、それは一つの賭け。










いつも。


目が合えば睨まれる。
何だか嫌われているような気がする。
でも自分自身その人に何をした覚えもない。
それより何より同じクラスとはいえほぼ接触したこともない。


だから。


だから、大丈夫だ。


睨まれるのも、嫌われているように感じるのも
全部気のせいだ。
だから、賭けてみようと思った。








でも、違った。


その賭けは見事に打ち破られた。


その人の反応は明らかに自分自身を拒絶していた。


その視線。
その差し出された手。


なぜ嫌われていないと思ったのだろう。
なぜ大丈夫だと思ったのだろう。
そんなことはあり得ないのに。


なぜだかわからないけど自分はその人に嫌われている。
睨まれているというのも気のせいではなかったという事を
嫌でも思い知らされる。














「どうした?」

「……」


わかっていた事なのに、その事実に動くことも帰ることもできず
一人教室に残って窓から外を見ていたら後ろから声がした。


「なんかあった?」

「……」


振り向くと松潤がいて自分の顔に少し驚いた表情を見せながらも
優しくそう言いながら近づいてくる。


「何か、今にも泣きそうな顔してっぞ?」

「……」


何も言えずにいたら松潤がおどけるように
そう言って微笑むから何でもないと首を横に振る。


「何だよ~そんな顔してたら俺まで泣きそうになんだろ~」

「……」


松潤が何かを察したのかじっと顔を見つめ
またおどけるようにそう言った。
その言葉にやっぱり何も言えなくて松潤の顔を見つめた。








「俺が何でも聞くよ?」

「……」


何も言わない俺に松潤は困り果てたような表情を浮かべながらも
優しくそう言ってくる。


「……」

「……」


でもやっぱり何も言えなくて黙っていたら
松潤がじっと見つめてきて、そして少し躊躇いながら
ゆっくりと腕を伸ばしてきた。


「……俺がいるでしょ?」

「……!」


そしてその腕を少し躊躇いがちに伸ばしてきたと思ったら
ふんわりと優しく身体を包み込むように抱きしめてくる。


目の前には松潤の胸があってドクンドクンと心臓の音が聞こえてきた。


そのままの状態で松潤の心臓の音だけを聞いていたら
少しづつ気持ちが落ち着いてくるような気がした。







どれくらいそうしていただろか。
松潤がゆっくりと身体を離し大丈夫かと言う風に
顔を覗き込むように見つめてくる。


「……」

「……」


そして松潤が何も言わずにただ見つめてくるから
やっぱり何も言えず見つめ返す。


「……」

「……」


松潤が見つめたままゆっくりと顔を近づけてくる。
その真っ直ぐに見つめられる視線に吸い込まれそうになりながら
見つめていたらそのまま唇にチュッと軽くキスをした。
びっくりして慌てて顔を離しその顔を見ると松潤がにっと笑った。


「…もう、ダメって言ってるのに」

「ふふっやっとしゃべった」


そう文句を言うと松潤は全然気にしていない様子で
いたずらっ子みたいな顔でくすっと笑った。


「悲しみに暮れてるより怒った方が元気出るでしょ?」

「ダメって言ってんのに」


そう言って怒っても松潤は全然悪びれもせずクスクス笑っている。


「智は泣いた顔より笑った顔の方が可愛いよ」

「泣いてねえし、可愛くもねえし」

「ふふっその元気があれば大丈夫だ」


そう言いながら松潤がゆっくりと手を伸ばしてきた。
だからつられるように左手を差し出した。
松潤がぎゅっと強くその手を握った。


「下校時刻もとっくに過ぎてる。帰ろ?」

「うん」


そして手をぎゅっと強くつないだままそう言ってニッと笑った。
その笑顔に怒っていたはずなのについつられて笑ってしまう。
そしてうんと答えると松潤は嬉しそうに笑って
帰ろうと手を引っ張った。











その人はいつも2階と2階をつなぐ渡り廊下から外を見ていた。


渡り廊下から見える景色は、何の変哲もないただの庭で
そこからは色とりどりの草花や四季折々に花を咲かせる木が見えた。


その中庭は自然がいっぱいなだけで自分にとっては
何の面白みも感動もなかったけど
その人にとっては好きな景色なんだなと思っていた。


見かけの派手さとは違って色とりどりの草花を見たり
四季折々の自然を見て楽しむようなそんな情緒あふれた人なんだなと
そう思いながら毎日その姿を見ていた。


その人が渡り廊下からその中庭を眺めたり
時には立ち止まってその中庭を見ていたり
その姿をいつも見ていた。


だから自然と自分もそこから見える中庭の景色を見ていた。
草花なんて全然興味がなかったけど
毎日見るたびに、同じように見えていた草花や木には


色々な種類があって
一つ一つに名前があって
時期に合わせて花が咲いたり
紅葉したり落葉したり


色々な姿を見せてくれるんだなって思って感心したりしていた。










そして、いつの間にか。


ひまわり、ツバキ、キンモクセイ、バラ


ツツジ、菜の花、シャクナゲ


スズラン ユリ キキョウ 梅


サツキ、ケヤキ、イチョウ


毎日見ているうちにその中庭にある木の名前も


花の名前も覚えてしまった。






そして。



その人がいつも渡り廊下から


色とりどりの草花や木々を眺めている姿を見ていたから


自分もその渡り廊下から見える景色が好きになった。


その人がいつもそこから眺めている姿を見るのが好きだったから


自分もその場所が特別な場所になった。





その人の事が、好きだったから




草花や木が好きになった。







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2 コメント

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切ないですね (白紙)
2017-02-05 19:21:43
 潤君がいい人過ぎて、いちごでも構わなく思ってしまいそうな展開です。傷ついている智くんを見守っていてくれて、元気づけてくれてありがとうの気持ちでいっぱいです。でも、いつも睨み付けられているのに、嫌われていない確証を得たい智くんがいじらしいです。色々いらいらもやもやしている翔さんに通じるのはまだ先なのでしょうね。でも、本当にキスしていた2人に、イライラもモヤモヤも更に増大しそう。誰を応援すべきか悩む展開ですが、智くんがこれ以上泣かなくてすみますように願っております。それではまた。
 
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白紙さんへ (きらり)
2017-02-06 19:12:03
白紙さん、コメントありがとうございます。

今はちょっと3人が3人とも切ない感じになっていますね。
松潤は色々思うところもあるのでしょうが優しく見守っていますね。
智さんは何でそんな態度をとられるのかわからなくて悩んで行動してみたら撃沈してしまいました。
翔さんは金髪のイケイケの頃のイメージでちょっととんがってる感じなのでまだまだ厳しい感じかもしれませんね。

今の落ち着いた翔くんも凄く好きなのですが
あの頃の翔くんってあの年代特有の美しさだったり儚さだったりが凄く際立っててすごく好きなんですよね。
ありがとうございました♪
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