yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

いつか part10 完

2017-08-21 21:27:50 | いつか









「うわー懐かしい。凄い昔の雑誌まである」


智は何だか嬉しそうだ。


そして俺はというと。
心臓が今にも飛び出してしまうのではないかと思うほど
凄くドキドキしている。


「うん、ブックオフでね」


雑誌に写っている本人が。
その人が雑誌を見ながら話をしている。


「ブックオフ?」


智が何それ?って顔をする。
可愛いんだけどね。


でも何だか本人を目の前にしてやっぱり恥ずかしさを隠せない。


「うん。今は売ってない昔の雑誌とかも置いてあってね…」


智の事を知りたくて来る日も来る日もあちこちの古本屋を巡っていた。


「ふうん」


そんな事を知らない智は、懐かしそうに昔の雑誌を見ている。








そして。








雑誌をぱらぱらと見ていた智の手が


ある1ページで止まった。





それは二宮さんと二人で楽しそうに写っているページだった。





一瞬、泣きそうな顔になって


でも、


ふと我に返って、慌てて俺に何でもないと笑顔を見せる。


「うわあ、CDやDVDもたくさんある」


そして誤魔化すようにそう言った。


「うん、それもさ通常版は手にいられても限定版とかはなかなか手に入れられないんだよね」

「そうなの?」

「そう。でもそれにしか入ってない曲とかもあってさ、
だからどうしても手に入れたくてヤフオクで落としたりして…」


だから気付かなかったふりをして話をする。








「ヤフオク?」

「うん」


プレミアがついちゃって、もの凄い世界になっちゃってる事を
智は当事者なのに知らないんだろうなぁと思いながら
それを手に入れた日の事を思い出す。


「うわっうちわもある」

「ああそれもね色々と手を尽くしてね。何か他のグッズとかも毎回違うんだね…」


今までアイドルとかに興味なかったから全然知らない世界だったけど
本当に凄い世界なんだね…。
これを手に入れるのにどれだけの苦労したか。
しかも不思議と色々欲しくなって止まらなくなる恐ろしい世界だし…。


「何だか俺のめちゃめちゃファンの人みたい」


そんな事を思っていたら智がそう言っておかしそうにくすくす笑った。


「うん、多分重症」

「んふふっ」

「ひいたでしょ?」

「ううんひかない。びっくりしたけど」


智が嬉しそうに言う。


「でも分かったでしょ? 俺がどれだけあなたにはまっているか」

「んふふっ」


その言葉に智は可愛らしく笑った。


「だから信じられなかった。っていうか今でも信じられない」


そんな人が家にいて一緒に本人のものを見てるだなんて。


そして今さらながらその状態を考えると何だか無性に恥ずかしくなって
顔が赤くなっているのが自分でもわかった。










でも。


ずっと会いたいと願っていた
でももうテレビでしかその姿を見ることはないだろうと思っていた。
だからもう後悔はしたくはなかった。


「今も手ぇ震えてるよ」

「え~うそ」


いつも画面や雑誌で見ていたその人が目の前にいて
一緒に話をしているという現実に、どうにかなってしまいそうだ。


「ほら」

「んふふっ信じた」


そう言って震える手を差し出すと、智は可愛らしくそう言って笑った。


でもやっぱり信じられない。
こうして再び出会えたこと。
こうして話をしていること。


そして自分の家に智がいて、こうして一緒に智のものを見ていること。









それなのに。









「……」

「……」


智がまたあの時と同じように何か言いたそうな顔で見つめてくる。


その美しい顔に心が持っていかれそうになる。
自分自身歯止めがきかなそうになる。


だけど。


あの時と同じ視線。
あの時は気付かないふりをした。


意気地がなくて、自分自身が怖くて。
何でもないふりをして、それで智と会えなくなってしまった。


だから。


もう二度とそんな思いはしたくない。







手は相変わらず震えている。
心臓はバクバク言って今にも飛び出しそうな勢いだ。


目の前にはずっと画面や雑誌で見ていた智の綺麗な顔がある。
頭の中には大きくきらびやかな舞台で堂々と歌って踊る智の姿と
何万といるファンの子のキャーという歓声が聞こえる。


そして数え切れない位の無数のペンライトの美しい光。


その透き通るような綺麗な歌声に聞き惚れていた。
キレのある美くも圧倒的なダンスに見惚れて
何度も何度も飽きることなくその映像を見ていた。


そして智という存在に夢中になっていた。










その智の肩を優しく掴み、そのままその身体を押し倒す。


自分の下には智の華奢な身体と綺麗な顔があって


真っ直ぐなまなざしで見つめてくる。


ドキドキが止まらない。


あの智が自分に組み敷かれている。


そう思うだけで心臓はドキドキと鳴りやまない。










夢中で何度も見ていたその智が自分の下にいて、


瞬きもせず、じっと見つめてくる。


「好き だ」


掠れる声でそう言って


智の手首を両手で掴んだままゆっくりと顔を近づけていく。


智の視線を痛いほど感じる。


ドキドキが止まらない。








遠くて、手の届く存在ではないと


簡単には触れてはいけない存在だと思いながらも


どうにかなってしまいたいと思いと


どうにでもなれという気持ち。


もう、立ち止まれない。


立ち止まらない。


そのまま角度をつけ自分の唇を智の唇に近づけていく。


智の綺麗な目がゆっくりと閉じられる。


そして唇が智の唇に軽く触れた。


ドキドキが止まらない。


あの智とキスをしている。


あの画面で何度も見ていた智と。


心臓はバクバク言っていつまでもいつまでも鳴りやまない。










「俺も、好き」


唇をゆっくり離し視線が合うと、智がそう言ってくすっと笑った。


あの智が。


俺も好きだと言った。


もう現実か夢かさえわからない。


ただ心臓の音が煩いくらいにバクバクと音を立てている。


智を見ると、智がゆっくりと腕を伸ばしてきて


背中に手を回しそのまま智の方へと身体を引き寄せられる。









そして智の口が小さく開いたかと思うと


そのまま導かれるように唇を重ねる。


頭が、身体が、カッと熱くなる。


そのキスはさっきの触れるだけのキスとは違う。


智に求められるように舌を差し入れると絡ませあい深いキスをする。


もう何も考えられない。









さっきまでずっと頭の中で鳴り響いていたたくさんの歓声と


何万と見えていた美しいペンライトの光はすっかり消えて


頭の中は、真っ白になる。


そして、夢中で智を求めた。


















智が高台にあるこの場所から街並みを眺めている。
その姿を見ながらやっぱり芸能人だと。
オーラがあって凄く綺麗だなと思う。


「俺、ここから見える景色好き」

「うん、俺も好き」


智がこちらを見るとそう言ってにこっと笑った。
笑った顔はやっぱり可愛いなと思う。






「……二宮さんって どんな人だったの?」

「うーん、犬?」

「やっぱ、犬か」

「んふふっ。んとねぇ犬みたいにいつもまとわりついてきて
笑いかけるととしっぽふって凄く嬉しそうにするの。
でもいざっていう時は俺の事を全力で守ってくれて」

「そっか。本当に智の事が好きだったんだな」

「んふふっ」


そう言うと可愛らしく笑う。


「じゃあこれからは俺が番犬の様に智くんの事を守るよ」

「翔くんが、番犬?」


智が意外そうな顔をする。
そんな意外な事かな?


「うん、さしあたって俺はシェパードってとこかな?」

「え~?」


そう言うと智はえーと言っておかしそうにクスクス笑った。


「変かな?」

「うんだってシェパードっていうより、リスみたいなんだもん」


だから心配になってそう聞くと智は平然とそう答える。


「り、リス?」

「うん、ひまわりの種とか口いっぱい頬張ってるイメージ」


そう言ってくすくす笑っている。
可愛いんだけどね。


でもひまわりの種をほおばってるって。


「それってハムスターじゃね?」

「んふふそうなの? でもそんな感じ」


そう言いながらいつまでもおかしそうに笑っている。


「そっか、リスとかハムスターか」


その智の可愛さについつられて笑ってしまう。


「うん」

「まじか」

「うん」

「そっか」

「うん」


ま、いいか。
リスでもハムスターでも。


「あまり頼りにならないかもしれないけど、俺が代わりに智くんの事守るよ」


その言葉に智がえ? って顔で見る。


「俺が二宮さんの代わりにずっと守る」


そう言うと智がじっと見つめた。







そしていつか。









いつか、あなたの心の底にある傷が癒えますように。


いつか心から笑える日が来ますように。


そのふとした瞬間に見せる悲しげな視線が癒える日がきますように。


俺がずっと祈っているから。


俺がずっと見守っているから。


だから。


もう、悲しい出来事を忘れるためにと知らない人と
酔いつぶれるまで飲むなんて危ないことしないで。


自分をそんなに責めないで。


そう思いながらその身体を引き寄せ優しく抱きしめる。










この霊園のはずれにはちょっとした広場があって


高台にあるこの場所からは綺麗な街並みが一望できる。


芝生があって


大きな木があって


その大きな木はまるでお墓で眠る人たちと


眼下に広がる街の人たちを見守っているようだ。


そこから街を眺めていると気持ちのいい風が流れる。


上を見上げると青空が広がっていて


大きな木の間から木漏れ日から差し込む。


そしてそこには智くんの綺麗な顔があって


風が吹くと柔らかそうな茶色い髪をさらさらと揺らす。


その目にかかってしまった前髪を優しく手で払うと


智がありがとと言って微笑む。


最初見た時と変わらず儚くて美しくて


でも凛とした強さも感じられる。










その街並みが見渡せる大きな木の下で





「好きだよ」と






そう、智に言って






大きな木の影に隠れるようにそっとキスをした。









これでおしまいです。
4年越しになってしまって本当にすみません💦

いつか part9 

2017-08-21 16:17:30 | いつか







智がそう言って真っ直ぐな視線で見る。


その視線に、ドキッとして吸い込まれそうになる。


そのちょっとした瞬間でさえ


惹きつけられ、惑わされ、


その圧倒的な美しさに


やっぱり芸能人なんだと、実感する。









視線も合わない。


会話もない。




俺とは一切口なんてききませんって顔をして


ずっとツーンとそっぽを向かれていた。




沈黙の空気が重たくて、息苦しくて


そのまま地の底まで沈んでいきそうだと思われたその空気は、


自分が去らない限り永遠に続くものだと思っていた。









「それは、相葉さんが智くんの事を凄く心配して、俺に連絡をくれて…」

「……え?」


その言葉に智が何で?って顔で不思議そうに見つめ
俺の言葉に耳を傾けた。


その瞬間。


少しだけ空気が変わったような気がした。


「それで俺から頼んで相葉さんと会って話をすることになったんだ」

「……どういう事?」


その綺麗で真っ直ぐな視線にまた吸い込まれそうになる。
でも智が疑問に思うのも当たり前の事だと思った。


相葉さんと会ったのはあの時の一回だけだ。
だから自分自身相葉さんが連絡をくれた時凄く驚いた。


なのに。


自分から会って話がしたいと言って相葉さんに会った。


計算ずくと思われてもいい。
打算的だとののしられてもいい。


でも、最大のチャンスだと思った。


会えるはずなんてないと
会える資格なんてないと


心の中でそう思いながらも
どんな方法を使ってでも智に会いたかった。


だから。


相葉さんと会った。










「でも俺はそれで智くんに会えて嬉しかった」


そう言うと、なぜか智はあからさまにむっとした顔をした。


少し話をしてくれただけでもすごく嬉しかったのに
空気がほんの少しだけでも変わったのが嬉しかったのに
智の考えていることがわからない。


どうすればいい?
何といったらいい?


その美しくて、氷のように冷たい視線に
どうしたらいいかわからず、口を開けずにいると、
また沈黙が続いた。


智がまたツーンと横を向く。


そして。


皮肉なことに


そんな顔もでさえもやっぱり綺麗で惹かれた。








何がそんなに智を怒らせているのか。


それは。


もしかして


もしかしたら。


いや、相手はトップアイドルだ。


うぬぼれるんじゃない。


そう、自分自身を戒める。


でも。


もしかして。


もしかしたら、と、思った。










「ずっとあなたに会いたかった」

「……」


ずっと伝えたかった言葉。
その言葉にツーンと横を向いていた智がちらっとこちらを見る。


「会いたくてたまらなかったけど、どうしても会えなかった」

「……」


ずっと。


勇気がなくて伝えられなかった言葉。
意気地がなくて移せなかった行動。


「あなたの事が気になって気になって、仕事でもつまらないミスばかりしていた」

「……」


相手は芸能人だからと
トップアイドルだからと
そう自分自身に言い訳してあんなに会いたかったくせに、
何もできなかった。


「だからあなたにどうしても会いたくて、相葉さんと会った」

「……どういう 意味?」


智がそう言ってじっと見つめてくる。
その視線に、また引き込まれ惑わされ、そして心臓がぞくぞくとなる。


「だって、あなたはトップアイドルだから…」

「知ってた の?」


その言葉に智の瞳がゆらゆらと揺れた。


そう。


あの時。


最初に自己紹介した時。


知らないふりをした。


「最初は知らなかった」

「……」

「けど、偶然雑誌であなたを見て、芸能人であることを知って、それで愕然とした」


でも芸能人だと知った後も、どうしても忘れられなくて
何度も何度もあの出会えたあの場所に通っていた。


「……それは、嫌悪感 って事?」

「まさか!」


智の言葉に驚く。


智の出ているDVDや雑誌を買いまくって
何度も何度も歌やダンスや芝居を見ていた。


でも。


その智が思いもしない言葉に驚くと共に
もしかしたら芸能人であることで
そういう思いをしてきたのだろうかとも思った。












「だったら、何 で…」

「……え?」


その言葉に智が小さく訴えるように言う。


「だって、おれがキスしても、全然何でもない顔していたじゃん」

「それは…」


あなたと再び会えた時
あなたと食事ができた時
あなたが家に来てくれた時


信じられない位、夢のような時間だった。


「……」

「あなたの事を雲の上の人だと思っていたから。
だからあまりにもびっくりし過ぎて…」

「……雲の 上の人?」

「そう、だって芸能人だし、才能だって凄いし、ファンの子だってたくさんいるし…」


そんな人と普通のサラリーマンである自分が
話をしたって事だけでも信じられないのに
その人がとまさか一緒に食事をして、そして…


やっぱり信じられなかった。


「じゃあ何で、あの日俺に何もしなかったの」


智がそう責めるように言った。







そうか。







だから、か。









「それは俺が意気地がなかったから…」

「……」


智が責めるような視線で見てくる。


「それに自分が抑えられなくなったら怖いっていうのもあったし…」

「……抑えられないって?」

「その…智くんに対する思いとか…」

「……」


その上目づかいで見つめてくる静かな視線に
吸い込まれそうになる。


「智くんに対しての行動とか…」

「……行動?」

「うん」

「……」

「って、俺何言ってんだろ」


そう言いながら思わず恥ずかしくなってしまって
自分自身でも顔が真っ赤になったのが分かった。


「……」

「……」

「別に 抑えなくてもいいのに」


お互い何も言わないまま顔を見合わせる。


そして智がクスっと笑ってそう言った。


その表情にやっと笑顔が見れた事に対する嬉しさと、照れくささが入り混じる。









って言うか、今、抑えなくてもいいって言った?








「いやでも凄い人だし」

「凄い人?」

「そう。踊ってる時とか歌っている姿とかファンの子の数も凄いし。
そんな人と一緒にいられるだけでも奇跡っていうか」

「奇跡って大袈裟~」


あまり自覚はないのかそう言って智はくすくす笑う。


「だからなんていうか手が届かない存在っていうか
簡単に触れてはいけない存在というか…」


そして本当は今でもそう思っている。


「言ってる意味がよくわかんないけど…」

「ごめん」


やっぱり自分の立場をわかっていない智は
戸惑いながらそう言って困った顔をする。


「よくわかんないけど…でも翔くんは俺に全然興味がないんだと思ってた」

「いや、むしろ逆で…」

「……逆?」

「もう家の中、智くんだらけで凄い事になってて…」

「俺だらけ?」


その言葉に智がやっぱり困惑した表情を浮かべる。
まあそんな事聞かされて当たり前だろう。


「うん、だからあの日家に来るって言った時も
玄関の外でちょっと待っててもらったでしょ?
それはその状態を見られるのが恥ずかしくて隠すためだったんだ」


「ほんと?」

「うん、本当」


智が信じられないって顔で見る。


「だったらホントかどうか確かめたい」

「へ?」

「翔くんの家に行って確かめてみたい」


そしてウキウキした表情をしたかと思ったら


そんな事を言い出した。


可愛いんだけどね。


でも、家に来る?


智が、確かめに来る?


「ダメ?」

「いや、ダメじゃないけど…」

「けど?」


やっぱり本人を目の前にして恥ずかしいっていうか。


「ひかない?」

「大丈夫」

「ただのファンだよ?」

「それがホントかどうか確かめたい」



智は無邪気にそう言ってウキウキした表情を浮かべた。


こんな風に話してくれるようになってくれて


凄く嬉しいし、


その顔凄く可愛いんだけどね。




そう思いながらも動揺を隠せない俺がいた。








いつか part8 & 雑記

2017-08-04 17:08:05 | いつか







「危なかしくて見てらんなかったです」




相葉さんが悲痛な面持ちで小さくつぶやいた。





「……」


その言葉にまた何とも言えない気持ちになる。


事務所に入ってからずっと仲が良かったという二人。
その仲間が辛い出来事を忘れるためとは言え
知らない人と毎晩のように酔いつぶれていたら
心配でたまらなかっただろう。


「でも…」

「……」


相葉さんは少し考えるような顔をして言った。


「でも、櫻井さんは何か違うような気がしたんですよね」

「違う?」


確か電話でも自分と会ってから笑顔が見られるようになったとか
俺の話をしていたとか言っていた。


だから。


どうしても相葉さんと話がしたかった。
どういう意味なのか聞きたかった。


「自分でもよくわからないんですけどね」


相葉さんはそう言うと、照れくさそうに笑った。












「あ、そうだ大ちゃん呼びましょうよ?」

「え?」

「俺、仲直りして欲しいんですよね~」

「え?」


仲がいいという二人。


相葉さんの言動。


まるっきり期待していなかったと言ったら
それは噓になる。


でも。


仲直りと言っても、
そもそもそれ程の仲でもないし、立場も全然違う。
会えたのも数えるほどだ。


でもだからこそ、智に会いたかった。


だから、相葉さんと会いたかった。


計算ずくと思われてもいい。
打算的だとののしられてもいい。
相葉さんと会って話がしたかった。








毎日。


その姿をテレビを見ていた。
雑誌を見て、DVDを見て、
智の演じる役柄に入り込んだ。
そして智の綺麗で流れるようなダンスに見惚れ
智の透き通るような歌声に聞き惚れた。




でも。





やっと智と出会えたのに、会えなくなった。
キスをしてくれたのに、何事もなかったようなふりをした。
何か言いたげな顔をしていたのに、何も聞かなかった。
連絡を取ろうと思えばとれたのに、連絡しなかった。


全ては自分のせいだ。





だけど今はトップアイドルである智に会いたくてたまらない。


雑誌を見れば、表紙を彩り、CDを出せば毎回トップを飾る。
コンサートチケットは毎回激戦で、個展は抽選で海外でもなかなか入れない。
演技やダンスや歌、そして芸術的面でも才能を評価され
考えられない位、たくさんのファンがいる。
そして毎日CMやドラマやバラエティなど映らない日はないくらいテレビに出ている。


その智に。


忙しくないはずなんてない。


会えるはずなんてない。


会える資格なんて、ない。




でも。











「あ、おおちゃん? 今大丈夫?」


しばらくスマホを耳を傾けていた相葉さんが話し出す。
相手が智だと思うだけでドキドキが止まらない。


「うんうん今飲んでるの…そうそう、いつものとこ」


会話の行方を祈るような気持で見つめた。





その時間は長い時間のようにも短い時間のようにも感じられた。


ただ心臓はずっと煩いくらいにドキドキしていた。


何度も水を飲んで、心臓を落ち着かせる。





「……!」


きた!


その智のきた気配に変な汗が出て、緊張が走る。


手が震え、意識が遠のくのを感じる。


じっとその先を見つめた。


ゆっくりと開く。







智だ。


あれ程会いたかった智がいる。


智と視線が合う。


あのいつも会いたいと願っていた智が
いつも画面で見ていたその智が目の前にいる。
相変わらず美しくて、そして凛とした佇まいの智。
何と話せばいいのだろうか。
あまりの緊張に吐いてしまいそうだ。


でも。


そう思ったのは一瞬だった。


智と視線が合った瞬間、その視線はすぐに外された。


そして智は明らかに自分を見てむっとしていた。






そうだった。


だから自分から連絡が取れなかった。


会いたいけど自分から会う自信がなかった。







「ほらほらおおちゃん、そんなとこ突っ立てないで座って」

「だって、聞いてねえし」

「まあまあ、いいじゃないの」

「よくねえよ。何で相葉ちゃんがこの人と一緒にいるの?」


この人、か。


その言葉にガーンとハンマーで頭を叩かれたような気がした。


「それには深い訳が」

「何だよ深い訳って」


こんなに会いたかった人なのに。
ずっと会いたいと願っていた人なのに。
明らかに自分のせいで機嫌が悪くなっている。







トップアイドルのこの人と。


一緒に話をして、一緒に歩いて、食事をした。
そして一瞬だけ、ふれるだけのキスをした。
そして一緒にお墓参りをして、
自分の家に一緒に行ってお酒を一緒に飲んだ。


それがすべて夢か幻だったんじゃないかと思うほどの
その冷たい視線に時が止まったような気がした。








「後でゆっくり話すからさ~。ほらほら挨拶して? ね、櫻井さんも」


智は席には着いたものの無言でそっぽを向いている。


「こん ばんは」

「……」


どうしたらいいのだろう。
会いたくて会いたくて、やっと会えたのに
この状況が悲しい。


「あの…久しぶり だね」

「……」

「ほら、大ちゃん、久しぶりだねって」

「……」


相葉さんも必死にフォローしてくれるけど
智は何を話しかけてもツーンと横を向いたままだ。


「……」

「……」


どうしたらいいのだろう。


残念だけど。


会えて凄く嬉しかったけど。


これ以上一緒にいるのは諦めなくてはいけないのかもしれないと思った。


智は明らかに自分がいる事に怒っている。


「俺、帰ります」

「え? 何で何で?」


相葉さんが驚いたように聞く。


「何でって…」


こんな空気で相葉さんだって板挟みになって辛いだろう。
帰るしかないと思った。


「帰りたいって言ってんだから帰れば?」


智がやっと口を開いたと思ったら冷たくそう言い放つ。


やっぱり怒っている。
その言葉にまた頭をハンマーで殴られた気がした。


「もう大ちゃんたら。ごめんね、普段はこんな事言う子じゃないんだけど…」

「いつもこんなだもん」

「嘘」


相葉さんが困り果てているのがありありとわかった。


「じゃあ、30分だけ。これ飲んだら、帰ります」


すぐに帰るのも相葉さんを困らせてしまうだけのような気がして
そう言うと相葉さんが少しだけほっとしたような表情を浮かべた。
でも智はその言葉にもツーンと横を向いていた。










「え~ 櫻井さん東京出身? 大ちゃんと一緒だね。俺は千葉なんだよ~」


何て話をしながら相葉さんが必死に盛り上げてくれている。


でも智の方はというと一向に来た時の態度と変わらない。


視線も合わない。
会話もしない。


それが悲しかった。





「ごめん、ちょっと」


そんな中、相葉さんにマネージャーさんからだろうか、連絡が入った。


「……」

「……」


席を外し二人きりになってしまった空間は
何だか酷く空気が重苦しい。


「……」

「……」


沈黙が続く。
空気が重くて、苦しい。


「……」

「……」

「ごめん、今マネから連絡があって、ちょっとトラブルで戻らなくちゃいけなくなっちゃった」

「ええ?」


電話を終えた相葉さんがそう言って慌てて戻ってきた。
そんな事を言ったら智一人になってしまう。










かと言って。


この雰囲気じゃ智と相談することさえできない。


智を見るとわれ関せずって顔をして飲んでいる。


どうしようか。


でも毎日、知らない人にも話かけて、酔いつぶれるまで飲んでいたと言う智を
この状況でとても一人置いて帰ることはできないと思った。


とは言っても話もしてくれない智とどうしたらいいのか。


頭の中でぐるぐると考える。


「どうする?」


相葉さんが心配そうに聞く。
まあこの空気を感じて心配になるのも当たり前だろう。


「もしまだ二人飲むなら、ここは俺の付けでいいからいて?」


相葉さんも智の事が気がかりなのだろう。
心配そうな顔でそう言った。


でも仕事なら仕方のない事だ。
ここは大丈夫だと、智を一人放って行くことはないと。
何とかするから大丈夫だと、そう言って急ぐ相葉さんを仕事場に向かわせた。











「……」

「……」

「……」

「……」


とはいっても重い空気が軽くなる訳でもなく。
二人きりの空間、長い沈黙が続く。


目の前には智。


あれ程会いたかった智が目の前にいる。
とてもそんな事を味わっている雰囲気じゃないけど。


でも、トップアイドルで、ものすごい数のファンがいて、
大きいステージをいつも一人で満席にしている。
その中で一際光り輝きながら歌い踊っていた智がいる。


その智は、相変わらず、むすっとしていて
一切俺とは口なんて聞きませんって顔をして
ぐびぐびと酒を飲んでいる。


嬉しさと、悲しさと、戸惑い。
胸の高鳴りと、不安。
色々な思いが交差する。


「……」

「……」


でも。


なぜかこんな重い空間なのに。
智はたいしてというか、全く楽しそうに見えないのに、
不思議と帰ろうという気はないみたいだった。


「……」

「……」


どうしようか。


「……」

「……」


重い空気の中、必死に考える。


「俺がいて…」

「……」


智が、何? って顔で見る。
その視線にドキッとする。
そしてやっぱり綺麗だなと思った。


「俺が突然いてびっくりしたでしょ?」

「……」

「驚かせてしまってごめん」


その視線を感じドキドキしながらとりあえず今の状況を謝った。


「……」

「……」


でも、また沈黙。


「……」

「……」


どうしたらいいのだろうか。









「…何で二人一緒にいたの?」


もうダメかも知れないと、帰った方が智にとってもいいのかも知れないと


そう諦めかけたその瞬間。




智が口を開いた。










~雑記~


以前、お話でなくても、と言って下さったので色々と。
興味がない方はスルーで。


今、世間は忍びの国で一色なのですが、、、アユハピコンの話です。


今アユハピコンを見ながらこれを書いているのですが
Daylightってすごくコン映えする曲だなって思ってて。
普段聞いていてもいい曲なんですけども、
コンサートで映える曲だなと思いながら見ています。


あの翔さんが智さんを見つめて微笑むのもとてもいいのですが
何といってもあの曲の感触がいい。って今さらかも知れませんが。
アユハピコンを見て大好きになった曲です。


そしてコンサートと言えば、今書いている舞台が丁度
初ドーム位の話なのですが一番私がはまっていた頃の話です。
で、その頃溢れる思いをファンブログに書いてて
そこからスライドして今に至っているのですが
やっぱり一番はまっていた時期の話が多いのかな?と思います。


全然関係ありませんが、あの頃は番組の終わりとかに
コンの電話予約受付の宣伝があったりして
今ではとても考えられない時代だったなあなんて。
ほんとに雑記でした。