本郷山村留学センターの紹介

山口県岩国市の山奥にある、本郷山村留学センターを保護者目線で紹介するブログです。

ふたつの「あ」

2020-07-19 07:14:06 | 子育て
いまの社会に生きていて、つくづく思うのですが。
自然とのつながりがある人、自然とのつながりが切れかけている人、はたまた人工的な存在になる一方の人がいるのではないかと。

現代社会においては、そもそも善悪の判断をすることが難しくなっています。価値観の多様化、価値の相対化、人工的な価値観の広がり。
昔の日本であれば、お天道様が見ているという価値基準がありました。善悪の基準というのは、お天道様という自然にあったわけです。
それは誰か賢い人によって作り出された主義主張によるルールを学習することによってではなく、自然の秩序を尊重する情緒によって知られていたのです。

お天道様につながる心が良心であるといえます。
良心が大事だと思う人、判断がつきかねる人、そんなものはどうでもいい人、いるのではないでしょうか。

人には、自分の生命を自分で作りだすということはできません。
そのうえで、日々を当たり前のように生きていくのか、ありがたさを忘れないように生きていくのか。
どちらの「あ」を選ぶのか、それによって、見える世界が、ものの見方が違ってきます。人間は、生きている限り、どちらでも選べます。
自分という小さな枠からはみ出ることのない視点からものを見るのか、お天道様の視点からものを見るのか。

自分だけ人間になってしまうと、情緒が分からなくなります。人間の言葉以外のものを理解できなくなります。
自然は人間の言葉で話しかけることはないし、目新しさもありません。
でも、人工的なものは、その逆です。もっともらしく聞こえもするし、人目をひこうともします。正しそうにも見えます。

子どもたちの情緒を大事に育てていきたいものです。情緒こそが人として生きるために、大事な土台となるものです。


いろんな親

2020-07-12 07:18:24 | 子育て
昔(江戸時代)は実の親以外にも、いろんな親がいたそうです。

帯親
取上親
乳親
拾い親
名付親
烏帽子親
鉄漿親

などの仮親です。血縁関係によらない親子関係で、そのとき限りのものもあれば、一生涯にわたって継続するものもあったということです。

家族以外にも、子どもの成長を関心をもって見つめてくれる他者の存在があるというのは、とても有難いものに思えます。
(参考『子どもたちの近代』)
子どもの成長においても、大人の価値観もいろいろあると知りながら育つことって必要なことだと思います。

いま、岩国市内の学校でも、SOSの出し方教育というのが行われているようです。
子どもたちに、悩み事があるときは、信頼できる大人に相談することを勧めています、少なくとも3人に。

昔のように仮親のような大人が何人もいれば、相談相手もみつけやすいかもしれません。
身近に見つけられない場合は、公的な相談窓口もあります。

わが子にとっても、信頼できる大人が周りにいてほしいと思いますし、そういう出会いがあることを願います。
また、わたし自身も、わが子にも、そしていわば仮の子にも信頼される大人でありたいと思います。


寮に入れるということ

2020-06-24 07:10:04 | 子育て
山村留学ではなく、私立中高の寮の話ですが、参考になる面もあると思いますので、抜粋してみます。

<イギリスまで含め、全寮制の学校を探したのも理由があります。
日本で全寮制の学校は少ないのですが、将来的には選択肢のひとつとして一般的になるでしょう。
世界的に見ても、いい教育をしている国には全寮制教育があります。
*イギリスのパブリックスクールが有名ですが、日本でも旧制中学、旧制高校は全寮制でした。若い時期に、いろいろな考え方をする人たちと共同生活をすることが大事です。

これまで会った人のことを考えても、全寮制の学校を卒業した人は、接していて、ちょっと違う感じがしていました。
まず、友だちとの連帯感が違います。
いろいろな進路に行く人が一緒に生活していて、コミュニケーション能力が上がるほか、世の中を広く見たり、人間を広く見たりすることができます。
広い視野のうえで集団生活をして、本当の意味で切磋琢磨することは、全寮制でないとできないだろうと思っていました。
(中略)

少子高齢化で、子どもの数が減り、ひとりっ子の割合が増えています。
きょうだいで育ち、もまれるといった、子どもどうしでのコミュニケーションの機会が昔より少ないのです。
全寮制という環境は、子どもどうしで関わる機会を作るという意味でも、とてもよかったと思っています。
(中略)

*全寮制は、教育上はよいと思うのですが、問題は、おかあさんが子どもを手放したがらないことです。親が子離れできるかどうか。できるなら、おすすめできます。
(中略)

集団生活に適応することには、それなりのエネルギーを割くことになります。
そのため、全寮制では反抗期のない子も少なくありません。
もっとも、最近は反抗期のない仲良し親子も多いのです。
子どもの反抗期をわざわざ経験したい方は、あまりいないでしょう。
うちの場合も、3人とも反抗期はなかったです。

子どもなりに寮で気を遣っていたのでしょう。
そこで生産的な方向にエネルギーが使われたのだと思います。
友だちとのコミュニケーションというのは、エネルギーを使います。
個人差もありますが、寮に入っていなければ、反抗とか、非生産的な方向にエネルギーが使われる可能性もあったでしょう。
寮生活は、そういう意味でも非常によかったと思います。

うちの子たちは、中学からいきなり家の外に出たわけではなく小学生のときからいろいろな習いごとをして、親以外の大人や、さまざまな子どもたちと接していました。
そうした経験も、振り返ってみると、相乗効果があったのかもしれません。

成長期の寮生活で、生産的な方向にうまくエネルギーを使えたことや、その後も友人関係が充実していることは、これからどのような道を歩むとしても、大きな意味があるでしょう。
親子関係を心配される方もいるかもしれませんが、寮に入ったからといって、関係が悪くなることはありませんでした。
(中略)

*同じ年齢の集団で過ごすことは、社会的訓練だけではなく、自分と他者との相違点に気づかせ、成長を促し、豊かな個性を育むことにつながります。ただ座って、黒板や先生だけを見て、受け身で授業を受けているだけでは、そのような深い交流は生まれません。
(中略)

なかには、寮生活にうまく適応できない子どももいるとは思います。95%の人にとってよかったとしても、5%は、それまでの親や周囲とのかかわり方で何かあったのかもしれませんし、実際の原因は会ってみないとわからないです。ただ、体質が原因で身体が弱いからなじめないとかではないと思います。>

幼心を打ち捨てて

2020-06-21 07:02:23 | 子育て
<『今日よりぞ 幼心(おさなごころ)を打ち捨てて 人となりにし 道を踏めかし』

今日からは、親にすがって甘えるような心を振り切り、ひとり立ちした人間になるために、力強く歩んで行きなさい。

松陰先生が26歳の時、いとこの玉木彦介の元服を祝して贈った和歌です。
成人を迎えた彦介に、大人としての自覚を促しています。>
松陰神社 吉田松陰先生語録13より

松陰の地元の子どもたちは、小学校でこういった言葉を唱和していると聞いて、すごいなと思っていました。
山口県ではどこもそうなのかと思っていましたが、岩国市の本郷小学校ではやってないようです。
萩市の明倫小学校で行われているようです。冒頭の言葉は、1年生が1学期に朗唱するのだそうです。

ちなみに、玉木彦介の元服は15歳のときだったようです。
15歳で大人の自覚を持ち、人としての善悪をわきまえて生きていく。
大人としての自立をうながす教育、大事だと思います。


<『仁(じん)とは人なり。
人に非(あら)ざれば仁なし、禽獣(きんじゅう)是(こ)れなり。
仁なければ人に非ず、禽獣に近き是なり。
必ずや仁と人と相合するを待ちて道と云(い)うべし。』

仁とは人間にそなわった人を思いやる心である。
鳥や獣には仁がない。
仁がなければ人間ではなく、鳥や獣に近いものになってしまう。
従って、仁がそなわった人間としての行動こそが人の道ということができる。

松陰先生が27歳の時、「講孟余話」の尽心下に出てくる言葉です。>
松陰神社 吉田松陰先生語録30より

これは、明倫小学校で5年生が3学期に朗唱する言葉だそうです。
思いやりという、人として大事なものを、ちゃんと子どもに教えているか。また、大人自身が大事なものを身につけているのか。

子どもは親の背中を見て育つ。それは、山村留学をさせたところで、変わらないことだと思います。


一般論として

2020-06-03 19:43:40 | 子育て
NewsPicks Magazine Winter 2019 Vol.3 未来の子育て』に、「子どもをニューエリートに育てる方法」という対談が載っています。

山村留学にも言及があったり、子育ての参考になる面があると思いますので、抜粋してみたいと思います。

高濱正伸:いわゆる「人間力」ですよね。
思考力や判断力、表現力といった生きる力を育むには、子どもが10歳になるまでの働きかけが重要です。
この時期の子どもは母親の影響力が大きいので、過干渉にならないようにした方がいい。
でも、母親にとってそれは難しいことなので、父親が大局的な視点を持ってほしいと思いますね。
例えば、外遊びをたくさんさせるとか、サマースクールやキャンプに参加させるとか。
花まる学習会でも、野外での体験学習を実施していますけど、親元を離れて、親以外の大人や子どもたちと自然の中で過ごす間には、五感が刺激されたり、時にはトラブルに遭遇したり、ケンカが起こったりもします。
そうしたときに、問題を解決したり、コミュニケーションの方法を考えたりするなどたくさんのことが学べるんです。
実際、親御さんたちに話を聞くと、子どもが野外体験から帰ってくると、成長したのを実感できるという声が多く聞かれますね。

藤原和博:僕も10歳まではしっかり遊ばせた方がいいと思いますね。
そして、世代や立場を超えた人間関係にもまれることも大事です。
僕はそれを「ナナメの関係」と呼んでいるんですけど、昔はそのナナメの関係が、地域社会にあったんですよ。
学校の先生や母親に叱られて、家に帰りたくないというようなときには、近所のおばさんやおじさんが声をかけてくれたり、家に上げてくれたりして。
それから、僕は当時にしては珍しく一人っ子だったんですけど、友達にはほとんど、きょうだいがいたんですね。
そのお兄ちゃんやお姉ちゃんたちと一緒に遊んでもらうために、愛想を良くするとか戦略を立てたりもして(笑)。
そういうところで、自分で考えて、みんなが納得できる解を見いだしていく「情報編集力」が鍛えられたんです。
家を建てるときには、柱と柱の間に筋交いを斜めに渡して、補強しますよね。
ナナメの関係はまさにその筋交いのようなもの。
家庭や学校で何があったときでも、ナナメの関係があれば、子どもの支えとなってくれます。
地域社会が衰退して、ナナメの関係を持ちづらくなった今は、サマースクールやキャンプを活用するのも有効だと思います。
(中略)
加熱する中学受験戦争の呪縛を解く、情報編集力を鍛えるという意味では、僕は留学を勧めたいですね。
小学校のうちならキャンプよりも期間が長い山村留学とか、高校から海外に留学させるのもいいと思います。