フレンチとレイブンの研究に「社会的勢力に関する研究」というものがある。
彼らの研究によると、他者や周囲に対する影響力というものには、
1.強制的勢力:相手に対し罰を与える力や権力を持つ人が、相手に及ぼす勢力のことをいう。これは、相手を罰するという行為そのものだけでなく、教師や親、上司といったポジションそのものがこの影響力を有している場合も多い。
2.報酬的勢力:相手に報酬を与える力や行為によって、相手に影響を及ぼす勢力のことをいう。これも、報酬を与えるという行為そのものだけでなく、教師や親、上司といった報酬を与えるポジションそのものがこの影響力を有している場合も多い。
3.正当的勢力:立場上、その人の言うことを聞くのが正しいと判断される場合、相手に及ぼす勢力をいう。例えば、“直属上司の指示”は正当的勢力を有するが、飛び越し指示、つまり、正当な権限のない他部門の役員、管理職の指示は、一般的に、正当的勢力を有しない。
4.準拠的勢力:相手に対し魅力を感じ尊敬し、自らの意思で「その人のようになりたい」という気持ちから受ける勢力をいう。例えば、宗教の指導者と弟子との間、人気タレントとファンとの間に生まれるような関係。また、ビジネス分野では、一部のカリスマ経営者と社員、支持者との間に存在する。
5.専門的勢力:問題に直面したときなどそれを解決する上で、自分よりも解決能力がある人に感じる勢力をいう。例えば、大学教授などその分野のスペシャリスト。経験豊富な営業マン。コンピューターに詳しい友人や同僚、スキー教室のインストラクターなどがこの勢力を有すると考えられる。
6.情報的勢力:特定の人しか知らない情報を持っていたり、それを巧みに発信する人から受ける勢力のことをいう。例えば、誰も知らない情報の発信者、経営事情などに詳しい人。また、こうした情報を駆使して、相手に対し、目的・背景などを上手に説明できる人などがこの勢力を有すると考えられる。
以上、大きく6つの勢力に分けられるとしている(6の情報勢力は、後にレイブンが新しく加えたもの)。
そして、この研究では、リーダーが各勢力を駆使する際のいくつかの教訓を与えてくれている。
それは、
①管理職などのポジションそのものは、強制的勢力・報酬的勢力によるフォロワーへの影響力を有しているが、中長期的に組織を運営していくには限界がある。よって、これらの勢力は極力少なくするか、必要最小限に駆使する。または、他の勢力とのバランスを考慮して駆使していくことが望ましい。
②効果的にリーダーシップを発揮していくためには、正当的勢力・準拠的勢力・専門的勢力・情報的勢力などをバランスよく発揮することが求められる。中でも、情報的勢力は最も安定的な影響力を有していると言われ、ミドルマネージャの説明責任、効果的情報開示が、リーダーシップ発揮の有力な手立てとなりえるということ。
③最も安定的な影響力を有している情報的勢力が効果を示すには、フォロワーがある程度の知識を持っていることが前提となる。よって、フォロワーの成熟度が低い場合は、まず、正当的勢力、専門的勢力により、その前提を確保する必要がある。つまり、部下の成熟度によりリーダーはそのアプローチを変えていく必要があるということ。(これは、ハーシー&ブランチャードの状況対応型リーダーシップの考え方と同様と捉えてよいと思われる)
④なお、リーダーシップ発揮を準拠的勢力だけに頼ると、フォロワーの依存度が高まり、フォロワーの自律的行動を阻害するおそれがあるので、これだけに頼るのには留意が必要である。つまり、カリスマ・リーダーがフォロワーに与える準拠的勢力は、行き過ぎると、リーダーの思想に対し全面降伏し、自ら思考することを止めてしまう可能性があるということ。自律的人材の育成には、一面、準拠的勢力は悪影響を及ぼすことも念頭においておくべきであるということ。
といったことが、この研究から学び取ることができると考えている。
様々なリーダーシップに関する考え方、理論などがあるが、このフレンチとレイブンの研究は、どの時代にでも通用する教訓を私たちに教えてくれるのである。
(参考)
彼らの研究によると、他者や周囲に対する影響力というものには、
1.強制的勢力:相手に対し罰を与える力や権力を持つ人が、相手に及ぼす勢力のことをいう。これは、相手を罰するという行為そのものだけでなく、教師や親、上司といったポジションそのものがこの影響力を有している場合も多い。
2.報酬的勢力:相手に報酬を与える力や行為によって、相手に影響を及ぼす勢力のことをいう。これも、報酬を与えるという行為そのものだけでなく、教師や親、上司といった報酬を与えるポジションそのものがこの影響力を有している場合も多い。
3.正当的勢力:立場上、その人の言うことを聞くのが正しいと判断される場合、相手に及ぼす勢力をいう。例えば、“直属上司の指示”は正当的勢力を有するが、飛び越し指示、つまり、正当な権限のない他部門の役員、管理職の指示は、一般的に、正当的勢力を有しない。
4.準拠的勢力:相手に対し魅力を感じ尊敬し、自らの意思で「その人のようになりたい」という気持ちから受ける勢力をいう。例えば、宗教の指導者と弟子との間、人気タレントとファンとの間に生まれるような関係。また、ビジネス分野では、一部のカリスマ経営者と社員、支持者との間に存在する。
5.専門的勢力:問題に直面したときなどそれを解決する上で、自分よりも解決能力がある人に感じる勢力をいう。例えば、大学教授などその分野のスペシャリスト。経験豊富な営業マン。コンピューターに詳しい友人や同僚、スキー教室のインストラクターなどがこの勢力を有すると考えられる。
6.情報的勢力:特定の人しか知らない情報を持っていたり、それを巧みに発信する人から受ける勢力のことをいう。例えば、誰も知らない情報の発信者、経営事情などに詳しい人。また、こうした情報を駆使して、相手に対し、目的・背景などを上手に説明できる人などがこの勢力を有すると考えられる。
以上、大きく6つの勢力に分けられるとしている(6の情報勢力は、後にレイブンが新しく加えたもの)。
そして、この研究では、リーダーが各勢力を駆使する際のいくつかの教訓を与えてくれている。
それは、
①管理職などのポジションそのものは、強制的勢力・報酬的勢力によるフォロワーへの影響力を有しているが、中長期的に組織を運営していくには限界がある。よって、これらの勢力は極力少なくするか、必要最小限に駆使する。または、他の勢力とのバランスを考慮して駆使していくことが望ましい。
②効果的にリーダーシップを発揮していくためには、正当的勢力・準拠的勢力・専門的勢力・情報的勢力などをバランスよく発揮することが求められる。中でも、情報的勢力は最も安定的な影響力を有していると言われ、ミドルマネージャの説明責任、効果的情報開示が、リーダーシップ発揮の有力な手立てとなりえるということ。
③最も安定的な影響力を有している情報的勢力が効果を示すには、フォロワーがある程度の知識を持っていることが前提となる。よって、フォロワーの成熟度が低い場合は、まず、正当的勢力、専門的勢力により、その前提を確保する必要がある。つまり、部下の成熟度によりリーダーはそのアプローチを変えていく必要があるということ。(これは、ハーシー&ブランチャードの状況対応型リーダーシップの考え方と同様と捉えてよいと思われる)
④なお、リーダーシップ発揮を準拠的勢力だけに頼ると、フォロワーの依存度が高まり、フォロワーの自律的行動を阻害するおそれがあるので、これだけに頼るのには留意が必要である。つまり、カリスマ・リーダーがフォロワーに与える準拠的勢力は、行き過ぎると、リーダーの思想に対し全面降伏し、自ら思考することを止めてしまう可能性があるということ。自律的人材の育成には、一面、準拠的勢力は悪影響を及ぼすことも念頭においておくべきであるということ。
といったことが、この研究から学び取ることができると考えている。
様々なリーダーシップに関する考え方、理論などがあるが、このフレンチとレイブンの研究は、どの時代にでも通用する教訓を私たちに教えてくれるのである。
(参考)
![]() | 社会的勢力と集団組織の心理 (対人社会心理学重要研究集)林 春男,小窪 輝吉,磯崎 三喜年,古川 久敬誠信書房このアイテムの詳細を見る |
![]() | 面白くてよくわかる!社会心理学―学校、職場、家族で、よりよい人間関係を築く大人の教科書齊藤 勇アスペクトこのアイテムの詳細を見る |
![]() | 図解きほんからわかるリーダーシップ理論 (East Press Business) |
クリエーター情報なし | |
イースト・プレス |
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます