いっとき川にはおそろしく霧がかかり、景色が真っ白に霞む。霧の中から荷を積んだ小さな舟が現れる。空には白いベールの向こうに太陽が白く光っていた。
ラッキーだわ、川から村の様子が見えるなんて、とサラが何度も言う。
やがて昨日渡った紅白の橋が見えてきた。その橋をくぐったら「昨日向こう岸の村を歩いたの」とサラに言おうと思っていた。ところが、舟は橋の手前で左側の支流の方に向きを変えた。見ると、川が2つに分かれるそこに水上市場があった。
唖然とした。昨日歩いたところだ。時間的にも今日と同じように朝8時か少し前だったはず。昨日橋を渡ってから右の静かな村に行かず、にぎやかそうだった左に行けばすぐに、あんなに探していたこのフォンディエンの水上マーケットがあったのだ。
どうして? どうして気づかなかったの?
元ほっしゃんの言っていることが分からなかったわけだ。何時間かかるとか何とかってモノではない。ほっしゃんも私が何を言っていたか分からなかっただろう。だってほっしゃんに会ったところの対岸がフォンディエンの水上市場だったのだから。
ああ、どうしてそれが見えなかったのだろう。昨日私はどうして川をよく見ようとしなかったのだろう。すべては『地球の歩き方』の17kmという思いこみがあったからだ。全然17kmではない。もっとうんと近い。
ほっしゃんの舟に乗らなくてよかった。15分どころか、多分5分で水上市場。そして見物するのに1時間もかからなかっただろう。まあそれで100,000(520円)ドンだとしてもだめではないのだけど。でも今日こうしてこんなかわいい女性と一緒に楽しいツアーができたんだもの。神様が導いてくれたとしか思えない。感謝! やはり運命に任せていればいいのだ。自分が導かれている運命を信じればそれでいいのだ。などと調子に乗ってるのが自分で分かる。
それにしても、ほんとに、どうして昨日、この場所が分からなかったのだろう!
フォンディエンの水上市場は、思った通り素朴で、小さな木造船がたくさん来ていた。カイランの船は2階建てになったような大型のがっしりしたものが多かったけれど、こちらは小舟だ。そしてテルちゃんの言うことは間違っている。フォンディエンの水上市場はちゃんとあって、にぎわっている。ボートが1か2どころではない。テルちゃんは一体何を言っているのだろう。うーん、きっと、英語がよく分からなかったんだろう。
今度は船頭さんが緑色の皮の大きなかんきつをむいてくれた。サラは嫌いなのか、一口かじってすぐにやめてしまった。けれどとてもおいしくて、私はよろこんで全部いただいた。




高菜漬けを売る人がいた
ラッキーだわ、川から村の様子が見えるなんて、とサラが何度も言う。
やがて昨日渡った紅白の橋が見えてきた。その橋をくぐったら「昨日向こう岸の村を歩いたの」とサラに言おうと思っていた。ところが、舟は橋の手前で左側の支流の方に向きを変えた。見ると、川が2つに分かれるそこに水上市場があった。
唖然とした。昨日歩いたところだ。時間的にも今日と同じように朝8時か少し前だったはず。昨日橋を渡ってから右の静かな村に行かず、にぎやかそうだった左に行けばすぐに、あんなに探していたこのフォンディエンの水上マーケットがあったのだ。
どうして? どうして気づかなかったの?
元ほっしゃんの言っていることが分からなかったわけだ。何時間かかるとか何とかってモノではない。ほっしゃんも私が何を言っていたか分からなかっただろう。だってほっしゃんに会ったところの対岸がフォンディエンの水上市場だったのだから。
ああ、どうしてそれが見えなかったのだろう。昨日私はどうして川をよく見ようとしなかったのだろう。すべては『地球の歩き方』の17kmという思いこみがあったからだ。全然17kmではない。もっとうんと近い。
ほっしゃんの舟に乗らなくてよかった。15分どころか、多分5分で水上市場。そして見物するのに1時間もかからなかっただろう。まあそれで100,000(520円)ドンだとしてもだめではないのだけど。でも今日こうしてこんなかわいい女性と一緒に楽しいツアーができたんだもの。神様が導いてくれたとしか思えない。感謝! やはり運命に任せていればいいのだ。自分が導かれている運命を信じればそれでいいのだ。などと調子に乗ってるのが自分で分かる。
それにしても、ほんとに、どうして昨日、この場所が分からなかったのだろう!
フォンディエンの水上市場は、思った通り素朴で、小さな木造船がたくさん来ていた。カイランの船は2階建てになったような大型のがっしりしたものが多かったけれど、こちらは小舟だ。そしてテルちゃんの言うことは間違っている。フォンディエンの水上市場はちゃんとあって、にぎわっている。ボートが1か2どころではない。テルちゃんは一体何を言っているのだろう。うーん、きっと、英語がよく分からなかったんだろう。
今度は船頭さんが緑色の皮の大きなかんきつをむいてくれた。サラは嫌いなのか、一口かじってすぐにやめてしまった。けれどとてもおいしくて、私はよろこんで全部いただいた。




高菜漬けを売る人がいた