【AFP=時事】世界各地の病院の医師らは今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)への対応に追われる中、大規模なトリアージ(治療優先度の決定)の実施を迫られる可能性と向き合っている。
救急医療の現場で医師は、常に患者の生存率に基づき、治療方針に関する重大な決定を下しているが、今回は戦時に匹敵する厳しい選択になるかもしれないとの声も上がっている。
公式統計によると、世界全体で新型コロナウイルスの感染者数は30万人以上に達し、これまでに1万3000人以上が死亡している。
新型コロナウイルス感染症にかかった人の多くは入院を必要としないが、呼吸器感染症の重篤な症状を示した患者には救急医療が必要だ。だが、限られた数の人工呼吸器を、どの患者に使用すべきなのだろうか。
「患者の優先度を決める必要が出てくる」と言うのは、仏パリにあるサン・アントワーヌ病院(Saint Antoine Hospital)の集中治療室長、ベルトラン・ギデ(Bertrand Guidet)氏だ。
「エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領の言葉を借りれば、われわれは戦争状態にある。戦場では、死んでしまうと判断された重度の負傷者には治療を施さない。これはトリアージと呼ばれている」
さらに同氏は、長期的に受け入れ能力を維持することも必要だと指摘する。「すべてがたちまち飽和状態になってしまうことは避けなければならない」
トリアージを実施する際の指針は既にあるとギデ氏は話す。「われわれは日々そうした決定を下しており、ゼロから始めるわけではない」。通常の判定基準には、「患者の意思」、総体的な健康状態、そして症状の重篤度が含まれている。だが戦争や自然災害の際には、この判定基準が極めて厳しくなる。
■「戦場さながら」
中国で発生した新型コロナウイルス流行の現在の中心地となっているイタリアの医療関係者らは、どの患者を救うべきかという厳しい選別に直面している。
中でも被害の大きい北部ロンバルディア(Lombardy)州のベルガモ(Bergamo)にあるパパ・ジョバンニ23世病院(Papa Giovanni XXIII Hospital)の麻酔医クリスティアン・サラロリ(Christian Salaroli)氏は今月、伊全国紙コリエレ・デラ・セラ(Corriere della Sera)に対し、「戦傷外科のようなものだと自分に言い聞かせている…年齢、健康状態で判定される。戦場さながらだ」と語った。
ベルギー・リエージュ(Liege)の麻酔科医フィリッペ・デボス(Philippe Devos)氏は、危機的状況下においては人口呼吸器の使用は「最も生存の可能性の高い」患者が優先されると語る。「くじ引きのようにならないよう、われわれは可能な限り努めている」と、同氏も判定基準の重要性を強調している。
■倫理的に巨大な負担
イタリア麻酔鎮痛集中治療学会(Siaarti)は今月初旬、同国北部が医療崩壊の危機に直面する中、倫理指針を発表した。そこには、集中治療について年齢制限を「最終的には設定する必要があるかもしれない」と書かれている。だが、年齢だけを基準にするのは単純すぎると専門家らは指摘する。
例えば、ギデ氏が集中治療室に入院させた85歳の患者は基礎疾患もなく、それまで全く健康だった。一方、たとえ40代でも、深刻な肝硬変にもかかわらず飲酒を続けている患者を受け入れる余地はないだろうと同氏は説明した。
新型コロナウイルスに感染した患者が押し寄せれば、トリアージの決定は医師の肩に重くのしかかる。「倫理的に巨大な負担だ」とデボス氏。「われわれは人々を治したくて医療の道に進んだ。誰が生き残れるのかを決めるためではない」 【翻訳編集】 AFPBB News
救急医療の現場で医師は、常に患者の生存率に基づき、治療方針に関する重大な決定を下しているが、今回は戦時に匹敵する厳しい選択になるかもしれないとの声も上がっている。
公式統計によると、世界全体で新型コロナウイルスの感染者数は30万人以上に達し、これまでに1万3000人以上が死亡している。
新型コロナウイルス感染症にかかった人の多くは入院を必要としないが、呼吸器感染症の重篤な症状を示した患者には救急医療が必要だ。だが、限られた数の人工呼吸器を、どの患者に使用すべきなのだろうか。
「患者の優先度を決める必要が出てくる」と言うのは、仏パリにあるサン・アントワーヌ病院(Saint Antoine Hospital)の集中治療室長、ベルトラン・ギデ(Bertrand Guidet)氏だ。
「エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領の言葉を借りれば、われわれは戦争状態にある。戦場では、死んでしまうと判断された重度の負傷者には治療を施さない。これはトリアージと呼ばれている」
さらに同氏は、長期的に受け入れ能力を維持することも必要だと指摘する。「すべてがたちまち飽和状態になってしまうことは避けなければならない」
トリアージを実施する際の指針は既にあるとギデ氏は話す。「われわれは日々そうした決定を下しており、ゼロから始めるわけではない」。通常の判定基準には、「患者の意思」、総体的な健康状態、そして症状の重篤度が含まれている。だが戦争や自然災害の際には、この判定基準が極めて厳しくなる。
■「戦場さながら」
中国で発生した新型コロナウイルス流行の現在の中心地となっているイタリアの医療関係者らは、どの患者を救うべきかという厳しい選別に直面している。
中でも被害の大きい北部ロンバルディア(Lombardy)州のベルガモ(Bergamo)にあるパパ・ジョバンニ23世病院(Papa Giovanni XXIII Hospital)の麻酔医クリスティアン・サラロリ(Christian Salaroli)氏は今月、伊全国紙コリエレ・デラ・セラ(Corriere della Sera)に対し、「戦傷外科のようなものだと自分に言い聞かせている…年齢、健康状態で判定される。戦場さながらだ」と語った。
ベルギー・リエージュ(Liege)の麻酔科医フィリッペ・デボス(Philippe Devos)氏は、危機的状況下においては人口呼吸器の使用は「最も生存の可能性の高い」患者が優先されると語る。「くじ引きのようにならないよう、われわれは可能な限り努めている」と、同氏も判定基準の重要性を強調している。
■倫理的に巨大な負担
イタリア麻酔鎮痛集中治療学会(Siaarti)は今月初旬、同国北部が医療崩壊の危機に直面する中、倫理指針を発表した。そこには、集中治療について年齢制限を「最終的には設定する必要があるかもしれない」と書かれている。だが、年齢だけを基準にするのは単純すぎると専門家らは指摘する。
例えば、ギデ氏が集中治療室に入院させた85歳の患者は基礎疾患もなく、それまで全く健康だった。一方、たとえ40代でも、深刻な肝硬変にもかかわらず飲酒を続けている患者を受け入れる余地はないだろうと同氏は説明した。
新型コロナウイルスに感染した患者が押し寄せれば、トリアージの決定は医師の肩に重くのしかかる。「倫理的に巨大な負担だ」とデボス氏。「われわれは人々を治したくて医療の道に進んだ。誰が生き残れるのかを決めるためではない」 【翻訳編集】 AFPBB News
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