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【#柳田絵美衣】PCR検査の数は簡単には増やせない 実際に検査を行う臨床検査技師が語る検査室の現状

2020-04-18 03:24:36 | コラム
新型コロナウイルスの感染者が増え続け、「PCR検査」という言葉を連日耳にするようになった。「検査を受けられない」「検査の精度が低すぎる」といった言葉も報道され、「海外で出来ていることが、なぜ日本では出来ないのか!」といった批判も受ける。
PCR検査について、その原理や難しさを紹介してきた。
その検査を行う実際の現場は、どのような状況なのか知ってもらいたい。
筆者の記事を読み、「地方の検査事情も知って欲しい」と某大学病院で新型コロナウイルスのPCR検査を実際に担当している臨床検査技師が語ってくれた。
誰の目にも触れることのない、新型コロナウイルス検査現場の現状を知っているだろうか。

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■検査室の現状
当院では、2月中旬から準備を始め、新型コロナウイルスのPCR検査チームを立ち上げました。今回の検査に使用する機器が無かったため、急遽購入手続きを進めました。3月末に機器が搬入され、新型コロナウイルスのPCR検査がスタートしました。

通常の業務である採血業務や他の検査業務、勤務時間外の当直当番と掛け持ちです。原則、PCR検査は1日1回で対応していますが、重症患者が来院した場合は1日2回行ったり、勤務時間外は「緊急呼び出し」による体制を取っています。

12日間で11日稼働し、51件の検査を行いました。緊急呼び出しの対応は3回ありました。

今後のことを考慮し、機器を更に購入して、人材の育成も同時に行なっています。しかし、さらに検査数が増加すれば、通常の業務を削減し、新型コロナウイルスの検査に対応するしかないという結論に至りました。

今まで院内で実施していた他の検査項目を検査センターなどに外注し、その検査を実施していた人員分を新型コロナウイルスの検査担当にあてる方向で調整しています。

そうなると、通常の診療で必要な検査が縮小され、他の患者さんへ影響が出る可能性があります。

■一番の問題は人材不足
新型コロナウイルスのPCR検査を始める上で一番の問題は、遺伝子検査に関する人材不足です。

RNAの抽出工程では感染の恐れがあり、検体の処理は専用の設備が必要です。

また、抽出工程中は手袋、感染防御のためのガウン、N95マスク(空気感染を起こす菌の防御に使う呼吸器防護具)、ゴーグルなどの装備を着けます。感染性のある検体を扱うには、専門の知識や技術が必要となります。

また、PCR検査は1mLの1/1000という微量な液体を正確に扱う技術が必要です。さらに、PCR検査は高感度 (25mプールに濃い陽性の液体を1滴混ぜても検出できるほどの感度であるといわれている)であるため、他の検体や物質が混入(コンタミネーション)しないようにする精密な操作技術が必要となります。

繊細で正確な技術と集中力を要し、3時間程度の時間を要する検査であるため、誰でも簡単にできる検査ではありません。

■感染するリスクを負っている恐怖心
RNAの抽出工程では防護具を付けての作業になるので、かなり危険を感じます。また、他の検査を行った検体が、「実は新型コロナウイルスの感染疑いの患者だった」と、検査後に知ることがあり、恐怖を感じることがあります。また、生理検査(エコー検査や心電図検査)や採血は患者さんと直接接しますので、恐怖心はあります。

■リスクを負いながらも、それでも検査を続ける理由は?
医療従事者の一員として自分の知識や技術で、患者さんや他の医療従事者の役に立ちたいという思いがあります。また、新型コロナウイルスの検査については明らかに、臨床検査技師が必要とされていることを感じます。少々の忙しさは苦にならず、それよりも誇りと充実感が今は優っています。

■一般の方々へ伝えたいこと
「PCR検査をもっとして欲しい。」という思いは十分すぎるほど伝わっています。しかし、臨床検査技師としては「質の高い検査を実施しないと意味が無い」という思いがあります。

質の高い検査を実施するにはまず、十分な知識と経験を積んだ遺伝子検査に精通する臨床検査技師がいて初めて成り立ちます。
研究で使うサンプルと臨床検体では質が全く異なり、臨床検体での検査に慣れているのは、やはり我々臨床検査技師だと自負しております。

ただ、問題なのは日本では「遺伝子検査は特殊な検査」という位置付けであり、専門の知識と技術を持った人材が臨床検査技師の中でもほんの一握りしかいません。
日本臨床衛生検査技師会が認定している認定臨床染色体遺伝子検査師(遺伝子分野)は全国に54人(2020年4月現在)です。PCR検査の性質上、誰でもすぐに出来る検査では無いので、有資格者からトレーニングを受ける必要があります。経験が無い者がPCR検査を行うと「偽陽性」や「偽陰性」が生じ、医療現場に混乱をきたす可能性があります。
皆さんのご要望に応えたい気持ちはありますが、簡単に爆発的に検査数を増やす事は困難です。我々としてもニーズに応えられない事が非常に悔しい気持ちです。
人材の問題はすぐには解決出来ない問題ですが、今回の事で遺伝子検査のニーズが高まり、多くの施設で遺伝子検査を実施する方向に診療報酬の面などで、国には考えていただきたいです。

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筆者も人材育成についての記事

【参照: 新型コロナウイルス検査 次の課題は「検査要員の育成」】を書いていたが、やはり今一番の課題になっている。
日本は「遺伝子を検査する」ことに関しては、他国から大きく後れをとっている。がんゲノム医療が保険診療で認められることにもなり、ようやく臨床検査における検査分類の見直しがされ、「遺伝子関連・染色体検査」という分野が日本で確立された。
医療法改正等の経緯と検体検査の 精度の確保に係る基準について 厚生労働省
これは、2018年のことであり、それまでは各検査分野の中の1つの検査方法として扱われていたのだ。
そのため、専門の知識と技術を持った臨床検査技師がまだまだ少なく、設備や機器が整っている施設も少ないのだ。
検査の精度は、患者のその後に大きく影響するため非常に重要なことだ。
PCR検査は偽陰性や偽陽性になる原因が多く存在する。

【参照: 新型コロナウイルスのPCR検査が「偽陰性」となる原因は? (Yahoo!ニュース個人 柳田絵美衣)】
急速に検査数を増やそうとすれば検査の精度が問題となり、精度を確実なものにしようとすれば検査可能な検体数は少なくなってしまうという問題に直面する。
PCR検査より感度や特異度は低いがスクリーニング検査として用いられる抗体検査キット【参照: 新型コロナウイルス検査 「PCR検査」と「抗体検査キット」の違いは? (Yahoo!ニュース個人 柳田絵美衣)】や、PCR検査と同じような他の遺伝子検査法などを取り入れ、それぞれの検査の特性を活かして、環境や状況に応じて上手く使い分け、検査数を増やしていく必要があるのではないだろうか。


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