JEWEL BOX KDC!!

ストリートパズル(軽井沢学園を応援する会会報)第6号より

‐園の庭をはきながら‐

おおみそかのはなし

たかねっち☆
 今日は平成23年12月31日。あと数時間で新しい年を迎えようとしています。私が事務室でこの原稿を書いている最中、紅白歌合戦やダウンタウンのお笑い番組を見ながら大騒ぎしている女の子たちの声が長い廊下を伝ってここまで響いてきます。いつもなら騒いでいるこどもたちのところへ走って行き「もう遅い時間なんだから静かにしなさいっ!!!」と叱るところではありますが、今日は大みそかなので特別に目をつむろうと思います・・・
 
毎年、年の瀬も押しせまるこの時期になると、こどもたちの気持ちは不安定になります。体調不良を訴え学校を休んだり、こども同士のケンカや飛び出しが増えたりと、私たち大人は手を焼かされるのです。何故かというと、その理由ははっきりしています。ボクは今年の冬休みにおうちに帰れるのだろうか、果たしてママは迎えに来てくれるのだろうか。施設に入る前、どんなにつらい経験をしたとしても、親や家庭に対する強い憧れを抱きながらここで暮らしているこどもたちにとっては、帰省(一時的に自宅へ帰ること)できるかどうかは大変重大な問題であり、不安でふあんでたまらない時期なのです。そのため、帰りたくて仕方がないのに、それが叶わぬと薄々気付いている子ほど情緒的に不安定となるのです。

先日、皆で朝ご飯を食べている最中、小6と小4の男の子との間でこんなやり取りがありました。「オレは今度帰省9日間できるけど、オマエはどうせ今年も帰省できないんだろ?ダセエ~な。」「いいもん、ボク学園で遊んでるから・・・」その時、私は帰省できない子のことを馬鹿にした小6の男子児童をつい怒鳴ってしまったのですが、こども同士でもこのような格差があり、家に帰れることへの優越感を持つような心理がこの場所では働いているのかと考えさせられた一場面でした。

今年の年末年始に帰省のできないこどもたちは合わせて12人いました。帰省できない理由は、親の死亡や病気、拘留などによる養育者不在のケースや、育児放棄によって帰省を受け入れてもらえないケース。更には虐待が再発する恐れがあるため一時的でも帰すことが出来ないケースなど様々です。このような、家族統合(家族が元どおり一緒に暮らせるようになること)の見通しの立たないこどもについては「ホストファミリー(気軽にできる里親体験事業)」の制度を使って、子どもの養育を一時的に一般のお宅へお願いすることもあります。むろんこどもの意志を最大限尊重しながら慎重に進めていく話ではありますが。そのような取り組みによって全く帰ることが出来ないこどもであっても、良いご縁によりホストファミリーさんと出会い、夢叶って“帰省”ができるようになった子もいます。
その反面、こんなケースもあります。高校生くらいになると、家庭の事情を理解できるようになるのか、それとも自分を施設に入れた親を冷めた目で見ているのか、理由は定かではありませんが全く家には近寄ろうとせず、数年後の自立資金を貯めるためアルバイトに励むこどもたちもいます。
どちらにせよ、最近は帰省できる子よりも、できないまたは帰りたくないこどものほうが増えているのが現実です。
・・・紅白も終わり、今年も残すところあとわずかとなりました。そろそろ手を止めてこどもたちのところへ行こうかと思った矢先、中学生の女の子が私を呼びに来てくれました。「たかねっち~年越しそばあるから食べにきて~」そして保育士の作ってくれたそばを皆で食べました。私はおかわりをして2杯食べました。テレビでは“新年まであと○○分○○秒”というカウントダウンが始まっています。そして、新年まであと20秒、10秒と迫ったとき、高校1年生の女の子が「どうするどうする??そうだ!ジャンプして空中で年を越そう!!」と言いました。私は急いでその提案に乗り、3人の女の子たちと一緒に「さん・にい・いちっ!!!」の掛け声で一斉にジャンプしました。着地後「あけましておめでとう!」「今年もよろしく!!」と互いに言い合いました。
淋しい思いも多くあるけど、ここには楽しいことだって沢山あるよ。そう思ってもらえるようにこのお正月、家に帰ることのできないこどもたちに対しいつも以上に“よしよし”してあげようと思います。

新年を迎えるにあたり、ここで暮らすこどもたちはもとより、いつもたかねっちのコラムを読んで下さる応援する会の皆様にとっても素晴らしい年でありますように☆
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