白血病闘病記は(1)で一旦終了します。

白血病闘病記(2)「再発編」は、後日掲載予定です。
少しの間、撮り溜めた写真をアップしていきます。

無菌室のベッドの上と、善意のカタマリ

2021-06-29 14:00:37 | 日記
 2017.04.05

  無菌室に入って2週間、部屋から出禁状態になって1週間。

  大部屋の時と違い孤独な日々が続いていた。

  備え付けのテレビを消すと、外部と一切遮断されている為、本当に

  何にも物音がしないのである。

  時折、ナースステーションから漏れ聞こえる看護師さん達の声が

  微かに聞こえる程度で、シーンとした空間でひとり居るのである。

  対価を貰って1日中そこにおれと言われたら、金額によってはそれを

  検討をするかも知れない。あるいは、数時間何もせずにその場所に

  居なさいと言われたら、その人との力関係、利害関係などが相手より

  劣っているなら実行するかも知れない。

  そんなことは一切なく、ただその場所に居るのである。

  抗がん剤の副作用で体調が悪い時は、目をつぶっているといつの間にか

  眠ってしまっている。

  体調が特別悪くない時は、眠くならないので、それも叶わない。

  唯一の楽しみがタブレットだ。

  ネットサーフィンとYouTube。PlayMusicで音楽配信。

  GooglePlayで映画鑑賞。などである。

  プリペイドカードの購入が不可能なので、カード決済をするのに

  様々な手続きが必要となった。

  他のコンビニ払い分も、やはり部屋から出禁のためカード決済の

  手続きが必要だった。

  普通だと面倒くさい事も、この時ばかりは集中して出来た。

  しかしそんな事も一時だけで、一通り終わればまたもとのベッドの上。

  なんと時間の経つのが遅い事か。

  時折、看護師さんたちが談笑しながら部屋の前をとおり過ぎていく。

  また近づいて来る。

  自分の部屋か?

  違う。

  何を話しているのだろう。

  聞き取れない。

  変な苛立ちが湧いてくる。

  近づいて来る。

  今度こそ。

  違う。

  そんな事を考えているといつの間にか眠ってしまっている。

  まるで羊の数を数えるように。


 2017.04.07

  血小板減少による成分輸血の日。

  またあの黄色い、とろみの液体だ。

  幾人かの献血によって集められた、貴重なもの。

  人間の善意だけが凝縮された、貴重なもの。

  他人様の血を、血の成分を、貰う側の立場になって初めてその

  ありがたみが分かる。

  15分程で輸血は終了。

  あとは抗生剤の点滴。

  午後からは歯科の指導だ。

  歯みがきする意味をよく考えて、丁寧に指導をしてくれる。

  そこでまた認識するのだ。

  今回も輸血の副作用が出ないか心配していたが、

  その心配は見事に当たり、今度は太ももを中心にじんましんを発症した。

  最初は細かいブツブツがちらほら目立つ程度だったが、時間が経つにつれ

  ブツブツが肥大していき太もも全体に広がって行った。

  時間経過と共に腕、顔と広がっていき、熱も上がってきた。

  ナースコールですぐに抗生剤の点滴が始まった。

  解熱剤のカロナール錠を服用し、安静にする。

  恐らく点滴が始まってすぐに眠りについたんだろうか、その後の

  記憶が定かではなかった。

無菌室のはじまり

2021-06-19 12:29:08 | 日記
 2017.04.05

  抗がん剤治療開始後すぐに無菌室に入れられたのだが、病室から出るのは

  許可されていた。

  シャワー室が部屋の外にあり、他の患者さんと共同で予約制になって

  いて、看護師さんがいつも予約を取ってくれていた。

  カテーテルを挿入している箇所に保護シートを貼り、水の侵入を防ぐ。

  抗がん剤治療中は24時間投与し通しの為、一旦流れを停止しカテーテル

  からチューブを外すことは出来ないが、抗がん剤投与が終了し

  抗生物質、生理食塩液の投与中に関しては、それが可能であった。

  シャワーの時間が限られているのでその時間内に終わらせないといけない

  為ゆっくりとは出来ない。

  それでもやはり気持ちがよくサッパリとした気分で部屋へ戻れる。

  トイレは部屋の中にあるのだが、決まりは無く病棟中央にある共用の

  トイレを使用することもできる。

  白血球の数値がほぼ "0" に近いところまで来た時、部屋から出るのが

  禁止になった。

  本来、病棟の廊下からナースステーションに至るまで、普通に歩いて

  いても空気中の雑菌、細菌などが目に見えない範囲で100万個以上は

  浮遊しているため、そこを通るにはまさに命がけである。

  言うまでもなく、部屋からでた瞬間に感染してしまう。

  無菌室は、100%の無菌状態(菌が”0”の状態)を作り出すことは不可能

  だがそれに極力近い状態まで持っていく事は可能である。

  アイソレーターシステムといい、特殊なフィルターで濾過した空気を

  部屋の天井から床に近い壁面のフィルターへ流すことにより、部屋の

  中の空気の循環を一定方向にし、より無菌に近い状態を作り出す。

  それでも部屋中の空気中に浮遊する雑菌、細菌は100~1000個は存在する

  という。

  トイレについては部屋のを使用できるが、シャワー室へ行けない。

  部屋の中に洗面台はあるが、当然のことながら体は洗えない。

  清拭と言い看護師さんが熱いおしぼりを4~5本持ってきてくれ、

  それで体を拭いていく。

  自分で出来る状態だったので、いつもおしぼりを貰い拭いていた。

  最初は慣れない為か、1か所ごとに息を切らせて体全部を拭き終わる

  頃には、放心状態だった。

  その日から部屋から一歩も出れなくなり、孤独、無音、虚無感が

  襲ってくる。

  備え付けのテレビは見るが課金制で、見放題という訳にはいかない。

  他に楽しみと言えば、持参してきたタブレットぐらい。

  本、雑誌などは外から持ち込まれる為禁止。

  紙に付着した雑菌もいっしょに持ち込まれ、何らかの原因で、

  白血球 ”0” の無防備な体に入り込み障害を引き起こすのである。

  限られた空間、限られた娯楽、人と接することと言えば早朝の採血、

  1日に2~3回の検温、血圧測定で看護師さんと2、3言の会話。

  1週間はこの状態が続く。

  果たして自分はいまのこの状態に耐えられ、部屋を出ることが

  できるのだろうか。

  言いようのない不安を感じた。


ハンバーガーへの決心

2021-06-13 16:13:46 | 日記
 2017.04.04

  化学療法による治療開始から、食事制限が厳しくなり出される病院食も

  全て生物禁止食になっている。

  味は本人の舌に合わせるのではなく、管理栄養士が付いて、カルテ、

  検査結果データ、体調に基づいて総合的に判断をして、その患者に

  合ったメニューを検討し作られる。

  出される食事の中には本人にとっては決して美味しいものとは言えない

  物も多くある。

  自分の口に合ったもの、好物が運ばれて来た時にはとても嬉しく思った。

  あとは薬だと思い、出されるものは全て完食していた。

  少し体の調子がいい時などは間食をしたくなるものである。

  当然病院食のメニューに間食などあるはずもなく、自分で用意しなければ

  いけないが、この間食にも制限がある。

  例えば、ポテトチップスなどの袋菓子は開けた時点で、すべて食べきら

  なければいけない。

  途中で残して保存し、次の機会にまた食べるということが出来ない。

  袋を開け手を突っ込んで食べる。食べてまた手を突っ込んで取り出し

  食べる。

  このときに一度食べ物を口にした時点で、空気中、口の中、手指に付着

  していた雑菌が袋の中のポテトチップスに付着し又、その雑菌が手指を

  通して口の中に入り、体中に回りそれが原因で炎症を起こしてしまう。

  途中で残して保存すると、知らずのうちに菌の繁殖の手助けすることに

  なる。

  どうしてもポテトチップスが食べたい時などは、小袋に入った食べきり

  サイズの物を買ってきてもらう。

  一度に食べ切ってしまうものには問題はない。

  缶詰類、ゼリーなどはもともと長期保存用として作られている為、雑菌の

  繁殖する余地がないので食べても問題はない。

  饅頭類も個別包装のものに限り、賞味期限に注意して食べれば問題は

  ない。

  おかき関係もやはり個別包装で、賞味期限に注意して食べれば問題は

  ない。

  あとカップラーメンも捕食用として認められており、体調がいい時、食欲

  がある時などは食べていた。

  飲み物についてもすべて飲み切りが原則で、やはり残して保存というのが

  きかない。

  ペットボトルのキャップを開けた時点で、そこに雑菌が付着し、それを

  また口にすることで、雑菌が体内に入り込み炎症を引き起こすことに

  なる。

  病室でテレビを見ていると、いろんな食品会社のCMが流れる。

  当然に購買意欲を掻き立てようと、様々な手法で映像を流す。

  ステーキ、ハンバーガー、ピザ、フライドチキン、美味しいものばかり。

  制限された食生活の中では、すべてがテレビ画面の中の架空のものだ。

  いつか退院した暁には、お腹いっぱい食べてやろうと、

  その時決心した。

薬の服用の意味と、輸血の副作用

2021-06-09 17:26:45 | 日記
 (整形外科検査の結果、幸いヒビ程度で済んだ。

  ギプスシーネによる親指の付根から手首、前腕部までの固定で、あと

  2週間程養生が必要だ。くしくも次の日の白血病の定期健診は、骨粗鬆症

  予防の皮下注射の日だった。笑えない......)


 2017.04.03

  朝から、その日行う輸血の説明があった。

  午前中に終わります、と主治医からの説明。

  お昼前には終わるでしょう。の声にベッドの上での自分なりの予定を

  組み、その時に備えた。

  もうすぐか~…

  それが終われば昼食だ。

  入院した人はわかると思うが、検診その他、特に体調も悪くなく、普通に

  居るときは、朝昼晩の食事が最も楽しみの一つである。

  今日の昼食は何かな。

  抗がん剤の点滴がはずれてから、白血球、赤血球、血小板などの数値が

  下がり始める。

  薬剤投与により白血病細胞を叩いていくと同時に、正常な細胞もダメージ

  を受け、減少していくからだ。

  体に抵抗力が無くなり、あらゆる菌に対して無防備になる。

  無菌室に入ると同時に、食事も制限される。

  この日のメニューは、生物禁止食は基本で、主食無し、焼うどん、豆腐の

  田楽、和え物であった。

  和え物にする食材などは全て火を通し、薬味のあるメニューなどは

  ネギ等は全てボイルし、薬味に添える。

  (ボイルしたネギは、作ってくれた人には申し訳ないが、食べれない。)

  ただ、あのような細かい食材までわざわざボイルするというひと手間を

  掛けてくれている調理師さんには感謝しかないのである。

  11時30分。輸血はまだ来ない…

  12時。え?

  来たのは食事だった。

  ありがたく頂いた。

  食後の薬を、いつもその日の担当看護師さんが持って来てくれる。

  正常細胞が死滅していく体にとっては、微量の菌でも反応し、

  体内に入り込むと、即、病原菌に侵される。

  本来、人間に備わっている善玉菌(大腸菌など)は、白血球という

  見守り兵隊がいなくなる為、大腸などの壁を通り抜けて、体中に悪さを

  しに行く。

  善玉でもやはり所詮は菌なのだ。

  そのため、それらを予防する目的でさまざまな薬が処方される。

  体内の細菌の増加を抑えるための薬、体内のカビの発生、増加を

  抑えるための薬、その薬の服用で起こる胃酸の発生を抑え、便を

  やわらかくする薬。などである。

  薬を飲むのも一苦労で、特に体内の細菌の増加を予防する薬サムチレール

  は、液状で絞り出すタイプのもので、上部の封を切りそのまま口に持って

  いくと、切り口で唇を切ってしまう可能性があるため、大スプーンに

  搾り取り舐めるようなかっこうで含み飲み込むというものだ。

  慣れてくると問題は無いのだろう。

  主治医が病室に来た。

  「いま輸血用の血小板が届いたから、これから始めます。」

  時計は2時を回っていた。

  およそ我々が一般的に想像する輸血というのは、袋に入った赤い液体を、

  点滴の要領で体内に入れていく、というものと思うが、実際に届いた

  ものは、薄黄色で少し濁っており、イメージとはかなりかけ離れたもの

  だった。

  袋からのチューブを点滴中の生理食塩液との分岐部分に接続し、そのまま

  流していく。

  30分程で袋の中の血小板が無くなり、輸液ポンプのアラームの音が鳴る。

  ほどなく看護師さんが入ってきて取り外す。

  直後のアレルギー反応として、赤い発疹が出きる場合がある。

  この時点で白血球の数はほぼ ”0” に近い状態だった。

  次の日、いつものように早朝のうがいをする。

  ふと鏡に映った自分の顔を見ると、ポツッと膨らみがあるではないか。

  他にも背中と右臀部にも…

  もしやと思いナースコールで看護師さんを呼ぶ。

  やはりその赤いポツポツは、血小板輸血による副作用だった。

  即座に抗生物質が運ばれ、点滴支柱にぶら下げられた。

  見た目は蚊に嚙まれたような、赤くぷくっとした発疹で痛みも痒みも

  無かった。

  ただ顔という目に見える場所に出来て良かったのである。

  これが体内、特に脳内に出てくると抗生物質の点滴では済まなくなって

  いたのである。

歯みがきをする意味

2021-06-04 10:58:41 | 日記
  (2日ほど前に、左中手骨(ひだりちゅうしゅこつ)を骨折した為、

   右手のみで入力中)

  ※ 全身の骨が、ステロイド投与により折れやすくなっている為。

  これに付いては、白血病闘病記2で詳細を書こうと思う。


  ようやく抗がん剤の点滴がはずれ、尿測定で尿カップを取る必要も

  なくなり輸液ポンプも1個はずれ精神的にもかなり負担は軽くなった。

  残抗がん剤の排出の為、生理食塩液は投与を続ける。

  点滴支柱は相変わらず連れて歩かなければならないが、ポンプの重さと

  精神的な重さはいくらか軽減された。

  午後、部屋に歯科医が来た。

  これからの歯磨き習慣について指導があるという。

  歯磨きの指導?

  意味が分からなかった。

  よく某テレビ番組で、はみがきじょうずかな~ というのは見た事は

  あるが、あくまでもそれは、乳幼児から小学校低学年ぐらいまでの

  話である。

  50年以上も生きて来ていまさら歯磨きの指導?

  意味が分からない自分は、当然そんな疑問を持たずにはいられない。

  歯を磨くときは、歯ブラシが下にくるように持ち、奥歯から掻き出す

  感じで手前へ磨く。それを上下左右すべての歯に行う。

  ??? 言われなくてもな~…

  さらに、歯間ブラシのSSサイズ(指定)で汚れを取り…?

  舌ブラシで奥の方から手前へ10回程度磨く事。???

  歯間ブラシ?舌ブラシ?

  今まで聞いたことはあるが、何もなければ一切使用する習慣の無いような

  物である。

  歯磨きはしていたが、忙しい朝と寝る前に短時間で済ますような習慣

  だったので、朝昼夜毎食後の歯磨きに加え、早朝と各食前食後、

  就寝前の薬品によるうがい、とやる事が多過ぎて毎日これを自分が

  しなければいけないと思うと気が滅入った。ここまでしなくても…

  しかし、その一連の作業を確実にしないことによる体への影響を、説明を

  受けるまでは全く知らず、聞いたときは、これは続けなければ大変な事に

  なると決心する事になる。


 2017.03.31

  抗がん剤投与により血液検査結果が大幅に変わってきた。

  投与中も幾度かの血液検査があり、結果としてプリントアウトされ

  それに基づいて主治医から説明を聞く。

  主に見る数値は、CRP、白血球数、赤血球数、血小板数、好中球数

  そして一番肝心な、芽球(Blast)数だ。

  それ以外の数値は、一般的には GOT、GPT、ALP、γ-GT、中性脂肪、

  血糖値、総コレステロール等がだいたい会社の健康診断等で気にする

  ところだろう。

  風邪などの症状で特に数値があがるのは CRPで、他の病気でもここの

  数値がだいたい基準となる。

  GOT、GPT、ALP、γ-GTは普通の健康的なサラリーマンだったら、まず

  思い浮かぶのは、アルコール。

  アルコールの過剰摂取による肝臓等の処理の低下。

  そう、お酒の飲みすぎによる高数値である。

  中性脂肪についても運動不足に原因があるが、お酒の飲みすぎと共に

  酒の肴の食べ過ぎにより過剰摂取になってしまう。

  血糖値もしかりだ。糖分の過剰摂取により数値が上がってしまう。

  まぁ多分に漏れず自分自身も過去、この中性脂肪と総コレステロール値

  がとても高かったため通院していたわけだが…

  この日の白血球数は0.7 赤血球数は3.02 血小板数は3.1 好中球数は0.2

  CRPは0.87 そして芽球(Blast)は2.0% だった。

  これだけではこの数字が何を示しているのかはわからない。

  それぞれの健常者の一般的な数値範囲は、

  白血球数4.0~8.0 赤血球数4.5~5.5 血小板数14.5~38.0

  好中球数1.5~7.5 CRP 0.3以下 芽球(Blast)0% である。

  投与した抗がん剤は、この白血病細胞にはよく効く。

  従って白血病細胞である芽球(Blast)は激減した。(入院当時は30%)

  これはこれで、結果白血病細胞が減ったので治療の効果があったという事

  である。

  ただ、白血病細胞を叩くと同時に血液中の成分細胞も死滅してしまうため

  白血球以下、非常に重要な細胞が無くなってしまう。

  白血球であれば、無くなることによって外からの菌に対する抵抗力が

  無くなり様々な病原菌が体内に入り込み、体にいろんな症状を引き

  起こす。

  赤血球であれば、体に取り込んだ酸素を効果的に運ぶ事が出来なくなり

  貧血になる。

  血小板であれば、血液を凝固させる事が出来なくなるため、体にちょっと

  した刺激で出血が止まりにくくなったり、知らずの内に内出血が起きて

  たり、一番怖いのは、そのちょっとした刺激が頭の中で起きた場合で

  ある。

  脳出血となり即、命に係わってくる。

  この事を自分が理解していなければ、おそらく歯磨きは適当にしてた

  だろう。

  この時初めて歯磨きの本当の意味を知った。

  血小板の数値が1.0以下になると危険な状態になるため、輸血が必要

  になる。

  来週はその輸血だ。