藤城清治氏の影絵展へ行った

<美しくも悲しい平和への遺産>
今までは、原爆ドームを影絵にしてみようという気にはなかなかならなかった。
あの時は21歳、海軍予備学生から任官、少年兵たちと九十九里浜で
アメリカ軍の上陸に備えて本土防衛の最前線にいた。
影絵の版画展のサイン会で広島へ行き、初めて広島ドームの前にたった。
写真で見るのとはちがう感動を受けた。なぜか自然に描きたいというか、
いま、自分が描かなければいけないという衝動に刈られた。
略
ドームの周りを一周したり、相生橋を渡り川向うから眺めたけれど、
やはり近くから仰ぎ見る方が迫力があると思い、広場のまん中仁王立ちしてスケッチした。
夢中で描いているうちに雨が降り出した。雨と涙に濡れながら、7日間連続してスケッチした。
原爆の三千度に上った熱と爆風の洗礼を受けた煉瓦は世界でここだけにしかない。
その煉瓦は何ともいえないくらい、悲しく、美しく、無限のメッセージがこめられているようだった。
原爆ドームこそ、人類が20万人の命を犠牲にして、未来の平和のために遺した、
世界でも最も貴重な、たった一つだけの崇高な遺産だろう。

≪陸前高田の奇跡の1本松≫
自分の目で確かめてみたいと思って、現地を訪れてデッサンした。
荒れ果てた砂浜に1本の松だけ毅然と立っている姿が美しい。
略
夢中で描いているうちに、何時か満潮になり、
足元まで海水が来て、あぶなく海の中にとりのこされそうになった。

≪アリスのハート≫
稀有な影絵作家藤城氏の世界に引き込まれた

≪蝶と少女≫
☆藤城清治 光と影88展☆
2012.9月~10月21日(日)
10:30~19:30
銀座・教文館9階ウェンライトホール
10月20日(土)16:30~サイン会