「天使と悪魔」ダン・ブラウン
先週見に行くもんだと間違えていたので、1週間猶予が出来ました。急いで原作を読み、映画館へ行きました。結果、原作 → 映画の流れはとっても良かったと思っています。
ヴァチカンでのコンクラーベ(次期教皇を選出する神聖な儀式) 当日、次期教皇候補と目されている有力な4人の枢機卿が誘拐され、さらに爆発物がヴァチカンのどこかに設置された。
その爆発物とは、セルンという科学研究機関で開発された最新技術である「反物質」、高エネルギー源ではあるが、その分危険も伴う。保存容器から漏れれば爆発するという。
保存容器のバッテリーは今夜0時に切れるという。 さらに、犯人からの接触があり、4人の枢機卿を8時からの1時間毎に1人ずつ殺害するという。つまり全てのタイムリミットは午前0時。
「反物質」を盗み出す際に殺害された科学者、レオナルド・ヴェトラの胸にはある焼き印が押されていた。それはアンビグラム(双方向から読める対称図形)で「イルミナティ」と書かれていた。
「イルミナティ」、16世紀に教会に反旗を翻したという科学者の集団。しかしそれは昔の話だ。
「イルミナティ」の研究家で高名であるということで、否応なしに事件に巻き込まれたロバート・ラングドン教授。はたして本当に古代の秘密結社は蘇ったのか・・・。
初期作品(だよな?)ということで大盤振る舞いというか気合い入りすぎというか(笑)、血みどろだわアクション要素も盛り沢山だわ、「ダ・ヴィンチ・コード」より面白いと思います。ただ、「有り得なさ」が増加していますが。なに、ご愛敬。
相変わらず難しげなお話を一般人に分かりやすく丁寧に説明する技術に優れていると思います。
物理と聞いただけで拒否反応を起こす私も、「物質」と「反物質」という、今作のテーマの1つである対称に置いて説明されると、興味津々。すでに引き込まれました。
タイムリミットがあるという緊張感があるし、ヴァチカン内部には興味が尽きないし、何よりも「イルミナティ」の設定が素晴らしい。特にイルミナティダイアモンドは良かったです。
・・・・・とまぁ、相変わらず単行本に付いている写真と見比べて「ヴァチカン、行ってみたいねぇ」と思わせる手腕は凄いですが、いろいろツッコミたいところも山ほど。
とはいえ、 中間地点でテンション下がっちゃった「ダ・ヴィンチ・コード」程ではないです。最後までテンション維持出来ましたから。でも、まぁ、最後のヘリのくだりは、ちょっと・・・。
キャラ設定一緒だなぁ、と思っちゃった・・・。ヴィットリアはまぁ、ロバートの好みなんだろうとして、所長がリーじゃない・・・(笑)。
しかし「天使と悪魔」の時点でそんなに有名じゃなかったので、このキャラ設定でもう一度いきたい、として 「ダ・ヴィンチ・コード」を書いたのかもしれない。
しかし私は、所長が登場した時点で「頼むよ、所長が犯人はやめてよ」と思った・・・・・(笑)。
後細かく、っていうか、あんな研究を2人でするはずがない(笑)、ローマの観光地に人がいないなんて有り得ない、こんな大事件に警察が関与しないなんて有り得ない、等々、それらはともかく、だから、ヘリからの脱出は笑っちゃったじゃないか!
しかしそんな些細なことなど吹き飛ばす爆発力がありました。面白かった!
そして友人Kが「007」になっている、と言っていましたが、続編の度にヒロイン出て、そういうことなんですか!? ・・・・・たまにはヒロインの性格変えて欲しいです。
で、そんなこんなで映画見に行きました!
映画の方が遥かに良かったです! 基本原作至上主義者の私がそう思うんだから、今回脚本家達の手腕は見事だと思いました。
最初時間軸が「ダ・ヴィンチ・コード」の後にされたことも、「えー?」と思っていましたが、それによってヴァチカンに招聘される設定はその方が良いと思った。つまりロバートはもう、へんてこな事件専門象徴学者と思われているんだな(笑)!
上記の不満点を解消、さらに削り、新しく追加して、やはりリーを彷彿とさせる所長を外し、ヴィットリアの設定も薄くし、 「ダ・ヴィンチ・コード」と被ると思わせてしまう箇所がなくなったのが、とても良かったです。
でもまぁ、それによって、作品のテーマである宗教と科学との対立の歴史や、現代の教会が抱える問題点、犯人の動機が少々弱くなってしまったこと等、いろいろ弊害もありますが、それはまぁ、映画だし、ヴァチカンの協力も得ていることだし、仕方ないかぁ。
しかし映画なので結論を一瞬で片付けられるのがなんとも・・・。「宗教には欠点もあるが、それは人間にも欠点があるからだ」と一瞬で終わったよ・・・。
原作にもあるけれど、それは長く長くいろんな歴史の流れを語り、いろんな意見を聞いたりして、最後に辿り着く台詞であってね・・・。
まぁ、いいかぁ。ハリウッド映画だし。原作ももう少し濃くてもいいなぁ、と思いますが、解説を読むともっと濃ゆいマニア達にはエンターテインメント過ぎる、ということでダン・ブラウンは捉えられているようですが、新規参入としては充分いいですよね。
原作での前教皇の秘密はカットになるだろうなぁ、と思っていましたが、ヘリからのあれがカットになってそれは良かった、良かった(笑)。
原作読んでから見ると、脚本家の腕の良さがしみじみ分かります。そう削って繋げるのか、っていう・・・。
ただ1つ、あの車の爆発物は誰が仕掛けたんだ、という疑問がありますが。あの人がせっせと1人で仕掛けていたら・・・、どうしよう。誰かを雇ったということでいいだろうか・・・。
「ダ・ヴィンチ・コード」の製作陣とほとんど変わりないと思いますが、前回は思わなかった完成度の高さを、主に脚本に感じました。製作陣の意地ですかね。
著者の信頼を得たので今回は自由に出来たのかなー。大幅改編大成功だったと思います。
とはいえ、原作を読んでいるから「有り得なさ」ちょっと押さえられたわ、と思っているのかも。映画のみ見た人は「有り得ない・・・」と絶句なのかな、やっぱ。
やはりダン・ブラウン作品は映画映えすると思うので、この先もどんどんシリーズ頑張って書いて欲しいです。そして映画へ!