先週の話ですが見てきました。当初朝早くの時間に行こうとしていたのですが、そろそろ上映終了ということで夜上映という館ばかり増えてきて・・・・。単館系の哀しさ・・・。
慌てて別の場所を探して、出来るだけ早めの時間のに行きましたが、まぁ、確かにレイトショー向きかもしれないけれど。
「ストレイト・アウタ・コンプトン」
音楽は愉しかったのですが、やはりなかなか重く深く、終わった後で考え込んでしまいました。
青春映画の正しい手順を踏みつつ（過激だがな！）、最後には取り返しのつかない後悔と、時代を駆け抜けた達成感と・・・。
実話なのでおそらく出演者に遠慮しての美化や、どうしても描けないことなどもあったとは思いつつ、それでも結構な衝撃でしっかり描いていますね！ いろいろ訴えられたりもしているらしいですが、しっかりマイナス面も入れていて、嘘くささは感じさせないです。
今日現在、アカデミー賞には脚本賞にノミネートらしいですが納得。膨大な事実の中からどう組み合わせるかは実話ものは本当に大変。
全く元を知らない人だとどうだかは分からないですが（一緒に連れて行った友人も2PACくらいなら知っている知識）、私はいろいろなんとなく覚えている記憶と合致したりして、細かいところまで楽しめました。
最後の方は出血大サービスとばかり、いろんな有名人が怒涛のように登場し、大興奮。
私個人の最大の収穫はEAZY-Eのイメージが大きく変わったこと。長年とにかくボロクソに言われていた人（失敬）、という印象しかなかったので、人間味とカリスマ性の同居した存在感に、なるほど！ 伝説の人だ、と記憶が書き換えられました。
BONE THUGS-N-HARMONYは好きで聴いていたりしたので、ここのボスなんだろ、程度の認識しかなかったです。
最初の社長の徹するつもりがドレーにラップしてみろ、とけしかけられて、おそるおそるやってみるシーンがとにかく良かった。
あのワルの、実際にギャングの彼が、自信なさそうに下手くそなラップを披露する。へったくそだな、と私も笑ってしまいましたが、同時にどう考えても遠い共感できない存在の彼がぐっと近くに近づいてきた瞬間でした。全然遠いのに彼の視点になれる瞬間。
日本の青春映画のように夢見がちなファンタジーは一切存在しない世界ですが、それでも、なんでイージーは笑われても投げ出さないで頑張ってやってみたんだろうと想像します。
もしかしたら、裏方に、傍観者に徹するつもりが、想いを吐き出す、表現するという行為はこんなに気持ちのいい、素晴らしいものなんだと、音楽の魔力に憑りつかれたんじゃないかと。まぁ、勝手に。
アーティストって、手っ取り早い快楽もバンバン手に入れて、傍から見るとなんでもう何もかも手に入れているのに、表現することを続けるんだろう、と思われるけど、表現をして、それが共感を得て、拡散する、というのは、その辺のありきたりの快楽を軽く凌駕する、とんでもない何かなのだろうな、と。・・・・・当然凄まじい消耗と苦痛も付いてきますが・・・・。
黒人への警察による職務質問という名の不当な暴力。あんな日常的な頻度で出くわせば、それは憤懣となり溜まり、何か捌け口が出来れば、そこへエネルギーが向かうだろう。
ロス暴動の時は、音楽により煽ったとも批難されたけれど、反対だろうと思う。暴力を使わない為に、音楽による武装をする。ただし表現は過激になるが。
ところでいろいろネットを回ってみると、映画の訳は一般向けに少しマイルドにしてあるよう。・・・そうか、あれでマイルド・・・。
彼らがあれほどの存在として成長する、その可能性のあるアメリカの業界は素直に凄い、と思う。「可能性」がある、ということは、外に向かって開いているということだもの。でも、その変わり、巨大なだけに、その業界というのものの、闇や圧力は、想像を絶する怖さだな。
配分への不満や、人間関係のすれ違い、立場上、そういう裏事情が外に漏れて、勘違い解釈をした人がさらに混乱に拍車を掛けたり、混乱を利用して一儲けしようと企む人も現れたり。・・・・・この辺りはどこの国の業界でも一緒だね。
この業界を生き抜く人って並大抵ではないよね、とほとんど前知識のない友人の感想だが、そんな中、ドレーは今appleの役員なんだよ、とこそっと教えました。・・・・・ただもんじゃないよな・・・・・。
どっしり情報量が凄かったですが、N.W.Aの物語はここで一区切りついたにしても、この後がまた大変なんだよなぁ。
なんにせよ、これだけの形にして創れるってことが何よりも凄い。別にそんなに聴いたことなかったのに、AppleMusicでN.W.Aを検索しまくって、聴いていますし、昔に比べてHIP HOPって聴かなくなっていたんですけど、ちょっと熱が復活しています。凄い効力だ。
