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プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

マスコミの「ロス疑惑」再燃  「なぜ、今」なのか 日米合作の情報操作と考えるのは穿ち過ぎ?

2008-03-08 21:53:33 | 政治経済
ロス市警の未解決殺人事件捜査班が2月22日に、訪問先のアメリカの自治領であるサイパンにおいて、いわゆる「ロス疑惑」の元輸入雑貨会社社長・三浦和義を逮捕した。周知の通り「ロス疑惑」の核心である三浦氏の当時の妻が銃撃された事件について、日本の最高裁では無罪判決が確定している。今になって突然アメリカの警察当局がサイパンに滞在していた三浦氏の身柄を拘束したのは何故なのか。彼のサイパン旅行は4回目であった。その気があれば、逮捕操作は以前にも可能であった。「なぜ、今」なのか。

1981年同年11月18日、三浦夫妻はロサンゼルス市内のダウンタウンの駐車場で車に乗った2人組の男に銃撃された。妻は頭を撃たれて意識不明の重体(日本に移送され、約1年後に死亡)。三浦も足を撃たれた。当初、妻を失った三浦に対して同情的な論調が多く見られたが、1984年に週刊文春が「疑惑の銃弾」というタイトルで、“三浦が保険金を目当てに妻殺害を仕組んだ事件ではないか”とする内容を連載した。この連載開始後に、その他のマスコミにおいても「三浦犯人説」を強調する報道が目立つようになり、報道競争が過熱した。三浦の自宅前や三浦が経営する輸入雑貨店の前にはテレビのワイドショーや週刊誌の記者が列をなした。刑事事件を大衆の「娯楽」にするワイドショー型事件報道のはしりだった。

1985年に、三浦の愛人である矢沢美智子が、1981年8月の殴打事件(1981年8月、三浦夫妻はロサンゼルスを旅行していた。同月31日、妻が宿泊していたリトル・トーキョーの当時のホテルニューオータニの部屋で1人になった時に、アジア系女性が部屋へ侵入し、妻は頭部を鈍器で殴打され軽傷を負った)における犯行をサンケイ新聞上で告白する。同年9月11日、警視庁は三浦を殴打事件での殺人未遂容疑で逮捕。同12日に矢沢も同容疑で逮捕した。殴打事件では、矢沢に懲役2年6ヶ月(7月14日東京高裁控訴棄却実刑確定)、三浦には懲役6年(三浦控訴、1994年6月22日東京高裁控訴棄却、1998年最高裁三浦の上告を棄却、実刑確定、11月収監、2001年1月刑期満了)の判決が確定した。一方、銃撃事件については、検察は三浦が実行犯であるC又は氏名不詳者との共謀による銃撃事件であると主張した。実行犯が特定できない銃撃事件の裁判としても注目されたが、結局2003年3月5日に最高裁で無罪となり、日本の司法では銃撃事件における三浦の無罪が確定した。

ロス市警・未解決事件捜査班のリック・ジャクソン刑事は、かねてから三浦元社長に対する追及を検討してきたが、今回、三浦元社長がサイパンにくるという情報が入ったため、急遽逮捕に踏み切った、と説明した。三浦元社長の現地逮捕は22日の午後、ロス市警による発表は23日。テレビは同日夜、第1報を「速報」で伝えたが、なにぶん夕刊後のタイミングであり、新聞は翌朝、各紙いっせいにこのニュースを取り上げることになった。なんでいまごろやるのかと当惑しつつも、抑えきれない好奇心を関係記事いっぱいに溢れさせ、派手に紙面を飾った。その結果生じた紙面の変化は、19日早朝に発生した海上自衛隊イージス護衛艦「あたご」の漁船衝突事件の関係記事が、23日の朝夕刊までは連日、1面・社会面にトップ扱いで出ていたのに、それらが突然、うしろに引っ込み、代わって前面に、三浦元社長逮捕関係記事が出てきたことだ。おかしいではないか。イージス艦騒ぎで政府が追いつめられ、国民の関心がそこに集中しつつある矢先、なんで28年前の「ロス疑惑」再登場なのだ。

思い出すのは、「サッチー、ミッチー騒動」(1999年)の陰で「日の丸・君が代」法案があっという間に国会を通過したこと。アザラシの「タマちゃん騒動」(2003年)の陰で「有事」法案が強行採決されたことである(仲築間卓蔵「メディアを読む」「しんぶん赤旗日曜版」3月9日号)。今回はどうか。沖縄・北谷(ちゃたん)町で14歳の少女が米海兵隊員に暴行された事件やイージス艦の事件を放っておくと、ことは日本の自衛隊のお粗末さだけに終わらず、アメリカの戦争と米軍基地、自衛隊のかかわりなど日米同盟の根幹の問題に国民の目が向かいかねない。
詮索好きの大衆の視線や興味をより強く引き付けることができる、いわば効果的な目くらましとして利用されたのが、「ロス疑惑」の再燃でないのか。テレビは高視聴率を、新聞や雑誌は販売部数増を期待できる。日本政府は、「日本の司法で確定判決を受けた」三浦氏のロス市警の捜査に関し、捜査協力までいっている。私たちは、ドサクサにまぎれて喜ぶ権力者に騙されてはならない。

小泉首相が靖国参拝に固執する本当の理由

2005-10-01 18:26:02 | 政治経済
小泉首相の靖国神社参拝を巡る訴訟で、9月30日2件目の違憲判断がでた。大阪高裁は参拝の「動機ないし目的は政治的であり、内閣総理大臣としての職務を行うについてなされた」公的なものと認定した。中国や韓国からの強い反発に加え、野党だけでなく与党や財界の一部からも反対の声が上がるなかで、小泉首相は今年も参拝を継続するかまえを崩していない。「戦没者を追悼し慰霊してどこが悪い」、最近ではつけくわえて「私的参拝だ」と開き直る小泉首相の本当の狙いは何か。
靖国神社は、「過去の」戦没者を慰霊する単なる追悼施設ではない。それは、明治政府以来の近代日本のあらゆる戦争を正当化し、再び戦争をする日本をめざす運動の拠点のひとつとなっている。その意味で「未来の」戦没者がターゲットとなっているといってよい。小泉首相が靖国神社参拝に固執する理由も実はこの点にあるのだ。
1985年に靖国神社に「公式参拝」した中曽根首相は「これが戦後政治の総決算。過去のことではなく、21世紀へ向けて前進の体制をつくる」と言明した。その後紆余曲折があり、首相の公式参拝は途絶えたままであった。小泉首相は就任前に靖国参拝を公言し、公私どちらでもよいといって毎年の靖国参拝を復活させたのである。就任後の会見では「米軍が攻撃をうけた場合、日本が何もしなくてもよいのか」「いざという場合に命捨てることに敬意をもつ」と述べた。「未来の」戦没者を想定していることが、明らかではないか。そして今、イラクに自衛隊を派兵し、憲法改悪による「戦争をする国=戦死者をつくる国」が目の前に近づいている。小泉首相は靖国参拝を単なる個人的思いで続けているのではない。大きな国家戦略の一環であるからこそ、周辺の反発にかかわらず靖国参拝に固執するのだ。

政党活動を蝕む政党交付金

2005-09-30 21:13:00 | 政治経済
総務省は30日付の官報で、2004年の政治資金収支報告書(総務相所管=中央分のみ、地方選管分含まず)と政党交付金使途報告書を公表した。金力で政治を買収し、自己に都合の良い政策や公費支出を実行させる「政治腐敗事件」は、古今東西後を絶たない。「政治腐敗事件が起きるたびに問題となる企業・団体献金についは、腐敗のおそれのない中立的な公費による助成を導入することなどにより廃止の方向に踏み切る」(93年8月衆院本会議での細川首相(当時)発言)ということで政党交付金制度が95年から導入された。それから十年。共産党を除く、各政党の税金分捕りは3,126億円に達した(共産党は、個人の思想信条の自由を侵すとして政党による税金山分けを認めず、受け取り拒否を続けている)。一方、問題の企業・団体献金は「廃止」されるどころか、当然のこととして存続している。日本経団連の奥田会長にいたっては、29日「主要政党が公的助成への過度の依存を脱し、民間が主体で支える健全な政党政治を実現する」と述べ、企業などによる一層の献金拡大による政治買収を公然と主張するありさまである。共産党を除く各政党は税金(政党交付金)と企業・団体献金の二重取りを続けているのだ。毎年310億円以上の税金の無駄遣いである。
税金も企業・団体献金も個人の政党支持の意思を強制的に踏みにじる行為である点で共通している。奥田会長が自分の財布から自民党に寄付しようが、民主党に献金しようが、まったく自由である。しかし、トヨタの利益を自分の好みにあわせて寄付することは許されない。トヨタの利益は特定の政党支持者だけが稼いだ成果ではないからだ。
収入の大部分を政党交付金と企業・団体献金に頼る政党がまともな政党活動をする筈がない。税金の山分けに当たっては選挙民への配慮は一切不要である。企業・団体献金に関しては、献金をくれる企業・団体の利益に反することができないのは当然である。そして、グローバル資本主義の現代においては、たいていの場合、財界・企業の利益と国民の利益とは相反する。結局、さまざまな詐術で粉飾しながら、国民の利益に背く政治を行うことになる。共産党以外の政党が選挙の時の公約とまったく異なった反国民的政治をしばしば行う根源は、まさにここにある。企業・団体からの献金にも、税金にも依存せず、個々の国民に依拠し、支持を広げる活動をしている政党だけが、国民の利益にそった政治を実行できるのだ。「官から民へ」「民間にできることは民間に」と偉そうなことをいう自民党、民主党に対して言おう。「政党交付金(官)に頼るのをまずやめよ」「税金を返せ」と。

家計部門と企業部門―所得分配率の見直しを

2005-09-29 21:17:20 | 政治経済
9月28日、国税庁は平成16年分「民間給与実態統計調査」を発表した。1年を通じて勤務した給与所得者は、対前年比13万人減の4,453万人で3年連続減少、その平均給与は前年より5万1千円少ない439万円で、7年連続のダウンであった。
国民所得に対する比率(分配率)を見ると「労働+財産所得受取」分配率は96年に大幅に低下、98年に少し持ち直したが、99年以降連続して低下傾向にある。バブル崩壊後、企業部門や金融システムのリスク(設備・雇用・債務の過剰、不良債権)を企業部門から、雇用者所得や利子所得の削減を通じて家計部門に移す政策が強行された。雇用者所得や利子所得などの企業から家計への支払いが抑制されたぶん、企業所得の分配率は上昇を続けている。そして、企業所得が飛躍的に回復したにもかかわらず設備投資の抑制を続けた結果、いまや企業部門の資金余剰は82兆円にも達すると見込まれている。多くのエコノミストが、日本経済の持続的発展のために、企業が抱えている余剰資金を家計に還元する政策―所得分配率の見直しを検討すべきだと主張し始めている。非正規雇用の拡大に歯止めをかけ、正規雇用者も含めた待遇改善など雇用ルールの見直しを通じた家計所得の増加が基本であるが、法人税率の引き上げによる政府による所得再分配を真剣に検討すべき時である。企業増税をタブー視する政府与党に国民的批判が必要である。

米国産牛肉輸入再開問題―迷走の理由

2005-09-28 22:52:09 | 政治経済
なんでもアメリカ言いなりの小泉政権が、珍しく抵抗しているように見える「米国産牛肉輸入再開問題」が混迷している。内閣府「食品安全委員会」が安全性について「国産牛と同等」というリスク評価の結論を政府の思惑通りに、なかなか出さないからである。
26日に開催された安全委・プリオン専門調査会でも、「脊髄除去と洗浄が行われ『たら』、危険部位の除去が適正に行われてい『れば』、(日米の)リスクは同等である」などとする答申原案に「結論ありきにみえる」「『たら』『れば』という仮定を設けて同等であるというのはおかしい」などの批判が続出した。そもそも全頭検査をせず、抜き取り検査だけで、個体識別システムがないもとで「生後20ヶ月以下の米国産牛は安全」かどうかと問われても、リスク評価のしょうがない。昨年10月に早期の輸入再開をあせる日米政府が米国の検査体制も十分検証しないで、「20ヶ月以下の危険部位を除去した(?)米国牛」の輸入解禁を原則合意した矛盾が噴出した格好である。
牛海綿状脳症(BSE)の感染源については、いまだ未解明なことが多い。アメリカのBSE検査体制は科学的なデータ蒐集も出来ないようなきわめてずさんなものである。農耕民族として繊細な食文化をもつ日本人に、ただ目下の同盟国といういうだけで、アメリカ流を押し付けることは出来ない。対米従属を旨とする小泉政権が輸入再開のためにどのような手を打ってくるか警戒を怠れない。

首相所信表明━自信に満ちた態度と空疎な内容

2005-09-27 21:58:19 | 政治経済
小泉首相は26日、衆参両院で所信表明演説を行った。与党327議席を背景に演説は自信に満ちあふれたもであった。公明党の神崎代表は「自信のみなぎった所信表明だと思う」と述べたが、それは演説の態度だけで、内容は空疎なものだった。
郵政民営化については、先の街頭演説とほとんど同じ民営化「バラ色」論を繰り返すだけだった。民営化で公務員が減らせ、法人税収が増えると言うインチキをそのまま繰り返し、株式の売却収入が財政再建に貢献するという。しかし、その先には、電力や放送、NTTなどにはある外資規制のない郵政法案の通過を楽しみに待っているアメリカ金融資本がいる。首相は「郵便局のネットワークは維持する」というが、貯金・保険会社の株式を完全民間売却し、全国共通サービスの提供義務を法律から外して、どうしてそんなことが言えるのか。
社会保障分野については「適正な給付と負担で持続可能な制度とすることが政治の責任」という使い古された言葉を繰り返し、過去4年間に実行したような年金、医療、介護の相次ぐ制度改悪を継続することを宣言した。テロ対策特別措置法については、テロとのたたかいは終わっていないとして引き続き米軍のために無料ガソリンスタンド役を果たすつもりである。イラクでは、自衛隊による人道復興支援活動は、何の根拠もなく高い評価を受けていると言っている。(自衛隊はサマワ市民から、復興のために来たのではなく、アメリカ有志連合参加のために来たということを見破られつつある)
その一方で、選挙後持ち出した増税問題や改憲の条件づくりとなる国民投票法案案や憲法特別委員会の設置については一言も触れていない。自信に満ちた態度とは裏腹に小泉首相所信表明は、当面する課題には通り一編の言い草をくりかえし、都合の悪いことについては焦点を隠してやり過ごす、まことに空疎な内容であったといわざるを得ない。


米軍補完部隊の道をいっそう進む自衛隊

2005-09-26 22:34:10 | 政治経済
自衛隊が在日米軍の補完部隊であることは今に始まったことではない。しかし、在日米軍が、その本来の目的である極東地域を大きく越えて、中東を含む世界への殴り込み部隊に変質するにつれ、自衛隊も今や日本領土の専守防衛を大きく逸脱し、米軍とともに世界で戦争をする部隊にその性格を大きく変えつつある。現在、在日米軍の再編による自衛隊基地・司令部の一体化が着々と進められている。憲法9条とりわけ第二項の改定はその総仕上げとして位置づけられているのだ。
防衛庁は、来年度予算の概算要求で、陸上自衛隊内に「中央即応集団」を新設することを盛り込んだ。「中央即応集団」は、昨年12月に決定した「防衛計画の大綱」で鮮明にした海外派兵方針を具体化するもので、総勢3200人からなる本格的な海外派兵部隊である。「防衛計画の大綱」で、政府は日本領土への「本格的な侵略事態生起の可能性は低下」とした一方で、「国際平和協力活動」に重点を移すことを強調している。「国際平和協力活動」とはアメリカ有志連合に参加することを意味する用語であることは言うまでも無い。国連加盟国としての責任を果たすために海外派兵をするというのも、1952年の国連加盟時、日本は憲法に従い軍事協力の義務を負わないことを前提に加盟を承認されたことを忘れた議論である。
在日米軍再編にあわせ、米陸軍第一軍司令部が米本土から、キャンプ座間へ移転することが計画されている。いつから、日本はアメリカ領土の一部になったのか。横田基地では航空自衛隊が米軍と情報を共有しながら弾道ミサイル攻撃に対処する予定である。米第七艦隊の空母キティホークは、横須賀基地を母港化しており、横須賀の海上自衛隊はすでに米軍と連携体制にある。
アメリカが日本に基地をおくことが許されるのは、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するためである(安保条約第六条)。安保条約の範囲を大きく逸脱する米軍が日本に駐留する法的根拠はない。世界で非米同盟がじわじわと拡大し、孤立化を深めている米国に付き従う日本政府をそのまま認めることは、日本国民自身が世界で孤立化することを意味する。自衛隊は米軍の従卒ではない。日本国民はアメリカ人の従僕ではない。

「カトリーナ」後のアメリカ━反戦世論のゆくえ

2005-09-25 17:42:25 | 政治経済
8月末の「カトリーナ」に続いて、大型ハリケーン「リタ」が24日、南部テキサス、ルイジアナ州境界付近に上陸した。いまアメリカの言論界や世界のアメリカ・ウォッチャーの間で「カトリーナを機にアメリカの空気が変わった」との声が聞かれるようになった。「国内のハリケーン対策も満足にできない政府が、イラクやアフガンに介入し、貴重な人命や資金を失っている大義はなにか」多くの国民が疑問を持ち始めたのだ。米ギャラップ社の最近の世論調査によれば「イラクへの派兵で米国は過ちを犯した」と考える人が59%、「米軍のイラクからの全面または一部撤退を支持」する人は63%と過去最高となった。24日、ワシントンのホワイトハウス周辺で行われた反戦デモには最大規模の15万人が集まった。
いま米国の反戦運動のシンボル的存在になっているのは、息子をイラク戦争で失ったシンディ・シーハンさんである。シーハンさんは当初はごく普通の「戦死者の母」で、昨年ブッシュ大統領にも会ったとのこと。しかし、その後開戦の根拠とされた大量破壊兵器がなかったことがわかり、息子の死の意味に疑問をもち、いまや「反戦の母」として運動のシンボル的存在となった。この夏ブッシュ大統領の休暇先のテキサス州クロフォードで始まったシーハンさんの行動は全米の反戦・平和運動を勇気づけ、北部、中央部、南部の三コースからの反戦バスツアーが、イラクからの米軍撤退を訴えながら、首都ワシントンに合流したのだ。
ブッシュ大統領は、22日の記者会見で「われわれがイラクから撤退すれば、テロリストたちは米国に対する勝利を宣言するだろう」と述べ、イラク戦争の理由を「テロリスト対策」にすり替え、改めて駐留継続を合理化した。ベトナム反戦運動にくらべ、イラク反戦運動はまだ小さいといわれている。しかし、シーハンさんたちのブッシュ批判が「ニューオーリンズ問題」を契機にどこまで高まるかわれわれは注視しなければならない。それはひたすらブッシュに追随し、自衛隊のイラク派兵を強行した小泉自公政権の責任を厳しく問うものであるからだ。

NHK「新生プラン」━険しい再生の道

2005-09-24 17:51:39 | 政治経済
9月20日NHKは、1月に明るみに出た番組改変・政治介入問題や、番組制作費流用等の不祥事問題に関し国民からの強い批判や受信料不払いを受け、「NHKは生まれ変わる」決意と共に「新生プラン」を発表した。NHKには、5千件近いメールが届き、批判するもの応援するもの両論があったとのこと。国営放送でもなく、商業放送でもないNHKは、受信料を支払ってもらおうとすれば、視聴者がNHKと受信契約を結びNHKの番組を視たいという気持ちになってもらわなければならない。本来、双務契約であるべき受信契約で一方の側が、受けての側の意向を無視して受信料支払いを法的に強制することには無理があるのではないか。
権力や財力のある者が、世論操作、情報操作のためにメディアを利用しようとすることは、古今東西、万国共通である。どれだけ多様で優れた報道機関を持つかは、その国のジャーナリストの見識の高さ、それを支える民度の高さにかかわる。もちろんその前提には自由な言論活動を保障する政治制度の存在が不可欠である。ジャーナリストは常に権力から距離を置き、少数者の発言を保障し、批判的な視点で物事を報道しなければならない。現在のNHKは、「政治的な意見の対立を激化させない」とういう口実のもと、結局は権力の意向に阿ることになっていないか。それと裏腹の関係で権力との緊張関係を伴う政治・思想問題を意識的・無意識的に避け、周辺の歴史、芸術、スポーツなど(大リーグ情報、海外ドラマを想起)ばかりに力を入れていないか(メディア評論家の松田浩さんはこれをNHK番組の「ドーナツ現象」と呼んでいる)。
「新生プラン」にもとづく特別番組「NHKは変わります」においてNHKは、長井チーフプロデューサーが内部告発で明らかにした、政治家の圧力による従軍慰安婦を巡る番組改変問題の経緯について何も説明をしなかった。「政治家への番組事前説明は通常業務」とする方針を撤回するのかどうかについても明確にしなかった。これではいくら「放送の自主自律を貫く」との決意を示されても、受信契約を締結する気持ちになれない視聴者が多いのではなかろうか。NHK再生の道は険しいといわざるを得ない

ドイツ総選挙の結果―日本との違い

2005-09-22 22:18:11 | 政治経済
自民党圧勝に終わった日本に対しドイツ連邦議会選挙では、終始優位が伝えられた保守の最大野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は辛うじて第一党の座を獲得したが、この議席数では、中道野党の自由民主党(FDP)と連立しても過半数に届かない。一方、シュレーダー首相与党連合も過半数には至らなかった。労働市場の規制緩和や福祉切り下げの「改革」が争点となった今回のドイツ総選挙で、躍進したのは新自由主義改革に反対する左翼党であった。ドイツ国民は、反国民的な「改革」に抵抗する意思を明確に示したのだ。片や日本国民は小泉「改革」に圧倒的支持を与えた。それぞれの国の社会や政党の歴史は当然に違い、選挙制度も違うので、単純な比較は出来ないが、グローバル資本主義のもと、各国の政府が、それぞれの国の財界の要求を受けて、新自由主義改革による労働者への犠牲転嫁路線をとるなかで、国民の政治的成熟度の違いをまざまざと見せつける結果であった。
ドイツの次期政権は、今後の諸政党間の連立協議の行方によってさまざまな選択肢を模索することになろうが、左翼党が、第三局としての役割を十分に果たすことにより、弱者や労働者の声を無視した「構造改革」を一方的に推し進めることは出来ないであろう。日本の第三局であるべき日本共産党の議席は9、社民党の7を含めても3.3%の存在である。小泉構造改革の進展とともに進む反国民的施策を前にして「自業自得」だと嘆くようようなことのないようにしたいものである。

特別国会の重要案件

2005-09-21 22:17:48 | 政治経済
衆院選を受けた第163特別国会が21日召集された。郵政民営化法案成立を狙って会期は異例の42日間の予定である。自公で3分の2の議席数を得たうえ、民主党は小泉自民党より自民党らしい代表が座り、国会で野党らしい野党は共産党だけという状況である。小泉独裁国会となり悪政・暴政が強行されるおそれが強い。国民の立場から見て問題となりそうな重要案件を整理しておこう。
①郵政民営化法案・・・9月14日の本欄で述べたように賛成が圧倒的のように見えるが、選挙制度のマジックでそうなったのであり、実際は小泉首相のウソを交えた強引な選挙戦でも世論は賛否半々であった。民営化「改革」は、ほかの「改革」もそうだが、利益を得る財界・企業のためのもので、決して国民のためのものでない。企業を強くすることによって国民もある程度潤うという循環は90年代のグローバル資本主義の到来とともに過去のものとなった。財界・企業の利益と国民の利益が対立する言葉の真の意味で、世界は資本主義の時代を迎えたのだ。
②障害者「自立支援」法案・・・前国会で審議未了・廃案となったが再提出予定である。社会保障制度を所得に応じた「応能負担」原則から、受けるサービスに応じた「応益負担」原則へ改変しようとする象徴的な法案である。そこには、支えあう連帯といった人間らしい社会の考えなど微塵もない。
③増税計画・・・貧乏人が貧乏人のために負担する、金持ち、企業はいくら余剰資金を持とうが関係ない、それが「経済活性化」のためというのが、小泉・竹中路線である。谷垣財務相は、早々と定率減税の全廃(昨年の税制改正で半減は決定済み)を表明している。配偶者控除、扶養控除の見直し、消費税増税計画も政府税調はすでに決定済みである。
④憲法改悪・・・憲法改定の第一歩としての「国民投票法案」を審議する特別委員会の設置がまず取り上げられる。「当初は来年の通常国会への提出を予定していたが、同法案の制定に前向きな前原誠司氏が民主党代表に就いたことを踏まえ、提出を前倒しする。」(NIKKEI NETニュース)
⑤テロ特措法とイラク派兵延長・・・インド洋に浮かぶ無料ガソリンスタンドとして米軍に重宝がられているテロ特措法の二度目の延長を政府は早々と決定した。共産党、社民党の議席数を勘案してのことであろう。イラク派兵の期限が12月に来る。ブッシュ政権の延長依頼を小泉自民党が断る確率は100%ゼロである

6カ国協議の共同声明採択を歓迎

2005-09-20 23:38:24 | 政治経済
第4回6カ国協議は19日、難産の末、朝鮮半島の非核化の目標と今後の基本的な段取りを確認した共同声明を発表して閉会した。日朝関係については、2002年9月に小泉首相と金正日総書記との間で「日朝平壌宣言」に署名、国交正常化交渉を再開し、日朝間の戦後の諸問題を包括的に解決することを約束した。しかし、その後、拉致被害者5人の帰国(02年10月)、地村さん、蓮池さんの家族5人(04年5月)、曽我さんの家族3人(04年7月)の帰国があったほかは、ほとんど進展がなかった。今回の共同声明では、拉致問題に直接言及していないが、「日朝平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることを約束した」(共同声明第二項)と明記、二国間問題が、六カ国協議の場での国際的確認事項となった。両国政府の早期の協議再開が期待される。
最大の懸案であった北朝鮮の核問題については、平和的方法による朝鮮半島の非核化の目標を確認したうえで、「北朝鮮は、すべての核兵器および既存の核計画を放棄し、核不拡散条約(NPT)および国際原子力機関(IAEA)の保障措置に早期に復帰することを約束する。米国は、朝鮮半島において核兵器を持たず、北朝鮮に対して核兵器あるいは通常兵器による攻撃または侵略の意図がないこと確認する。」(共同声明第一項)としている。
共同声明はまた、「六カ国は、北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力を約束する」(共同声明第四項)とし、核問題に限らず北東アジアの安全保障協力に取り組む姿勢を示した。
今回の大きな枠組み合意を受けて、次回以降の六カ国協議で、具体的措置が話し合われる。われわれは、今回の共同声明採択を、核兵器のない朝鮮半島や当事各国の関係正常化につながる大きな一歩として歓迎したい。

民主党新役員人事―小泉与党に対決ではなく競演

2005-09-19 17:07:21 | 政治経済
昨日、民主党新人事が固まった。前原誠司代表は17日の代表選出後の記者会見で「我々は憲法改正は必要だという立場だ。・・・私の従来の意見は九条二項を削除して自衛権を明記するものだ」と述べ、改憲論議を加速する考えを明言した。幹事長に決まった鳩山由紀夫元代表、政調会長となった松本剛明氏はかねてから、「自衛権を自衛軍という形で書き入れるべきだ」と主張してきた人物である。一方自民党のほうでは、安倍幹事長代理が、総選挙後「最大の政策課題は憲法改正だ」と宣言、改憲に向けた準備作業を着々と進めている。次の特別国会で改憲手続きの一環としての国民投票法案を審議する特別委員会(常任委員会は調整不足で見送り)が設置される予定である。前原代表は、戦う民社党を目指すというが、同じ「改憲」の立場でどのように対決しようというのか。
税制についても、前原代表は、「法人税の率はかなり低くしなければ、多国籍企業は日本を見放し、本社機能を他国に移してしまいます。あるいは海外からの投資を呼び込むには、どういう減税が必要になるのか――。そうした大胆な改革を進める一方で、ある程度の財政基盤をも維持しなければならないとすれば、当然ながら、直・間比率、消費税率の見直しという問題は不可避でしょう」(『諸君』04年9月号座談会)と発言、小泉・竹中路線となんら変わらない立場を示した。多国籍企業の横暴に歯止めをかけるかどうかが対決の焦点であるのに、これでは戦いようがないではないか。同じ目的に向かって競い合うのは、競演であって、戦うことではないのだ。

満州事変74年―権力者のウソを見抜く国民の目を

2005-09-18 21:22:49 | 政治経済
74年前の1931年9月18日夜、関東軍は、奉天郊外の柳条湖で鉄道爆破事件をでっち上げ、中国侵略の口実とした。
天皇制政府は、「中国軍による鉄道爆破」に対し「自衛」の行動をとる、これは国際連盟規約や不戦条約(28年)にいう「戦争」ではなく、「事変」だと主張した。このウソを知りながら、当時の二大政党(民政党、政友会)は、「正当防衛の挙」、「自衛権の発動」と、侵略を積極的に推進する立場にたった。新聞も「守れ満蒙、日本民族の権益 断じて侵害を許さず」などと、侵略を鼓舞し、ウソを増幅した。9月19日、直ちにこのウソを見抜き「労働者・農民・兵士諸君! 奉天ならびに一切の占領地から、即時軍隊を撤退せよ・・・帝国主義戦争のあらたなる危険にたいして闘争せよ!」と呼びかけたのは、治安維持法のもと困難な状況におかれた日本共産党だった。
ベトナム戦争でのトンキン湾事件、最近ではイラク戦争での大量破壊兵器保有のでっち上げ、侵略戦争にはつねにウソと謀略がつきまとう。権力者、為政者のウソは戦争だけではない。郵政民営化がなぜ国民にとってよいことなのか。財政赤字は、金持ちも、貧乏人もなぜ一律に負担しなければなんらないのか。アメリカの戦争に軍隊を出すことが、なぜ「国際貢献」なのか。憲法9条を堅持することがなぜ時代にあわないといえるのか。
与党も野党もマスコミも、本当にウソをいっていないか。国民一人ひとりが、立ち止まり、「なぜ」に答える努力をしてみよう。後で騙されたことに気がつき取り返しのつかないことにならないためには、権力者のウソを見抜く国民の目が必要だ。

民主党の再生―「野党」としての対決軸

2005-09-16 16:08:19 | 政治経済
二大政党の一翼として、「政権交代」を叫んだ民主党は、解散前から64議席(1/3に相当)減らし、大敗北となった。「公約」どおり、岡田代表は辞任し、17日の両院議員総会で新代表を選出する予定である。「野党」としての対抗軸をもたない民主党が、勝ち馬に乗る国民から見放されたのはある意味で当然であった。日本社会の亀裂は、自由競争こそ活力の源と考え、格差拡大を当然とする財界・小泉自民党政治によって、ますます深刻化しつつある。民主党は、代表は交代するが、小泉自民党政治の枠内で政権だけ志向する「政権準備政党」としての再生を目指す限り、自民党とともに反国民的な政治に加担するか、自民党の失敗を待つだけの存在を続けるほかない。
今回の選挙の最大の争点である郵政民営化で、民主党は民営化に賛成だが、法案には反対し、あとから分かりにくい対案を出す始末だった。事実と道理で、終始一貫、民営化反対の論陣をはった共産党とは対照的であった。今後の重大問題である、年金、税制、憲法問題でも自民党の土俵のうえで、小手先の違いを主張するだけなら、国民の共感をうることは不可能であろう。小泉自民党がこれだけ反国民・反動的攻勢を強めている時、これに真っ向から対決して、国民の利益にかなうよう少しでも歯止めをかけてこそ、真の「野党」である。党の存立基盤を財界からの献金や「政党助成金」に頼っている政党は、国民にとっては、二つも要らないと言わざるを得ない。二大政党の一方の政党は、真の「野党」であってもらわなくては、困るのだ。