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プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「映画日本国憲法」―9条は人類の宝

2005-09-23 20:56:46 | 文化評論
今日、尼崎で「映画日本国憲法」を見た。『チョムスキー9・11』『老人と海』のジャン・ユンカーマン監督によるアメリカ、中東、アジアおよび日本の知性と民衆が語る日本国憲法物語である。憲法制定にかかわったベアテ・シロタ・ゴードンさん、日本の戦後史を見守ってきたジョン・ダワーさん、沖縄米軍基地の駐留経験から日本国憲法をラディカルに語るC・ダグラス・ラミスさん、日本の軍事大国化への策動を冷静に東アジアの歴史的発展のなかで捉える班忠義(バン・チュンイ)、韓洪九(ハン・ホング)、姜萬吉(カン・マンギル)さんたち。
憲法とは国民の政府に対する命令書であり、日本国民は二度と戦争しないように国家に対し戦争放棄を命令したのだ。アメリカの再軍備指令により、自衛隊を創設し、日本政府が対米追従を続ける中で、日本国民は60年間憲法を守り続けてきた。世界の人々はそのような日本国民に信頼を寄せ、じっと見守っていてくれたということが、かれらの語りからひしひしと伝わってきた。憲法改定問題はひとり日本国民だけの問題ではない、アジアの、世界の、21世紀の人類史に繋がる問題なのだということを知り、今更ながら身の引き締まる思いであった。憲法改定問題は、日本の国内問題に止まらず国際問題なのだ。
「武力行使の放棄を誓った第9条こそが、日本のアジア諸国に対する戦後謝罪だったのです。第9条の放棄は謝罪を放棄することです」(チャルマーズ・ジョンソン)
「憲法9条はまるで、神が私たち人類に贈ってくれた宝物のようです」(班忠義)

小泉自民党も、前原民主党も、日本国憲法を改定するのは、自分たち日本国民の勝手ぐらいに考えていたら、アジア諸国民、世界の諸国民を敵にまわすことになるということを思い知るべきだろう。日本国憲法第9条はいま、世界で、そのくらいの重みを持っているのだ。「日本が世界一強力ですばらしい武器を持っていることを知っていますか。それは憲法第9条です。『映画日本国憲法』をみて下さい。世界一の武器の秘密を教えてくれます」(吉永小百合)

時代(トキ)を撃(ウ)て・多喜二

2005-09-17 21:32:36 | 文化評論
今日、神戸で『時代を撃て・多喜二』を観た。新人会の演劇『早春の賦』(72年)、今井正監督映画『小林多喜二』(74年)を踏まえ、最近明らかになった事実を織り交ぜて製作したドキュメンタリー映画である。多喜二が築地警察で、特高によって虐殺されてから72年後のいま、「なぜ多喜二か?それを皆で考え行動し、新しい遺産を作っていければと思います」と池田博穂監督は語っている。今回、小樽時代に多喜二の家の隣の住人だった上山初子さんや、坂東妻三郎の長男田村高廣、元ボクサーの赤井英和、七沢温泉福元館・長女の古根村初子さんらが、それぞれなんらかの縁で、多喜二やその作品について証言していたのは、大変印象的であった。
警察権力の実像・天皇制の役割・戦争反対と時代の本質を撃った多喜二は時の政府権力から抹殺された。映画で母親の小林セキさんのナレーションを担当した浅利香津代さんが語っている「私は映画を見て、生命の力をもらいました。生命力の映画になっていますから、多喜二さんの命は亡くなっても、池田監督がこういうタイトルをつけて多喜二さんをもう一度、今の時代に甦らせてくれたのですから、ほんとうにたくさんの方に見ていただきたいと思います。」
三時間に及ぶ拷問で、無残に膨れ上がった多喜二の顔を撫で、髪の毛をかき上げて、今度はその顔を抱えて、「それ、もう一度立たねか、みんなのためにもう一度立たねか」と泣き叫んだ母セキさんの声は、挫けそうになる私をいつも励ましてくれる。そして何度思い出しても涙なしにはおれないのだ。