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【取材記事】衝撃の文書・パナマ文書はどうつくられたのか? 第1回

2016-06-30 14:22:19 | 独自取材


早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースなどは2016年6月2日、同大学にて「パナマ文書はこうして取材・報道した」を開催した。在米フリー記者でICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)「パナマ文書プロジェクト」日本担当のシッラ・アレッチ氏、朝日新聞編集委員の奥山俊宏氏、共同通信特別報道室記者の澤康臣氏が講演を行った。【山下雄太郎】

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「パナマ文書」はパナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」によって作成されたデータベース。この事務所に関わる1970年代以降のオフショア金融センターを利用する企業や取引情報が載っている。


オフショアとは、外国人企業・外国人などの非居住者向けのサービスのことだ。オフショアの多くはタックスヘイブン(租税を回避する場所)となる。

アイスランド 首相退陣求め現地デモ
このパナマ文書によって、各国首脳や著名人がタックスヘブンに匿名性の高い法人をつくっていることがわかった。パナマ文書に関する報道には、日本も含むおよそ世界75か国・400人が取材に関わっている。



このパナマ文書に関する報道が世界に激震を与えているのは周知のとおり。たとえばアイスランドのシグムンドゥル・ダヴィード・グンロイグソン首相は、このパナマ文書に自身に関する情報が掲載されていることがわかった。


当初は「個人資産の公開情報に問題はない」と強気の姿勢だったが、2016年4月4日には同氏の退陣を求める大規模なデモに発展。同4月5日に退陣する運びとなっている。

各国横断 ICIJは記者200名の調査報道組織
大きな影響を持つパナマ文書だが、約1年前に、匿名人物から法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部文書が南ドイツ新聞に提供されたことに端を発している。


その後、同新聞はICIJに協力を依頼。各国のジャーナリストがデータベースを共有して取材。4月4日に一斉報道している。


今回講演した3人は、そのパナマ文書の日本の調査報道チーム(同チームはアレクシス氏というイタリア人を加えて4人)。だ。シッラ氏の講演の主な趣旨は以下の通り。



【シッラ氏 講演趣旨】

ICIJはワシントンにある非営利団体でジャーナリズムメディア組織。200人ほどの記者のネットワーク。共同で調査報道を行い様々なプロジェクトを進めている。(私は)2010年にICIJにインターンシップで行き、同年にアスベスト問題について調査報道を行い、記事を朝日新聞に掲載した。

「データ分析には、オープンソフト利用」
その後、ドイツの新聞記者に匿名情報に関するデータがあることを知り、データ分析や国際的な調査報道を専門にしているICIJと記事をシェアすると決め、そこからパナマ文書のプロジェクトが始まった。


パナマ文書のデータは非常に大きく2016年3月時点で2.6テラバイトもある。しかし、当初はそこまで大きくはなかった。データとは言えないようなメールやPDF、映像といったものがあった。


そのデータを分析するためにはオープンソフトのデータが利用された。結果やネタを400人にシェアするオープンソースのソーシャルネットワークプラットフォームだ。これは出会い系サイトにも利用されているものでもある。またデータビジュアライゼーションにはLinkuriousが使われた。



2015年7月、何をさがせば、日本についての情報が出てくるのかを調べた。最初は、何の情報があるのかもわからない。それでやはり、公共の利益を常に共有する誰かの会社設立に伴った情報などについて調べた。読者に、誰についての情報を読者に知らせた方がいいのかなどを念頭に置いた。


私自身はオフショアにお金があるわけではない。そのため、どんな会社のエグゼクティブとかは使うだろうという前提で調べた。2015年7月から慎重に国ごとのリストをつくっていった。

文書中には日本人400名
難しかった点として、日本の名前は全てローマ字表記。受益株主の名前は少ない。会社設立の書類はあるが、理由は書いていない、モサック・フォンセカと関係ない会社の上方はないという点があった。


しかしその後、全体的にパナマ文書の中で日本人の名前が400人程度あり、日本の企業もあることがわかった。データベースでは一つの名前で様々なつながりがわかるようになった。


データベースに人の名前、企業の名前を入れれば、関係する法人などもわかるようになった。例えば、警備会社セコムの共同創業者である戸田寿一氏の名前も検索すれば出てくる。(※戸田氏と飯田亮氏が英領バージンに会社を設立し、保有株式の一部を移していることがすでにマスコミに報じられている)



パナマ文書の記事は2016年4月4日の報道後、世界中の様々な国の、新聞やテレビ、雑誌に記事が出され、波及効果で大きくなった。


パナマ文書のプロジェクトの価値として私が思うのが、1つはその内容であり、このデータの量・質だ。みんなオフショアは昔からあることだが、誰が会社を設立したのか、その際の法律事務所など、様々なパーツがわかるようになっている。このようなデータベースは希で、あまりないと思う。

メディアに求められるデータ分析力
そして、もう1つはジャーナリズムとしての価値だ。1つの目的があって、一緒に協力するといったことは非常に貴重だ。各国がチームとなって調査報道を行うのは波及効果、インパクトがあると考える。


メディアは報道したことによって責任が生じる。例えば日本人の名前は400人程度しかない。これからどうするのか。そのリストをどう使うのかについては、全て、それぞれのメディアの力の見せ所となるだろう。


つまり「パナマ文書を公開したからこれで終わり」ではない。データはパブリックなものだが、そのデータはどうやって使うのか、各国の報道機関・記者の腕次第だと思う。(終)


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