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【取材記事】創薬、ドローンにもたらす新たな価値とは!? ディープラーニング講演に長蛇の列

2016-06-24 15:17:38 | 独自取材


2016年6月8~10日に千葉市の幕張メッセでInterop 2016が開催された。初日には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主催のIoTシンポジウムが開催され、株式会社 Preferred Infrastructureの西川徹代表取締役社長が、人工知能の能力を大きく進化させた「ディープラーニング」とIoTをテーマに講演した。講演の要旨は次の通り。【高橋慧】

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人工知能はどこまで進化しているのか。典型的なユースケースとして考えているのが、異常検知。ディープラーニングは、異常検知や故障予測に非常にうまく使えることが見えてきている。


特に製造業の世界では、機械が止まってしまうことは非常に大きなダメージを与えてしまう。一時間当たりで数億円もの損害を出してしまうこともありえる。我々はファナックと一緒に、ディープラーニングを使っていろんなデバイスの故障検知にトライしている。


実際、ディープラーニングを使わなかった時には見つからなかった異常を検出できるようになっている。

人工知能の実用化に立ちふさがる「物理的な制約」
データを集めて処理することによって故障検知につなげるのは、ディープラーニングの重要なユースケース。IoTでもこのユースケースは、ロボットだけでなくプロセス型の製造機やエネルギーをつくる際の異常検知に使われてくると考えている。



ただ、IoTと人工知能が結びつく価値は、単にデータを分析するだけにはとどまらない。IoTによって、デバイスからデータを取ることができるようになるだけではなく、デバイスをコントロールすることができるようになる。デバイスをネットワークにつなぐことによって、クラウドなどからリアルタイムに機器をコントロールできるようになる。こういうことも非常に重要だ。


我々は、人工知能の適用範囲を単にセンシングしたデータを使って分析するだけでなく、コントロールやアクションに積極的に活用していくことを目指している。


ロボットなど実世界のデバイスに学習させるには、一つ大きな課題がある。それは、ロボットや自動車では、物理的な制約が非常に大きくなってしまうこと。ロボットを100倍の速度で動かすと、物理的な状態が変わってしまう。正確に学習させるなら、ロボットは等速で動かして学習させる必要がある。こうした物理的な制約が大きな障壁になるが、我々は分散協調型の機械学習を実現する。

ディープラーニング + IoT = 「制御分野に新たな革命」
1台のロボットだけで学習するのではなくてロボット同士が協調して学習する。学習結果も常に共有することによってたくさんのロボットが並列に学習して学習速度を上げることができる。こうした仕組みの開発に力を入れている。


2016年1月にラスベガスで行われた全米家電協会主催の展示会「CES」(Consumer Electronics Association)で出展したデモは、6台で12時間ほど協調学習した白い車がお互いにぶつかることなく自動運転できるという内容だった。



ここに白い車をあえて邪魔するように、人が操作する赤い車が登場したらどうなるか。白い車は学習の時に赤い車には出会っていない。白い車は、赤い車が邪魔をする行動をしても赤い車をうまく避け、赤い車がいなくなると安心してまた走り出す。


このデモには多くの反響があり、ディープラーニングの新しい方向性を示せたと思っている。このようにディープラーニングとIoTが結びつくことで、制御の分野にも新しい革命を起こしていけると考えている。

「ネットワークデバイスも、もっと賢くなるべきだ」
しかし、この二つだけではまだまだ不十分だ。これからたくさんのデバイスがつながって協調して動作するようになると、たくさんの情報をリアルタイムで処理する必要性が出てくる。ディープラーニングの世界では、データを集めれば集めるほどより精度を上げることができる。しかし、いまのクラウドコンピューティングだけのアプローチでは、データを集めることがほぼ不可能になってしまう。


今後のIoTでデータの主戦場になるのは機械が生み出すデータ。機械の数は人口を増やすよりもはるかに速いスピードで増やすことができるし、データを取得する解像度もいくらでも上げることができる。このような大量のデータを集めることは、いまのコンピューティングでは不可能。データを一か所に集めずとも、クラウドとネットワークデバイスなどが協調して学習していく「エッジへビーコンピューティング」という考え方が重要になってくる。



クラウドでの人工知能はだいぶ進んでいるが、我々はネットワークデバイスももっと賢くなるべきだと考えている。ディープラーニンニングをはじめとする深いインテリジェンスを実現するようなテクノロジーを、ネットワークデバイスに実装していくことを進めている。

「まずは製造業へ」 期待高まるエッジへビーコンピューティングの挑戦
その一つの取り組みとして、4月18日に、シスコとRockwell AutomationとファナックとPreferred Networksの4社で工場の中のネットワークデバイスに高度な知能を入れていくプラットフォームの提供を発表した。これによって我々は、「エッジへビーコンピューティング」の仕組みをまず製造業の世界に広めていくことを目指している。


ディープラーニングの価値はほぼ共通認識として世の中には受け入れられている。これらの技術は今後、さまざまな複雑な事象の解明に使われていくべきだと考えている。


そこでいま力を入れているのが医療の分野。特にがん。がんのメカニズムはとても複雑で、しかも多様性がある。多様性があるからこそ、例えば一つの抗がん剤ではなかなか全員に効かせることはできない。それによって一人一人にがんの治療方法を変えていかなければいけないし、画期的な治療方法を確立していくのが難しい分野。


この分野で我々は、たくさんデータを集めることによって複雑な現象を解明することができるのではないかと考えている。そこで、国立がん研究センターとの取り組みを始めようとしている。



3つの分野に取り組もうとしていて、一つは創薬。もう一つは診断の高度化。ゲノムの情報を組み合わせることによって、非常に高い次元のデータを分析してより正確な診断を行うことや、免疫システムの複雑さもデータで解明していこうとしている。

「ドローンにもディープラーニングを」
これまでのディープラーニングは、どちらかというと単純な認識と直感的な判断に使われることが多かった。今後は、不確実性があるような状況でプランニングをする。例えば渋滞を予測するようなシステム全体をみないと解けない問題にも適用していけるのではないかと考えている。


これが可能だと示唆している一つが「アルファ碁」の登場。アルファ碁は、これまで深い戦術が必要とされていた囲碁で、人間の強いプロフェッショナルに勝ってしまった。これが意味するところは、今後、ディープラーニングは、プランニングをはじめとするような深い戦略を必要とする分野にも適用されていくだろうということがあげられる。


その中でも我々が特に力を入れているのが空飛ぶデバイス。航空機やドローンといったデバイスに対してディープラーニングを適用していきたいと考えている。複雑な気象条件で不安定な状況の中で不確実性を常に捉えながら運転するような技術は、まだまだこれから研究開発が必要。今まで培ってきた技術で取り組んでいこうと考えている。(終)


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