この紫色が少し混ざった青い花が今、長谷の光則寺の境内のあちらこちらで咲き始めている。
特に本堂右手前にある天然記念物(鎌倉市指定)のカイドウの下一面がこの植物で埋め尽くされていて、ポツリポツリ咲き始めているから最盛期になるとなかなか見事だろうと思われる。
これまでも眼にしてきたのかもしれないが、今回初めて花をしげしげと眺め、「はて、何の花だろう?」という疑問が湧き、境内で草取りをしているボランティアの女性に聞いてみた。
すると直ぐには思い出せない様子で視線をしばし虚空に泳がせつつ、いきなり記憶が繋がったのか「スズムシグサ!」という単語が出てきた。
「あのリ~ンリ~ンと鳴くスズムシのスズムシですか?」と聞くと、「他は思い当たらないから多分そうだと思います」という。
スズムシの名前の付いた花に「スズムシソウ」という花がある。
こちらはラン科の茶色っぽい花でスズムシのオスの羽の形によく似ていることからとても人気が高く、自生地などではよく盗掘の憂き目に遭うらしい。
家に戻って調べ直す際、スズムシグサと入力すべきところを間違ってスズムシソウと入力してしまい、見て来たばかりの青い花と全く違うので「あのボランティア女性、間違ったこと教えたなっ!」と自分のミスは棚に上げてコンチクショウめっ、とあらぬ方に転がりかけるボケぶりに何だか情けないやら…
話を戻すと、ラン科のスズムシソウに対してスズムシグサはキツネノマゴ科の多年草だそうで、漢字で書けば「鈴虫草」で同じ。
紛らわしいことこの上ないので最近では「鈴虫花」と書いて「スズムシバナ」と呼ぶことが多いそうな。
いっそのこと「スズムシ」を手放してしまい、もっと素敵な名前にしたらいいのにとも思うが、スズムシを捨てきれないところを見ると、スズムシに執着があるのは分かるが、どうしてスズムシなのかという辺りの説明はどこにも見当たらなかったのが残念である。
水色のマツムシソウは既に登録商標済だし、クツワムシソウじゃ騒々し過ぎか。
かと言ってキリギリスソウも似つかわしくないし、コオロギソウってのもイマイチなんだろうな。
こいつはどこから見たって花なんだし、虫じゃないんだから何も秋の虫から名前を取って来る必要も無いと思うけど…