ここのところ思うように作業が進まないので、出来てるものだけでもアップする事にしてみました。
相変わらず何本も書きかけのままなのに、何故かこの話だけとんとん拍子に進んだので。
でもショートのつもりがなかなか終わらない。
とりあえずの見通しがついたので、キリのいいところまでですがよろしかったら見てやってください。
ロコマリストに捧ぐ20のお題 「No.16 手料理」そのいち。
ロココが倒れた。
どうも最近元気がない(夜も)と思ってたら、どうやら体調が悪かったらしい。
仕事先で急に倒れて、ヤマトがおぶってエンジェルが荷物を持ってきてくれた。
どうやら過労気味だったところに風邪をひいてこじらせたらしい。
ヤマトは相変わらずあまり深くは考えてない様で「ロココ様、あんまり無理しちゃダメですよー」とか言いながら背負ってきたロココを寝台に転がした。
しかし私はエンジェルに別室に引っ張っていかれ、くどくど文句を言われた。
ロココはひとりで山のような仕事を抱えて休む暇も無いほどだとか。
誰よりも早く出勤して、一番最後まで仕事してるだとか。
なのに家に帰っても家事を全部やらされてて可哀相だとか。
居候の身なんだから、家事くらいはしろだとか。
この私を捕まえてよくもここまで文句が言えるものだ。などとつい関心して黙って最後まで聞いてしまった。
だが私にも言い分がある。
まず、ロココが外で何をしてるのか私には一切話さない(聞いても答えない)。
出るのが早くて帰るのが遅くても、そもそもの基準が私にはわからない。
そしてヤツは一度たりとも私に「家事を手伝え」などとは言った事が無い。
むしろ「しなくていい」とまで言う。
これでどうして家事を切り盛りしてやろう、などと思うものか。
と言い返したら、エンジェルは呆れ返ってヤマトを引きずるようにして帰っていった。
ヤマトは「何が何だかわからない」という顔で連れてかれた。
彼らを見送った後、急にしんと静まり返ったように感じる屋内を見渡す。
何故か少し静寂が重く感じ、眉をしかめてみた。
寝室へ行きロココの額に手を当ててみると予想以上に熱くて、いくらなんでも放っておく訳にもいかず、やれやれ仕方ない看病するか、と思い立つ。
過去にはこの男の命を奪う事ばかり考えていたというのに、私も変われば変わるものだ。
氷水にタオルを浸して絞ったものをロココの額に乗せると、髪をひとまとめに束ねてキッチンに立った。久し振りにまな板の前に立って包丁を握ったが、手も体も以外に鈍ってはおらず、思った通りに作業が進む。
軽快な包丁のリズムとクツクツと煮える鍋の音。
気付けば鼻歌まで歌っていた。
「ぅ・・・・・・ん・・・」
聞きなれない音と匂いで目を覚ます。
が、瞼を開いた途端に視界がぐるりと回り、思わず瞼を再び閉じる。
熱いのに、寒い。
頭が割れるように痛み、額に手を当てようとしたら節々までもが痛む。
瞼を閉じていてもぐらぐら揺れるような感覚なので、諦めてまた目を開けてみる。
少しは慣れたのか、目眩もそれほどではなくなったので周囲を目だけで見回してみる。
どうやら自宅の寝室のようだが・・・
まず、どうして仕事場にいた筈の自分が寝室で寝ているのか。
そして室外から漂ってくるいい匂いと鼻歌は一体誰のものなのか。
皆目見当がつかない。
と、開いた戸口に人影が現れた。
暗い室内から明るい戸口を見ているから、影の主が誰なのか一瞬わからなかった。
「目、覚ましてたのか」
聞きなれた声とともに声の主が側まで来て、真っ先に額に手を当てた。
自分の体温ほどに温められていた濡れタオルのかわりに急に冷たい手が押し当てられ、思わず目をつぶった。悪寒がゾワリと這い登ってくる。
「タオルが随分温まってしまっているな。でも、さっきより少しはマシになったか?」
と、ひとり言とも取れるようなことを言いながら、自分の額にも手を当ててみる。
「・・・体温差がありすぎてわからんな」
虚ろに見上げる私の瞳を覗き込むようにして、マリアが言った。
「気分はどうだ?暖かいものを作ったんだが、食べられるか?」
「―――ああ・・・このいい匂いはあなたが・・・」
弱々しく言う私に彼女はニィと笑い、そう感じるなら食べられるな、と言いながら腰を上げた。間もなく、ホカホカと湯気の上る椀と水の入ったグラスを持って彼女が戻ってきた。
彼女はサイドテーブルに盆を置くと、起き上がれるか?と言いながら私の背に手を添えて起き上がらせ、肩に上着を羽織らせてくれた。
「まだ熱いかな・・・」
彼女はひと匙すくうとフゥフゥと息を吹きかけ、それから唇の先で温度を確かめ、そして思いもよらぬ行動に出た。
「ハイ、あーんして」
「ぇえ!?っ・・・ぁ、ぃゃ、じぶんで・・・できますっ・・・から・・・」
多分このとき私は赤面してたと思う。それ以前に熱で顔が赤かった可能性もあるが。
しどろもどろに言う私に彼女が睨みをきかせる。
「この私の匙が受けられないとでも言うつもりか?」
「あぁっ、いやっ!喜んで頂きますッ!!」
「んじゃ、はい、あーん」
「あぁーーー・・・ん」
恥ずかしさのあまり耳まで熱くなって、穴があったら入りたいとまで思いつつ口を開けた。
が、そのひと匙を口に入れた途端に何もかも吹き飛んだ。
―――美味い。
きょとんとして、しかし咀嚼を止められない私の顔をさも愉快そうに眺めつつ、マリアはふた匙目をすくって再びフゥフゥと息を吹きかけ、勝ち誇った表情をして言う。
「ハイ、あーんして」
「あーーー・・・・・・」
ひとことで言えばただの卵粥なのだが、粥の炊き加減も塩加減も卵の加減も絶妙。
アッと言う間に椀の中身を平らげてしまい、水と薬を渡された時には少し物足りなく思った。
そんな私の心中を察知したのか、はたまた計算づくなのか、彼女が再びニィと笑いながら私に言った。
「これを食べて休んで体が大丈夫だったら、次はも少し美味いのが待ってるぞ」
「え・・・っ?」
「まずはゆっくり休む事だ」
最後に優しくそう言うと、盆を持って彼女は部屋を出て行った。
も少し美味いのって・・・どんな!?
そう思うと眠気など吹き飛ぶようだったが、言われた通りきちんと休まなくては多分食べさせてはもらえまい。
その時になってふと気付けば、目眩も頭痛も節々の痛みもなくなっていた。
病は気からと言うけれど・・・
ホコホコに温まった体を冷やすまいと布団に潜り込むと、すぐに睡魔が襲い掛かってきた。
久し振りにぐっすり眠れそうだ。
相変わらず何本も書きかけのままなのに、何故かこの話だけとんとん拍子に進んだので。
でもショートのつもりがなかなか終わらない。
とりあえずの見通しがついたので、キリのいいところまでですがよろしかったら見てやってください。
ロコマリストに捧ぐ20のお題 「No.16 手料理」そのいち。
ロココが倒れた。
どうも最近元気がない(夜も)と思ってたら、どうやら体調が悪かったらしい。
仕事先で急に倒れて、ヤマトがおぶってエンジェルが荷物を持ってきてくれた。
どうやら過労気味だったところに風邪をひいてこじらせたらしい。
ヤマトは相変わらずあまり深くは考えてない様で「ロココ様、あんまり無理しちゃダメですよー」とか言いながら背負ってきたロココを寝台に転がした。
しかし私はエンジェルに別室に引っ張っていかれ、くどくど文句を言われた。
ロココはひとりで山のような仕事を抱えて休む暇も無いほどだとか。
誰よりも早く出勤して、一番最後まで仕事してるだとか。
なのに家に帰っても家事を全部やらされてて可哀相だとか。
居候の身なんだから、家事くらいはしろだとか。
この私を捕まえてよくもここまで文句が言えるものだ。などとつい関心して黙って最後まで聞いてしまった。
だが私にも言い分がある。
まず、ロココが外で何をしてるのか私には一切話さない(聞いても答えない)。
出るのが早くて帰るのが遅くても、そもそもの基準が私にはわからない。
そしてヤツは一度たりとも私に「家事を手伝え」などとは言った事が無い。
むしろ「しなくていい」とまで言う。
これでどうして家事を切り盛りしてやろう、などと思うものか。
と言い返したら、エンジェルは呆れ返ってヤマトを引きずるようにして帰っていった。
ヤマトは「何が何だかわからない」という顔で連れてかれた。
彼らを見送った後、急にしんと静まり返ったように感じる屋内を見渡す。
何故か少し静寂が重く感じ、眉をしかめてみた。
寝室へ行きロココの額に手を当ててみると予想以上に熱くて、いくらなんでも放っておく訳にもいかず、やれやれ仕方ない看病するか、と思い立つ。
過去にはこの男の命を奪う事ばかり考えていたというのに、私も変われば変わるものだ。
氷水にタオルを浸して絞ったものをロココの額に乗せると、髪をひとまとめに束ねてキッチンに立った。久し振りにまな板の前に立って包丁を握ったが、手も体も以外に鈍ってはおらず、思った通りに作業が進む。
軽快な包丁のリズムとクツクツと煮える鍋の音。
気付けば鼻歌まで歌っていた。
「ぅ・・・・・・ん・・・」
聞きなれない音と匂いで目を覚ます。
が、瞼を開いた途端に視界がぐるりと回り、思わず瞼を再び閉じる。
熱いのに、寒い。
頭が割れるように痛み、額に手を当てようとしたら節々までもが痛む。
瞼を閉じていてもぐらぐら揺れるような感覚なので、諦めてまた目を開けてみる。
少しは慣れたのか、目眩もそれほどではなくなったので周囲を目だけで見回してみる。
どうやら自宅の寝室のようだが・・・
まず、どうして仕事場にいた筈の自分が寝室で寝ているのか。
そして室外から漂ってくるいい匂いと鼻歌は一体誰のものなのか。
皆目見当がつかない。
と、開いた戸口に人影が現れた。
暗い室内から明るい戸口を見ているから、影の主が誰なのか一瞬わからなかった。
「目、覚ましてたのか」
聞きなれた声とともに声の主が側まで来て、真っ先に額に手を当てた。
自分の体温ほどに温められていた濡れタオルのかわりに急に冷たい手が押し当てられ、思わず目をつぶった。悪寒がゾワリと這い登ってくる。
「タオルが随分温まってしまっているな。でも、さっきより少しはマシになったか?」
と、ひとり言とも取れるようなことを言いながら、自分の額にも手を当ててみる。
「・・・体温差がありすぎてわからんな」
虚ろに見上げる私の瞳を覗き込むようにして、マリアが言った。
「気分はどうだ?暖かいものを作ったんだが、食べられるか?」
「―――ああ・・・このいい匂いはあなたが・・・」
弱々しく言う私に彼女はニィと笑い、そう感じるなら食べられるな、と言いながら腰を上げた。間もなく、ホカホカと湯気の上る椀と水の入ったグラスを持って彼女が戻ってきた。
彼女はサイドテーブルに盆を置くと、起き上がれるか?と言いながら私の背に手を添えて起き上がらせ、肩に上着を羽織らせてくれた。
「まだ熱いかな・・・」
彼女はひと匙すくうとフゥフゥと息を吹きかけ、それから唇の先で温度を確かめ、そして思いもよらぬ行動に出た。
「ハイ、あーんして」
「ぇえ!?っ・・・ぁ、ぃゃ、じぶんで・・・できますっ・・・から・・・」
多分このとき私は赤面してたと思う。それ以前に熱で顔が赤かった可能性もあるが。
しどろもどろに言う私に彼女が睨みをきかせる。
「この私の匙が受けられないとでも言うつもりか?」
「あぁっ、いやっ!喜んで頂きますッ!!」
「んじゃ、はい、あーん」
「あぁーーー・・・ん」
恥ずかしさのあまり耳まで熱くなって、穴があったら入りたいとまで思いつつ口を開けた。
が、そのひと匙を口に入れた途端に何もかも吹き飛んだ。
―――美味い。
きょとんとして、しかし咀嚼を止められない私の顔をさも愉快そうに眺めつつ、マリアはふた匙目をすくって再びフゥフゥと息を吹きかけ、勝ち誇った表情をして言う。
「ハイ、あーんして」
「あーーー・・・・・・」
ひとことで言えばただの卵粥なのだが、粥の炊き加減も塩加減も卵の加減も絶妙。
アッと言う間に椀の中身を平らげてしまい、水と薬を渡された時には少し物足りなく思った。
そんな私の心中を察知したのか、はたまた計算づくなのか、彼女が再びニィと笑いながら私に言った。
「これを食べて休んで体が大丈夫だったら、次はも少し美味いのが待ってるぞ」
「え・・・っ?」
「まずはゆっくり休む事だ」
最後に優しくそう言うと、盆を持って彼女は部屋を出て行った。
も少し美味いのって・・・どんな!?
そう思うと眠気など吹き飛ぶようだったが、言われた通りきちんと休まなくては多分食べさせてはもらえまい。
その時になってふと気付けば、目眩も頭痛も節々の痛みもなくなっていた。
病は気からと言うけれど・・・
ホコホコに温まった体を冷やすまいと布団に潜り込むと、すぐに睡魔が襲い掛かってきた。
久し振りにぐっすり眠れそうだ。
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