症状がないうちから「し・め・じ」合併症を警戒せよ
「のどが渇く」のは病気がかなり進行してから
【糖尿病治療最前線】
子供を含めて日本人の6人に1人はかかっているのではないか
―といわれるほど身近な存在。
まさに国民病の名をほしいままに患者を増やし続けている
糖尿病だが、血糖値が高いだけでは痛くもかゆくもないことが多く、
それが患者の治療意欲を下げる要因にもなっている。
そこで今週は、この「糖尿病」について、「医学的に根拠のある対策」を紹介する。
前半の2回は、糖尿病という病気の基礎知識と、この病気が引き起こす合併症、
中でも「目」に起きる合併症について検証する。
◇ 糖尿病は子供からお年寄りまで、
年代に関係なくかかる危険性のある病気だが、近年の日本では、
特に65歳以上の「高齢者糖尿病」の患者が増加している。
世界でも類のない超高齢化が進む日本では仕方のない現象ではあるが、
決して見過ごしていいことではない。
糖尿病とはその名の通り「血液中の糖分(血糖値)が過剰な状態」を指す。
血糖値が高くても、何の症状もないことが多い。
よく「糖尿病になるとのどが渇く」と言われるが、
それは病気がかなり進行してからのことだ。
国際医療福祉大学成田病院糖尿病・代謝・内分泌内科講師の大西俊一郎医師が解説する。
「現在、空腹時の血糖値は126以上、食後2時間の血糖値が200以上だと
糖尿病の疑いが出てきますが、『のどが渇く』のは
この数値が300とか400というレベルでの話。
大半の糖尿病患者さんは無症状で過ごしているのです」
症状がないなら治療なんてしなくていい、と考えがちだが、それは危険だ。
糖尿病は症状がないまま色々な臓器にダメージを与えていくのだ。
「糖尿病が原因で臓器がダメージを受けることを『糖尿病合併症』と呼びますが、
糖尿病が引き起こす合併症は多岐にわたります。
なぜなら、糖尿病によって〝血管〟が障害されるからです」(大西医師、以下同)
血管は全身に張り巡らされ、酸素と栄養を届けている。
その血管がやられてしまうと、全身のどの臓器に影響が及んでも不思議ではない。
「中でも糖尿病の合併症が起きやすい3つの臓器があります。
『神経』『目』『腎臓』です。多くの場合、この順に合併症も出てくるので、
その頭文字を取って〝し・め・じ〟と覚えておくといいでしょう」
神経がやられると足のしびれや冷え、こむら返りなど「足の症状」を中心に、
下痢や便秘、めまい、動悸(不整脈)、ED(勃起不全)などさまざまな症状が現れる。
一方、腎臓がダメージを受けると、腎機能が低下する「腎不全」となり、
血中の老廃物を尿として排泄することができなくなる。
そして、人工透析や腎移植など大掛かりな治療が必要になることもあるのだ。
さらに、もう一つの代表的な合併症が「目の病気」である。
最悪の場合、失明に至ることもある糖尿病による目の合併症。
あす詳しく解説する。 (長田昭二)
■大西俊一郎(おおにし・しゅんいちろう)
国際医療福祉大学医学部講師。千葉大学卒業、同大学院修了。
日本糖尿病学会研修指導医・糖尿病専門医、日本内科学会認定指導医・認定内科医、
日本老年医学会評議員・認定老年科指導医・老年科専門医、日本医師会認定産業医、
日本医療マネジメント学会医療福祉連携士、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、
日本コーチ協会プロフェッショナルメディカルコーチ。医学博士。
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