「アメリカへの核攻撃」を議論しながら、
我慢できずに笑いだしたロシア専門家
<ICBMサルマトの発射実験の成功を受け、その攻撃力についてロシア国営テレビで実に楽しそうに議論していた専門家たち>
サルマトミサイル発射実験(4月20日) Russian Defence Ministry/Handout via REUTERS
ロシア国営テレビの番組で、ロシア人の出演者たちがアメリカへの核攻撃の可能性について議論しながら、こらえきれないといった様子で笑い声をあげる姿が放送された。
そのやりとりは、4月20日に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」の発射実験を行ったという、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンの発表を受けたものだった。
【動画】核攻撃について議論しながら、こらえきれずに笑い声をあげてしまう専門家
報道によれば、ロシア軍は核弾頭が搭載できるサルマトを、ロシア北西部のプレセツクから発射し、約6000キロメートル離れた極東カムチャッカ半島の目標地点に着弾させた。プーチンはこれについて、待ちに待った武器だとし、「現代のいかなる迎撃ミサイルにも打ち勝てる」と述べた。
ロシア国営テレビのチャンネル「ロシア1」の番組では、パネリストがこのサルマトの発射について議論をしていた。そのなかで、1人の専門家がアメリカに向けて発射する可能性について述べ、標的としてニューヨーク市を具体例に挙げると、出演者たちが笑い声をあげた。
この映像を最初にツイッターに投稿して広めたのは、米リベラル系ニュースサイト「デイリー・ビースト」のコラムニストで、露メディアによるプロパガンダを監視する「ロシアン・メディア・モニター」を立ち上げたジュリア・デイビスだ。
「ロシア国営テレビでは、番組司会者とパネリストたちがアメリカ本土への核攻撃を議論しながら、こらえきれずに笑っている。アメリカの著名メディアのアンカーたちが、都市を破壊する話をしながら笑っているところを想像できるだろうか」
■ニューヨークは「完全に破壊される」
英語の字幕を見ると、番組中に1人のパネリストが「アメリカは、今も昔もこんなミサイルを保有したことがない」と述べている。そのすぐ横では、サルマトの発射映像が流されていた。
別のパネリストが、「このミサイルはどのような目標を破壊できるのか。破壊可能な広さは?」とたずねた。すると最初に発言したパネリストは、「我々のいわゆるパートナー」への攻撃に使用できると述べ、暗にアメリカに言及した。
別のパネリストが「パートナーという言葉は非常に重要だ」と口を挟むと、ほかのパネリストたちが笑い出した。 「例えばニューヨーク市をターゲットにすれば、この素晴らしい都市は完全に破壊されてしまうだろう」と最初に発言したパネリストが断言し、「このミサイル一発で完全に消滅する」と続けた。
核兵器を使った紛争の可能性が戻ってきた
ロシアによるICBM発射実験は、ロシア政府と、アメリカをはじめとする北大西洋条約機構(NATO)加盟国のあいだで、ウクライナ侵攻の激化をめぐって緊張関係が続くなかで行われた。
2カ月前の2月24日にプーチンがウクライナでの本格的な軍事進攻に着手すると、国際社会からは即座に非難が集まった。 プーチンは、サルマト発射実験直後の4月20日、こう発言した。
「この類を見ないミサイルが、我がロシア国防軍の戦闘能力を強化し、外部の脅威からロシアの安全を確実に守ってくれるだろう。
そして、逆上して攻撃的な発言を繰り返しながら我が国を脅かそうとしている国々に対して、考えるための材料を提供するだろう」
プーチンは2月24日、ウクライナ侵攻の直前に演説を行った際に、西側諸国に向けてこう警告している。私たちに干渉しようとすれば「歴史上、いまだかつて直面したことのないような事態に陥るだろう」。
その数日後の27日には、核抑止力部隊に対し、厳戒態勢を取るよう命じた。
一方、アメリカ大統領ジョー・バイデンは2月28日の記者会見で、 核戦争が起きる可能性を懸念する必要はないと述べた。
しかし、国連事務総長のアントニオ・グテーレスは3月14日、バイデンとは異なる見方を示した。「かつては考えられなかった核兵器を使った紛争が、可能性があるところにまで戻ってきた」と述べて、危機感を表した。
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