薬の飲み過ぎで傷んだ腎臓を
回復させるための食事&運動法
「痛み止め」を飲むのはやめよう
「腎臓が悪くなると聞くと透析をイメージする方が多いと思いますが、
腎機能の低下による悪影響はそれだけにとどまりません。血管がもろくなり、
心筋梗塞や脳卒中など血管系の疾患のリスクが高まってしまうのです」
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こう解説するのは、山形県立保健医療大学理事長・学長で
東北大学名誉教授でもある上月正博氏。少しずつ腎機能が低下する
慢性腎臓病の患者は、日本で約1300万人に上ると見られている。
「年齢を重ねれば、どうしても臓器の機能が落ちてくるので、
腎機能に問題が出てくるのはしかたのない面もあります。
しかし、日本の高齢者に特有の問題もある。『痛み止め』の飲み過ぎです」
痛み止めは炎症を抑える作用と同時に、血管を収縮させ腎臓に流れる血液を減らしたり、
代謝されるときに薬の毒性の影響を受ける。その結果、腎臓は壊れ、機能は低下していく。
「心臓や腎臓が悪い高齢者が痛み止めを一週間連続で飲んで
心不全や腎不全になってしまうことがあります。
整形外科で出される湿布はまだよいとしても、
痛み止めの薬を長く飲むのはなるべく避けるべきです」
一度、低下した腎機能はなかなか回復しないので、注意したい。
「もっとも、腎機能は必ずしも回復不可能なわけではありません。
食事の改善や運動療法で、改善は可能です」
ハムは食べるな!
食事の摂り方は腎機能がどれくらいかによって変わってくる。
まずは、医療機関で「eGFR(推算糸球体ろ過量)」を測定してもらい、
自分の腎臓の状態を正確に知ろう。
「腎機能は年齢とともに低下していくので要注意です。
eGFRが60未満、あるいは尿蛋白などが持続すれば慢性腎臓病とされています」
腎機能の数値に問題がなく、それほど腎臓がいたんでいない人は
たんぱく質を積極的に摂ろう。
「毎食20~30グラムのたんぱく質を意識して摂ってほしい。
肉を食べられればいいですが、それでは胃が疲れるという人は、
豆腐や納豆、卵を積極的に摂ってください。
最近はスーパーやコンビニでも高たんぱくの食品が買えます。
サラダチキンだと約20グラム、木綿豆腐で約30グラムのたんぱく質が摂れます。
ギリシャヨーグルトやチーズケーキもいい」
注意しなければならないのは、リン酸を含む加工食品だ。
リン酸は、過剰に摂取すると腎臓で排出しきれずに
高リン血症になって腎臓の石灰化を招くからだ。
リン酸が多く含まれる、ハムやソーセージ、かまぼこ、
プロセスチーズ、インスタント食品は避ける。
一方、すでに腎機能の低下が進んでいる人は、
逆にたんぱく質の摂取を控えなければならない。
しかし、完全にたんぱく質を断つと
筋肉が落ちて免疫力も低下してしまうので、注意が必要だ。
目指すは一日1万歩
肉や魚は適度に食べつつ、主食の米をたんぱく質の少ないものに替えるのも手だ。
「ゆめごはん」などのブランドで低たんぱくの米が販売されているので、探してみよう。
運動療法の基本はウォーキングだ。
「一日に最低でも4000歩。それ以上歩けば歩くほど腎機能の回復が見られます。
理想は一日1万歩です」 加えて、簡単にできる「腎臓1分体操」も試してほしい。
「両手を腰に当て、両足を肩幅に開いて立ちます。呼吸を止めないように
『ツー』と言いながら、5秒かけてかかとをゆっくり上げます。
かかとが上がった状態で息を吸ったら、また『ツー』と息を吐きながらかかとを下げる。
これを1分間かけて5~10回くり返しましょう。朝昼晩に行えるといいですね。
転倒予防にもなりますよ」 生活習慣を少し変えるだけで、腎臓寿命は延びるのだ。
週刊現代 2022年11月5日号より
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