ウクライナ東部の駅がミサイルで攻撃された出来事は
ロシアによるものなのか。そしてその意図は。
また、キーウ近郊で繰り返される虐殺行為を
プーチン大統領はどこまで把握していたのか、
筑波学院大学の中村逸郎教授に聞きました。
■52人が犠牲になった「駅への攻撃」いったい誰が、なんのために?
板倉) 東部にあるドネツク州のクラマトルスク駅でミサイル攻撃が
あり、子どもを含む少なくとも52人が亡くなりました。
アメリカ国防総省は、この攻撃はロシアの短距離弾道ミサイルに
よるものだとしています。
高島) ロシア側はこの攻撃を否定しているようですが、
中村さんはどうお考えでしょうか?
中村さん) 私の予想ですと、チェチェン共和国のカディロフ首長が
率いるチェチェン軍が撃ったのではないかと思っています。
なぜかというと、昨日ですが、攻撃された駅から180キロ南にある
マリウポリを、カディロフ首長が率いる部隊が98%制圧したと発表
したんです。そこから北に向けて、ミサイルを撃ち込んだのではないか
と考えられるんです。
高島) ミサイルの残骸にロシア語で「子どもたちのために」と
記されていたということですが、どんな意味があるのでしょうか?
中村さん) プーチン政権からすれば、あくまでもウクライナの東部は、
ロシア系住民がたくさん住んでいて
「ネオナチから迫害されている、虐待されている」という前提があり、
子どもたちも含めて解放するためにミサイルを撃ち込んだと。
これはあくまでもプーチン政権側の言い訳というか、口実ですが。
■「近い将来終了する」が意味することとは?
高島) 一方で、ロシアのペスコフ報道官は
「目標は達成されつつあり近い将来終了する」としていますが、
この発言の意味するところは?
中村) ポイント2つあるんですが、正確には、ペスコフ報道官は
「特別な軍事作戦がもうすぐ終わる」と言っていて、
ドンバス地方には80%近いロシア系の住民が住んでいて、
そこを、制圧するために出ていったということで、
そこがほぼ目標に近づいたと、これが1つ目です。
2つ目のポイントとしては、実はペスコフ報道官の言う「近い将来」
というのが5月9日を指すということ。5月9日というのは、
旧ソ連がナチスドイツに勝利した日ということで、ロシアの中で、
とても重要な記念日なんですが、プーチン政権としては、
そこまでに「ウクライナ東部を制圧した」と、
今回の戦争の成果というものを、
この戦勝記念日に重ねて一緒に祝いたいと考えているんです。
高島) こうした中で、キーウ近郊のブチャなどでは虐殺行為が
明らかになり、民間人を狙って攻撃したという見方も強まって
いますが、プーチン大統領は、どこまで把握しているのでしょうか?
中村さん) 私は、プーチン大統領が関わるというよりも、
正確に言えばプーチン大統領が指示をしたんじゃないかと
考えているんです。なぜかと言いますと、
ロシア軍が侵攻していたウクライナ北部あたりには
「ワグネル」というプーチン政権が2013年に作った、
民間の軍事組織があるんです。
これはまさにプーチン大統領が直々に作った組織で、
国防軍の中の退役軍人や現役の兵士たちを集めた精鋭部隊で
非常に残酷で、これまで何度もこういった訓練を受けた
兵士たちがやったんだろうなと、私は考えています。
■プーチン大統領と制裁対象になった二人の娘の関係は?
板倉) アメリカとEUはプーチン大統領の2人の娘についても
資産凍結の制裁対象に加えました。
中村さん、プーチン大統領にとって
この2人の娘というのはどういう存在ですか?
中村さん) もちろんプーチン大統領にとっては大切な娘さんです
けれども、ここ近年っていうのはもう関係はほとんどなく
疎遠の関係だと思うんですね。なぜかと言うとプーチン大統領は、
2016年17年辺りから重い病気にかかっているというような
体調不安説も出てきています。
これは、いわば国家機密になるわけですが、連絡を取り合うと、
プーチン大統領の健康問題が、娘を通じてどんどん広がる可能性も
あるので、娘さんとプーチン大統領は
疎遠の関係になってるんじゃないかと思っています。
■プーチン大統領の最終目標は?
高島) ここまでの流れ見てきますと、どんな制裁が加えられても
プーチン大統領は目標を達成しない限り、
軍事行動をやめないと感じるんですが、どうなんでしょう?
中村) 今回の軍事作戦を見てると、プーチン大統領が
最後に狙っている所は何かと言うと、本当に痛ましいのですが
「焦土作戦」を展開して、避難民をどんどんヨーロッパに出そうと。
つまりプーチン大統領からすれば、NATOがどんどん東方拡大して
きたことに対する、ヨーロッパへの仕返し、復讐と考えていて、
まぁそこまで(欧州が難民問題で分裂するまで)、
難民を送るというところまでいくんじゃないかと考えています。