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hazar  言の葉の林を抜けて、有明の道  風の音

細々と書きためたまま放置していた散文を、少しずつ書き上げ、楽しみにしてくれていた母に届けたい

かぎろひ

2015年08月13日 | 散文詩
ほのくらき 高層ビルに かげ残し
あきあかね とぶ 上昇気流

つぎつぎと あえかなる羽 きらめかせ
いづくにか帰る 花火のしぶき

残照の摩天楼 透く まぶた ふたつ
羽ばたき ゆきぬ かげ あまた つれ

互いには 見えぬ手 たづさへ 果てしなく
去りゆく かげ と 光の 時空
(みちゆき)

薄明り かつて 鏡の ありし壁
見返す ひとみ 互いを 見知らず

淺き水 たまりし 淵を
のぞめし 巌
たなびく 編み橋 闇 飄飄
(べふべふ)

みわたせば 人けなき浜 月明り
おぼろ消えゆく 沖つ白波

(くつ) 音の 杳(よう)として消ゆ
水面 
(べふべふ)
さまよひて いつしか 忘る
眼差しの かくれ もつるる 波間より

満天の星 森閑と したたり
しづくに宿る まどかなる
虹 うち重なりて 沙
(すな) 渺渺(べふべふ)

いまはなき ビルの谷間をふき貫くる
同じ風 くづほれやまぬ 粉塵
垂るる おろちの口より 殷殷
(ゐんゐん)

遠雷わたる あめはれし夕
背後 不在が ゆくら ゆくり と 翼を ひらく

鏡 奥 たそがれ 街灯 風 おぼろ
紙袋 へこみ ながき 息はく
深更 籠中 すてし 歌より
遠く 明けゆく 泡 夢 波の
瓦礫より 空へと 帰る
眼差し ひとつ さか 流れ星

ねじ花の 散りて らせんの段 なくば
棹のみ 風とき 夢 ふき流す

すな浴びの 雀とどめし 眼差しを
上ぐれば 身注ぐ みん蝉 しぐれ

頂きに笑む 末子 ひまはり 昼の星
肩車す 炎熱の実 満つ されかうべ
ふり登り來し かみきりの
棹に とぎれし 暮れ夏の夢

目に痛し 白き入道 湧き寄せ 告ぐ
(な)が棄(う)ちし 夢の小雲の さまよひて
大海の畔 泡ふく蟹へ
小雨降らせて 消ゆるとぞ

光満つ 駅舎に響く いくへにも
深き森より さへずりの
しづけき かなた 列車あらはる
來し方より 行く末より