山頂で休憩する人びとを眺めると、半袖の人あり、フリースの人あり、大方はウインドブレーカーを着ている。陽が照るときもあるが、風が強く当たる場所もあり、時折ガスも流れて来たりして、決して暖かいわけではない。山の天気は変わりやすいのだ。
今回はその対策用にとメリノウールの薄手のセーターをアンダーウエアに転用、着心地を試してみた。某有名量販店の値引きセール品、千円からおつりがくる代物であるが、案外使える。
登りでは汗びっしょりになったが、ウインドブレーカーで風を避けながら休憩してしばらくすると、良い乾き具合になった。乾いたとは言っても、じっとしていると冷えるばかりなので、13時ごろに下山を開始する。休んでいた間にも何人かは下って行ったのかもしれないが、あいにく、見渡せど振り返れど人影はない。
午前中歩きづらかった雪渓に差し掛かる。気温が少し上がったためか、先行者の下る足跡がくっきりついている。滑落しないように注意していくと、靴跡のそばに、ストック跡にしてはでかい、スキー用のストックで押したような跡がある。
イヌの足跡みたいだな…?はっとして、あたりをよく見ると、そばの笹薮から人の踏み跡に向かって、掌大の足跡がついている。滑った痕まであるじゃないか、とほほ。登る時には無かったはずだよ。
左手の高い藪から下りてきて、雪の上で少し滑ったんだなあ、うん。足跡のにおいをかいで、追いかけて行ったのかい?
雪渓から流れ出すせせらぎと一緒に岩の道へと進むと、すぐに次の雪渓へ。
と、そこにはまた、さっき以上に沢山の足跡がついている。靴跡と入り混じって、どちらが新しいものやら見分けがつかない。なんで、こんなに沢山ついてるのだろう?え!
1頭分のものなのかどうか、確かめる気も失せて、なんか、ちょっと、やばい気がする…。
「クマと出会わないために、足跡やフンを見つけたらその場を離れて引き返しましょう」などと、まことしやかに書いてあるが、こういう場合はどうする?先行者はどうした…。
あやうく下らない話になりかけたが、下らないでは帰れない。
にわかに大声で、「出てこないでく~ださ~い。」とか、「出会ってもお互いのためになりませんから~。」とか、「たけのこは取りませ~ん!」「邪魔しませ~ん。通るだけで~す!」
どうでもいいことをしゃべり続け、ネタが無くなるとデタラメ即興の歌をがなり立てながら、とっとと下山する、まことに怪しい二人組なのであった。
やれやれ。