ある日、電話があった。
「◆◆◆です。うちのおじいちゃん、足が痛くて歩けないって言ってるんです。診てもらえますか。」
この◆◆◆さんはまだ20代前半。
仮に両親が40代とすると、おじいちゃんと言っても60そこそこの方かもしれないね、などと話していたところ、小柄だが引きしまった体つきの「活きの良い江戸っ子」みたいな男性が車で送られてきた。
なんか、よく言うところの「おじいちゃん」とはちょっと違うなぁ・・・。具合を尋ねると、口調もはっきりと、自分の症状と病院に行った経過について話してくれた。
「膝から下がなんだか突っ張ったみたいになって、痛くてかなわね。昨日は病院にいってきた。点滴してもらったら、今日はよっぽど良くなったけども。」
そうでしたか。
「○○(◆◆◆さんの名前)から、まんず、一回行ってみてもらうもんだ!って言われたもんで。俺もあんまり病院とか行ったことがねぇなだ。ハリは初めてだんども、やってみるかと思って。」
そうなんですか。
「去年は、▲◆※の舞台で事故に遭って。照明のライトがおっこってきて、はずみで足さ当たったのよ。」
それは危なかったですね。工事関係のお仕事でも?
「いんや、仕事は…アクロバットだ!このあたりの芸人は誰でも俺のことを覚えてる。」
ア、アクロバットですか?
「そのころから、なんだか年を感じるようになってきたのぉ。それまではなんともなかったけどな。」
はぁ、去年からですか…。で、あの、おいくつですか・・・。
「大正11年生まれの94だぁ。」
治療が終わり、迎えに来た◆◆◆さんの言うことには、
「あたしのひいおじいちゃんなんですぅ・・・。」
どうりで、ただ者ではなかったわけだ。